このように、墓じまいについて疑問を感じている人もいるのではないでしょうか?
少子高齢化や核家族化、お墓への価値観の多様化の進行によって、墓じまいをする人が年々増えており、お墓の管理にかかるコストが無くなるメリットがある一方、高い費用と手間がかかるなどのデメリットがあります。
また、親族から反対され、墓じまいを断念せざるを得なくなったトラブルも多いため、事前の相談や親族間で密にコミュニケーションを取りながら墓じまいを進めることをおすすめします。
今回は墓じまいの基礎知識や進め方、親族間でトラブルにならない方法についてお伝えします。
墓じまいの基礎知識
墓じまいと聞くと墓を処分することだと何となくイメージができますが、詳しい意味や背景について分からない人もいるのではないでしょうか?
こちらでは墓じまいの基礎知識について解説します。
墓じまいとは?
墓じまいとは墓石を処分し、墓所を更地にしてから使用権を返すことです。
さまざまな理由で先祖代々から受け継がれるお墓の維持・管理が難しくなり、墓じまいをする人が増えています。
その背景には、以下の2つが挙げられます。
- 少子高齢化と核家族化の進行
- お墓に対する価値観の多様化の進行
少子高齢化と核家族化が進むことによって、お墓の継承者が途絶えることや維持・管理が行き届かなくなる可能性があります。
そして、昔はお墓は家族で入り、代々受け継がれるものという伝統がありましたが、現代では一人用や夫婦用などさまざまなニーズに対応したお墓が普及しています。
さらに、「子供や孫に迷惑をかけたくない」「無理をしてまでお墓参りに来なくても大丈夫」と考える人も増えているという価値観の多様化によって、墓じまいをする人が増えたと考えられています。
墓じまいと改葬のちがい
墓じまいと改葬のちがいは、以下の通りです。
- 墓じまい:墓石を処分し、墓所を更地にしてから使用権を返却すること
- 改葬:埋葬されている遺骨を他の場所に移すこと
墓じまいと改葬は言葉の意味は全く違いますが、墓じまいをすることになれば、必ず改葬を行わなければなりません。
ちなみに、令和2年度~5年度までの厚生労働省「衛生行政報告例」の発表によると、以下のように、墓じまいによる改葬を行う人が年々増えています。
- 令和2年度:117,772件
- 令和3年度:118,975件
- 令和4年度:151,076件
- 令和5年度:166,886件
こちらの数字から見ても、さまざまな理由によって墓じまいをする人が増えていることが分かるため、今後も墓じまいの需要は増える可能性が高いと考えられます。
墓じまいのメリット・デメリット
墓じまいには、メリットとデメリットがあり、墓じまいをするべきかどうか考える時の指標として知っておくと役に立つでしょう。
こちらでは墓じまいのメリット・デメリットをご紹介します。
墓じまいの3つのメリット
- 無縁墓によるトラブルを回避できる
- お墓の管理にかかるコストがなくなる
- 継承者の負担がなくなる
継承者がいないお墓である無縁墓によって引き起こされるトラブルが社会問題となっており、墓じまいをすると、このようなトラブルが発生しなくなります。
また、お墓の管理にかかるコストや継承者が担っていた負担がなくなることも墓じまいの大きなメリットと言えるでしょう。
墓じまいの2つのデメリット
- 高い費用と手続きの手間がかかる
- 親族を含めた関係者とトラブルになる可能性がある
墓じまいは高い費用や複雑な手続きなどの手間もかかる点は致命的なデメリットと言えるでしょう。
また、墓じまいでは親族を含めたさまざまな関係者とトラブルになるケースが多いことから、このようなリスクがあることも、墓じまいのデメリットと言えるでしょう。
墓じまいの費用の目安
墓じまいにかかる費用の目安は、以下のとおりです。
- 書類取得手数料:数百円〜1,500円程度
- 墓石の処分と墓所を更地にする工事費用(1㎡あたり):100,000円〜150,000円程度
- 閉眼法用:30,000円〜50,000円程度
- 離檀料:0円〜20万円程度
- 新たな納骨先での納骨と開眼法要:8万円〜数百万円程度
墓じまいにかかる費用は、業者や新たな納骨先・自治体などによって金額に違いがあるため注意しましょう。
8つの墓じまいの進め方
墓じまいは基本的に8つの手順を踏みながら進めます。
①親族間で話し合って同意を得る
墓じまいをする前に、親族間で話し合って同意を得ることから始めます。
費用の面やお墓に対する価値観のちがいによって、墓じまいに反対する親族もいます。
そのような親族の考えに耳を傾けず、同意を得ないまま墓じまいを進めると理解を得られず、最悪の場合、墓じまいを断念せざるを得なくなります。
まずは、墓じまいの理由や墓じまい後の納骨・供養の方法についてていねいに説明をし、反対する親族の考えを聞きながら冷静に話し合いましょう。
②改葬に必要な手続き・書類を確認する
改葬の手続きや墓じまいの補助金制度など、自治体によってさまざまな違いがあります。
あらかじめ自治体の窓口で相談することやホームページなどで確認しましょう。
③墓地の管理者に改葬の意思を伝える
現在の墓地の管理者にしっかり改葬の意思を伝えないと、トラブルにつながる可能性があります。
例えば、あるお寺の墓地の場合、具体的な説明がないまま改葬の意思を伝えて、住職から高い離檀料を請求されたというケースがあります。
そのため、誠意をもって墓じまいを決断した理由や事情を管理者に説明し、理解を得られるよう努めましょう。
あわせて、自治体へ提出しなければならない埋葬証明書の発行も管理者にお願いしましょう。
④新しい納骨先を決める
現在のお墓から遺骨を移さなければならないため、新しい納骨先を決めなければなりません。
新しい納骨先を探す際は、以下の3つのポイントを踏まえながら探しましょう。
- 自宅から近い場所
- 家族や親族に負担がかからない
- 希望やイメージに合う
また、新しい納骨先を見つけた場合、永代供養の申し込みや受入証明書の発行をお願いするようにしましょう。
⑤改葬許可証などの書類を揃えて自治体に提出する
現在の墓地がある自治体に改葬許可証を発行してもらい、改葬許可証と以下の書類を揃えて、自治体の担当窓口に提出することが求められています。
- 埋蔵(埋葬)許可証
- 受入証明書
埋蔵許可証は現在の墓地の管理者から発行してもらい、受入証明書は新しい納骨先の管理者から発行してもらいます。
ちなみに改葬許可証は郵送やホームページからの印刷に対応した自治体もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
⑥閉眼供養を行い、遺骨を取り出す
閉眼供養とは先祖の魂を抜き、普通の石に戻す供養のことです。
現在のお墓から遺骨を取り出す時に行われることが多く、閉眼供養を終えてから遺骨を取り出します。
そして、遺骨を取り出す時には重たい墓石を動かさなければなりません。
事前に住職や石材店へ相談し、閉眼供養を行なった後、遺骨を取り出すようスケジュールを組みましょう。
⑦墓石の処分・墓所の解体工事を行い、使用権を返還する
遺骨を取り出した後、墓石の処分・墓所の解体工事を行い、使用権を墓地の管理者へ返還します。
墓石の処分・墓所の解体工事は石材店に任せるべきですが、墓所の規模や石材店ごとの料金によって金額に違いがあります。
また、工事が不十分なまま使用権を返還すると、墓地の管理者とのトラブルにつながりかねません。
担当者の応対・工事実績・見積もりをもとに、信頼できる石材店に工事を任せましょう。
⑧遺骨を新しい受け入れ先に納骨する
取り出した遺骨を新しい受け入れ先まで運ぶ際、骨壷が壊れないよう慎重に運ばなければなりません。
また、公共交通機関を利用するのであれば、ルールに従いながら運ぶ必要があります。
そして、遺骨が入った骨壷が汚れていることや水が入り込んでいることもあるため、きれいにしてから納骨するようになります。
墓じまいにおける親族間のトラブル
墓じまいを進める中で、親族間でのトラブルが発生し、墓じまい自体を断念せざるを得なくなったケースもよく耳にします。
しかし、どのようなトラブルがあったのか、トラブルを防ぐ方法があるのか気になりますよね。
ここからは、墓じまいにおける親族間のトラブルについて解説します。
墓じまいにおけるよくある親族間のトラブル
墓じまいをする中で、親族間でのトラブルはよく聞く話です。
では、どのようなトラブルがあるのでしょうか。
墓じまいにおけるよくある親族間のトラブルは、以下の3つです。
- 親族への相談もなく墓じまいを進める場合
- 親族間で費用負担の折り合いがつかない場合
- 先祖代々のお墓が途絶えることを嫌がる場合
親族への相談もなく墓じまいを進める場合、お墓の維持・管理にさまざまなコストがかかることで負担となっている可能性があります。
特に、年金のみで生活する高齢者になると、自身の生活を犠牲にしながらお墓を守らなければなりません。
また、墓じまいは結果的に高い費用を負担しなければならないですが、金額の高さや費用負担の割合で折り合いがつかないケースがあります。
さらに、今までの伝統を大切にしたい気持ちが強くなり、先祖代々から受け継がれたお墓が途絶えることを嫌がって反対するケースもあります。
実際に墓じまいを経験した方から、以下のような話を聞くことがありました。
このように、さまざまな背景によって親族間でトラブルになり、墓じまいができないことがあります。
親族に墓じまいを相談する適切なタイミング
墓じまいをするためには、家族や親族へ相談することは必要不可欠ですが、どのタイミングで相談すべきか迷いますよね。
墓じまいの相談をする適切なタイミングは、墓じまいをする前に相談することです。
さまざまな理由でお墓を維持できなくなった場合、墓じまいが選択肢として挙げられます。
しかし、事前に親族へ相談しないまま墓じまいをすると、「勝手に墓を処分した」「理由も分からないまま勝手に墓を処分した」など反発を招き、より大きなトラブルに発展しかねません。
必ず墓じまいをする前に、墓じまいに行き着いた理由や背景を正直に打ち明けながら相談しましょう。
墓じまいにおける親族間のトラブルを防ぐための方法
墓じまいを進める中で、できれば親族間でトラブルにならないように進めたいと思いますよね。
そのような親族間のトラブルを防ぐ効果的な方法が、以下の3つとなっています。
- 親族とのコミュニケーションを密にする
- 信頼できる業者や納骨先を相談しながら選ぶ
- 墓じまいに関係する専門家の協力を得る
墓じまいをスムーズに進めるためには、親族間のコミュニケーションを密に行うことで、墓じまいの段取りなど大事な情報を共有し、連携不足や段取り不足によるトラブルを回避できます。
そして、費用や納骨先に納得できない親族がいる場合、候補をいくつか提案し、話し合いながら選ぶことをおすすめします。
頑なに墓じまいに反対する親族がいる場合、住職や業者などの専門家に話し合いの場に立ち会ってもらい、アドバイスを受けながら話し合いましょう。
墓じまいの理解を得られやすくなり、結果的に親族間のトラブルを防ぐことにつながる結果となります。
まとめ
近年、さまざまな理由で墓じまいをする人が年々増えており、今後も墓じまいの需要は高くなると考えられます。
墓じまいには、お墓を維持するための費用面や手間がかからなくなる一方で、墓じまいを行う費用や手間がかかるといったデメリットも含まれています。
また、納骨先や業者の選定から自治体への手続きなど、さまざまな手順を踏まなければならないことや墓じまいにおける親族間でのさまざまなトラブルが発生する可能性も十分あります。
親族から墓じまいへの理解や協力を得られるよう事前に相談し、コミュニケーションを密にとりながら信頼できる業者や納骨先を選び、連携しながら墓じまいを進めましょう。