はじめに、この記事では、
・老人ホームを転居したいがどうしたらいいか
・老人ホーム選びで必要なこと
・家から近いという理由で、入居する老人ホームを選んでいいのか
主に上記の3点について考えていただきたく、記事を掲載します。
事例をもとに、記事を書きますので、少しでも皆様の役に立てば幸いです。
それでは、続きを記載します。
相談者の主な相談内容
練馬区にお住いの方からの相談です。
「すでに有料老人ホームに入居しているが、転居したい。」という内容でした。
話をお伺いすると、Aさんのお父さまは現在、施設に入居しており6か月ほどが経過しているとのことでした。
「入居しているということは、入居金も払っているだろうし、それであれば転居しなくても良いのでは?お金がもったいないのでは?」と思ったが話を聞き続けました。
聞き続けると、内容はこうでした。
話を聞くことで見えてきた転居希望の背景
Aさんは、お父さまが自宅でひとり暮らしをしているときに、担当だったケアマネージャーの紹介で有料老人ホームを紹介している会社を紹介されました。
そこで施設検討を始めたそうです。
いくつか紹介されたが、3件の施設を見て、1つの施設へ入居を決意しました。
入居を決定した理由は、一番は『家が近い』というのが理由でした。
ケアマネージャーや紹介会社の方から、
・家が近い方が何かと便利
・非常時はすぐに駆け付けられる
・お父さまへの面会もしやすい
などのことを言われてプッシュされたこともあり、入居を決めたそうです。
施設もきれいで、まだ新築に近かったので「ここなら良いかな。」と決断しました。
お父さまのご自宅を売却し、入居金(入居するときに老人ホームに支払うお金のこと)にあてて契約書にサインしたのが経緯でした。
私は、聞きました。
「その当時は、不安要素はなかったですか?」
Aさんは答えました。
「新築だったので、入居者もまだそこまで多くないため、どんな方が入居するのか、父が馴染めるのか心配だった。そもそも、何を基準にして決めればいいのかよくわからなかったが、最後はケアマネージャーや紹介会社の方を信用して決断しました。」
私は話を聞いて、「老人ホームを理解しないまま、メリットとデメリットがわからず決めてしまった点もあるのかな」と思いました。
おそらく、老人ホームの施設をなんとなく見学し、ケアマネージャーと紹介会社のことを信用したのが結果的に失敗した原因だなと感じました。
それと同時に、適当に施設を紹介する紹介会社は、人を不幸にするのだと改めて感じました。
私はその後、支援を開始しました。
どんな支援をしたかというと、まずは話を聞くのと同時に有料老人ホームのことを説明しました。時間にすると、2時間30分以上はAさんと向き合いました。
『相談者の話を聞く』という支援
そもそもなぜ転居をしたいのかを伺うと、Aさんはこう答えました。
「父は施設にいても楽しくないようで、面会のたびにテレビを観ているとこしか見ていない。昨日は何したのか聞いても、なにもしていないと答えるだけで、どこか覇気がない様子で、つまらなさそうにしている。」これが転居したい理由でした。
私は、転居理由を聞いたうえで、他にもいろいろなことを聞いたり話をしたりしました。
実際にどんなことを話したかというと、
・有料老人ホームの種類や特徴の違い
介護付有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの違いについてや、介護保険証の利用方法の違いや、何を基準にして両方の老人ホームは運営しているかなど話をしました。
・老人ホームとは、そもそもどんなところか
老人ホームというのは、介護をしてくれるところではあるが、みなさんが考えるような介護をしないこともあります。身体に触れたり、できないことをお手伝いするような支援ではなく、『見守り』『声かけ』と呼んでいる支援方法もあります。これができていない老人ホームや介護施設が多いです。
・お父さまは、どんな方だったか
いままで、どんな仕事をしてきたのか。どんな性格だったのか。好きなことは何だったのか。嫌いなことは何だったか。どんな生活をしたいと望んでいるのか。しっかりしていたときに、こんな生活をしたいなどの希望は言っていなかったか。
・Aさんへの聞き取り
Aさんの家族構成や、お父さまにはどんな生活を送ってほしいと思っているか。何か希望はあるか。看取り介護は希望するか。延命は希望するか。胃ろうの増設は希望するか。Aさんはどこまでお父さまに関わりを持てるか。
このように、たくさんのことを話しながら、Aさんの話を聞き、どんな支援方法がAさんとお父さまに合っていて、どんな施設が良いのか絞り込む作業を行いました。
もちろん、Aさんは、老人ホームに種類や特徴があることを知りませんでした。
介護をどこまでおこなってもらえるものなのか理解されていなかった。
老人ホームを選ぶ際には、知識と経験はとても重要です。
テスト勉強する際に、出題範囲やどこがテストに出るかわかっていれば、テストで良い点が取れますよね。
それと同じです。老人ホームを選ぶ際に良い選択をしたい場合は、そもそも老人ホームとは何かをわかっていないと、良い選択をするのは難しいのです。
さらに、私はAさんと話をしたのちに、いまお父さまが入居している施設に電話をしました。
入居されてからの様子を聞き、日々どのように過ごしているのかを確認しました。
ほかにも、食事の量はどうなのか。体調はどうか。どんな生活をしながら、お父さまは一日一日を過ごしているかを聞き取りました。
余談ですが、もちろん、施設からは嫌がられました。
老人ホームというところは閉鎖的な施設もまだまだ存在しますから、いろいろ知られるのを嫌う施設もあります。
何か探られているように思うのでしょう。
実際にプロは、質問をしながら受け答えを確認し、この施設はどういった施設かを読み取ることができます。
ですから、施設の内情が少しずつ見えてくるのです。
たとえば、Aさんからはお父様がもともと食事を楽しむことが好きな方で、外食をされることも好きだと伺いました。
Aさんが子どものころから大人になっても一緒によく外食をされていたそうです。
和食よりも洋食が好きだと聞いていました。
私が施設に連絡した際には、お食事は残すこともあり、8割食べるのが基準とのこと。
食事も水分も摂取はしているので、施設側としてもとくに問題にしていない様子でした。
Aさんにそのことを尋ねると、施設からもその話は聞いていて、老人ホームに入居して意欲が低下した点もあり、「食は細くなっていくものです。」というような説明を受けたとのことです。
全く食べてない訳ではないので、Aさんも問題視していない様子でしたが、私は問題だと思いました。
考えてみてください。
いままで食事をしっかりと食べていた人が、急に食が細くなると思いますか?
私なら病気ではないのか?何が原因があるのではないか?などと心配になります。
ただ、今回は、別の問題があるのではないかと確信していました。
なぜそう思ったか。
私はその施設のことを知っていたからです。
何を知っていたかというと、
そもそも、食事のメニューは和食が中心であることを知っていたのです。
ですから、お父さまにとっては楽しみが欠けている施設ということになるのでしょう。
お父さまにとっては、食事は、ひとつの楽しみであり、家族と食事をする楽しみを経験しており、良い経験が多かったのでしょう。
しかし、施設に入居し、その楽しみであった食事が楽しくないものへ変わってしまったので、食事を残す行動で、自分の気持ちを伝えてくれているのでした。
プロであれば、このサインに気付かないといけません。
もっというと、昔の人は、貧しい時代を生きた人も多く、そもそも食事を残すことを嫌う方が多い傾向があります。食事を残すことは、時代背景やお父さまがどう生きてきたかを捉えていれば、見抜けるポイントなのです。
ほかに、新規施設で見られる特徴として、入居させることで手いっぱいになり、レクリエーションなどの入居者への楽しみがおろそかになる施設が多く見受けられます。もちろんすべての施設ではありません。
しかし、こちらの施設はまさにその典型でした。レクリエーションなどの老人ホームの中での動きも少ない施設だったのです。
このように、お父さまやAさんの現状を確認しながら、Aさんにそのことをわかりやすく説明をし、Aさんに現状を把握してもらうことに努めました。
それを踏まえたうえで、新規施設は除外しました。
レクリエーションや体操などの動きのある施設で、食事は洋食が多めで、朝はパン食を選べる施設を提案しました。
ほかにも、色々なことも加味しましたが、最終的には、Aさんに決断いただくことになりました。
Aさんの自宅からは少し離れてしまったのですが、別の施設に決めて、転居をしました。
Aさんが自信をもって、自分の力で施設を選択させるということも私は大事にしています。
『家が近い老人ホームを選択する』
というのは、もちろんメリットもあります。
何かあった際や、施設から呼び出しの電話があった際にも駆け付けやすいことや、面会に行きやすいので「家が近い老人ホームは悪い」と決めつけているわけではありません。
『家が近い老人ホーム』が施設選択時の一番のポイントであれば、家から近い施設をもちろん選択するべきです。
おそらく、親には、楽しく幸せに生活できる老人ホームへ入居させたいという方が多いのではないでしょうか?
そうであれば、家が近いことを真っ先に大事なポイントとしてはいけないと私は思います。
施設によっては、毎食を厨房の電子レンジで温めただけで提供する施設もあれば、出汁からとって、こだわって食事を作る施設もあります。
365日3食。生きていれば毎日のことです。親にはおいしい食事を食べさせてあげたいと思うのであれば、食事をメインに施設選びをするのも良いでしょう。
ただ私は、親だけでなく、その親の周辺環境も考慮しながら、一番ベストな支援をおこなえる人が本当のプロの紹介会社だと思います。
ですから、老人ホームを選択する際のポイントを整理しながら、Aさんが選択しやすいように支援をします。
もし、老人ホームに入居させたはいいけど、転居しようか迷っていたり、
親のことよりも、私たちの行きやすさだけで施設を決めてしまい失敗したかもと思っていらっしゃったら、お気軽に『近所のよしみ』までご連絡してください。
紹介会社のプロのスタッフが親身に誠心誠意、支援をいたします。
※この記事・作品(漫画・物語)は相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。尚、登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。