老人ホームに入居する際に考えなくてはならない問題は、毎月の費用を払っていける施設なのかどうかということでしょう。
これは、誰しも想像がつくかと思います。
その際に、現在いくらの収入があるのか、収入がない場合は月の年金収入はいくらかなどを把握する必要があります。
ただ、どのように費用感を理解し、老人ホームを選定する必要があるのか詳しくわからないかたも多いと思います。
本日は、費用面をどのように把握をしながら選定していけば良いかを記事にしたいと思います。
- 老人ホームをこれから探すかた
- 入居前にどの程度資金を把握しないといけないのか不明なかた
- 老人ホームさがしはどこから手を付けたらいいか不明なかた
このような悩みをもっているかたにむけて、記事を記載します。
老人ホームの見学前にする準備とは
有料老人ホームに入居する際には、費用について考えざるを得ませんよね。
よって、はじめにしなければならないことは、
有料老人ホームなどの施設の知識をつけることでもなく、業界の情報や口コミを確認するのではなく、もちろん施設見学をすることでもありません。
有料老人ホームを探すうえで必要なことは、自分のおかれている状況を確認することです。
お金のことだけで言えば、自分の『施設生涯資産』『施設生涯支出』を把握することです。
施設生涯資産とは
施設生涯資産とは、私が勝手に作った言葉です。
どういったことかというと、たとえば、生涯賃金という言葉があります。
総務省統計局によると、
“人が就職してから退職するまでの期間にもらう賃金、賞与の総額です。”
引用:総務省統計局(16C-Q07 生涯賃金)
と記載してあります。
しかし、有料老人ホームに入居する場合に考えないといけないのは、資産です。
資産のなかでも『施設に入居する予定の親の現在の年齢から亡くなるまでの期間で得られる収入や預金などの資産価値のあるものの総額の資産』のことをいいます。
ここでは、そうしたものを施設生涯資産といいます。
施設生涯支出とは
施設生涯支出においても、私が勝手に作った造語です。
簡単に言えば、『施設に入居した日から現在の親の年齢から亡くなるまでの期間で発生する支出』のことを言います。
『施設生涯資産』『施設生涯支出』はなぜ大事なのか
具体的に何をしてほしいかというと、とても単純です。
- 現在の資産額
- 施設に入居後に得られる収入
- 現在抱えている支出(借金やローン)
- 施設入居後に発生する支出
費用において、この4点を明確にすることです。
ここを間違えると、有料老人ホームを選ぶには時間がかかることになります。
費用的にミスマッチな施設を見学して1日を無駄に過ごしてしまったり、入居した後に思ったよりも費用が発生し、せっかく入居してもすぐに退去しなければならないこともあります。
このようなことを未然に防ぐためにも、有料老人ホームを探すうえでは『施設生涯資産』『施設生涯支出』を把握することは非常に大事なことです。
『施設生涯資産』『施設生涯支出』を把握する方法
『施設生涯資産』『施設生涯支出』を把握することが大事だと理解できたとしても、実際にどうやって把握していけばいいのかがわからないと思います。
この章では把握の仕方をご説明します。
施設生涯資産の把握する方法
- 入居を検討している親の年齢
- 親の貯金額
- 親の年金額
- 親への支援金額
などの貯金や年金、仕送り金などを把握することです。
私たちは有料老人ホームを探すプロですから、不動産の不動産価値や入居検討している親の状態なども加味して検討しております。
しかし、なかなかそれらを把握するのは難しいです。
ですので、最低でもこの4つを把握することに努めましょう。
この4つを計算したのち、何歳で亡くなるか予定をたてます。
とはいえ、何歳で亡くなるのかは誰も予測ができません。
私たちプロは、入居者の状態を考慮して予定をたてることもありますが、ほとんどは100歳を基本として計画を立てます。
現代では、『100歳時代』と1度は耳にしたことがあると思いますが、平均寿命も延びており、100歳以上生きている方も増えてきました。
これも医療が発達したおかげでもありますが、その分生涯で発生する支出も増えているということに他なりません。
よって、予定をたてることが難しいのであれば100歳までとして予定を立てるようにしてください。
さて、実際に予定を立てたら貯金額から入居金にあてる費用を決めます。
次に、年金額と貯金額と支援金額を合計して、毎月に充てることのできる費用を計算します。
施設生涯支出の把握する方法
施設生涯資産を把握しないと、先には進みません。
数字に強いかたであれば、把握するのはそれほど苦ではないと思いますが、数字に慣れていない方にとっては、ここまでのステップだけでも大変な作業だったのではないでしょうか。
しかし、ここできちんと施設生涯資産を把握することが重要です。
施設生涯資産の把握が出来たら、ようやく有料老人ホーム探しを実際にスタートさせましょう。
インターネットで探したり、紹介会社へ連絡をしたり、ケアマネージャーに相談するかと思います。
有料老人ホームを探すときは、施設生涯資産を踏まえたうえで、
- 有料老人ホームに入居前に支払う入居金の費用
- 有料老人ホームに入居後に支払う月額の費用
などを把握しながら、探してください。
この2つの事項に加えて、住宅ローンや借金などがある場合は、それも含めたうえで検討をしてください。
このように、有料老人ホームに入居後に発生する支出である施設生涯支出を把握するには、
- 有料老人ホームに入居前に支払う入居金の費用
- 有料老人ホームに入居後に支払う月額の費用
- 住宅ローン
- 借金の有無
などを把握する必要があります。
私たちはプロとして他の支出も検討しますが、最低でも上記の4点だけは必ず施設生涯支出として把握する必要があります。
具体的な施設選びの事例
仮ですが、実際に施設の費用を想定し、いままで記載した内容を踏まえて施設を選んでみましょう。
親の施設生涯資産
- 親の年齢:85歳
- 貯金額:3,000万円
- 年金額:月15万円
- 親への支援金額:月5万円
親の施設生涯支出
- 施設に払う月額の費用:月20万円
- 施設に支払う入居金の費用:1,500万円
- 住宅ローン:0円
- 借金:0円
上記の場合であれば、親がたとえ100歳になったとしても施設生涯資産の貯金額が1,500万円を残して終末期をむかえていくことがわかるでしょう。
これはとても簡単に説明した具体的な例ですが、実際はもう少し複雑です。
有料老人ホームを検討した経験のあるかただとその大変さがわかると思います。
たとえば上記の具体例に、親が入居することを想定していますが、入居するのが父親だとしましょう。
母親は認知症もなく、元気に自宅で過ごしているとします。
たちまち、母親の生活面のことも加味しながら、父親の有料老人ホームを検討するということになります。
こうなると、母親にいくらのお金が毎月かかるのかということも加味しなければなりませんよね。
ほかにも、見学をして気に入った施設があり、いざ計算してみようと考えたときに、
親の施設生涯資産
- 親の年齢:85歳
- 貯金額:1,000万円
- 年金額:月15万円
- 親への支援金額:月3万円
親の施設生涯支出
- 施設に払う月額の費用:月20万円
- 施設に支払う入居金の費用:400万円
- 住宅ローン:0円
- 借金:0円
ということになる可能性も大いに考えられます。
この具体例では、わかりやすく説明するためにやさしい事例にしておりますが、実際はもっと複雑なのが現状です。
年金などの毎月の収入の重要性
施設生涯資産の内、毎月の収入源を把握することはとても重要です。
この額をしっかりと把握するためにも年金額を確認しておきましょう。
2ヶ月に1度のタイミングで通帳に振り込まれることが多いので、2ヶ月に1回の金額を2分の1にして、毎月の収入に計算しなおすことを忘れないようにしましょう。
また、親の年金で不明になることが多いのが、企業年金や厚生年金基金などの3階建てといわれる『私的年金』という部分の収入があるケースです。
ほかにも、障害年金や遺族年金を把握できていない家庭も私は経験してきました。
把握できないときは、必ず、各セクションに連絡をし、収入金額や収入がいつまで入金されるのかの期間を確認しましょう。
施設では、毎月ほぼ必ず費用が発生しますから、毎月の収入金額を間違えると、あとあと大変になります。
年金などの収入は少し面倒でも厳密に確認することをおすすめします。
中級者向けの老人ホームの探しかた
この章では、『施設生涯資産』『施設生涯支出』をある程度理解できた人で、ワンランク上の検討をしたい方だけ読んでください。
その考え方は『死後資産』『死後支出』という考え方です。
こちらにおいても、私が勝手に言っている造語です。
死後資産とは
『死後資産』とは、親が亡くなった後に得られる資産のことです。
相続財産もそうですが、保険で相続人などが得ることのできる収入や施設に入居後に返却される敷金や入居金のへ未償却部分の返却金などが、これに充当します。
死後支出とは
『死後支出』とは、親が亡くなった後に発生する支出のことです。
相続税や葬儀費用や住宅ローンなどの負債などがこれにあたります。
もちろん、相続人が自腹で支払うことをそもそも覚悟している場合は、死後支出は考えなくて良いですが、死後資産は関係ないでは済まされない場合もあります。
ですから、中級向けですが『死後資産』『死後支出』も考えておくといいでしょう。
さいごに
このように、『施設生涯資産』『施設生涯支出』を検討することは、費用面から有料老人ホームを探す際にはとても重要です。
わかりやすいように具体例も記載してみましたがいかがでしたか。
実際には、費用面だけでは有料老人ホームを選択することは難しいです。
本人の状態や施設の知識がないと入居できないにもかかわらず、施設見学をしているかたも多く見受けられます。
有料老人ホームを探すときは、ケアマネージャーや病院の相談員へ相談するのもいいのですが、プロである紹介会社へ依頼することをおすすめします。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。