老人ホームの職員から「お小遣い」と称し、金銭を要求されているという事例が起こっています。
例えば、防水シーツを使用しているはずなのに、尿でベッドが汚れてしまったと、クリーニング代を請求される。ご家族は入居時に持参しているにも関わらず、衣服をしまうための収納ケースを持参するように求められるなどです…。
私は介護職歴20年。現在、特別養護老人ホームにて生活相談員兼、現場サブリーダーに従事しています。また2017年から2022年の間の5年間、両親が同時に介護が必要になり、老人ホーム探しをした経験もあります。
実際の経験をもとに解説していきますので、皆さまのお役に立てれば幸いです。
この記事では冒頭のようなパターンに遭遇した場合の、対処方法や相談窓口をご案内します。
実際に介護現場で起きている事例なども絡めて、解説していきます。
これから老人ホームを探す方や今現在、このような不当な請求を受けている方の解決策を示します。
金銭を要求されるパターン3事例

- 職員から入居者へ個別に金銭を要求
- 契約にない諸経費を請求
- 介護施設運営会社を名乗る人からの電話
順番に解説していきましょう。
職員から入居者へ個別に金銭を要求

冒頭でも触れました。職員が軽度の認知症のある入居者に対して、「お金を貸してほしい」などと言って金銭を要求するケース。
場合によっては入居者からすすんで金銭を渡すケースもあります。

社内での異動や退職の際に、封筒に入れて感謝の手紙を添えて贈られる。
気持ちはとても嬉しいのですが、上司と相談し、丁重にお返しする。またはご本人には知られないようにご家族にそっとお返しする。

こう思われる方は周囲に黙って、もらってしまうのだと思います。
たとえ本人の意志であっても、認知症を患っている方から金銭をもらってしまうと経済的虐待とみなされてしまいます。
ほかにも職場環境のモラル低下が起こります。
「あの人が貰っているなら私も貰えるはず」とエスカレートしていくことがあります。
あとから「返せ」「周りの人にバラすぞ」などとご本人から脅迫めいたことを言われて、トラブルに発展しかねません。
ただでさえ認知症の方の症状として「物盗られ妄想」がある方もいるので、絶対に金銭のやり取りをしてはダメです。
契約にない諸経費を請求
大前提として老人ホームとの契約前に「重要事項説明書」や「サービス一覧表」を必ず確認しておきましょう。
入居費・月額利用料以外で請求される主な費用は以下になります。
- 光熱水費:施設により月額利用料に含まれる場合と、個別に請求される場合があります。
- レクリエーション費用:外出イベントや季節の行事などの参加費。
- 理美容費:訪問理容の会社と提携している老人ホームがほとんどのため、実費負担となります。
- 医療費:提携病院への通院。医療保険の自己負担分や訪問診療、薬代などが別途必要です。
冒頭のような悪質な請求は稀なケースです。

介護施設運営会社を名乗る人からの電話
これから老人ホームを探す方を狙った詐欺被害も発生しています。
介護施設運営会社を名乗る人から「市内に介護施設ができ、市内在住者のあなたに入居権がある」と電話がありました。




後日、弁護士を名乗る人から電話があり脅される事例です。

このような電話をもし、ご自身の高齢の親が受けてしまった場合、注意が必要です。
トラブルに合った場合にやること4ステップ
ここからが本題です。
実際に不審な金銭を要求された場合の、対処方法や相談窓口を4ステップで、順番に解説していきます。
①老人ホームの責任者に報告する
老人ホーム内に設けられている苦情相談窓口や施設長、生活相談員に事実を報告します。
その際に要求された日時や場所、職員の氏名、要求内容を詳細に記録しておくことが大切です。
また可能であれば、会話を録音しておくことをおすすめします。スマートフォンの録音アプリなどを活用すれば追加費用なしで対応できます。
音声の記録は重要な証拠となるでしょう。
②行政または有料老人ホーム協会に報告する
①を行っても改善されない場合の次の一手です。
「介護3施設」といわれる特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設の場合はそれぞれの地域の役所に相談すれば介入してくれます。
有料老人ホームの場合、加入している場合に限り「全国有料老人ホーム協会」のサイトから苦情を受け付けてくれます。
この協会は有料老人ホームの入居者の保護やサービスの質の向上。
事業者の健全な発展を目的とした非営利の公益社団法人です。

主な会員種別と概要
- 正会員:有料老人ホームを運営している法人で41室以上の場合は必須加入
- 開設前会員:有料老人ホームを設置予定の法人
- 情報会員:有料老人ホーム運営している法人で40室以下の法人
- 準会員・賛同会員:関連事業者や個人も含める
加入条件
- 法人であること
- 有料老人ホームを運営していること(41室以上の場合は正会員が必須)

費用(正会員の場合)
- 入会金:5万円
- 年会費:運営する老人ホームの居室数に応じて異なります。(1から30室で11万6千円、41から50室で22万8千円など)
重ねて申し上げますが、「全国有料老人ホーム協会」への加入は必須ではなく任意です。
老人ホームを探す段階で、この「全国有料老人ホーム協会」に加入している施設か確認する。
トラブルに合わないための、安心材料の一つになりますね。
③警察や弁護士に相談する
金銭の要求がエスカレートして悪質になってきた場合、速やかに弁護士または警察にも相談しましょう。

これは威力業務妨害や犯罪に該当する可能性があります。
④退所を検討
いくら声を上げても改善されない場合は退所を検討します。あまりにひどい老人ホームの場合、運営会社が変更されることがない限り改善されない。
私の経験上そう感じます。
「安い有料老人ホームはどこも同じ」という記事を見かけますが、私はそうは思いません。
私の父は有料老人ホームで最期を看取っていただきました。
大規模で安価、全部で9棟あり定員が100~200名、月額費用は14万円ほど。
居室は多床室が中心でしたが、父はベッド上でテレビが見られれば満足でしたので、問題ありませんでした。
施設長や職員の方々も親切に対応してくれて、「父も幸せな最期を迎えられたな」と感じています。
良い老人ホームは探せばいくらでもあります。
いま不当な請求を受けている方へ、どうか諦めずに行動を起こしてください。
施設探しのプロに相談
一度発生した人間関係のトラブルや抱いた不信感はなかなか解消することは難しいことです。施設を変えるべきかどうかお悩みの方は次は失敗するリスクを下げるためにまずは施設探しのプロに相談しましょう。福祉・介護の国家資格取得者が全ての案件を監修している地域介護相談センター 近所のよしみまでまずは0120-110-512まで無料相談してみてください。

まとめ:不当な金銭の要求があった場合の対処法を知り、安心できる老人ホームを見つけよう
今回の記事の内容
- 金銭を要求されるケースの3事例
- トラブルに合った場合にやること4ステップ
不当な請求をする老人ホームは稀ではありますが、存在するのは事実。
実際に起こった事例や対処法を知ることにより、良い老人ホームを見分ける目が養われるはずです。
「全国有料老人ホーム協会」のサイトから、加入している老人ホームを検索するシステムが整っています。
日本地図からクリックして検索ができるので、とても探しやすいですよ。
お住いのの地域で検索して該当する施設から、まず見学に行ってみましょう。