

大切なご家族を老人ホームに預けたとき、不安を抱えたご家族は多いものです。
筆者も長年、介護現場で働いてきて、不安を感じているご家族の気持ちに何度も触れてきました。

本記事では、老人ホームの職員と家族の関係について、不信感を抱く理由や対応策について詳しくお伝えします。
老人ホームとの関係に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
老人ホームの職員への信用ゼロ!なぜそんな気持ちになるの?
老人ホームの職員を、信用できなくなった… まずは、どうしてそんな気持ちになったのか、整理してみましょう。
忙しそうで余裕がなさそう
介護施設は慢性的な人手不足で、十分な職員が配置されていない老人ホームでは、バタバタしていて、言葉足らずになってしまったり、笑顔が少なくなってしまったりといったこともあります。
ご家族とゆっくり話す時間がもてず、誤解や行き違いが生じることも…
しかし、以下のような場合や、入居している方の表情が、普段より沈んでいると感じたときは注意が必要です。
- 着替えをお願いしていたのに、いつも同じ服を着ている
- 夜間のトイレ介助をしてもらえていない様子がある
- 持ち物がなくなったままになっている
こうしたことが続くと、不適切なケアにつながる恐れがあります。
できるだけ早い段階で職員に確認し、必要であれば改善を求めることが大切です。
新人職員が多い
経験の浅い新人職員は、まだ仕事に慣れていないため、少し頼りなく感じるかもしれません。
また、臨機応変な対応がとれなかったり、接遇について適切な教育を受けていなかったりするケースも少なくありません。
職員個人の問題
多くの老人ホームでは、高齢者一人ひとりに寄り添い、適切なケアを提供しようと日々努めています。
ですが、残念ながらすべての施設や職員がそうとは言い切れず、中には介護の倫理に反するような対応が行われてしまうケースもあるのが現実です。
ニュースなどで、老人ホームでの虐待問題が取り上げられることもあり、決して他人事ではありません。
大切な家族を預ける側として、しっかりと目を向けておきたいところです。
思っていた老人ホームとイメージが違う
入居前には、ご家族の方もいくつもの老人ホームを見学したり、情報を集めたりしながら、「ここなら安心してお願いできる」と思える施設を選ばれたことと思います。
しかし、見学のときは良さそうだったのに、いざ入ってみたら想像していた雰囲気やサービスと少し違って感じることがあり、ギャップを感じるご家族は意外と多いものです。
施設とご家族の認識のズレ
ご家族が入居前のご本人の様子を、実際よりも軽く捉えてしまっている場合もあります。
例えば、認知症が進み、ご家族の前ではしっかりしているように見えたり、昔のままの姿を保とうとしっかりされる方も少なくありません。
入居後に「夜眠れずに暴言や暴力があります」と聞かされると、戸惑ってしまうのも無理はありません。
ご家族にとっても、そうした現実を受け止めるのはとてもつらいことだと思います。
顔が見えないコミュニケーションの難しさ
多くの老人ホームでは、ご家族に向けて定期的に本人の近況をお伝えしたり、何かあったときにはその都度お知らせするようにしています。
ただ、面会の回数が少なくなると、どうしても LINE や電話でのやり取りが中心になりがちです。
お互いの顔が見えない分、ちょっとした言葉のニュアンスが伝わりづらくなり、職員の言葉をついネガティブに受け取っているかもしれません。
家族は人質⁉ 本音が伝えにくい現状
ご家族が施設に入居していると、まるで「人質をとられているようだ」と感じてしまい、気兼ねや遠慮してしまい思っていることを伝えにくいものです。


不安になるのも無理はありません。
また、「あの家族は面倒だ」と敬遠されてしまう不安もあるでしょう。
本来、適切なケアを行っている老人ホームであれば、ご家族からの苦情やご意見をいただいた際には、次のような流れで改善に努めるのが一般的です。
- 職員同士で情報を共有し、周知を徹底する
- なぜこのような状況が起きたのかを話し合う
- ご家族への伝え方や日頃の連携は適切だったかを振り返る
- 再発防止策を講じる
なぜなら、ご家族からの声は、ご本人やご家族の思いを知る大切な機会であり、より質の高いケアにつなげるためのチャンスだからです。
とはいえ、残念ながら、中には正当な苦情であっても「面倒な家族だ」と決めつけてしまう施設や職員がいるのも現実です。

老人ホームの職員に信頼できなくなったときの対応方法
もし、老人ホームの職員に対して「なんだか信用できないな…」と感じるようになったら、我慢せず、状況に応じて次のような方法を試してみてください。
まずは、状況を整理してみましょう
「合わない」「態度が気になる」など不信感の理由を、自分の中で整理することから始めてみましょう。
- あのとき、こんな言い方だった
- あのとき、こんな感じだった
と振り返り、感じたことをメモに残しておくことが大切です。
勇気を出して伝えてみるのも大切
職員に対して気になることがある場合、直接伝えてみるのもひとつの方法です。
もちろん、言いにくいと感じることもあると思いますが、寄り添ったケアを心がけている施設なら、しっかり耳を傾けてくれるはずです。
実際に話し合いの場を持つことで、誤解が解けたり、お互いの考え方を理解し合えることもあります。
伝え方のポイントは以下のとおりです。
- 職員の声かけがきついと感じたとき
「〇〇さんの言い方、ちょっと寂しく感じちゃって…」 - ケアの内容に不安を感じたとき
「最近の様子、もう少し詳しく聞かせてもらえますか?」
このように、なるべく感情的にならずに、自分の気持ちや知りたいことを、やんわり伝えるのがおすすめです。

このように具体的にお願いするのも、相手にも伝わりやすいですね。
どうしても言いづらいなら、相談窓口へ
もし直接職員の方に話すのが難しかったり、伝えたけれど状況が変わらなかったりした場合は、専用の相談窓口を利用するのもひとつの方法です。
主な相談先としては、次のようなところがあります。
- 老人ホーム内の担当部署や担当者(生活相談員・ケアマネジャーなど)
- 市区町村の相談窓口
- 国民健康保険団体連合会
まずは、施設の担当部署や担当者など、普段から関わりのある方に相談してみるのがおすすめです。
誰かに話すだけでも、気持ちが軽くなることってありますよ。
記録はしっかり残して
話し合いや相談の際に、「言った・言わない」「やった・やっていない」といった行き違いが起こることもあります。
トラブルを避けるためにも、不信感のきっかけとなった出来事について、次のような内容をメモしておくと安心です。
- いつ(日時)
- 誰が関わったか
- どんな対応があったのか
さらに、相談を行った際は、以下の内容もあわせて記録しておくのがおすすめです。
- 相談した日時
- 話した相手
- 相談した内容
- 提案された対策や対応内容
- その後の状況の変化
後で状況を整理したり、第三者に相談する際の資料にもなります。

安心して預けるために知っておきたい、家族ができること
ここでは、ご家族が老人ホームに対してできる具体的な行動や、心に留めておきたいポイントをご紹介します。
ご本人の状態を理解し、完璧を求めすぎないことも大事
私が特別養護老人ホームで働いていたとき、よくご家族から伺ったのが”転倒”に”関するお話でした。
- 「入居したんだから、絶対に転ばせないでほしい」
- 「転んで骨折したのは、見守りが足りないせいだ」
- 「転ばないように縛ってでも止めておいてくれたらよかったのに…」
- 「骨折なんて虐待と同じだ」
このように、大切なご家族を思うからこそ出る言葉なのだと思います。
私たち職員も、そのお気持ちはよく理解できますし、できる限り寄り添いたいのが本音です。
ただ、実際には身体拘束は原則禁止とされており、職員も常に1対1で付きっきりというのは、どうしても難しい現実があります。
入居されている方の中には、転倒や骨折のリスクが高い方、認知症の症状がある方も多く、それぞれに合わせたケアを行っているものの、どうしても目の届かない瞬間や限界があることも事実です。
ご家族の「こうしてほしい」「こんなふうにしてもらいたい」という気持ちは大切ですし、ぜひ伝えていただきたいのです。
しかし、同時にすべてを完璧にこなすのは難しい状況もあることを、少しだけ心に留めていただけると、職員としてもありがたく思います。
お互いに思いやりを持ちながら、より良いケアの形を一緒に考えていけるといいですね。
積極的に話してみよう
遠方にお住まいの方は難しいかもしれませんが、できる範囲で面会に足を運んだり、電話をして声をかけたりするだけでも、職員との距離がぐっと近くなります。
ご家族の思いや希望も職員に伝わりやすく、適切なケアを意識するきっかけにもなります。
決して「見張る」という意味ではなく、大切なご家族のために、みんなで協力し合えるような温かな関係づくりを進めていきましょう。
老人ホームに対して、あまり気をつかいすぎなくても大丈夫◎
老人ホームに対して、ご家族は
- 「お世話になっているから…」
- 「迷惑をかけているのでは…」
- 「預けている立場だから仕方ない」
と、どうしても遠慮がちになってしまいます。

日々の生活の中で必要なケアを受けながら、安全に過ごすことは、入居されている方の当たり前の権利です。
そして、ご家族として「安心して暮らしてほしい」と願うのも当然のことですよね。
どちらも安心して過ごせるのが一番大切ですので、気になることや不安なことは、遠慮せずに積極的に伝えていただけたらと思います。
改善しない場合は、ほかの施設を検討するのも選択肢のひとつ
もし、何度伝えても改善が見られない場合や、「これは適切なケアとは言えないかも…」といった不安があるときは、別の老人ホームへの転居も検討してみてもよいかもしれません。
他の施設を見学・検討する際には、次のような点に注目してみると安心です。
- 全体的な施設の雰囲気
- 入居者さんや職員の表情、笑顔
- 見学時の職員の対応や挨拶の仕方
- 研修制度や職員教育の体制
- 実際に利用している方の口コミや評判
住み慣れた場所を離れるのは、ご本人にとってもご家族にとっても不安がつきものですが、それ以上に大切なのは、安心して穏やかに過ごせる環境かどうかです。
「ここでは安心して任せられない」と感じたら、無理をせず、安心できる場所を探すのも前向きな選択肢のひとつです。

一度発生した人間関係のトラブルや抱いた不信感はなかなか解消することは難しいことです。
施設を変えるべきかどうかお悩みの方は次は失敗するリスクを下げるためにまずは施設探しのプロに相談しましょう。
福祉・介護の国家資格取得者が全ての案件を監修している地域介護相談センター 近所のよしみまでまずは0120-110-512まで無料相談してみてください。
まとめ:大切なご家族のために、安心できる環境づくりを
老人ホームの特徴や雰囲気、職員はそれぞれによって異なります。
実際のところは、「入居してみないと分からない部分も多い」のが現実ではないでしょうか。
もし職員とうまく信頼関係が築けなければ、入居されている方が元気をなくしてしまったり、認知症の症状が進んでしまったりと、心や体への影響も心配になります。
「穏やかに過ごしてほしい」と願って決めた場所なのに、思いが叶わない状況に陥るのはとてもつらいことですよね。
もしも施設や職員に対して、「納得できない」「信頼できない」と感じたときは、「しょうがない」と我慢せずに、ぜひ本記事でお伝えした方法を試してみてください。
小さな行動の積み重ねが、ご本人にとってもご家族にとっても、安心できる環境づくりにつながるはずです。
それでも解決が難しい場合は、適切な相談窓口を利用したり、新しい施設を検討するのも、ひとつの大切な選択です。
入居されている方もご家族も、安心して過ごせる場所が見つかりますように、心から願っています。