- 最近よく聞くけど、寒暖差疲労ってなに?
- エアコンを使うと体がだるくなるのは、寒暖差疲労が原因なの?
- お年寄りは寒暖差疲労になりやすいって本当?
最近ニュースで耳にすることが多い「寒暖差疲労」ですが、どのような病気か知っていますか?寒暖差疲労は、気温の急激な変化によって起こる体調不良のことです。季節の変わり目や、気温差の大きい環境で体調を崩すことは、以前から知られていました。
エアコンの普及によって室内外の温度差が大きくなり、寒暖差疲労を感じたり体調を崩す人が増えたことで、より注目されるようになったのです。
寒暖差疲労は年齢に関係なく起こる症状ですが、体温の調整機能が低下している高齢者は特に起こりやすいことが分かっています。また、寒暖差疲労の症状がコロナと似ているため、どちらか見分けがつかず不安に思っている人も多いでしょう。
この記事では、寒暖差疲労の原因や症状、見分け方について解説します。
高齢者の寒暖差疲労の予防策もお伝えしますので、高齢者の方はもちろん、その家族や介護に携わる方はぜひ参考にしてください。
寒暖差疲労とは?
寒暖差疲労とは、気温が急に変わるときに起こる体の不調のことで、「季節の変わり目」「日中と夜間の気温差が7℃以上ある」「冷暖房の使用が多い」といった時期に起こりやすいのが特徴です。
暑い場所から寒い場所に行ったり来たりすると、体が驚いてしまい体温をうまく調整できなくなります。そのため、体がだるくなったり頭痛や肩こりなどの症状が起こります。
寒暖差疲労の原因
寒暖差疲労の主な原因は、急激な気温変化による自律神経の乱れです。
自律神経とは、私たちの体が無意識に働くように調整する神経のことで、心臓の動きや呼吸、消化などを自動でコントロールしています。自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、二つがバランスを保ちながら働いていますが、気温が急に変わるとそのバランスが崩れて体の不調を起こしてしまうのです。
たとえば、暑い外から冷房の効いた部屋に出入りするのは、その典型例といえます。暑い時期であっても、エアコンの効かせ過ぎには注意が必要です。
寒暖差疲労の症状
寒暖差疲労の主な症状は、体のだるさや頭痛、肩や首のこりです。他にも、めまいや関節痛、胃腸の不調、冷え性、アレルギー症状の悪化などがみられることも。人によって症状は違いますが、これらの不調があれば寒暖差疲労かもしれません。
そして、特に問題となっているのが、寒暖差疲労とコロナの症状が似ていることです。どちらの病気なのか見分けるポイントとして、コロナの場合は高熱や喉の痛みが出やすいという特徴があります。両者の見分け方については、次項で詳しく説明します。
「寒暖差疲労」と「コロナ」の見分け方
寒暖差疲労とコロナはの症状は似ているため、見分けるのが難しい場合があります。
しかし、寒暖差疲労は急激な気温変化で起こるので、以下のような状況下でみられる症状ならまずは寒暖差疲労を疑いましょう。
- 季節の変わり目
- エアコンの効いた部屋と暑い外を行き来するとき
- 朝晩と昼の気温差が大きいとき
寒暖差疲労疲労に当てはまるか自己チェックしよう
「自分の症状は寒暖差疲労なのか?」その判断ができるチェックリストを紹介します。
□ 暑さ・寒さが苦手。
□ エアコンが苦手。
□ 周りの人が暑いのに自分だけ寒い。長袖が常に手放せない。
□ 顔・全身がほてりやすい。
□ 温度差が大きいと頭痛・肩こりなどの症状が出る。
□ 熱中症や近い状態になったことがある。
□ 季節の変わり目に体調不良になる。
□ 冷え性がある。
□ 温度が一定の環境にいる時間が長い
□ 代謝が悪い。体がむくみやすい。引用元:日テレNEWS NNN
当てはまる項目が多いほど、寒暖差疲労の可能性が高くなります。
38℃以上の発熱やノドの痛みはコロナを疑う
寒暖差疲労の主な症状は、体のだるさや頭痛、肩や首のこりなどですが、コロナではそれ以外にも高熱やノドの痛み、咳などが出ることが多いです。特に38℃以上の発熱がみられるときにはコロナを疑い、早急に医療機関を受診してください。
高齢者の寒暖差疲労の予防策
寒暖差疲労の予防策は、気温や服装などに注意し急な気温変化が起きない環境をつくることです。
特に高齢者は体温を調整する力が弱くなっているため、寒暖差疲労を起こしやすくなっています。どの年齢においても予防策は必要ですが、高齢者にはより意識してもらいたいです。
部屋の温度に気を付ける
室温は夏場は26℃前後、冬場は18℃前後を保ち、急激な温度変化を避けましょう。湿度は40〜60%が適切です。
暑すぎず、寒過ぎない室温が理想ですが、高齢者は暑さに鈍感で寒さに敏感な傾向があります。エアコンの使用を拒む高齢者が多いため、周囲の人たちが室温に気を配ってください。
服装を工夫する
重ね着をしたり、外出時には上着を持参することで、気温の変化がある場所でも対応できるようにしましょう。首元、手首、足首を温かく保つと、寒さを感じにくくなります。
水をこまめに飲む
高齢者はノドの渇きを感じにくいため、水分を摂らず気付かずに脱水になっている場合があります。また、トイレ回数が増えるのが嫌で、わざと水分摂取を控える高齢者も…。
汗をかくことで体温を下げたり、血流を良くして疲労物質の排出を促すなど、水分は寒暖差疲労の予防に大きく影響します。
寒暖差疲労を予防するための水分摂取量は、体重1kgあたり30mLを目安としましょう。体重50kgの高齢者の場合、1日の目安は約1.5リットル(50 × 30mL = 1500mL)となります。
体を動かす
体を動かすと血流が良くなり、体の熱のバランスを取りやすくなるので、寒暖差にも対応しやすい体になります。
血液は、寒いときは体の中心部に多く流れて大切な臓器を温め、暑いときは皮膚の近くを流れて体内の熱を外に逃がします。
ストレッチや首を温めるのも、血流を良くしたり自律神経を整える効果があります。短い時間でかんたんにできる方法を紹介しますので、ぜひ習慣にしてください。
- 耳たぶストレッチ
「耳たぶの少し上を水平方向に5秒から10秒引っ張って離す」、これを数回繰り返したり、耳を上下に動かしたりしてほぐします。- 首温活
蒸しタオルや温熱シートを活用して、首と肩の境目あたりを温めると効果的。- タオルを使った首ストレッチ
後頭部にタオルをひっかけて、斜め上を向いてタオルを引っ張ります。この時、首はタオルと反対方向に力を込めた30秒キープ。今度は下を向いて、タオルを下に向かって30秒引っ張ります。引用元:日テレNEWS NNN
私の体験談:高齢者の寒暖差疲労の予防は難しい
私は特養で看護師として勤務しています。特養以外にも、病院や訪問看護などで多くの高齢者の看護・介護を行ってきましたが、寒暖差疲労の予防にはいつも苦慮してきました。
その経験をもとに、寒暖差疲労を起こさないために気を付けてほしいことや体験談をお伝えします。
予防策は高齢者にとって受け入れにくい
高齢者は、寒暖差疲労になっても自覚症状が乏しいため、発見が遅れがちです。そのため周囲のサポートが必須ですが、高齢者にとって予防策は受け入れにくい内容が多く、拒否されたり怒られることも…。
まず、室温は基本的にエアコンで調整しますが、高齢者の多くはエアコンが苦手です。
高齢者は暑さに鈍感なので、夏に30℃を超える部屋で過ごしている人も少なくありません。訪問看護で一人暮らしのお宅を訪問すると、部屋がびっくりするような暑さになっていることが多くありました。
施設でも、夏の期間だけ熱中症予防のためにショートステイを利用された方がいました。その方は一人暮らしですが、暑さを感じずエアコンを使わないため、熱中症にかかるのを心配したご家族の希望による利用でした。
ショートステイ中も度々エアコンを切ってしまうので、気付いた職員がまたエアコンを入れるという行為の繰り返し。職員にとっては快適な室温でも、本人は「寒い」と不満そうに話されていました。
逆に冬になると、高齢者は寒さに敏感なので暖房を効かせ過ぎたり、何枚も重ね着をして体に熱がこもってしまう方もいます。
そのままにはできないので、エアコンの温度や衣服の調整をしますが「寒いからやめて」と、断られることもしばしば。なんとか調整させてくれても、しばらくすると元に戻っていることがほとんどでした。
寒暖差予防が必要であることを、高齢者が理解して実行するのは難しいケースが多いため、周囲のサポートは絶対に必要です。たとえ必要性を理解してもらえなくても、強引に予防策を進めざるを得ない場合もあると感じています。
高齢者施設でコロナのクラスターが発生!
私が勤める特養では「コロナかもしれない」と看護師が判断したときには、コロナの抗原検査を行うように医師から指示を受けています。
寒暖差疲労とコロナを見分けるのは本当に難しく、コロナに感染していなくても微熱があったり、体のだるさを訴える高齢者は常にいます。しかし、その度に抗原検査するわけにもいかず悩ましいところです。
先日、感染源が分からないコロナ感染が発生しました。最初に発症したのは80代の方で、38℃台の発熱があり抗原検査をするとコロナ陽性。すぐに隔離対応したものの、次々に感染者が出てきて結果的にクラスターとなってしまいました。
感染者の多くは高熱が出ましたが、なかには無症状の方もいました。コロナの症状において、発熱は周囲の人が気付きやすいですが、ノドの痛みなど本人でないと分からないものも。自分では症状を上手く伝えられない高齢者が多いために、コロナ感染の発見が遅れてしまうことがあります。
対応に追われる職員は、みんな寒暖差疲労の状態に…
病院や施設ではコロナ感染された方の部屋に入る際に、職員は防護服、高性能マスク(N95マスクなど)、フェイスシールド、手袋などを身につける必要があります。
これらは着脱が大変なだけでなく、着用しているとすごく暑くて苦しいのです。防護服の内側はすぐに汗だくになり、高性能マスクによって常に息苦しい状態です。
普段と同じような動きをしていても、疲労は数倍に感じます。水分を摂る余裕がないうえ、防護服によってサウナ状態になるためいつも脱水状態。頭痛やめまいを起こすことも度々でした。
汗だくの状態で冷房の効いた詰所に戻ると、一気に体が冷えて寒くなり「これが寒暖差疲労か…」と実感しました。
コロナ感染が発生すると、感染対策に追われる職員は疲労困憊です。コロナが5類感染症に分類されて世間の感染対策はゆるくなっても、病院や施設でクラスターが発生したときの大変さは変わらず続いています。
まとめ
寒暖差疲労は、気温の急激な変化によって起こる体調不良のことで、体温の調整機能が低下している高齢者は特に起こしやすいため注意が必要です。
また、寒暖差疲労の症状がコロナと似ているため、どちらか見分けがつかず不安に思っている人も少なくありません。判断に困ったときは医療機関を受診してください。
寒暖差疲労の症状
体のだるさや頭痛、肩や首のこり。他にも、めまいや関節痛、胃腸の不調、冷え性、アレルギー症状の悪化など、人によってさまざま。
「季節の変わり目」「日中と夜間の気温差が7℃以上ある」「冷暖房の使用が多い」といった時期に起こりやすい。
コロナの症状
寒暖性疲労の症状以外に、高熱やノドの痛み、咳などが出ることが多い。特に38℃以上の発熱がみられるときにはコロナを疑う。
時期に関係なく起こる。
高齢者の寒暖差疲労の予防策
- 部屋の温度に気を付ける
- 服装を工夫する
- 水をこまめに飲む
- 体を動かす