低温火傷とは?湯たんぽや暖房器具による高齢者の低温やけどに要注意!

低温火傷とは?湯たんぽや暖房器具による高齢者の低温やけどに要注意!

寒い季節にはカイロや湯たんぽなどの暖房器具を使用することが多くなると同時に、不注意や誤った使用によっての事故が多くなります。

特に高齢者に多い熱傷事故の原因で、一番多いものが低温やけどです。

この記事では、低温やけどの原因や予防法などについて詳しく解説します。

低温やけどとは?

低温やけどは、44~50℃程度の熱源が長時間皮膚に触れることで起こると言われています。

温かく心地よいと感じる温度でも、長時間皮膚に触れていると熱いと感じないまま低温やけどを起こしてしまう可能性があるため注意が必要です。

消費者庁に報告される熱傷事故の中で、低温やけどの原因としてカイロや湯たんぽなどの暖房器具によるものが多くなっています

低温やけどの症状と特徴

低温やけどの症状と特徴について解説します。

低温やけどの症状

低温やけどの症状は、長時間の熱が皮膚に与える損傷の程度によって段階があります。

初期症状として皮膚の軽い痛み赤みがある、水ぶくれができることがあります。重度になると痛みをあまり感じなくなり皮膚の色が黒や褐色に変色します。

低温やけどの重症度は損傷の広さと深度で決まり、深度は熱による損傷が皮膚のどの深さまで起きているかで「Ⅰ度熱傷」から「Ⅲ度熱傷」に分類されています。

皮膚の深い部分まで損傷がある場合は治療も難しく、皮膚移植や切断最悪の場合は命が危険にさらされることも少なくありません。

熱傷の分類と症状

  1. Ⅰ度熱傷
    損傷:表皮のみ、症状:軽い痛みや皮膚に赤みがある
  2. Ⅱ度熱傷
    損傷:表皮よりも深い真皮まで、症状:痛みが強くなったり、皮膚に水ぶくれができる
  3. Ⅲ度熱傷
    損傷:皮膚全層、さらに皮下組織まで及ぶ、症状:痛みはあまりなく、皮膚の色が黒や白、褐色などになる

低温やけどの特徴

低温やけどは、熱源が低温のため長時間皮膚に触れていても熱さや痛みを感じにくく、時間の経過とともに皮膚の奥深くで、症状がゆっくりと進むのが特徴の一つです。

見た目では皮膚の損傷の程度が分かりづらく、損傷の範囲が広くなくても皮膚の深いところまで損傷を受けて、重症になりやすい傾向があります

低温やけどの原因になりやすい暖房器具

低温やけどの原因はカイロ(使い捨てカイロ)や湯たんぽ、電気あんかなどの暖房器具の誤った使い方や不注意などが多くなっています。

実際に経験したケースを紹介しながら詳しく解説します。

カイロ

使い捨てカイロ、特に貼るタイプのカイロを直接肌に貼るのは非常に危険です!

職員さん
職員さん
高齢者が使い捨てカイロを直接肌に貼り、低温やけどを起こしてしまったという事がありました。

原因は、使い捨てカイロの正しい使い方の認識不足と、「貼るタイプ」ということを湿布のように直接肌に貼るものだと誤認していたことでした。

パッケージ等に書いてある使い方を確認して、肌に直接触れないようにしましょう。薄い肌着の上に貼った場合でも、長時間になると低温やけどを起こすリスクがありますので、服の上から貼ることをお勧めします。

カイロを貼ったまま、こたつで長時間過ごしたり、そのまま就寝してしまうことも危険です。カイロを貼った部分の温度が高くなり皮膚の損傷が起きやすくなります。寝るときはカイロを外すようにしましょう。

湯たんぽ、電気あんかなどの暖房器具

寒い季節には温かい布団で眠れるように、湯たんぽや電気あんかを入れることが多いと思いますが、就寝中もそのまま使うのは非常に危険です!

職員さん
職員さん
高齢者が、足が冷たく感じたため湯たんぽを肌に触れるようにして就寝し、目覚めたときに皮膚に水ぶくれができ、低温やけどを起こしていたという事がありました。

眠っているときは普段よりも皮膚感覚が鈍くなり、痛み刺激に対しての反応も遅くなります。

就寝中は湯たんぽや電気あんかの熱が皮膚に長時間影響を与え、気づいたときには重度の低温やけどを起こす可能性が高くなります。

湯たんぽをタオルなどで包んでいても、長時間皮膚に触れることで低温やけどを起こす可能性があります。

就寝時に使う場合は布団が温まったら布団から出しておく方が安全です。

電気毛布、電気カーペット、こたつなどの暖房器具

寒い季節には定番の暖房器具ですが、使い方によっては低温やけどを起こしてしまう危険があります。

電気毛布や電気カーペット、こたつなどの暖房器具を併用したり、高い温度設定のまま同じ姿勢で長時間使用するなど状況によって低温やけどを起こしてしまう可能性があります。

職員さん
職員さん
電気カーペットの上にこたつを置いて使用していて、ご家族が外出している間、高齢者が長時間同じ姿勢のまま過ごし、腰や足などに低温やけどを起こしたという事がありました。

特に、カイロを貼ったまま電気毛布や電気カーペット、こたつなどの暖房器具を長時間使用すると、カイロを当てている部分の熱が高くなり、低温やけどのリスクが高くなるので要注意です。

低温やけどの対処法

低温やけどを起こした場合の対処法について解説します。

応急処置

皮膚が赤くなったり、痛みがある場合は流水で痛みを感じなくなるまで10分以上冷やしましょう!

患部より少し離れたところから流水で冷やすと良いでしょう。

皮膚に水ぶくれがある場合は水ぶくれはつぶさないようにしておきましょう!

水ぶくれの上にガーゼやティッシュペーパーなどを当てると、水ぶくれが破れたときに皮膚がはがれてガーゼやティッシュペーパーにくっついてしまうことがあります。水ぶくれにラップを当てておくと、水ぶくれが破けても皮膚がはがれにくくなります。

軽く考えずに医療機関を受診する

低温やけどの特徴として、見た目では皮膚の損傷がどの程度なのかわかりにくいため、思ったよりも重症化していることがあります。

重症化すると治療に時間がかかるだけでなく、皮膚移植や切断、状況によっては命に関わることにもなりかねません。

応急処置だけで済ませずに、できるだけ早めに医療機関で診察を受けることをお勧めします。

高齢者に低温やけどが多い理由と特に注意したいケース

高齢者が低温やけどを起こしやすい理由と特に注意したいケースについて解説します。

高齢者が低温やけどを起こしやすい理由

高齢者は若年者に比べて皮膚が薄いため熱による損傷を受けやすい運動機能や感覚機能が低下しているため、刺激に対して適切な反応をしにくい、などがあげられます。

そのほか、実際に経験したケースのように認識不足理解力の低下なども理由にあげられるでしょう。

特に注意したいケース

糖尿病や神経疾患がある場合

抹消神経障害から熱や痛みの感覚が鈍くなるため気づきにくい状態にあります。

特に、糖尿病の場合は細菌に感染しやすく、抹消神経障害も起きているため治療に時間がかかり、重症化しやすい傾向にあります。

麻痺がある場合

同じ部位や皮膚に熱が伝わり続けるため皮膚の損傷が起きやすく、重症化するリスクが高くなります。

意思の表示が難しい場合

自分の体調や皮膚の状態を伝えることが難しい状態のため、気づかなかったり発見が遅れる可能性があります。

睡眠薬など薬を服用している場合

皮膚感覚や刺激への反応が鈍くなる可能性があります。

職員さん
職員さん
高齢者世帯の2人暮らし。妻は右半身麻痺で思うように動かせず感覚障害もありました。夫が介護者で妻の身の回りのことをしていました。妻の右手足は血液の循環も悪く冷たくなりすいため、寒い時期には毎日湯たんぽを使用していました。ある朝、夫が妻の右足に水ぶくれができていることに気づき医療機関を受診、低温やけどを起こしていたという事がありました。
糖尿病と脊柱管狭窄症がある高齢者が足先を温めるためにカイロを使い、右足の指が赤くなり、水ぶくれもでき低温やけどを起こしていたという事がありました。

このケースのように感覚や神経障害があるなど低温やけどを起こしてしまうリスクが高い場合は特に注意が必要です。

低温やけどの予防法

低温やけどの予防法で重要なことは、

温かくて心地よい温度でも長時間皮膚に接しないようにすることです。

低温やけどの認識を持ち、カイロや湯たんぽなどの暖房器具を正しく適切に使用することが大切です。

高齢者や特に注意したいケースの場合は、本人だけではく、家族や介護者などの周りの人が暖房器具の使い方を確認し、皮膚の状態にも気を配ることが大切です。

職員さん
職員さん
高齢者介護施設で、高齢者が「おなかが冷える」と言って電気あんかをおなかにかかえて就寝。職員が巡回した際に「かゆい」と訴えがあり皮膚を確認すると、うっすらとピンク色でした。幸いなことに低温やけどは起きていませんでした。このことがきっかけで、職員同士でも低温やけどを再認識し、合わせて暖房器具を使う際の注意点を職員全員で確認したことがありました。

まとめ

カイロや暖房器具で起こりやすい低温やけどについて解説しました。

低温やけどの原因や起こりやすい状況などへの認識を持ち、適切な対応をすることで未然に防ぐことが大切です。高齢者の場合は特に皮膚の状態が治るまでに時間がかかります。高齢者の皮膚の状態や運動・感覚機能が低下している状況から重症化するリスクが高いため注意が必要です。

高齢者本人が気を付けるだけでなく、家族や介護者など周りの人が日頃から注意を払って見守ることも大切です。

低温やけどを予防して安全に温かく快適に過ごしましょう。

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