

身寄りのない単身高齢者は現在も増えており、老後の生活や人生の最期を迎える際にさまざまなリスクを伴うため、不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
今回は、身寄りのない単身高齢者が、老後を送る上でのリスクや老後を迎える前準備できる対策について解説します。
こちらの記事を読むことで、身寄りのない単身高齢者として老後を迎えても、安心して生活できるヒントを学べます。
今、老後の生活について考えている独身の中年層の方や定年退職を控えた方は、ぜひご覧ください。
身寄りのない単身高齢者の実態と背景


身寄りのない単身高齢者はさまざまな理由によって、今後も増え続けると推測されています。
こちらでは、身寄りのない単身高齢者の実態と背景について解説します。
身寄りのない単身高齢者は今後も増え続ける
身寄りのない単身高齢者は今後も増え続けると予想されています。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、一人暮らしの65歳以上の高齢者が2020年から2050年までの間に、約400万人の増加が見込まれています。
また、日本総合研究所の調査では、「三親等内の親族がいない高齢者」の数は、2024年時点で高齢者全体の7.9%にあたる約286万人であると確認されています。
さらに、2050年には5割以上増加する見通しであることが発表されているため、身寄りのない単身高齢者は今後も増え続けると考えられるでしょう。

身寄りのない単身高齢者が増えている5つの背景
なぜ身寄りのない単身高齢者が増えているのか、気になる方も多いのではないでしょうか?
身寄りのない単身高齢者が増えている背景には、以下の5つが挙げられます。
- 高齢者の人口が増えている
- 離別や死別が増えている
- 未婚化が進んでいる
- 夫婦のみの世帯が増えている
- 核家族化が進んでいる
内閣府「令和6年版 高齢社会白書」によると、2024年時点の65歳以上の高齢者数は3,625万人となっており、総人口に占める高齢化率は29.3%と年々増え続けています。
高齢者数の増加に伴い、離別・死別による単身高齢者も増えており、ニッセイ基礎研究所の調査によると、65歳以上の高齢者が10人いる場合、1人は離別・死別によって単身になっている状況です。
また、未婚のまま高齢期を迎える方も増えており、厚生労働省の資料では、65歳以上の男性・女性の未婚者数は約223万人となっており、2050年には約700万人まで増加すると見込まれています。
さらに、核家族化の進行により、夫婦のみの世帯や単身世帯が増えたことも、大きな背景の一つとなっています。
こうした5つの背景が重なり、身寄りのない単身高齢者となる方が増えていると考えられています。
身寄りのない単身高齢者が老後を送る上での5つのリスク


身寄りのない単身高齢者が老後を迎えると、以下のようなリスクを抱えながら過ごすでしょう。
- 病気や事故の時に誰にも頼れない
- 孤独感による精神的なダメージを受けやすい
- 詐欺や契約に関するトラブルに遭う
- 介護が必要になっても誰にも頼れない
- 亡くなった後の後始末を誰にも頼れない
一つずつ解説します。
病気や事故の時に誰にも頼れない
身寄りがない単身高齢者が、病気や事故になった際、発見が遅れる・助けを呼べる人がいないため、重症化しやすくなり、最悪の場合、孤独死につながる可能性があります。
さらに、入院が必要になった際、身元保証人を求められることや契約が必要ですが、身元保証人となる身寄りがいないため、手続きが進まない・断られるリスクもあります。
そのため、身寄りのない単身高齢者は病気や事故の時に誰にも頼れないリスクが非常に高いと言えるでしょう。
孤独感による精神的なダメージを受けやすい
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、65歳以上の高齢者の場合、年齢ごとに孤独感が増し、特に85歳以上の高齢者の約5割は孤独感を感じていると発表しています。
日常的に人との交流が少なくなると、孤独感が増し、うつ病などの精神疾患や認知症の発症リスクが高まります。
また、加齢によって、孤独感による精神的なダメージから回復するまでに時間がかかる場合が多いです。
そのため、身寄りのない単身高齢者は、孤独感による精神的なダメージを受けやすいと言えるでしょう。

詐欺や契約に関するトラブルに遭う
内閣府「令和5年版高齢社会白書」によると、令和4年中の特殊詐欺の被害件数は17,250件ですが、その内65歳以上の高齢者の被害件数は15,065件と約9割を占めています。
特に、身寄りのない単身高齢者の場合、家族や知人などの相談相手がいないことにより、被害に遭いやすいと指摘されています。
また、認知症や加齢に伴う理解力・判断力の低下によって、契約内容や金銭面について理解できず、不要な契約や悪質商法に巻き込まれやすいです。
そのため、身寄りのない単身高齢者は詐欺や契約に関するトラブルに遭うリスクが高いと言えるでしょう。
介護が必要になっても誰も頼れない
身寄りのない単身高齢者の場合、介護が必要な状態であることを、周囲に気づいてもらえず、適切なサポートにつながりにくいケースが多いです。
また、身の周りのサポートが必要となっても、身寄りがいないため、家族がいる方のように柔軟なサポートが受けられません。
さらに、さまざまな在宅介護サービスの利用や介護施設の入居相談や手続きを進めることも難しい場合もあります。
そのため、身寄りのない単身高齢者は、介護が必要になっても誰も頼れないため、生活が行き詰まるリスクがあります。

亡くなった後の後始末を誰にも頼れない
例えば、身寄りのない単身高齢者が亡くなった場合、以下のような手続きが必要です。
- 死亡届の提出
- 公共料金を含めたさまざまな契約の解除
- 葬儀の手続き
- 財産の相続
また、遺品整理や賃貸住宅の退去手続きなど誰にも頼れない場合、そのままの状態になり、残された遺品の整理や住まいの管理に関する問題が新たに発生します。
そのため、身寄りのない単身高齢者は、死亡後の手続きや遺品の整理などの後始末に関するリスクもあると言えるでしょう。

身寄りがなく単身のまま老後を迎える前に準備できる5つの対策


身寄りがなく、単身のまま老後を迎える前に準備できる対策として、以下の5つが挙げられます。
- エンディングノートや遺言書を作成する
- 任意後見契約・財産管理契約を結ぶ
- 死後事務委任契約を結ぶ
- 気軽に関わることができる人間関係を作る
- 老後の新しい住まいを早めに検討する
詳しく解説します。
エンディングノートや遺言書を作成する
身寄りがなく、単身のまま老後を迎える前に、エンディングノートや遺言書を作成することは、将来的な備えとして効果的な対策です。
そもそもエンディングノートと遺言書は、以下のような特徴があります。
エンディングノート
医療や介護に関する希望・財産の管理や相続・葬儀などの希望や親しい方へのメッセージなど、人生の最期に関するさまざまな情報を書き残すことができるノート
遺言書
自身の財産管理や相続などに関する希望を記した法的効力を持った書類のことで、主に自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つがあります。
エンディングノートと遺言書を併せて作成することで、最期を迎えた際、自身の希望に沿った対応を叶えることができるでしょう。
遺言書やエンディングノートを作成する際、弁護士や司法書士、地域包括支援センターへの相談がおすすめです。
詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
任意後見契約・財産管理契約を結ぶ
任意後見制度・財産管理契約も将来的な備えとして効果的な対策です。
任意後見契約・財産管理契約の特徴は、以下のとおりです。
任意後見制度
将来認知症などにより判断力が低下した場合に備えて、あらかじめ後見人に財産管理や身の周りの事務手続きを代わりに行なってもらう制度。
財産管理契約
判断能力がしっかりしている段階から、信頼できる人や専門家に、財産管理や身の周りの事務手続きを委任できる契約。
任意後見契約と財産管理契約を組み合わせることにより、元気な間は財産管理契約、判断力が低下した際は任意後見契約へ移行できます。
任意後見契約・財産管理契約を結ぶ場合、弁護士・司法書士・行政書士などの法律の専門家に相談すると、契約に伴う手続きなどサポートするためおすすめです。
死後事務委任契約を結ぶ
死後事務委任契約とは、自身が亡くなった後に必要なさまざまな手続きを、生前に第三者に委任できる契約のことです。
一般的に人が亡くなった場合、以下のような手続きが必要になります。
- 死亡届の提出
- 年金・保険の解約
- 公共料金の精算
- 葬儀や納骨の手続き
- 自宅や遺品の整理
- 入院費や介護施設の費用の精算
しかし、身寄りのない単身高齢者の場合、亡くなった後には上記の手続きができなくなるため、老後を迎える前に契約することがおすすめです。
死後委任契約は、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家に相談することで、契約締結に必要な手続きのサポートを行います。

気軽に関わることができる人間関係を作る
気軽に関わることができる人間関係を作ると、老後の生活における精神的な支えとなるでしょう。
例えば、地域で行われている趣味などのサークル活動やサロン活動に参加すると、社会とのつながりを持つきっかけになります。
また、定期的に参加することで、気軽に関わることができる人間関係を築き、孤独感の軽減や心身の健康にもつながります。
このような地域で行われている活動に参加したい場合、地域包括支援センターや社会福祉協議会、お住まいの民生委員に相談することがおすすめです。
老後の新しい住まいを早めに検討する
身寄りがなく単身のまま老後を迎えると、介護や医療が必要になった際、自宅での生活が難しくなるリスクが発生します。
また、新たな住まいへの引越しや環境に慣れるまでには、心身ともに負担がかかるため、動ける間に、老後の新しい住まいを検討することがおすすめです。
しかし、新たな住まいを考える際、移った後の「実家じまい」も考えなければなりません。
実家じまいとは、実家を売却・処分することで、身寄りのない単身高齢者の場合、実家じまいを考えることは、老後の生活設計や資産管理などにも関わる問題です。
実家じまいについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
身寄りのない単身高齢者の介護相談ができる3つの窓口

身寄りのない単身高齢者に介護が必要になった際、相談できる窓口は以下の3つです。
- 地域包括支援センター
- 居宅介護支援事業所
- 民間の介護施設紹介センター
一つずつ解説します。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、さまざまな高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることを目的に相談援助を行う専門機関です。
社会福祉士・主任ケアマネジャー・保健師などの専門職が常駐し、以下のようなサポートを行っています。
総合相談・支援
高齢者の健康や生活全般に関する幅広い悩みや相談に対応しており、さらに介護保険サービスや介護認定の申請に関する相談にも応じている。
介護予防ケアマネジメント
要支援1・2の認定を受けた方や将来的に介護が必要な可能性がある方に、介護予防を目的とした介護予防サービスの利用調整や介護予防ケアプランの作成などを行う。
権利擁護
消費者被害・虐待・成年後見制度など、地域に住む高齢者の権利擁護に関わる相談に対応している。
このように、介護を含めた幅広い悩みに関する相談に応じることができるため、身寄りのない単身高齢者も安心して利用できるでしょう。
地域包括支援センターについて詳しく知りたい方は、以下の記事もおすすめです。
また、お住まいの地域包括支援センターを知りたい場合、厚生労働省「介護サービス情報公表システム」から検索しましょう。
居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所は、自宅で生活する要介護高齢者が介護サービスを適切に利用できるようサポートする介護事業所です。
介護・医療などの専門知識を持つケアマネジャーが常駐し、利用者の状態や希望に配慮した介護サービスの提案・利用に向けた調整・ケアプラン作成を行います。
また、必要に応じて介護認定の申請や介護施設への入所に関する相談にも応じます。
そのため、身寄りのない単身高齢者で介護が必要になった時には、安心して相談できるでしょう。
詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
民間の介護施設紹介センター
民間の介護施設紹介センターは、介護施設を紹介する民間の相談窓口です。
さまざまな介護施設に関する情報を集めており、介護が必要な高齢者の状態や希望に合った介護施設を紹介します。
また、必要に応じて、施設見学の調整・同行、入居手続きに関するサポートなども行うため、新たな住まいとして介護施設への入居を考える際に相談することがおすすめです。
本サイトを運営する「近所のよしみ」では、完全予約制をとり、介護・福祉のプロによる介護施設への入居に関する相談に応じています。
また、入居後に発生する相続・後見人などのさまざまな問題にも手厚くサポートできる体制を整えています。
気になる方は、こちらから無料相談に申し込みましょう。
まとめ
今回は、身寄りのない単身高齢者が老後を送る上でのリスクや老後を迎える前にできる準備を解説しました。
高齢化や核家族化の進行などの理由により、身寄りのない単身高齢者が増え続けています。
身寄りのない単身高齢者になると、以下のようなリスクを抱えながら老後を送ることになるでしょう。
- 病気や事故の時に誰にも頼れない
- 孤独感による精神的なダメージを受けやすい
- 詐欺や契約に関するトラブルに遭う
- 介護が必要になっても誰にも頼れない
- 亡くなった後の後始末を誰にも頼れない
そのため、老後を迎える前に、以下のリスク対策を準備することがおすすめです。
- エンディングノートや遺言書を作成する
- 任意後見契約・財産管理契約を結ぶ
- 死後事務委任契約を結ぶ
- 気軽に関わることができる
- 人間関係を作る老後の新しい住まいを早めに検討する
しかし、リスク対策を準備する際、自身だけでは手続きなど難しいため、法律や介護の専門家に相談し、協力を得ながら進めることが必要です。