とお考えの人もいるのではないでしょうか。
ウェザーニュースによると、2024年6月の平均気温は平年よりも高く、7月の梅雨明けからはさらに暑い日が続くと予想されています。
暑い日が続くことで心配される問題が熱中症です。
特に高齢者の場合、加齢による体の機能の変化によって熱中症になりやすく、熱中症で救急搬送された人の約半数が65歳以上の高齢者であることが分かっています。
さらに、体への負担・電気代の心配やこれまでの習慣によってエアコンを使わない高齢者も多く、説得しても使わないため、困っているご家族も多いです。
そのため、高齢者の暑さや熱中症への意識を変えて、エアコンによる暑さ対策を行うことが必要です。
今回はエアコンを使わない高齢者への対応方法や熱中症の症状について以下の内容を解説します。
- 高齢者の熱中症に関する特徴
- 高齢者が熱中症になりやすい理由
- 高齢者がエアコンを使わない理由
- 高齢者にエアコンを使ってもらうための方法
- 熱中症になった場合の症状とは?
- 熱中症の症状が出た場合の対応方法
エアコンを使うこと自体を不安に思われる高齢者やエアコンを使わない高齢の親を持つ人は、ぜひご覧ください。
高齢者の熱中症に関する3つの実態
高齢者の熱中症について、さまざまな調査によって主に3つの実態が明らかになっています。
具体的には以下のようになります。
熱中症で救急搬送された人の5割以上が65歳以上の高齢者
熱中症で救急搬送された人のうち、65歳以上の高齢者が5割以上占めています。
総務省「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」によると、救急搬送された人のうち、65歳以上の高齢者の割合が54.9%と半数以上であると公表されています。
また、救急搬送された約4割の人が自宅で発症していることも分かっており、自宅で熱中症になった高齢者も含まれていると考えられます。
気象庁の「向こう3ヶ月の天候の見通し」では今後も気温が上がり続けると予想されており、今後も気温の上昇により自宅などで熱中症を発症し、救急搬送される高齢者が増える可能性が高いと言えるでしょう。
夏場にエアコンを使っていない高齢者が一定数いる
代表的な暑さ対策であるエアコンを使っていない高齢者が一定数いることも実態の一つです。
三菱電機霧ヶ峰PR事務局の調査によると、夏場、積極的にエアコンを使っていない高齢者が13%いると公表されています。
また、Panasonicの独自調査では、20代から60代以上の男女に夏のエアコン利用に関する調査を行い、「我慢する」「使わない」人が約4割いることが分かりました。
さらに、60代以上の人は「体に悪いと思うから」「暑いと思わないから」などの理由でエアコンを使っていないことも明らかにされています。
今後も少子高齢化が進むと予想されています。
そのため、体への負担や機能の変化によって、エアコンを使わない高齢者が今後も増えると考えられるでしょう。
高齢の親にエアコンを使うよう促しても使わずに悩む人が6割以上いる
三菱電機霧ヶ峰PR事務局の独自調査によると、高齢の親にエアコンを使うよう促したことがある人は約7割おり、そのうちの6割以上の人はエアコンを使ってくれないため困っていることが分かりました。
以下のような理由によって、エアコンを積極的に使うことに消極的だからです。
- 電気代がもったいないから
- エアコンを使うほど暑くないから
- エアコンは寒いから
- エアコンは体に悪いから
- 昔はエアコンを使っていなかったから
さらに「高齢の親が夏場にエアコンを使わず自宅で過ごしている時に具合が悪くなったことがある」と答えた人が約1割います。
このように、高齢者はさまざまな理由からエアコンを使わないことによって、熱中症を発症する可能性が高いため、高齢の親にエアコンを使うよう促します。
しかし、促してもエアコンを使わないため、悩んでしまう家族が多いと考えられます。
高齢者が熱中症になりやすい3つの理由
高齢者は体の機能の変化によって、熱中症になりやすいと言われます。
では、どんな理由で高齢者は熱中症になりやすいのでしょうか。
高齢者が熱中症になりやすい3つの理由は以下のようになります。
体温調節がうまくできない
高齢者が熱中症になりやすい理由の一つに、体温調整がうまくできないことが挙げられます。
なぜなら、高齢になると体温を下げる機能や温度を感じる機能が低下するからです。
そもそも人間は外気温の上昇に伴い体温が上がるため、汗をかいて体温を下げる機能があります。
しかし、高齢になると体温を下げるための機能が低下し、汗をかくことがうまくできず、結果的に体温が上がり続けます。
また、高齢になると暑さを感じる機能も低下し、体温の上昇や体調の変化に気づきにくいです。
夏場の暑い時期にエアコンを使わず自宅で過ごす高齢者から以下のような話を聞くことができました。
このように、高齢者は体温を下げる機能・暑さを感じる機能が低下し、体温調節がうまくできないため、熱中症になりやすいとされています。
体の中の水分が保ちにくい
高齢者は体の中の水分が保ちにくいため、熱中症になりやすいです。
高齢になると同じ体重の若い人とくらべると、体の調子を維持するために必要な水分量が低下します。
さらに、後ほど解説しますが、高齢者は「喉が渇いた」と感じる機能が低下し、水分摂取の必要性を感じないため、体に必要な水分量が確保できなくなります。
そのため、体温が上昇しても汗をかけないことによって、体温が下がらず熱中症を発症することにつながります。
実際に熱中症で病院受診された高齢者から、以下のような話を聞きました。
このように、高齢になると、体の中の水分量を保てなくなるため、熱中症になりやすいとされています。
「喉が渇いた」と感じにくい
高齢になると「喉が渇いた」と感じにくいため、熱中症になりやすいです。
高齢になると、喉の渇きを感じる機能や飲み込みの機能が低下し、水分摂取の必要性を感じなくなるため、水分摂取量が低下します。
そのため、体内の水分量を保てず、体温調整がうまくできなくなり熱中症を発症しやすい状態となるでしょう。
普段から水分摂取量が少ない高齢者から、以下のような話を聞きました。
このように、「喉が渇いた」と感じる機能・飲み込みの機能が低下し、水分摂取量が少なくなるため、熱中症になりやすいと言われています。
高齢者がエアコンを使わない3つの理由
高齢者は加齢によって体の機能や感覚が変化するため、熱中症になるリスクが高くなるため注意が必要です。
しかし、さまざまな理由によって自らエアコンを使わない高齢者も多くいます。
高齢者がエアコンを使わない理由は、以下のようになります。
エアコンの風は体に悪いと思い込んでいる
エアコンを使わない高齢者は、エアコンの風は体に悪いと思い込んで使わない人もいます。
エアコンの風が冷たすぎるため体に悪いと思われているからです。
Panasonicの調査によると、60代以上のエアコンを使わない人に理由をきくと、「冷えすぎるから」という理由が多いです。
高齢になると暑さを感じにくくなり、基礎代謝も低下することによって、寒さに敏感になります。
実際に体を冷やした結果、体の痛みや乾燥による喉の痛みなど、さまざまな体調の変化を伴う場合もあるため、エアコンを使わない人もいます。
しかし、何もせず過ごしていると、熱中症を発症するリスクが高くなります。
そのため、体への負担を少なくできるように適切な温度・風量を設定し、エアコンを使いましょう。
購入費用や電気代がかかる
購入費用や電気代がかかることがネックとなり、エアコンを使わない高齢者も多いです。
Panasonicの調査によると、60代以上の高齢者がエアコンを使わない最も多い理由が「電気代がかかる」という理由でした。
また、内閣府「消費動向調査(令和5年12月実施分)」によると、2人以上のエアコンの普及率は91.5%と9割以上になっていますが、約1割の人はエアコンを使っていないことが分かっています。
エアコンが欲しいと思っても、相次ぐ物価上昇や電気代の値上げにより、エアコンの購入をあきらめている高齢者が数多くいると考えられます。
しかし、近年のエアコンは省エネ性能が高くなっており、点けたままする方が、余計な電力を使わず済むため、想像以上に電気代がかかりません。
さらに、暑さや熱中症から身を守ることができる価値を含めると、エアコンを使う方法は、コストパフォーマンスが高いと言えるでしょう。
必要性がないと思っている
エアコンを使わない高齢者の中には、エアコンを使うこと自体の必要性を感じていない人もいます。
エアコンの風に当たることを良くないと思っていることや扇風機など別の方法で十分だと思っているからです。
高齢者はエアコンの風に当たることによって、「寒い」と感じるため、体調を崩す不安がありエアコンを使う必要性を感じていない場合があります。
また、高齢者が子供の頃に、エアコンの風に当たるのは良くないと親から教えられ、扇風機など別の方法で暑さ対策をしてきた経験によって必要性を感じていない場合もあります。
そのため、体への負担や過去の経験からエアコンの必要性を感じていないため、エアコンを使わない高齢者も多いです。
高齢者にエアコンを使ってもらうための5つの方法
前章では体への負担や経済的な理由によってエアコンを使わない高齢者は熱中症のリスクが高いと解説しました。
しかし、熱中症になると場合によっては命に関わる事態につながります。
そのため、高齢者にエアコンを使ってもらうよう対応することが必要です。
高齢者にエアコンを使ってもらうための方法は以下のようになります。
今と昔の気温の違い・熱中症のリスクを理解してもらう
エアコンを使わない高齢者に、今と昔の気温の違いや熱中症のリスクについて理解してもらうように対応しましょう。
気象庁「日本の年平均気温」によると、2023年の平均気温は過去30年間の平均気温の基準値から約1.3度上昇し、長期的には100年あたり1.35度の割合で上昇していると公表しています。
つまり、高齢者の若い頃とくらべると、環境が変わったことにより日本国内の気温が上昇していると言えるでしょう。
さらに、今後も気温が上昇し続けると予想されているため、より熱中症のリスクが高くなると予想されます。
今と昔では環境が変わり気温が上昇していること、今後も気温が上がるため熱中症のリスクが高くなることを説明し、エアコンの導入に向けて意識を変えられるように対応しましょう。
今のエアコンの性能や省エネ効果を理解してもらう
エアコンを使わない高齢者は経済的な理由や体への負担を考え、エアコンを使わない人がいます。
そのような場合、今のエアコンの性能や省エネ効果を理解してもらい、エアコンを使うように説明する方法もあります。
多くの高齢者の一部には、エアコンの風は体に悪いと誤解している人がいます。
また、古いエアコンを使い続けている場合や、頻繁にオン・オフを繰り返し、多くの電力を消費していることにより、電気代が高くついている人もいるでしょう。
しかし、最近のエアコンは自動制御で風力や風の温度を調節できる機能が搭載されており、効率的にエアコンを使えるよう省エネ性能が高くなっています。
そのため、体への負担や経済的な負担を少なくエアコンを使うことができます。
熱中症対策の一環で高齢の親にエアコンを設置した人から、以下のような話を聞きました。
経済的な理由や体への負担を理由にエアコンを使わない高齢者には、エアコンの性能や省エネ効果によって、どのようなメリットがあるのか理解してもらえるように伝えましょう。
本人と家族が室温を気にする習慣をつける
本人と家族が室温を気にする習慣を身につけることも一つの方法です。
室温を気にする習慣を身につけることによって、室温が高い状態が続いていることに気づいてもらえるからです。
エアコンを使わない高齢者は暑さを感じていても、実際どのぐらい暑いのか意識していない場合があるため、室温を気にする習慣を身につけることは効果的と言えるでしょう。
例えばデジタルの室温計を目につく場所に配置すると、現在の室温が何度になっているのか目で見て確認できます。
さらに、室温計の横に「エアコンをつける」「28度に設定する」「つけっぱなしにしよう」などの注意書きも並べて配置することにより、エアコンをつけるよう意識を向けることにつながります。
室温を気にする習慣を身につけようと協力した家族から、以下のような話を聞きました。
室温を気にする習慣を身につけることができるよう、家族も協力しましょう。
エアコンを点けたままで構わないことを伝える
高齢者の中にはエアコンを点けたままにすると、「体調を崩す」「電気代がかかる」と考えて使わない人もいます。
その場合、周囲の人が「エアコンをつけたままで構わない」ことをその都度伝えましょう。
例えば、かかりつけ医からエアコンをつけて過ごすように説明してもらう方法やメッセージを書いてもらい、目につく場所に貼り付ける方法があります。
さらに、経済的な理由でエアコンを使わない人には「エアコンは毎回消すよりつけっぱなしにする方が体調を崩さず、お財布にも優しい」と伝えることもエアコンへの意識を変える点において効果があります。
実際にエアコンを点けたままにしている高齢者から、以下のような話を聞きました。
そのため、周囲の人からエアコンをつけたままにするメリットについてその都度伝えましょう。
ポジティブな言葉をかける
高齢者にエアコンを使うように勧める際、ポジティブな言葉をかけることを意識しましょう。
勧める人・勧め方次第で、高齢者が前向きにエアコンを使うように考え直す可能性があるからです。
例えば、高齢者の子供から伝えるより、孫・高齢者の兄弟・医療や介護の専門家からエアコンを使うよう声をかけると、前向きに話を聞く場合があります。
また、エアコンを使うよう勧める際、以下のようなネガティブな伝え方をすると気乗りしないため、話すら聞かない場合があります。
しかし、以下のようなポジティブな伝え方をすると、前向きにエアコンを使うように考え直す可能性があります。
このように高齢者にエアコンを使うように勧める際、伝える人を選んだ上で、ポジティブな伝え方を意識しながら勧めましょう。
熱中症の症状と症状が出た場合の対処法
熱中症を未然に防ぐためには、エアコンなどを活用しながら暑さ対策を行うことが重要です。
しかし、暑さ対策をしても熱中症になる場合もあるため、熱中症の症状を知っておくことも必要です。
本章では、熱中症の症状と症状が出た場合の対応方法を解説します。
軽度の症状
軽度の熱中症の場合、以下のような症状が見られます。
- めまい・たちくらみ
- 部分的な熱性けいれん(手足の筋肉がつる・筋肉がピクピク動く・硬直する)
- 顔のほてり
熱中症の初期症状では体温の上昇が伴われず、熱中症と気づかない場合もあります。
実際に熱中症を発症した高齢者から、以下のような話を聞きました。
上記の症状とあわせて、周囲の気温や湿度などの環境・汗をかいているかどうかなども確認しましょう
重度の症状
より重度の熱中症の場合、以下のような症状が見られます。
- 倦怠感
- 吐き気
- 頭痛
- 力が入りづらくなりぐったりしている
- 汗がとまらない・汗をかいていない
- 体の表面が熱い
上記の症状にあわせて、呼びかけへの反応がおかしい・反応しないといった意識状態の場合、重症度は非常に高いと考えられます。
そのため、すぐに救急車を呼び、病院で治療するようにしましょう。
熱中症の症状が出たら水分摂取と体を冷やすことを最優先
高齢者に熱中症の症状が出た場合、水分摂取と体を冷やすことを最優先しましょう。
体温の上昇を抑えきれず、熱中症の症状が悪化するからです。
まずは、以下の対応を行いましょう。
- エアコンの効いた部屋など涼しい環境で静養する
- 冷たい水やスポーツドリンクなどで水分を補給する
- 衣類を脱がせる・ズボンのベルトを緩める
さらに、首・脇の下・足の付け根など太い血管が通る部分を冷やすと、より体温を下げることができます。
実際に熱中症で救急搬送された高齢者から、以下のような話を聞きました。
このように、症状や意識状態によって、病院での治療が必要となります。
そのため、熱中症に気づいた際は最優先で水分摂取や体を冷やし、状態次第では病院へ受診しましょう。
まとめ
今回はエアコンを使わない高齢者への対応方法や熱中症の症状を中心に解説しました。
日本国内の夏場における平均気温は年々上昇すると予想されており、現在でも30度以上の猛暑日が続く場合もあるため、エアコンによる暑さ対策は必須と言えるでしょう。
しかし、体の機能の変化・体への負担・経済的な理由などによって、エアコンを使わないため、高齢者は熱中症を発症しやすいとされています。
そのため、高齢者がエアコンを使ってもらえるよう理解を得るためには、家族や周囲の人の協力を得ながら、関わり方を工夫しましょう。
また、万が一の状況に備えて、熱中症の症状や適切な対処法を理解しておきましょう。
今回は最後までご覧いただきありがとうございました。