飼育放棄とは?入院・施設入居や経済難がきっかけに。高齢者とペットの問題や譲渡先について介護士であり保護活動家が解説

飼育放棄とは?入院・施設入居や経済難がきっかけに。高齢者とペットの問題や譲渡先について介護士であり保護活動家が解説
おばあさん
おばあさん
10年一緒に暮らした猫を飼えなくなりました
親が亡くなったので犬を引き取ってください

あなたは高齢化とペットの問題を考えたことがありますか?様々な理由でペットを手放す人が後を絶ちません。

現在日本は高齢化が進み、身体状況の変化や飼い主死亡による飼育放棄が上位になっています。

ここでは高齢者とペットの問題について取り上げていきます。

ペット飼育放棄の現状

ペット飼育放棄とは?

一緒に暮らしているペットを捨てる・手放す事です。まず皆さんが一番に思い浮かべることだと思います。

ほかにも…

  • 食事や水を与えない
  • 運動(散歩にいかない)をさせない
  • 糞や食べ残しの清掃を怠り不衛生な環境のままにする
  • 適切な医療を受けさせない

一見虐待に近いようなものも放置に含まれます。

なぜペット飼育放棄が起きるの?

おばあさん
おばあさん
近所の道端で野良猫が子供を産んだのを見てかわいそうだと思ってお家に迎えたの。
コロナが流行し、家で退屈凌ぎでペットでも飼うか~ってノリだよノリ。

かわいい、ペットに癒されたい、ひとりじゃ寂しい…などの理由でペットを飼われた方も多いのではないでしょうか?

ところが、相手はぬいぐるみではなく生きていてる動物です。

ご飯も食べれば排泄物も出る。病気にもなる。毎日のお世話が必要になり、餌代・医療費などの負担が出てきます。

ペットの寿命が延びた近年では上記の状態が10年、20年と続く場合も少なくありません。

そして長期に渡る飼育で人間も歳を重ねます。60歳でペットを迎えた場合10年たつと70歳、20年で80歳です。

つまり、自分の体が不自由になった場合、ペットのお世話も困難になってきます。

また近年物価高の為自分が食べていくだけで精一杯でペットに使うお金がないといった経済面の問題もあります。

飼育放棄の要因と終生飼育についてこのような調査結果が出ています。

つまり、「かわいい」「癒し」「寂しい」だけで飼うことが困難な事を知らず

思っていたより可愛くない、散歩や餌やり清掃と面倒見るのが大変、病気や怪我でお金もかかる…となり放置の流れとなるのです。

ペット飼育放棄による高齢者への影響

おばあさん
おばあさん
私に何かあっても息子は面倒見てくれないと思うわ。私がいなくなった後この子がどうなっちゃうかと思うと辛くてたまらない。

ペットを手放し精神的に落ちみ、コミュニケーションの機会が減り認知症が進行する…、塞ぎこみ外出しなくなった場合、身体機能も衰える…などの心身面ともに影響が出る可能性があります。

またペット側も環境の変化のストレスで塞ぎこみ、ご飯が食べられなくなる。嘔吐・下痢などの体調不良がはっきりと表れ最悪の場合亡くなる。ペットが逃げ出した場合は市や行政によって殺処分さててしまう可能性もあります。

上記は一部ではありますが、飼育放棄は高齢者・ペット双方ともに悪影響を与える場合がとても多いのです。

筆者がヘルパー時代のエピソード

一人暮らしの高齢者(以下Aさん)が猫を飼っていました。

身体機能の低下と認知症から、掃除や調理の家事が難しい状態。ヘルパーさんに訪問してもいながら暮らしていました。

猫にご飯はあげているも、トイレは掃除が難しく汚れていることも多くありました。幸いヘルパーさんが猫好きで、Aさんの支援に入った際、猫の水の入れ替えやトイレ掃除なども一緒に行い世話をしていました。

ある頃からAさんの口からキャットフードの匂いがすることがありました…気のせいかと思っていると、汚れた猫トイレの砂が手についていたりすることも増えてきました。

意識してみているとキャットフードの減りも早い…!なぜそうなってしまったのでしょうか?

そうです。認知症の進行です。

キャットフードを食べ、トイレを触り…しばらくしてAさんは猫のお世話どころか、独居も難しくなり施設へ入居することになりました。

猫の事が気がかりでしたが、話し合いの末スタッフの知人が引き取ったと聞きました。

最初は猫を手放すのを拒否していたAさんも「可愛がってくれるなら」と最終的には承諾されたそうです。

動物保護団体の現状

動物保護団体の現状について触れてみたいと思います。ここ最近テレビで取り上げられることが多くなりました。

保護された動物は可愛く平和に見えるかもしれませんが人手不足と経済面が圧迫されぎりぎりの状態で運営していることが多いのです。

保護されたペット達は衛生状態や健康状態が悪いことが多く、ペット病院での検診や治療で高額の医療費がかかります。

またお家で預かっているボランティアさんの場合は、盆や正月で里帰りなどで、面倒を見れないのでその子たちをまとめて一時的に預かる必要があったりと厳しい状況でも献身的にボランティアをされている方が多くおられます。

経済面は、ほぼ寄付で成り立っており、綱渡り状態です。人員もほぼボランティア活動に頼り切っている状況です。

「相談すれば気軽に引き受けてくれる」という訳に行かないのが現状です。

筆者の地域の動物愛護センターのエピソード

筆者の住んでいる札幌ではここ数年殺処分行われていません。

職員さん
職員さん
もう何年も使ってないから、今ガスが出るのか分からないわ

管理センターに見学に訪れた際、殺処分に使われるガス室は、タオルを乾かす場所になっているそうです。

なんだか安心してほっこりしたのを覚えています。

動物を預かる施設も設備が充実したものが作られ、以前に比べ動物福祉が浸透してきているようです。

その様子がメディアで取り上げられると状況は一変

おばあさん
おばあさん
10年一緒に暮らした猫を飼えなくなりました
親が亡くなったので犬を引き取ってください

と考える人が増え、想定外の数の動物を受け入れざるを得なくなり…

職員さん
職員さん
また殺処分の導入を考えないとダメかも…

いう話も出たそうです。そうなってしまっては元も子もないですよね。

そのような状況の中で今後ペット放棄を減らす対策を考えてみたいと思います。

飼育放棄ゼロを目指して

飼う前に人生計画をしっかりと考える

ペットを迎える前からしっかりとプランを立てておくことが重要です。

ペットを迎えると、時間・手間・場所・お金など様々なものを要します。それらを踏まえてあとどの位お世話を継続できるか考えていく必要があります。

特に高齢者や一人暮らしの場合は自分がお世話ができなくなった時に、お世話をしに来てくれる人や、代わりに飼ってくれる人を探しておくことがとても大切になります。

ペットのために備える

ペット保険に加入する

ペットも高齢になるにつれ医療費もかかってくる可能性が高いため、ペット保険に入って備えておくのもおすすめです。

老犬・老猫ホームに預ける

ペットに介護が必要になり、お世話が難しい場合は老犬・老猫ホームに預けることも出来ます。

ペット信託を活用する

費用を収めることで自身が亡くなった後ペットを引き取ってくれるペット信託という制度もあります。

状況が悪化する前に相談する

  • ペットショップやサロンと信頼関係を作る
  • より良い近所づきあい・友人関係を築く
  • 犬の場合は散歩仲間などと会話の機会をもつ

現状を共有し、いつでも相談できる環境を作っておくことが大切です。

飼うのではなく、預かるだけにする

さいごまでお世話が出来ないと考えられる場合は預かりボランティアもおすすめです。

相談しながらお世話することも出来る上、もし自身が何かあった時にすぐ引き取ってくれるのでとても安心です。

勇気を持って飼わないという選択

上記のどれも難しいと考えられる場合は『飼わない』という選択肢もあります。

それでもどうしても飼育していくのが困難になった時はどうすれば良い?

各地域の自治体に相談することが出来ます。

自治体では飼育出来なくなった時の相談のみではなく、飼育に関する困りごとやボランティアの相談が出来る所もあります。

まとめ

ペットは私たちに癒しや笑いを提供してくれるかけがえのない家族のような存在です。

しかし、一緒に暮らす中で手間・時間・経済的な負担を要することもあり多々あります。ペットを飼うということは命を預かるということです。

その中で生涯を共に暮らし…人もペットも幸せであるように…

あなたも出来ることをもう一度よく考えてみてください。

飼育放棄がなくなり、保護犬・猫というような存在がなくなる世の中になることを祈っています。

趣味・くらしカテゴリの最新記事