2019年に金融庁の報告において「老後資金に2,000万円が必要」と公表されて話題となりました。
しかし、現在は倍となる4,000万円が必要であると言われており、また、現在も景気低迷や相次ぐ物価上昇により、老後資金のための貯蓄も難しい状況です。
そのため、老後の生活に不安を感じる方は多いと思われます。
今回は老後資金4,000万円問題や介護費用に触れながら、以下の内容について解説します。
- 老後資金4,000万円が必要と言われる背景と問題点
- 本当に必要な老後資金の金額
- 介護費用の平均金額
- 老後資金を増やす方法
- 介護費用を抑える方法
- 公的年金と私的年金の違い
将来の老後資金について悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください
老後資金4,000万円問題の背景と問題点
2019年に老後資金に2,000万円が必要と公表され話題になりました。
しかし、現在は倍の4,000万円が必要であると言われており、老後の生活に不安を感じる方や金額について懐疑的に感じる方もいると思われます。
本章では老後資金4,000万円問題の背景と問題点を解説します。
老後資金4,000万円問題の背景
老後資金4,000万円問題の背景には、2019年の「老後資金に2,000万円が必要」と公表されたことが大きく関わっています。
2019年に金融庁の報告書にて、「老後資金2,000万円が必要」公表されたことにより、当時は話題となりました。
その後、景気低迷やインフレが続いていた事もあり、インフレ率を3.5%に引き上げ、20年間続いた場合の金額を試算すると4,000万円が必要という結果となり、次第に多くの方に知られるようになりました。
このような背景によって、老後資金について改めて考え出す方や悩む方が増えたきっかけに繋がっています。
老後資金4,000万円問題の問題点
老後資金4,000万円問題には、さまざまな問題点があるため、必要な老後資金の金額が大幅に下がる可能性があります。
老後資金4,000万円問題における問題点は、以下の通りです。
- 試算で用いられたインフレ率は3.5%という高いインフレ率が20年間続いている想定での試算である
- 試算で用いられたデータが2017年の古いデータである
- 個人の状況や生活スタイルを考慮されていない
また、現実的なインフレ率である2.0%が20年間継続した場合を試算すると2,033万円まで減額することも分かっています。
そのため、老後資金に4,000万円という金額は大げさな見積もりであり、最新のデータや現実的なインフレ率を考慮すると、必要な老後資金の金額は大幅に変わると思われます。
老後資金4,000万円問題について、2人の高齢者から以下の様な意見を聞く事がありました。
このように、老後資金4,000万円問題は賛否両論の意見があるため、一概に4,000万円が必要とは限らないでしょう。
本当に必要な老後資金の目安は2,033万円
本当に必要な老後資金の目安として、2,033万円が必要とされています。
上記の金額は、現実的なインフレ率に近い2%を採用し、2023年の最新データを用いて試算された金額です。
具体的な計算方法は、以下の通りです。
- 2023年時点での高齢夫婦無職世帯の月間不足額:約3.8万円
- 年間の不足額:3.8万円 × 12ヶ月 = 45.6万円
- 20年間の累計不足額(2%のインフレ率を考慮):約2033万円
さらに、高齢者世帯の金融資産保有状況を見ると、65歳時点における夫婦世帯の平均金融資産保有額が2,252万円となっており、比較してもほとんど差はありません。
そのため、4,000万円と比べるとより現実的な試算になっています。
しかし、個人の収入状況・ライフスタイル・公的年金や経済変動などの要素を考慮されていないため、あくまで目安として捉えながら、老後の資金計画を立てることが大事です。
老後資金と共に介護費用が約500万円必要
老後の生活において欠かせない費用の一つとして、介護費用も気になる方も多いのではないでしょうか。
結論としては、老後資金と共に介護費用が約500万円が必要と言われております。
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」によると、介護にかかる費用は、一時的にかかる費用と毎月かかる費用があり、それぞれの平均金額は以下の通りです。
- 一時的にかかる介護費用:介護ベッド購入や住宅改修など 平均74万円
- 毎月かかる介護費用:介護保険サービスの利用料など 平均8.3万円
また、介護に費やす平均期間が約61ヶ月となっており、総額で507万円かかるという結果となります。
しかし、要介護者の状態や介護期間によって金額が変動する可能性があるため、あくまで目安として捉えつつ、介護費用についても考えておくべきでしょう。
在宅介護と施設介護の平均費用
老後における介護は大きく在宅介護と施設介護に分かれます。
在宅介護と施設介護を比較すると、平均費用に大きな差があると同時に、受けることができるサービスに違いがあります。
本章では、在宅介護と施設介護の平均費用について解説します。
在宅介護における平均費用
在宅介護の平均費用は約5万円となっています。
在宅介護で利用できる介護保険サービスは主にデイサービスなどの通所系や訪問介護などの訪問系サービスとなっており、1割〜3割の負担割合で利用できます。
初めて介護保険サービスを利用し始めたご家族からは、
と少ない費用で済むことに驚いていました。
さらに、家計経済研究所「在宅介護にかかる費用」によると、具体的な金額の内訳は、以下の通りです。
- 介護保険サービス費用:平均1万6,000円
- 介護サービス以外の費用:平均3万4,000円
介護サービス以外の費用として、おむつやベッドパッド・消毒液などの消耗品・医療費などが含まれており、施設サービスと比べても低コストと言えるでしょう。
しかし、要介護者の状態や介護度によって、トータルで見ると施設サービスを利用した方が安く済むケースもあります。
また、介護を始める際に必要な初期費用が発生することも考慮して、介護費用捻出について検討しましょう。
施設介護における平均費
施設介護の平均費用は約12万円2,000円となり、在宅介護より高額になる場合がほとんどです。
施設介護では24時間365日専門的な介護サービスを受けながら生活できる事と、家賃や食費にあたる生活費も含まれるため高額になります。
施設介護の費用の内訳は、以下の通りです。
- 施設介護サービス費用:施設内で介護サービスを受けた際にかかる費用
- 施設介護サービス費用(介護保険外):介護保険外のサービスを受けた際にかかる費用
- 日常生活費:日用品や嗜好品にかかる費用
- 医療費:健康管理や医療処置にかかる費用
実際に施設介護を選んだご家族から、以下の様な話を聞く事ができました。
このように、施設介護は在宅サービスと比べると費用が高額になるため、施設介護を検討する際、ケアマネジャーなどの専門家や介護施設紹介サイトなどで相談しましょう。
老後資金を増やす4つの方法
老後資金を増やしたいと思っても、具体的な方法が分からない方も多いのではないでしょうか。
本章では老後資金を増やす5つの方法を解説します。
① 資産運用を活用
老後資金を増やす方法の一つに、資産運用を活用して増やす方法があります。
資産運用を行うことにより、長期的に資産を増やせる可能性があるため、老後資金を増やす意味では効果的と言えます。
主な資産運用の方法は、以下の通りです。
- 投資信託
- NISA(少額投資非課税制度)
- 株式投資
- 債券投資
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
実際に老後資金のために資産運用を行うご家族から、以下のような話を聞く事ができました。
このように、資産運用が上手くいくと老後資金を増やすことができますが、リスクが伴います。
そのため、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に協力を依頼し、無理のない範囲で、長期的に資産を作る事ができるようにしましょう。
②公的年金の受給年齢を繰り下げる
老後資金を増やす方法には、公的年金の受給年齢を繰り下げる方法も効果的です。
公的年金は基本的に65歳から受け取る事ができますが、受給年齢を繰り下げてから受け取る事ができ、繰り下げた期間によって年金額が増額されます。
例えば、65歳から70歳へ年金受給年齢を繰り下げると年金額が42%増加するため、65歳の一般的な年金額(月額)が約14万円とすると、70歳に繰り越した場合は約20万円に近い年金を受け取ることができます。
実際に年金受給開始を繰り下げた高齢者のご家族から以下の様な話を聞きました。
しかし、繰り下げ期間中は年金や加給年金、振替加算を受け取ることができないため、年金受給開始までの間の生活資金が必要です。
③再就職や副業を検討する
再就職や副業も老後資金を増やす方法の一つです。
年金とは別の収入源を確保できると同時に、厚生年金に加入して働くことにより、年金額を増やせるからです。
実際に定年退職後に再就職した高齢者の方から、以下の様な話を聞く事ができました。
このように、再就職や副業を行うことで、老後資金に必要な収入だけではなく、やりがいを得ることもできるため、心身の健康増進に役立っています。
しかし、健康状態を考えながら無理せず行うことや、自身にとって興味・関心がある仕事やもともと得ているスキルを活かした仕事を選び、長期的に続けられるようにすることが重要です。
④支出とライフスタイルを見直す
支出とライフスタイルを見直すことも、老後資金を増やすための方法です。
現在の支出を抑えた分の金額を、貯蓄や投資にまわせるため、結果的に老後資金を増やす事に繋がるからです。
さらに、健康的なライフスタイルを確立できるようになると、医療費や介護費用を抑えられます。
例えば、生活に必要な固定費を見直し、年間10万円の節約ができると、20年間で約200万円の貯蓄額を増やせます。
また、節約して老後資金を貯めてきた女性の高齢者から、以下の様な話を聞く事ができました。
しかし、極端な節約は生活の質を低下させると同時に、精神的な負担やストレスとなり長続きしないため注意が必要です。
介護費用を抑える4つの方法
介護費用を抑えることにより、支出を減らす事や老後資金を増やすことに繋がります。
本章では介護費用を抑える4つの方法をご紹介します。
①要支援・要介護認定を受ける
介護費用を抑える方法として、まずは要支援・要介護認定を受けましょう。
要支援・要介護認定を受ける事により、リーズナブルな金額で介護保険サービスを利用できるからです。
認定を受けると1割から3割の負担割合で、介護保険に定められている様々なサービスを利用できます。
要支援・要介護認定を受けた高齢者のご家族から、以下の様な話を聞く事ができました。
このように、認定次第で利用できる介護保険サービスの回数などに違いがあるので要注意です。
また、要支援・要介護認定は介護が必要な状態ではない場合、認定自体を受けられません。
まずはケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談することをおすすめします。
②介護保険サービスを利用する
介護保険サービスを利用すると、結果的に介護費用を抑える事を実現できるでしょう。
介護が必要になった際、さまざまな介護保険サービスを1割〜3割の低い負担割合で利用できます。
また、住宅改修や特定福祉用具を購入した際は、上限額の範囲で支払った金額の7割〜9割が返金されます。
さらに、高額介護サービス費により、月々の自己負担額に上限が設けられ、上限を超えてサービスを利用した場合は超過した分の費用を払い戻してくれます。
介護保険サービスを利用する高齢者やご家族から、以下のような話を聞く事ができました。
このように、介護保険サービスを利用することにより、結果的に介護にかかる費用負担を軽減できるため、介護が必要になった際にはおすすめです。
③在宅介護と施設介護を比較する
在宅介護と施設介護を比較することも、介護費用を抑えることに繋がります。
在宅介護と施設介護は同じ介護保険サービスですが、料金内容や構造に違いがあるため、介護保険サービスを初めて利用する方にとって、非常に分かりにくいと思われます。
また、これまで介護保険サービスを利用しながら在宅介護を行ってきたが、どの様なタイミングで施設介護へ切り替えるべきか判断つかない方も多いです。
在宅介護と施設介護を比較することにより、現在の要介護者の状態や経済状況などに適したタイミングでサービスの利用や切り替えができる様になります。
施設介護に切り替えた利用者のご家族から、以下のような話を聞く事ができました。
費用と効果のバランスをとりながら柔軟に介護サービスを利用できるため、結果的に介護費用を抑えることに繋がります。
④介護費用に関する補助や支援制度を活用する
介護費用に関する補助や支援制度を活用することも、介護費用を抑える方法としておすすめです。
例えば、介護保険住宅改修や特定福祉用具購入の際、以下の上限額内であれば、実質1割〜3割負担で済ませることが可能です。
- 介護保険住宅改修:20万円
- 特定福祉用具購入:10万円
また、介護保険負担限度額認定によって、対象となる施設サービス・ショートステイを利用した際にかかる1日の食費・居住費を安くできる可能性があります。
さらに、各自治体や企業による要介護者向けの割引制度などもあります。
実際に補助や支援制度を活用した高齢者のご家族から、以下ののような話を聞きました。
しかし、さまざまな補助や支援制度の活用には条件があり、多くの手続きを踏まえなければならないため、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談することをおすすめします。
老後の収入源は公的年金と私的年金どちらがおすすめ?
とお考えの方もいるのではないでしょうか。
結論としては、公的年金を基礎としつつ、私的年金を上乗せすることをおすすめします。
公的年金は全ての国民が加入する制度で、安定した収入が得られやすいですが、生活で必要な老後資金を確保できないリスクがあるというデメリットを抱えています。
一方、私的年金は個人の状況やニーズに合わせて柔軟に選び、運用することが可能です。
また、税制優遇措置がある場合も多いことから、公的年金を基礎収入とし、私的年金を上乗せする方法が、より老後資金を確保できるでしょう。。
実際に公的年金に私的年金を上乗せしている高齢者のご家族から、以下のお話を聞く事ができました。
しかし、個人の生活状況や経済状況に応じて、バランス良く組み合わせることが重要です。
そして、早い段階から準備を始めることにより、より効果的に老後資金を確保できると思われます。
まとめ
今回は老後資金4,000万円について解説しました。
2019年に「老後資金に2,000万円が必要」と公表され話題となりましたが、その後、高いインフレ率を基に試算した結果、4,000万円が必要という結果となりました。
しかし、試算方法や条件などの問題点があるため、老後資金4,000万円は賛否両論となっているため、最新のデータと現実的なインフレ率を基に試算した結果、約2,000万円は必要とされています。
また、老後資金とは別に、介護費用も約500万円が必要とされていますが、在宅介護か施設介護のどちらかを選択することで、介護費用は大きく変動します。
このような結果から、老後資金を増やす為に、資産運用や公的年金受給年齢の繰り下げなどの対策を行うことが重要です。
さらに、介護が必要となった場合、介護費用を抑えながら必要なサービスを適切に利用することにより、老後資金を増やすことにも繋がります。
そのため、早めの段階から将来の老後生活を見据えて資金を増やし、不安を解消した状態で豊かな老後生活を送ることができる様に準備しましょう。