親の介護に限界を感じたり、親のひとり暮らしに限界を感じてくると、老人ホームを探しはじめるご家族は多いのではないでしょうか?
たとえば、
- 親の認知症の進行によって、徘徊をしてしまう
- 電子レンジで温め過ぎてボヤ騒ぎを起こしてしまった
- 夏なのに暖房がついていて脱水症状になるのではと心配になった
- 親から電話があり駆けつけると、お風呂場で転んでいて、骨折をしていた
こうしたさまざまな出来事によって、ご家族が親の老人ホームを検討しはじめることが多いのではないでしょうか。
ほかにもさまざまな理由はあると思いますが、なんらかの出来事がきっかけとなり、老人ホーム探しは始まります。
ご家族が老人ホームを探しはじめると、まずはインターネットで自宅近くの老人ホームを探すのではないでしょうか?
そして、老人ホームのホームページを開いて、施設の特徴や概要、料金などを調べることでしょう。
たとえば、
- そもそも老人ホームでは何をしてくれるのか
- 老人ホームでの暮らしはどんな暮らしか
- 老人ホームにスタッフはどれくらい人数がいるのか
- 老人ホームの費用は毎月どれくらいかかるのか
こうした内容を具体的に調べるのではないでしょうか。
そのなかで気になるポイントとして、費用は特に気になるポイントではないでしょうか?
そこで今日の記事では、
老人ホームの費用の中でも、『入居金』あるいは『前払金』という費用項目について詳しくご説明いたします。
老人ホームの料金に関して
インターネットで『老人ホーム』を検索してみると
- 入居金 0円
- 入居金 1,000万円
などの表現で表記しているホームページもあります。
ほかにも料金表を確認すると、入居金は480万円と記載してある老人ホームなどもあり、記載の仕方も老人ホームによって異なります。
また、
- 初期費用
- 均等償却
- 60か月(5年)で償却
- 敷金
- 月額利用料
- 共益費
- 管理費
- 厨房管理費
- 介護保険料の1割負担分
など、入居金以外にも多種多様の表記があることが確認できるでしょう。
老人ホームに支払う費用は、大きく分けると、
- 老人ホームに入居する際あるいは入居する前に支払う費用
- 老人ホームに入居後に施設に毎月支払う費用
の2種類にわけることができます。
この2種類のなかでも、この記事で紹介する『入居金』あるいは『前払金』に関しては、
老人ホームに入居する際あるいは入居する前に支払う費用
に該当します。
ですから、施設に入居金あるいは前払金を支払うタイミングにおいては、入居する際あるいは入居する前になります。
入居金や前払金とは
入居金や前払金は、老人ホームに入居する際あるいは入居する前に支払う費用ということは、前述で述べた通りです。
ただし、入居金を償却するタイミングやどれくらい償却されていくかの仕組みに関しては、老人ホームごとで異なります。
この入居金の償却をするシステムが、老人ホームの職員から説明を受けてもご家族が混乱してしまう要因ではないかと私は思います。
では、入居金の説明をしたいのですが、そもそも『償却』を理解できないと、入居金を把握するのが難しいので、そこから説明をします。
老人ホームにおける償却の意味とは
老人ホームにおける『償却』の意味は、
施設が決めたルールで費用を徴収する
という意味です。
たとえば、
老人ホームのルールとして、
- 入居金は720万円です。
- 入居金は入居する日までに支払い、1回きりの支払いとします。支払いがない場合は、入居できません。
- 入居した日を基準として、入居した日から1か月ごとに12万円を入居金から徴収します。
- 入居金を③に従い、全額徴収した場合は、再度、支払いを依頼することはありません。
- 老人ホームを退去した際に、入居金を徴収しきれなかった分は、退去と同時に返金します。
上記のように、実はすべての老人ホームでご家族や親が老人ホームに支払う費用に関してルールを決めています。
ちなみに、このルールを記載してある書面は、『契約書』あるいは『重要事項説明書』ということになります。
ただし、その2点を説明されるのも入居の際のみになることもありますから、老人ホームのルールを理解しているご家族も少ないと私は思います。
話を戻しますが、『償却』に関しては、上記の老人ホームのルールで表すと、③の部分にあたります。
このように、入居金から、1か月ごとに徴収していくということですから、入居金あるいは前払金は一種の『預り金』 と捉えることもできます。
たとえば、
入居金720万円で、1か月ごとに12万円を徴収されるとした場合
720万円 ÷ 12万円 = 60か月
という式が成り立ちますよね。
ですから、入居金は親が入居した基準として、60か月で全て償却してしまうということになります。
ですから、24か月で親が亡くなってしまい退去した場合は、
720万円 ― ( 12万円 × 24か月 )
= 720万円 ― 288万円
= 432万円
このような式が成り立ちます。
よって、288万円は、老人ホームに入居していたので徴収されてしまいますが、退去すると、老人ホームには入居しなかった期間が36か月分あります。
それを計算すると、上記の金額である432万円ということになり、退去後に返却される金額ということになります。この式の場合、
償却金というのは、288万円
償却期間というのは、24か月
未償却金あるいは返還金というのは、432万円
未償却金というのは、36か月
このようになります。
上記の文言も、契約書や重要事項説明書の説明を老人ホームの職員から受ける際に、普通に出てくる言葉だと思います。覚えておくとスムーズに話を聞くことができると思います。
この『償却』を理解できないと、なかなか入居金や前払金を理解することは難しいです。
そして、老人ホームのルールを施設ごとに理解できないと、入居金を理解することはさらに難しいです。
ここまでが、『償却』の話です。
また、老人ホームにおける償却ついては、種類があり、その種類は2種類あります。
それは、『初期償却』と『均等償却』の2種類です。
これらは、全く別の償却方法をと言えます。
初期償却と均等償却とは
初期償却と均等償却を簡単に言うとしたら、
初期償却は、入居と同時に、老人ホームがご家族から預かったお金のうち、老人ホームが決めた金額を入居と同時に償却することを言います。
均等償却は、入居したのちに、ご家族から預かったお金のうち、老人ホームが決めた金額を毎月、償却することを言います。
前述で述べた通り、ご家族が老人ホームに預けたお金のことを『入居金』あるいは『前払い金』というのは、もうここまでくればわかりますよね。
それでは、詳しく解説していきましょう。
初期償却とは
親が老人ホームに入居した際、老人ホームに支払った入居金のうち、
老人ホームが決めたルールの金額を、親が入居したのと同時に老人ホームが費用を償却することをいいます。
具体的な例でいうと、
親が老人ホームに入居した際、老人ホームに入居金1,200万円を支払ったとします。老人ホームのルールとして、入居するまでに入居金を支払い、入居したのと同時に5割を償却するというルールがあったと仮定した場合は、親が入居したのと同時に老人ホームが600万円(1,200万円 × 5割 = 600万円)を償却する。
ということになります。
実際、有料老人ホームにおける初期償却というのは、3割以下という設定をルールとして設けている老人ホームが多いように思います。
ですが、老人ホームごとで決めているルールですから、初期償却は、入居前に必ず、金額を確認する必要があるということを忘れないでください。また、パンフレッやインターネットにも記載されています。
しかし、小さい字で記載されていることもありますから、入居金あるいは前払い金の記載を発見した際は、初期償却は老人ホームごとで違いますので、しっかりと老人ホームに確認することが大事になります。
均等償却とは
親が老人ホームに入居し、入居金を支払い、老人ホームが決めたルールに従い、入居金から毎月老人ホームが費用を償却することをいいます。
具体的な例でいうと、
親が老人ホームに入居した際、老人ホームに入居金1,200万円を支払ったとします。老人ホームが決めたルールに従い、入居日を基準日として、1か月を経過するごとに、入居金から毎月20万円を償却する。
というルールがあった場合は、
1,200万円の入居金から、毎月20万円の費用を老人ホームが償却することになります。
償却していくと、60か月(5年)で入居金がすべて償却されるということになりますね。
こちらも初期償却と同じように、老人ホームごとにルールを決めることができるため、老人ホームごとでルールはバラバラです。均等償却における金額も期間も決めることができるので、初期償却を聞く際に、均等償却についても老人ホームごとで確認することを勧めます。
これで、初期償却と均等償却については理解できたと思います。
また、入居金や前払い金は、預かり金として捉えると理解しやすいというのが把握できてきたのではないでしょうか。
なぜここまで、入居金や前払い金に関して、老人ホームに確認をするようにと記載しているかというと、単純に理解しづらいポイントであるからです。
そして、お金に関する問題ですから、入居するにしても退去するにしてもつきまとう問題なので、しっかりと確認し、理解したうえで老人ホームに入居することで、「こんなはずではなかった。」ということを防ぐことができます。
入居金は預かり金と捉えていいのか
もちろん、厳密に言えば預かり金ではないのですが、預かり金として捉えると、みなさんは理解しやすいと思います。
それでは、入居金の具体的な説明をしてみましょう。老人ホームのパンフレットやインターネットで老人ホームを検索して、入居金のある施設の料金を確認してみてください。
このような文言は記載されていないでしょうか?
- 入居者の想定居住期間(72か月)に基づいたお金です。
- 入居金は、一般居室、共用施設等を利用するために発生する家賃相当額(非課税)を、想定居住期間に基づいて計算した金額です。想定居住期間を超えて入居を継続されたとしても、追加費用はございません。
上記のような説明が記載されていないでしょうか?
どういう意味だろう?と思ってしまいませんか?
想定居住期間と言われても、意味がわかりますか?すぐにはわかりませんよね。
簡単にいうと、
老人ホーム側で決めた、入居者が老人ホームに入居し、住み続けるであろう期間を想定居住期間といいます。
初期償却や均等償却や想定居住期間などの聞きなれない単語が出てきます。少し難しいですよね。
頭が整理されずに混乱されてしまうかたが多いので、預かり金と認識したほうが理解しやすいということなのです。
入居金についての理解も深まったところで、老人ホームの入居金がどのように償却されるかを記載します。
入居金の償却方法
入居金の償却方法は、主に2種類です。
- 初期償却+均等償却
- 均等償却
主にはこの2種類の内、いずれかを採用し、入居金を償却している老人ホームが多いです。
初期償却+均等償却の場合
入居金は、入居時に老人ホームに預けるお金ですよね。
それでは、900万円を預けたとしましょう。ここから入居時に、初期償却として30%を償却するという老人ホームのルールだった場合は、
入居金 初期償却率 初期償却金
900万円 × 30 % = 270万円
ということになりますから、
入居金 初期償却金 入居金の残金
900万円 ― 270万円 = 630万円
という式が成り立ちます。
ここで答えがでた630万円の入居金の残金を老人ホームのルールとして、『84か月(7年)で均等償却する』という記載があった場合は、
630万円 ÷ 84か月 = 7万5千円
という式が成り立つので、
均等償却にて毎月引かれる金額は、75,000円となり、この金額を均等償却金と言います。
このような償却方法で、入居金を設定している老人ホームは、初期償却も均等償却も設定しているということになります。
均等償却のみの場合
この場合は、初期償却がないということです。ですから、入居金をそのまま老人ホームの決めたルールに従い、均等償却をおこなっていくという仕組みで、入居金を償却していきます。
結論
入居金は、入居時に支払う費用であり、老人ホームのルールに従って償却される
ということになります。
入居金に関しては、この2点を把握できていれば、ある程度は理解できると思います。
入居金の注意事項について
入居金や前払い金は高額な可能性があるため、2021年4月1日以降の全施設にむけて、保全措置をおこなうことが義務化となりました。
たとえば、老人ホームが仮に倒産してしまった場合に、入居金が返ってこないという事態が起きると問題ですよね。
そうしたことを防ぐために、入居金や前払い金の類は保全措置をおこなうことが義務化となりました。ですから、老人ホームを見学し、入居金を支払って老人ホームに入居する場合は、「保全措置をされていますか?」と聞いてみてください。
「準備中です。」
「保全措置はしていないです。」
などの返答が老人ホームからあった場合は、要注意だと思ってください。
さいごに
いかがでしたか?
入居金と一言で言っても、なかなか複雑な文言だと思いませんか?
西東京市に事務所を構える紹介会社の『近所のよしみ』では、新入社員が入社した際に、研修で必ず教える項目ですが、完全に理解するまでに時間がかかります。
見学時や入居前にしっかり聞かないとなかなか把握しづらいと思います。
「細かいことはわからないから、入居金を支払わないで入居すれば良いや」
とこの記事を読んで思ったかたもいらっしゃると思いますが入居金や前払い金を支払って入居したほうがメリットを受けられる可能性もあるのです。
ですから、入居金を支払わないで入居するという決断をするのではなく、まずは入居金を理解したうえで、支払い方のプランを決めることをおすすめします。
親の老人ホーム探しのことでご家族から相談を受けた場合は、こうした内容も弊社では丁寧に説明をします。ご家族が安心して老人ホームを探せるように、ご家族と3時間話をすることもあります。それでも、老人ホームを選ぶというのは実はとても複雑なことなので、
「一人では無理だ!」
と感じたら、お気軽に『近所のよしみ』を頼ってください。
本物のプロである老人ホーム探しのスタッフがしっかりとお客様に寄り添い、対面で納得いくまで説明をし、安心できる老人ホームを提案させていただきます。