在宅介護で寝不足になり、疲労困憊している方も多いのではないのでしょうか。
今回は介護福祉士の資格をもつ筆者が、高齢者が夜中に起きる原因や、認知症との関係とその対策について詳しく解説していきます。
「睡眠」と介護の関係とは
「睡眠」は心身の健康を維持するために必要不可欠となっています。
「エリエール」ブランドの大人用紙おむつ「アテント」を展開する大王製紙株式会社が行った「睡眠と介護」の調査結果によると、生活の質の向上に不可欠なもの、介護者、被介護者、一般層、どの層でも一番多かったのは、「睡眠」であることがわかりました。
生活の質とは、睡眠のほかに食事や運動、人間関係があげられています。寝不足になってしまうと、日常生活に大きなストレスがかかってしまうことが理解できます。
またこの調査で、7割以上が「介護が原因で1回以上起きている」ことが明らかになっています。介護をする上では、夜間の対応ほど、苦しいものはありません。
寝不足は、生活の質(QOL)に直結しているので、判断能力の低下などから、最悪の場合、虐待につながるケースもあります。
ここでは夜中に起きる原因と対策をお伝えしていきます。
夜間に起きるおもな原因
トイレに起きるとき
高齢になると、排泄機能が低下し、膀胱で貯めておける尿の量が減少することで、トイレに行く頻度が増えてしまいます。
在宅介護での、トイレの夜間の付き添いは介護者にとっても大きな負担になります。
認知症の症状との関係
次に夜間に眠れないことは、認知症の症状と関係があるのでしょうか?
5つの症状を挙げながら、睡眠との関係について詳しく解説していきます。
見当識障害
いつ?どこで?誰と?という認識が薄くなっていく症状の、見当識障害。
この症状があると、夜なのか?昼なのか?の区別もつきにくくなり、夜間に眠れないことにつながっていきます。
これは認知症の主な症状である、中核症状にあたります。
家にいるのに、帰りたがろうとする。夜中なのにご飯の用意をしようとするなど。
場所や時間の区別がつかなくなり、夜間に徘徊することにもつながります。
記憶障害
記憶障害も、見当識障害と同じように中核症状のひとつに挙げられます。
記憶障害は、過去の出来事と現実の区別がつかなくなり、まさに今起きていることと感じ、怒りや不安を強烈に感じてしまいます。
入眠時に生じる負の感情は、睡眠障害につながります。
認知症の方は、年を取っても今日起きたことのように感じているのです。
幻覚や幻聴
幻覚や幻聴は、認知症のBPSDと呼ばれる周辺症状の心理的症状として挙げられます。
幻覚
- 小さなごみが虫のように見えるなど
幻聴
- いないはずの子どもの声が聞こる
- 自分の悪口が聞こえるなど
幻覚や幻聴の症状がみられると、興奮状態になり、睡眠障害につながります。
対応としては、一緒に見に行くなどして近づくと見えなくなる場合があります。幻聴では、話をしていくと聞こえなくなることがあります。
こうした症状は、BPSDの影響だけでなく、薬の副作用や環境の変化で生じることもあるので理解が必要となってきます。
抑うつ症状
抑うつ症状も、BPSDといわれる周辺症状にはいります。
抑うつの症状も、睡眠障害の原因の一つと言われています。
抑うつ症状がみられるときは、否定せずに本人の気持ちを受け止めましょう。
こうした認知症の症状があることを理解したうえで、夜間に眠れない本人の気持ちに寄り添うかかわりが大切です。
夜間せん妄
夜間せん妄とは、意識に障害を感じている状態で、話のつじつまが合わなかったり、現実にないものが見えたりする症状があります。
認知症のおもな症状とは異なりますが、認知症の方によくみられる症状のひとつです。
昼間は問題なく落ち着いている方が、夜間になると豹変したように興奮状態になることがあります。
翌日になると夜間のことを覚えていない方も多いです。
このようにせん妄の症状は、意識に障害がある状態です。介護をするうえではこういう症状だと理解し、否定せずに優しい声掛けが大切です。
環境の変化による精神的不安や、便秘などが原因のときもあります。
そのほかの原因
では、そのほかに考えられる原因についても解説していきます。
日中の活動量が少ない
日中の活動量や、昼寝などにより、夜覚醒してしまうときがあります。
体内時計の乱れ
昼夜逆転を引き起こすきっかけとなる、体内時計の乱れ。体内にはメラトニンと呼ばれる、睡眠ホルモンがあります。
メラトニンの働きは、日光の光を浴びることで分泌が抑えられ、身体が覚醒していき、目覚めてから14~16時間後に再び分泌が高まり、入眠リズムに入っていきます。
このメラトニンは加齢とともに減少していくと言われ、体内時計の働きも弱まっていることが考えられます。
環境の影響
新しい環境などにより、不安感が高まり、寝つきが悪くなることや睡眠の質が低下してしまいます。
具体的な解決策
こうした原因をふまえ、寝不足になるときの具体的な解決策7つをご紹介していきます。
規則正しい生活を心がける
日中の活動量を増やしたり、日中に横になる時間を減らしたりして、できるだけ規則正しい生活をしていきましょう。昼間に日光の光を浴びると、メラトニンの分泌が抑えられ、活動的になります。
日中は無理のない程度で散歩をする、新聞や雑誌を読む、手先を使った趣味をみつけるなど、できることをみつけましょう
環境を整える
- 間接照明を使用する
- 室温は適温に調整する
- ブルーライトを避ける
寝る前は間接照明などを使用し、明るすぎる光はなるべく避けるようにしましょう。
寝室が寒すぎたり、暑すぎたりすると、目が覚める原因となります。室温は本人の適温に調節しましょう。
テレビなどのブルーライトも、寝つきが悪くなる原因となるので入眠前は避けるようにしてみてください。
リラックスできることをする
眠れないときにはハンドマッサージを行ったり、暖かい飲み物を飲んだりして、リラックスできることをやってみましょう。
ゆったりとしたかかわりが、安心感になり、入眠につながっていきます。
トイレに起きるとき
解決策としては以下の3つがあげられます。
- ポータブルトイレの活用
- 紙おむつの検討
- 水分補給のバランス
ポータブルトイレについては、こちらで詳しく解説しています。
紙おむつは、本人に抵抗感があると難しいため、よく相談して決めていくことが大切です。
水分補給は大切ですが、寝る前はコップ1杯にとどめておくなど、バランスが重要です。
家族とのかかわり方
本人の話を聞く時間を作ってみましょう。否定せずに、本人の気持ちを受け止めるかかわりが大切です。
ゆっくり時間をかけるものだと割り切って、できるときにしていくことと、心にゆとりが生まれてきます。
専門家に相談
介護者も、限界を感じる前にケアマネージャーなどの専門家に相談してみましょう。独りではけっして解決できません。
薬物療法
精神薬や睡眠薬などの薬物も使用しながら、本人と介護者にとって良い選択を見つけていきましょう。かかりつけ医に気軽に相談してみてください。
まとめ
在宅介護における寝不足は、介護者にとっても日常生活を送るうえで重大なリスクになってきます。
夜間に起きる原因はいくつもあります。認知症の症状だけでなく様々な要因が重なって、眠れないという状態を引き起こしていることを十分に理解しましょう。
症状や原因を理解したうえで、眠れない本人の気持ちに寄り添うことが大切です。
そうは言っても、介護者の寝不足も日常生活に悪影響を及ぼす際には、福祉・介護の国家資格取得者が全ての案件を監修している地域介護相談センター 近所のよしみまでまずは0120-110-512まで無料相談してみてください。
介護者と本人がストレスなく、日常生活を送れるように解決策を見つけていきましょう。