

近年、高額な費用や故人の希望によって葬儀を行わず、火葬のみ行う直葬を選ぶケースが増えています。
葬儀をせず直葬を行う場合、費用や遺族の負担を軽減できる一方、さまざまなデメリットも伴うため注意が必要です。
今回は、葬儀を行わないことを選ぶ背景やメリット・デメリットについて解説し、併せて、直葬についてご紹介します。
葬儀を行うか迷っている方は、ぜひご覧下さい。
葬儀を行わないケースが増えている
近年、葬儀を行わないケースが増えています。
株式会社鎌倉新書が2020年から2024年に行った調査によると、葬儀をせず直葬を行った方の割合が以下のように増えています。
- 2020年:4.9%
- 2022年:11.4%
- 2024年:9.6%
また、公正取引委員会の報告書では、葬儀をせず直葬を選んだ方は全体の5.5%ですが、葬儀の種類別の増加率は26.2%であると発表されています。
葬儀を行わない背景には、コロナ禍による自粛ムードが高まり、人が集まる一般葬を避けたことが影響しています。
現在は、新型コロナウィルスが第5類に引き下げられた事を皮切りに、人が集まる一般葬が行われる割合が、少しずつ戻っています。
しかし、コロナ禍の頃とほぼ同じ割合で直葬を選ぶ方もいるため、一定の需要があると言えるでしょう。
葬儀を行わない3つの理由

葬儀をやらない背景には、新型コロナウィルスによる行動制限が一因となっていますが、以下の3つの理由で葬儀を行わない場合もあります。
- 葬儀にかかる費用が高いから
- 故人や遺族から希望があるから
- 核家族化や高齢化によって参列者が減っているから
一つずつ解説します。
葬儀にかかる費用が高いから
葬儀にかかる費用が高いことを理由に、葬儀を行わない場合もあります。
株式会社鎌倉新書の調査によると、葬儀の平均費用は約118万円であると発表されています。
内訳は葬儀の費用だけではなく、参列者への飲食費・返礼品なども含まれているため、一般の家庭にとって大きな負担になります。
そのため、「葬儀にかかる費用を抑えたい」と思い、葬儀を行わない方もいます。

故人や遺族からの希望があるから
故人や遺族からの希望があることで、葬儀を行わない場合もあります。
故人から生前に「葬儀をしないでほしい」「火葬のみで構わない」という希望があり、遺族が意志を尊重して、葬儀を行わない場合があります。
また、遺族自身が宗教や葬儀へのこだわりがなく、葬儀の種類や形式を選べるため、葬儀を行わない方も少なくありません。

高齢化によって参列者が減っているから
参列者の高齢化によって、葬儀を行わない場合もあります。
株式会社鎌倉新書が行った調査によると、2013年の平均参列者数は78人でしたが、2024年の調査では38人まで減少しています。
例えば、故人が高齢者の場合、参列者も高齢者である可能性が高く、持病によって体調が悪化している方や要介護状態になっている方は参列することが難しいです。
そのため、参列する遺族の人数が減り、無理して葬儀を行う必要性がないと感じ、葬儀を行わない場合もあります。

葬儀を行わない際に必要な2つの手続き
葬儀を行わない場合、以下の2つの手続きが必要です。
- 自治体への届出
- 火葬または土葬
遺族は故人が亡くなった日から7日以内に、自治体へ死亡届を提出しなければなりません。
また、火葬を行う場合、自治体に火葬許可申請書を提出し、火葬許可証の受け取りが必要です。
このような手続きを遺族が全て行わないと法律に触れるため、葬儀社と契約して直葬を行う方が多いです。

葬儀を行わない場合の3つのメリット

葬儀を行わない場合、以下の3つのメリットがあります。
- 葬儀費用の負担が少なくなる
- 遺族の心身にかかる負担が少なくなる
- 参列者の負担が少なくなる
一つずつ解説します。
葬儀費用の負担が少なくなる
葬儀を行う場合、高い費用が必要となり、場合によっては追加費用が発生するリスクがあります。
しかし、直葬を選ぶことによって、大幅に費用を抑えることが可能です。
直葬とは、火葬のみ行う葬儀のスタイルで、参列者も限られた遺族や関係者のみとなるため、葬儀にかかる費用面の負担が少なくなり、遺族にとって大きなメリットとなるでしょう。
費用は葬儀社によって違いがあるので、注意が必要です。
遺族の心身にかかる負担が少なくなる
遺族の心身にかかる負担が少なくなる点もメリットの一つです。
葬儀を行う場合、遺族は葬儀社との打ち合わせや関係者への連絡、参列者への対応など、感傷に浸る間もないほどに忙しくなります。
そのため、心身ともに疲労やストレスなどの負担がかかります。
葬儀を行わないことで、心身の負担を少なくし、落ち着いた状態で故人とのお別れができる点は、遺族にとってメリットと言えるでしょう。
参列者の負担が少なくなる
葬儀を行わないことによって、遺族だけではなく、参列者にとってもメリットがあります。
参列者の中には、遠方にお住まいの方・足腰が不自由な高齢者の方もいるでしょう。
足腰が不自由な高齢者の中には、故人への義理立てや常識を守らなければと思い、無理をして参列される方もいます。
また遠方から参列する方は、移動や宿泊に伴う費用面の負担がかかるため、葬儀を行わないことで、参列者の負担を減らす点もメリットと言えるでしょう。

葬儀を行わない場合の3つのデメリット

葬儀を行わない場合、費用や心身の負担を少なくできる一方、以下のデメリットも伴われます。
- 周囲からの理解が得にくい
- 弔問客の対応が必要になる
- お寺に納骨できない可能性がある
詳しく解説します。
周囲からの理解が得にくい
葬儀を行わないことについて、周囲からの理解が得にくい点は大きなデメリットです。
葬儀を行わないことを選ぶ方は、徐々に増えています。
しかし、一般的な葬儀のスタイルではないため、批判的な方も少なくありません。
また、社会通念として、葬儀を行うことが当たり前と考える親族や関係者もいます。
そのため、葬儀を行わないことが故人の希望であったとしても、理解が得られず誤解を招くおそれもあります。
周囲から理解を得られないことで、それまでの関係が悪化することや、トラブルに発展するケースもあります。
弔問客の対応が必要になる
葬儀を行わなかったとしても、弔問客への対応が必要になる点もデメリットの一つです。
例えば、直葬を行う場合、限られた親族のみで行うため、対外的な対応による負担は少なく済みます。
しかし、後日、訃報を聞いた弔問客がそれぞれ訪問する場合があります。
弔問客を迎える際、事前に日程を決める・訪れた際のおもてなしなどを行わなければなりません。
このような弔問客の対応によって負担が増えるため、遺族にとってはデメリットと言えるでしょう。

菩提寺へ納骨ができない可能性がある
葬儀を行わない場合、菩提寺へ納骨できない可能性があります。
菩提寺とは、先祖代々のお墓があるお寺のことです。
葬儀を行う際は、菩提寺の宗派の作法によって執り行われ、火葬後はお墓の中に納骨することが暗黙のルールとなっています。
しかし、葬儀をせずに直葬を行い、遺骨を菩提寺に持って行った場合、寺の作法で葬儀をし直さなければ納骨を認めてくれない場合もあります。

葬儀を行わない場合、直葬という方法がある

さまざまな理由で葬儀を行わない場合、火葬のみ行う直葬という方法があります。
こちらでは、直葬について解説します。
直葬とは、式典をせずに火葬のみ行う葬儀のスタイル
直葬とは、お通夜や告別式などの式典を省き、火葬のみ行う葬儀のスタイルです。
直葬を行う場合、さまざまな式典を省くため、参列するのは限られた遺族や親族のみとなります。
また、式場や祭壇の必要がなく、基本的には僧侶による読経も行われないです。
このように、シンプルな形で故人をお見送りできることや、さまざまな負担を軽くできることから、直葬を選ぶ方が増えています。

直葬を行う際の5つの流れ
直葬を行う際の基本的な流れは、以下のとおりです。
- 臨終・お迎え
- 遺体の安置
- 納棺
- 火葬
- 収骨・埋火葬許可証の受け取り
例えば、病院で亡くなった場合、まずは速やかに葬儀社へ連絡し、遺体を安置場所へ搬送します。
同時に、医師から死亡診断書を発行してもらい、搬送時に葬儀社の担当者に預けましょう。
法律によって、亡くなってから24時間以上経たないと火葬ができないため、葬儀社や火葬場の霊安室に安置します。
その後、故人の身支度を終えた後、遺体とお花や故人が好きだった物を棺に納めます。
火葬場に到着後、火葬許可証を提出し、棺の蓋を閉めたあとに火葬が行われます。
火葬が終わり次第、遺骨を骨壷に納め、仮装済印付きの埋火葬許可証を受け取り、直葬は終了です。

直葬にかかる費用の相場は約42万円
直葬にかかる費用の相場は、約42万円です。
株式会社鎌倉新書が行った全国調査によると、直葬の平均費用が42.8万円で、最も解答が多い価格帯は20万円〜40万円未満と発表されています。
一方、一般葬の平均費用は、同調査で161.3万円と発表されており、直葬を選ぶと費用を大幅に抑えられることが分かります。
また、直葬にかかる費用の内訳は、以下のとおりです。
- 寝台車での搬送費用
- 棺の費用
- 遺体の安置費用(霊安室の使用料・ドライアイス使用料)
- 骨壷の費用
- 装飾に関する費用(遺影写真・位牌・お花など)
- 火葬許可証など書類の申請代行にかかる費用
しかし、契約する葬儀社によって基本的なプラン内容や金額に違いがあり、さまざまなオプションを付け加えると、追加費用が発生します。
あらかじめ複数の葬儀社から見積もりをとることがおすすめです。
葬儀を行わずに直葬をする際の5つの注意点

葬儀を行わずに直葬をする場合、以下の5つのポイントに注意する必要があります。
- 周囲の理解を得る
- 故人の人間関係を考えて式の案内をする
- 事前に菩提寺へ相談する
- 気持ちの整理ができない可能性がある
- 直葬に対応していない葬儀社もある
- 上記のポイントに注意しながら直葬に向けて行動しましょう。
一つずつ解説します。
周囲の理解を得る
葬儀を行わず直葬をする場合、周囲の理解を得ることは重要なポイントです。
直葬は一般的な葬儀のスタイルではないため、遺族や親族の中には「火葬だけで済ますのは失礼ではないか」など、批判的な意見を持つ方もいます。
また、故人の希望で直葬を選んだとしても、理解が得られない可能性もあります。
そのため、周囲の理解が得られず、最悪の場合、遺族・親族間でのトラブルに発展するリスクが高いです。
事前に遺族・親族と話し合うことは大前提ですが、故人の人間関係や葬儀を行う意味・役割など含めて、考えることが重要です。

故人の人間関係を考えて直葬の案内をする
葬儀を行わず直葬をする場合、遺族以外の親族や関係者への伝え方も、注意すべきポイントです。


直葬後に訃報を伝えると、「亡くなった時になぜ知らせてくれなかった」「参列させてもらえなかった」と不満を持つ方もいるでしょう。
また、後から訃報を聞きつけ、直葬後に弔問へ来る場合もあり、遺族にとっては返って負担が増える可能性があります。
そのため、故人との人間関係を考えながら直葬の案内をする・直葬後にあらためて弔問の機会を設けるなどの対応がおすすめです。

事前に菩提寺へ相談する
先述しましたが、菩提寺がある場合、本来であれば菩提寺の宗派の作法に則り、葬儀が執り行われます。
しかし、事前に何も伝えず直葬を行うと、今まで積み上げた信頼関係が害われるリスクがあります。
また、納骨も認められない場合もあるため、あらかじめ菩提寺へ直葬について話し合いましょう。

気持ちの整理ができない可能性がある
一般的な葬儀を行う場合、お通夜や告別式などの式典を通じて、落ち着いて故人とのお別れをすることが可能です。
しかし、直葬を行うと、火葬炉の前で5分〜10分程度の時間でのお別れになります。
そのため、気持ちの整理ができず、「もっとしっかりとお別れするべきだった」と後悔する可能性があります。
葬儀を行うことは、故人の死を受け入れる時間という意味も含まれているため、後悔しないように落ち着いてお別れをする時間を作りましょう。

葬儀社によっては直葬に対応していない場合もある
近年、直葬の需要が高まり、直葬に対応したプランを設定する葬儀社も増えています。
しかし、現実的には一般的な葬儀のスタイルとして認知されていないため、特に、小さな町や伝統を重んじる家庭では、直葬に対して抵抗があります。
このような考えもあり、直葬に対応していない葬儀社もあります。
また、直葬に対応していても、設定金額を高めにしている葬儀社や直葬に必要なサービスやオプションが含まれていない葬儀社も少なくありません。
あらかじめ複数の葬儀社に直葬に対応しているか確認し、見積もりを取って比較しましょう。

まとめ
今回は葬儀を行わない背景やメリット・デメリット、直葬について解説しました。
コロナ禍をきっかけに、費用面の負担や故人・遺族の希望、参列者の減少などを理由に、葬儀を行わない方が増えています。
葬儀を行わない場合、費用を含めた遺族の負担を軽減できる反面、周囲の方や菩提寺からの理解が得にくい・弔問客の対応が必要です。
そして、葬儀を行わない場合、火葬のみ行う直葬を選ぶことで、一般葬と比べると費用を大幅に抑えることができ、葬儀の際にかかる遺族の負担を少なくすることが可能です。
しかし、周囲の方や菩提寺の住職と事前に話し合い、交友関係を基に関係者へ直葬の案内をするなどの配慮を行いましょう。
また、直葬に対応していない葬儀社もあるため、複数の葬儀社へ確認し、見積もりを出してもらうこともおすすめです。
今回は最後まで読んでいただき、ありがとうございました。