親が高齢になるにつれて、徐々に自宅での生活が厳しくなり、足腰が衰えてきたり、体の調子が悪くなってきて、「自宅で生活したい。」というのが親の気持ちは理解しつつも、ご家族の周辺環境によっては施設を検討せざるを得ない場合があります。
有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームなどの高齢者施設を検討するご家族も多いことでしょう。
可能であれば、高齢者施設に支払う費用も安いほうがいいと思い、特別養護老人ホームを検討したり、担当のケアマネージャーからすすめられることもあります。
たしかに、毎月何十万円の大金を支払っていくのですから、ご家族としても、費用を抑えられないか検討するのは当然だと思います。
そこで今回は、特別養護老人ホームにフォーカスを当てて記事を記載します。
実際に、東京にある特別養護老人ホームで15年近く働いて、相談員としても経験を有している私が記載をしますので、教科書通りではない情報も記載できると思います。
- 特別養護老人ホームとは
- 入居者はどのような人が多いのか
- どのようなサービスを受けられるか
- 費用について
- 入居するには
- 有料老人ホームと特別養護老人ホームの違い
このようなことを知りたいかたは、ぜひ読み進めてみてください。
特別養護老人ホームとは
特別養護老人ホームとは社会福祉法人が運営する高齢者の入居施設です。
ですから、基本的に『株式会社』などの民間会社が特別養護老人ホームを建設し、運営をするということはできません。
外観からでは、有料老人ホームなのか特別養護老人ホームかを判断することは難しいと思います。
実際、高齢者施設を探しているご家族のかたから相談を受ける際に、
「東京の杉並区の〇〇通りの近くに老人ホームがあるじゃない。なんて施設か名前がでてこないんだけど。。。」
「埼玉の所沢か東京の東村山かどっちの住所になるかわからないけど施設があるじゃない」
と、このように高齢者施設がどこにあるかは把握しているご家族は多いですが、その建物の高齢者施設が、有料老人ホームなのか特別養護老人ホームなのかを判別できているかたは意外と少ないです。
ですから、話を聞くと、
「東京の西東京市にあるその施設は特別養護老人ホームですね。有料老人ホームではないので、すぐの入居は難しいと思います。」
などと返答をさせていただくこともあります。
特別養護老人ホームは、略称では『特養』といいます。
この『特養』という言葉は、ご家族のかたもご存じのかたが多いように感じます。
特別養護老人ホームの配置職員
特別養護老人ホームに入居した入居者の自立支援を促しながら、介護職員や看護職員が生活全般に必要な介助(食事、排泄、移動など)や健康管理をおこないます。
その他に施設長、機能訓練指導員、介護支援専門員、生活相談員などが配置されており多職種連携で入居者へサービス提供をおこなっております。
「特別養護老人ホームには医者は常駐していますか?」
とご家族から聞かれることがあります。
常駐していることもありますし、非常勤で週何回ということで施設に配置されている場合もあります。
余談ですが、医師を配置することで加算を行政などから得られるため配置している特別養護老人ホームもあります。
加算というのは簡単に言ってしまえば、行政からお金がもらえるということです。
ほかの職員配置としては、理学療法士のかたが配置されていることもあります。このように、特別養護老人ホームと一言で言っても特別養護老人ホームの施設ごとで特徴に違いが生まれます。
どのようなサービスが受けられるか
特別養護老人ホームには、介護支援専門員が配置されております。
介護支援専門員というのは、ケアマネージャーのことを指します。
みなさんも、介護支援専門員ではなく、ケアマネージャーと言われたほうが、理解されやすいのではないでしょうか。このケアマネージャーの役職者が作成する『施設サービス計画書』に基づき、介護職員や看護職員といった役職の職員が、入居者に対して日常の介護サービスが提供します。
『施設サービス計画書』には、入居者の身体機能や医療面などを把握したうえで、それぞれの課題、それに対する改善目標、介護サービス内容が記載されています。
具体的にどういった内容が記載されるかというと、
たとえば、
- 食事は入居者の咀嚼力(噛む力)や嚥下力(のみこむ力)に合わせて、普通食、刻み食、ソフト食、ペースト食など食事形態を変更する。
- 排泄ではトイレ誘導をする。
- おむつ交換が必要なかたには入居者の身体機能に合わせて必要な介助するように記載する。
- 移動は少しの距離であれば歩行が可能ですが、お体の状態により、日常では車椅子での移動が必要なかただけど、なるべく歩行機会をもうけるようにする。
などを具体的に記載をします。
この『施設サービス計画書』は入居者だけでなく、ご家族のかたの気持ちや思い、多職種における入居者への支援内容の検討なども反映され、ひとつの『施設サービス計画書』が作成されます。
単純に入居者の体の状態や医療面を考慮しただけで作成されたものではなく、練られて出来上がった、入居者に対する介護支援をおこなう方向性をつけるためにも必要な計画書なわけです。
逆に、それだけケアマネージャーが作成する計画書は大事と言えるでしょう。
特別養護老人ホームでは、どのような生活を送れるのか
リハビリをされているかたもいれば、レクリエーションなどもおこなっておりますから、入居者のかたが参加されることもできます。
また、誕生日会や歌をうたう、ボランティアさんとの交流、慰問などもあるため、毎日おこなっている特別養護老人ホームもあります。逆に頻度が少ない特別養護老人ホームもあります。
イベントが好きなかたもいますし、苦手なかたもいらっしゃいます。親の性格に合わせて、選択すると良いでしょう。
ただし、現在は新型コロナウイルス感染症流行により、どの施設もレクリエーションや外部講師を呼んでの余暇活動は縮小傾向のようです。
入居者はどのような人が多いのか
介護を必要とする要介護3以上の認定を受けた高齢者が入居できますから、やはり、要介護3以上の入居者が多いです。
65歳以上の高齢者のうち、介護を必要とする要介護3以上の認定を受けた方が利用の対象となります。ただし、要介護1あるいは要介護2の場合も一定の要件(特例入所)を満たすことで、入居の対象となりますが、実際には要介護3以上であることが前提となることが多いです。
また重度の方を入居させることで、施設に加算が得られることもあり、要介護4あるいは要介護5のかたを優先して入居を進めていく特別養護老人ホームもございます。
ですから、
「特養は待機待ちが何百人といるんでしょ。」
とご家族から言われることがありますが、それは実は多少認識間違いです。
待機をしていたら、待機をしている順に入居ができると思うかもしれませんが、実際は、そうではない特別養護老人ホームも存在しています。
入居者は加齢に伴う認知力低下や脳梗塞などの病気により、生活全般に介護が必要なかたが入居されています。ですから、特養=認知症の入居者しかいないというのは認識間違いです。
申し込みをされるかたの中には、
「自宅で転倒して骨折をしてしまい、車椅子の状態になりましたが、自宅はバリアフリーではないため自宅での介護は難しいです。」
「リハビリ病院に転院しましたが、期限で出るように言われています。」
「認知症が進行して、一人でできないことが増えてきました。毎日母のところへ様子を見に行っていますが、私も就労があり一人の時間が長いと心配です。」
「夫が脳梗塞で入院していましたが、生活全般に介助が必要です。体が大きく、私には自宅で介護することが難しいです。」
など様々な状況を抱えている親やご家族のかたがいらっしゃるのが現実です。
医療について
特別養護老人ホームは生活の場であり、医療機関ではありません。
常勤の医師が配置されている施設も稀にありますが、ほとんどが週1回程度、往診医が診察を行う方法をとっています。
在宅に往診の先生が訪問し、必要であれば内服薬の内容を変更するイメージに似ています。そのため、具合が悪くなったらすぐに医師が対応してくれるといった環境ではなく、そのような場合は病院受診となることが常になっている特養の方が多いです。
病院受診については、ご家族の付き添いが必要になり、急変時にはすぐにかけつけてもらえるよう連絡が入ることもあります。
認知症のある入居者も多いことから、施設によっては精神科医の往診を受けられることもあります。
その他眼科や皮膚科、歯科などの往診が入っている施設もあり、その場合は外部に受診する必要がなく、ご家族の負担軽減になります。
医療面を気にされる場合は、見学時に医療面について確認することをおすすめします。
費用について
介護保険を利用して、安価に利用できるのが魅力の一つです。
特別養護老人ホームの施設によっては、居室のつくりがそれぞれ異なり、同じ特別養護老人ホームでも居室の種類で費用が大きく変わります。
- 多床室(4人部屋、2人部屋など)
- 従来型個室
- ユニット型準個室
- ユニット型個室
などの居室の種類があります。
介護保険の負担割合や負担限度額認定証の申請により、費用負担額が変わってもきます。
昔は、多床室が多かったですが、現在ではユニット型個室というような、『個室』しかない特別養護老人ホームも存在しています。
費用についてはもちろん、個室よりも多床室の方が安いです。月10万円程度の費用負担で入れる施設もあります。ユニット型個室の場合は月20万円程度が目安となります。
詳しい費用については、直接施設に問い合わせするのが早いかと思いますが、居室の種類で費用が異なることを前提に問い合わせするのがよいでしょう。
また、負担限度額認定証を用いて特養の費用を抑える方法に関しては、有料老人ホームでは適用になりません。負担限度額認定証は有料老人ホームに入居するのであれば、申請しなくても良い証明書です。
有料老人ホームと特別養護老人ホームの違い
上記で記載した通り負担限度額認定証を用いて特養に入居しているとかかる費用を抑えることができるという機能は有料老人ホームにはありませんので、違いの一つと言えます。
ほかには、『おむつ』です。このおむつは、有料老人ホームでは自己負担になります。そのため使用しているかたは月額利用料のほかにかかる料金ということになります。逆に特別養護老人ホームでは、『おむつ』は特別養護老人ホームの施設側で負担します。
こうした違いがあるということを知っておくと、有料老人ホームなどの高齢者施設を選択する上では重要なポイントになります。
さいごに
いかがでしたか。
他にも解説したいことはたくさんあるのですが、気になりそうなポイントだけをまとめてみましたので、活用いただけると幸いです。
このように、私たち『地域介護相談センター近所のよしみ』は、スタッフ一人ひとりがしっかりした知識を有しているのが特徴としている老人ホームを紹介するプロ集団です。
西東京市で事務所を構えて、老人ホームに入居したいかたへ、ご自身に合った有料老人ホームを提案しています。
有料老人ホーム選びを失敗したくない場合は、『地域介護相談センター近所のよしみ』がサポートいたしますのでご連絡ください。
西東京に事務所はありますが、東京都だけでなく、神奈川県、埼玉県、千葉県にも相談員を配置しています。プロの仕事をしっかりと遂行しますので、介護施設選びでお困りの方がいらっしゃいましたら、『地域介護相談センター近所のよしみ』にご連絡ください。
お読みいただきありがとうございました。