家にいながら介護保険サービスが受けられる在宅介護には、「訪問型サービス」「通所型サービス」「短期入所型サービス」「その他のサービス」の5種類です。
その中で、通所型サービスである通所介護(=デイサービス)は、自宅から施設へ通い、入浴や食事・排泄などの介護サービスを始め、QOL向上を目的としたレクリエーションや機能訓練を受けることができます。
日帰りで利用できるデイサービスの中には、日中のデイサービスを利用している方が、そのままお泊まりができる「お泊まりデイサービス」が増えています。
ここでは、具体的にお泊まりデイサービスの特徴や費用、メリットなどを解説していきます。
また、在宅介護サービスの一つでもある、施設に泊まれるショートステイとは何が違うのかについても一緒にご紹介します。
お泊まりデイサービスとは?
お泊まりデイサービスとは、ご自身が利用されているデイサービス施設を日中利用し、そのまま自宅には帰らず、施設に泊まれるサービスです。
普段から使い慣れている施設で、顔なじみである職員や他の利用者と一緒に宿泊できるので、コミュニケーションを深めることもできるため、環境の変化による精神的負担が軽減されます。
しかし、お泊まりデイサービスは介護保険制度の適用外となっているため、費用は少し高いですが、短期入所型サービスのショートステイの空きがない場合に利用できることから、徐々にお泊まりデイの施設が増えてきています。
利用の目的としては、介護している家族の体調不良や冠婚葬祭などの緊急時の他にも、介護疲れの家族が休むレスパイトとして利用されます。
運営基準について
お泊まりデイサービスは、介護保険適用外のため厚生労働省からガイドラインがあり、以下の項目で提示されています。
1.介護職員や看護職員を1名以上配置すること
ガイドラインが策定される前は、介護の知識がない職員でも夜勤専門員として介護にあたることが認められていましたが、現在では、資格を持っている介護職員や看護職員を1名以上常駐させることが定められています。
2.設備基準
宿泊部屋の広さは4畳以上で、個室は1人での利用が基本ですが、希望があれば2人まで利用が可能です。
相部屋の場合は、最大4人まで個室がない場合はパーテーションなどによって区切る必要があります。
お泊まりデイは夫婦一緒に利用されることもありますので、夫婦一緒の部屋を利用することもできますので、お互い安心して泊まれますね。
相部屋は希望や必要があると認められる場合以外では、原則男女別の部屋が基準です。
3.防災設備や災害時対応可能な備品の備蓄
災害などの非常時に備え、保存食や飲料水、懐中電灯など必要なものを備蓄することも規定されています。
他にも、消化器やスプリンクラー、火災報知器などの消火設備を設置しなければなりません。
4.利用定員の制限
日中のデイサービス利用定員の半分以上、最大9人までと規定されています。
お泊まりデイサービスの費用について
お泊まりデイサービスの利用料金は、介護保険適用外のため、料金基準がなく費用は全額自己負担です。
基本料金の中に含まれている部屋のタイプや介護度は事業所で設定できるため、施設によって金額が異なります。
相場としては一泊3,000円〜5,000円程度のところもあれば、数百円程度と低額に抑えられている事業所もありますが、多くはデイサービス利用料の10割を基準としています。
利用料金の他に別途加算される項目があります。
- 食費
- おむつ代などの日用品
- 連泊した場合に発生する、理美容代や洗濯代など
上記の項目は事業所によって、金額が異なりますので、事前に確認しておきましょう。
お泊まりデイサービスで提供されるサービスとは?
お泊まりデイサービスで宿泊する際に、受けられるサービスを4つご紹介します。
- 食事
- 就寝準備・起床時の援助
- 排泄援助
- 入浴
1.食事
お泊まりデイサービスに1泊する際、当日の夕食と翌日の朝食の2食が基本となっています。
食事は、栄養バランスがしっかり摂れるうえに、利用者に合わせた刻み食やミキサー食などの介護食や塩分・糖分制限された食事も用意されています。
さらに、施設によってはビュッフェ形式やコース料理などを提供するところもあり、食事を楽しくするための工夫がされているところもあります。
「費用について」に記載してあるように、食費は利用料金とは別途掛かり、施設によって金額が異なりますが、1食500円前後が相場です。
2.就寝準備・起床時の援助
就寝準備とは、口腔ケアや着替えなどの援助のことです。
口腔ケアは、歯磨きや入れ歯の洗浄を行うことで、食事に関わる機能を維持すること、言葉を発するための機能、誤嚥性肺炎の予防や口腔内の健康を守るためにも、とても大切なことです。
また起床時の援助とは、洗面や整容、歯磨き、着替えなどの援助が受けられます。
3.排泄援助
お泊まりデイサービスを利用される方の中には、1人での排泄が難しい方や補助の必要がある方などさまざまです。
利用者が宿泊中も安心・快適に過ごすために、トイレ誘導やパッド・オムツの交換を利用者の状態や必要に応じて適時行います。
4.入浴
デイサービスでは、利用時間である日中に入浴を済ませることが多いですが、施設のスタッフ体制によって、夜間帯での入浴もできる施設があります。
就寝前など夜間の入浴を希望されるなら、施設またはケアマネージャーに相談してみましょう。
お泊まりデイサービスのメリット
お泊まりデイサービスを利用するメリットとデメリットについてまとめましたので、検討されている方はぜひ、参考にしてください。
慣れた施設での宿泊ができる
日中利用しているデイサービスで、通い慣れている施設にそのまま宿泊できることは、環境の変化を苦手とする高齢者にとっては、とても大きいメリットです。
高齢者は、初めての場所や人などが変わると、体調不良に繋がるほど大きな影響を与えます。
また、日中のデイサービスで顔なじみとなっているスタッフが対応するため、利用者の状態や性格などを理解されているので、利用者もリラックスして宿泊することができます。
家族以外の交流ができる
高齢者は、体力の低下や足腰などの筋力の低下などが原因で、外出する機会が減ってしまい、外部との交流が少なくなってしまうことで、意欲の低下や認知症につながります。
お泊まりデイサービスを利用することで、家族やご近所の方以外との交流が増え、生活にメリハリが生まれ意欲が高められると言われています。
介護者の心身の負担を軽減できる
お泊まりデイサービスでは、介護者の心身の負担を減らすレスパイトを目的として利用されています。
利用者が日中のデイサービスを利用し、そのまま宿泊することで、介護者は用事を済ませたり旅行に出かけたりと、自分の時間をゆっくり過ごすことで、介護者の負担を軽減することができます。
予約が取れやすい
年々ニーズが高まっているショートステイの予約は、慢性的に空きが少なく、緊急での予約も難しかったり、希望の日程が取れないこともあり、ケアマネージャーでも予約をとることが難しいです。
一方でお泊まりデイサービスでは、利用する際いくつか決まりがあります。
「日中のデイサービスと一緒に申し込む必要がある」「宿泊のみでの予約は不可」と申し込める人が限られているため、予約が取りやすくなっています。
お泊まりデイサービスのデメリット
お泊まりデイサービスのデメリットは、主に3つあります。
介護保険が適用されない
一つ目のデメリットは、お泊まりデイサービスは介護保険適用外のため、費用は全額自己負担というところが大きいです。
食事や入浴は、別途費用が掛かってしまいます。
お泊まりデイサービスは、宿泊期間が短かければ費用は抑えられますが、十日単位での利用となると、その分コストが増してしまいます。
長期間の宿泊を利用したい場合は、介護保険適用サービスであるショートステイの自己負担は1〜3割で済みますので、お泊まりデイサービスとうまく併用して活用しましょう。
プライバシー保護が不十分
お泊まりデイサービスの設備は、もともと宿泊専門に考えられている施設ではないため、個室を用意することが難しく、相部屋となるケースが多いことがデメリットの原因です。
プライバシーを考慮し、パーテーションなどで仕切ることで対策を行っていますが、宿泊施設と比べると、完全に区切られているわけではないので、利用者がストレスを感じてしまう場合もあります。
利用することを検討されているなら、プライバシー保護への対策について、事前に施設へ確認しておきましょう。
原則「短期間での利用」
お泊まりデイサービスは、原則「短期間の利用」を想定しているため、宿泊期間に制限があることがデメリットの1つです。
主な使用目的は、「介護者が病気などで在宅介護の継続が困難になった」「特養への入居申請」をしたが、空きがないため入居するまでの間での利用も可能です。
まとめ
今回は、お泊まりデイサービスについてご紹介しました。
介護保険が適用されているショートステイと比べると、金銭面やプライバシーの確保といったデメリットがありますが、通い慣れた施設での宿泊でしたら利用者本人はもちろん、家族も安心して利用することができます。
また、予約の取りやすさといったお泊まりデイサービスならではのメリットもあります。
お泊まりデイサービスを利用したいと考えられているのであれば、まずは要介護認定を受ける必要があります。
要介護認定の通知を受けたら、ケアマネージャーまたは地域包括支援センターへ連絡し、施設を探してもらったり、ホームページやパンフレット等で施設の情報を集めてみましょう。
施設によってサービス内容は多少異なりますので、ご本人や家族に合ったサービスや雰囲気の場所を実際に見学しに行くことをおすすめします。