寒さが本格的になってくる11月頃から、朝夕と日中の寒暖差が大きくなり、高齢者にとっては特に、体調に気を使う時期でもあります。
寒さによって体調が下がることは、免疫力が低下し、感染症が流行りやすくもなります。
また、高血圧や低体温症、関節痛の悪化、ヒートショックなどさまざまな病気の原因になる可能性も。
ここでは、寒さが厳しくなる冬を安全に過ごすための注意点や健康管理についてご紹介します。
高齢者が寒がる理由は?
高齢者は冬だけでなく、夏でも暑さをあまり感じず、冷房を使わないという方も少なくありません。
なぜ、そんなに寒がりなのか、それは加齢によって体内の機能が低下していることによって起こっていることが原因です。
その原因は、主に4つあります。
体温調節機能の低下
一つめは、体温調節機能の低下です。
人の体温は、36〜37℃ほどに調節される仕組みとなっています。
高齢になると、すべての臓器の機能が徐々に低下していくことで、体温調節機能の低下と運動不足による汗腺の機能の低下で発汗しにくくなり、体温調節がしづらくなります。
筋肉の減少
二つめは、筋肉の減少です。
筋肉は体内に熱を生み出す働きがありますが、高齢者は筋肉量が減少すると、寒さを感じても体温を上げにくくなってしまいます。
適度な運動で、筋肉量を落とさないようにしましょう。
食欲の低下
三つめは、食欲の低下です。
高齢になるとすべての臓器の機能が低下していきますが、消化機能の低下や歯が悪くなっていくことで、食欲も低下していきます。
食欲が低下して食事量が減ることで、必要なカロリー摂取量が少なくなり、熱を生み出すための材料が減ってしまい、体温が低くなってしまい、夏でも寒さを感じやすくなります。
また、食欲の低下により低栄養となって、寒がりになる原因になります。
下肢静脈瘤
四つめの理由は、下肢静脈瘤です。
高齢者に多く見られる下肢静脈瘤は、静脈の弁が壊れることで血液が心臓に戻りにくくなってしまう足の病気です。
血液が足に滞るため、だるさやむくみ、冷えなどの症状が現れ、夏でも血流が悪く、寒がる原因になります。
高齢者が気をつけたいことは?
気温が低くなり、寒さが増すと高齢者にとって、何に気をつければいいのか、具体的な症状を6つご紹介します。
低体温
体の中心部分の温度が35℃より低くなり、身体の機能に異常をきたす状態のことを低体温と言います。
症状として現れるのは、激しい震えが起きたり、意識が正常に保てなくなってしまい、ひどくなると、呼吸や心臓が停止し、「凍死」のような状態を引き起こすことも。
実は凍死は、夏に起こりやすい熱中症の死亡率と変わらないと言われています。
80%が65歳以上の高齢者で、屋内での発生が大半です。
感染症
冬はノロウイルスによる感染性胃腸炎やインフルエンザ、コロナウイルスなどの感染症が、特に流行る季節です。
ノロウイルスは、羅患すると嘔吐や下痢などの激しい胃腸症状を引き起こします。
原因として、加熱が不十分な二枚貝やノロウイルスに感染した人の嘔吐物・便から感染することが多いです。
特に二枚貝を食べる時は、十分に火を通し、食事前やトイレの後は、流水と石けんを使ってしっかり手洗いをすることが大切です。
家族に嘔吐や下痢をしている人がいる場合、感染を広げないよう、正しく処理をすることが重要です。
他にも、冬に流行しやすいインフルエンザやコロナウイルスは、38℃以上の発熱や頭痛、だるさ、関節痛、筋肉痛などの症状が現れ、特に高齢者は重症化しやすいです。
咳やくしゃみで広がりますので、外出する際は人混みを避け、マスクをつけましょう。
寒くなると体温が低くなり、免疫力が落ちてしまうため感染症に掛かりやすくなります。
また、エアコン等によって空気が乾燥し、ウイルスが喉に付着しやすくなるため、感染リスクが高まります。
高齢者がインフルエンザやノロウイルスが重症化すると、命を落とす危険もあります。
関節痛
気温が低くなると血管が凝縮し、血流が悪くなってしまい、血行不良から筋肉が冷えて堅くなるため、関節にも負担がかかってしまいます。
ちょっとした動きでも関節が痛くなることもあり、痛いところを庇おうとして他の部分にも負担をかけてしまう悪循環にもつながります。
ヒートショック
交通事故と同じくらいの死亡率の高いヒートショックは、寒い場所から暖かい場所と室温が急激に変化することで、急激な血圧変動を起こし心臓に負担がかかり、脳梗塞や心筋梗塞、めまい、失神などといった疾患を引き起こしてしまう現象で、突然死の原因となります。
暖房を使用することで部屋と部屋との間で温度差が大きくなり、体は気温の変化に合わせて体温を調整しようと、血管を広げたり縮めたりしますが、高齢者は、高血圧などの持病を抱える人が多いため、特に注意が必要です。
部屋は暖かいけど、浴室が寒いという状態でお風呂に入る時が一番起きやすく、命に関わることも少なくないため、気を付けなければなりません。
脱水
夏に起こりやすい脱水ですが、冬の脱水症状は実は冬も気を付けなければいけません。
高齢者が脱水しやすい理由として、筋肉量・骨量・細胞数の低下が起こることで、体の機能も大きく代わり、体に蓄える水分が減少した状態が続きます。
特に冬の脱水状態は、高齢者にとっては気づきにくいので、意識してこまめに水分補給をすることが重要です。
気温が高く汗をかくことが多く、脱水症状を起こしやすい夏場と違い、空気が乾燥しているうえに、寒い時期は喉の乾きを感じにくく、水分摂取量が減少してしまいます。
高齢者は喉の乾きを自覚しにくいため、水を飲む機会がさらに減ってしまい、乾燥する季節ということもあり、吐く息や皮膚からも水分が出ていくので、冬でも脱水を起こすことがあります。
皮膚の乾燥
冬は空気が乾燥するうえ、加齢とともに皮脂や汗の分泌が減り、肌の保湿力が低下することで、高齢者は肌が乾燥しやすい状態となります。
肌が乾燥することで、皮膚のバリア機能が失われてしまい、傷つきやすく床ずれができやすくなったり、痒みなどの肌トラブルが起こります。
高齢者の肌は特に弱いので、肌トラブルで裂傷などを引き起こすことがありますので、入浴後に保湿クリームを塗布し、乾燥を予防しましょう。
低温やけど
気温が低くなると、こたつやストーブなどの暖房器具を使うことが増えることで、皮膚の感覚が鈍く、熱さに気付きにくい高齢者は、低温やけどを起こしやすくなります。
他にも、カイロや湯たんぽなどを使用するときにも注意が必要です。
長時間同じ場所にカイロなどが触れていないか、気に掛けることが大切です。
冬の健康対策について
高齢者の健康対策について必要なことをまとめましたので、これからの冬の過ごし方の参考にしてください。
適度な運動
寒くて身体を動かしにくいですが、適度な運動は血行を促進して体温の保持に役立ち、体温が保てれば、低体温症の予防になります。
また、運動して血流がよくなれば関節痛の予防や改善になるため、冬でも積極的に体を動かしましょう。
気温と湿度を保たせる
リビングは暖かいけど、お風呂場やトイレは寒いということが、ヒートショックを引き起こしてしまいます。
脱衣所やトイレに小型ヒーターを持ち込んだり、浴室に床暖房があれば活用しましょう。
また、お風呂では急に立ち上がらず、お湯は約40℃で10分以上浸からず、血圧変動が起こりにくいように過ごしましょう。
他にも、見えやすい場所に温度計と湿度計を置き、こまめにチェックするといいでしょう。
目で気温や湿度を確認することで、暖房器具の設定温度を調節することができるので、常に部屋を適温に保てます。
こまめな水分補給
寒い冬は水分補給を忘れがちなので、喉の乾きを感じる前に、意識して水分をとるようにしましょう。
理想の水分摂取量は、1日1〜1.5リットルが目安と言われ、2時間おきに水分をとるなど、時間を決めておくのがおすすめです。
コップ一杯分(200ml程度)を1日6〜8回に分けて飲むと、多くても1.6リットルの水分が摂取できます。
特に、運動や入浴の前後、寝る前や起きたあとは体から水分が放出されているため、水分補給を心がけましょう。
ただ、水分補給をする際、持病によっては、水分制限が必要とする場合がありますので、心不全や腎臓病を患っている方は、かかりつけ医に相談しましょう。
スキンケア
皮膚の乾燥を防ぐために、こまめなスキンケアを行うことが大切です。
特に手は水仕事などで乾燥しやすいので、ハンドクリームを持ち歩くなどして頻繁に塗ってください。
起床後や入浴後にボディークリームを塗ったり、洗顔後に化粧水や乳液をつけたり、美容アイテムを使って保湿を行いましょう。
他にも、肌が弱い・敏感肌という人は皮膚科に受診をし、ほとんど刺激のない保湿クリームや軟膏を処方してもらうこともおすすめです。
規則正しい生活
寒さが厳しく外出する機会が減ってしまうことで、睡眠時間が昼夜逆転してしまいがちです。
そんな時こそ、決まった時間に起きたり寝たり、食事にも気を付けるなど規則正しい生活を送ることは免疫力アップにつながります。
免疫力が上がることで、感染症のリスクも下がります。
身体を冷やさない
外出時は、マフラーや手袋・帽子などを使って身体を冷やさないようにしましょう。
素材は吸湿性の衣類を重ね着し、温度調節ができるようこまめに着たり脱いだりできることもおすすめです。
また、食事でも身体が温まる大根やにんじん、ゴボウなどの根菜類を摂るといいですよ。
まとめ
高齢者の方の冬の過ごし方や注意点についてご紹介しました。
年々、寒さが厳しくなる冬は、低体温症やヒートショックなどさまざま健康リスクが高まる季節です。
寒い冬を乗り越えるには、適度な運動や部屋の温度・湿度を常に適度に保ち、こまめな水分補給、規則正しい生活を過ごすことを心がけましょう。