このように、実家じまいについて悩む方もいるのではないでしょうか。
実家じまいの方法はさまざまあり、それぞれにメリット・デメリットがあるため、あなたや家族の状況・費用面などに合わせて選ぶことがおすすめです。
また、早いタイミングで家族に相談し、専門家のサポートを受けつつ、話し合いながら進めると、結果的に家族とのトラブルを防ぐことにつながります。
これから実家じまいを考え始める方は、最後までご覧ください。
実家じまいとは?
実家じまいとは、両親やあなたが住んでいた実家をさまざまな方法で処分することです。
実家じまいを行うのか、主な理由は以下の4つです。
- 実家の相続が発生した時
- 両親が介護施設に入った時
- 両親が亡くなった時
- 空き家となった実家の管理に手間がかかると思った時
実家の維持管理には多くの手間・費用がかかり、中には空き家となった実家によって、税金が高くなる場合や近隣の住民に迷惑かけると言った現実もあります。
そのため、やむを得ず実家じまいを考える方が年々増えている傾向となっています。
実家じまいの4つの方法
実家じまいと一言で言っても、具体的に4つの方法があり、あなたや家族の状況に合わせて選ぶようにしましょう。
こちらでは実家じまいの4つの方法をご紹介します。
そのまま売却する
そのまま売却する方法は他の方法とくらべると、手間や費用がかからない方法の一つです。
家と土地はそのままにし、家財道具を処分するだけで売却できるからです。
売却方法は土地と家を一緒に売却する方法がポピュラーですが、家を売却し、土地は借地として使う方法もあります。
しかし、家の状態によっては売却できない場合もあり、あらかじめ不動産業者などのプロの協力を得ながら進めましょう。
解体して売却する
解体して売却する方法は、家の状態が悪い場合・土地の価値が高い場合に効果がある方法です。
例えば、都市部のような立地条件がいい土地の場合、土地自体の利用価値が非常に高いです。
また、本来であれば家と土地を売却したいけど、家の状態が悪い場合、売却額が低く見積もられることや売却自体できないこともあります。
このような背景から、家を解体して更地にした方がさまざまな土地活用ができるため、買い手がつきやすくなります。
不動産会社へ買取に出す
買い手が見つからない場合・早めに実家じまいをしたい場合には、不動産会社へ買取に出す方法が効果的です。
実家を売却に出したけど、すぐに買い手がつかないため困っている方や仕事・私生活などで実家じまいにスケジュールが取れないけど早く終わらせたい方は数多くいます。
不動産会社へ買取に出すことによって、売却までにかかる期間やコストを少なくし、手間もあまりかからず済むため効果的です。
しかし、買取後に不動産会社がリノベーションや修繕を施して再販売する都合もあるため、買取額は通常の売却額の約7割程度まで下がります。
売却せず活用する
実家じまいは売却や解体だけではありません。
売却せずに資産として活用し、収益化を目指す方法もあります。
例えば、実家を相続して売却した場合、瞬間的に高い収益を得ることができますが、その後は何も残りません。
また、実家は家族との思い出が詰まった場所であることから思い入れが強く、実家じまいをしたいけど売却や解体に踏み切れない方も多くいます。
こうした背景から、実家を売却せずリノベーションを施した上で賃貸物件として活用することにより、実家を残したまま、売却した時の金額より少ないですが、継続的に収益を得ることできます。
実家じまいにかかる費用と助成金
先ほど4つの実家じまいの方法を解説しましたが、どの方法を選んだとしても費用が発生します。
しかし、お住まいの自治体や実家じまいの方法によっては助成金によるサポートを受ける事が可能です。
こちらでは実家じまいにかかる費用の目安と助成金について解説します。
実家じまいにかかる費用の目安
実家じまいにかかる費用の目安は、以下のとおりです。
①不用品を処分する場合の費用の目安
- 自分で行う場合:15,000円〜
- 業者に依頼する場合:55,000円〜
②売却する場合の費用の費用の目安
- 不動産仲介手数料:231,000円〜336,600円
- 印紙税:1,000円〜30,000円
- 譲渡所得税:売却額×約30%で算出された金額
- 抵当権抹消費用:10,000円〜30,000円
③解体する場合の費用の目安
- 約900,000円〜1,200,000円
その他にも、実家に両親などの家族が住んでいる場合、住み替えなければならないため、引越し費用・転居先に支払わなければならない費用が必要です。
不用品の処分を業者に依頼する場合、不用品の量や間取りなどによって費用が変化します。
また、解体する費用も、1坪あたりの金額が設定していることにより、土地の広さによって費用が変わります。
そのため、いくつかの業者から見積もりをとった上で、金額を重視して業者を選びましょう。
実家じまいで利用できる助成金
お住まいの自治体によっては、実家じまいの時に利用できる助成金があるため、費用を抑えることにつながるでしょう。
よくある助成金として、家の解体やリフォームをする時に利用できる助成金が挙げられます。
特に、家の解体で利用できる主な助成金の種類は、以下のとおりです。
- 老朽危険家屋解体撤去補助金
- 倒壊の危険性が高い家屋を除却するための補助金制度
- 都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金
- 都市の景観を損ねる空き家を除却するための補助金制度
- 空き家解体撤去助成金
- 空き家の解体費用を補助する制度
こうした助成金を利用するためには、最低限以下のような条件を満たさなければなりません。
- 税金を滞納していない
- 新築建物を建てるための解体ではない
- 老朽化が進んだ建物である
また、家の解体で利用できる助成金の金額は1,000,000円までが目安となります。
助成金を利用したいのであれば、まずはお住まいの自治体に助成金制度があるのか、ある場合は助成金の金額を確認しましょう。
実家じまいの方法のメリット・デメリット
実家じまいの方法はさまざまあるため、どの方法を選ぼうか悩んでしまう方が多いのではないでしょうか。
このような時は、それぞれのメリット・デメリットを知ることによって、どの方法が最適解か判断しやすくなるでしょう。
実家じまいの方法のメリット・デメリットは以下のようになります。
そのまま売却するメリット・デメリット
家と土地をそのまま売却した場合のメリットは、以下のようになります。
メリット
- 瞬間的に大きな利益が得られる
- 家と土地の維持・管理の負担がなくなる
- 相続した場合に発生する相続税の支払い費用に充てることができる
- 手間や費用が少なく済む
- 家族内での相続トラブルを防ぐことができる
一方、家と土地をそのまま売却した場合のデメリットは、以下の通りです。
デメリット
- 思い入れのある実家を売却する後ろめたさを感じる
- 売却までに長い期間が必要な場合がある
- 家や土地の状態によっては売却できないリスクがある
- 譲渡所得税が発生する
解体して売却するメリット・デメリット
家を解体して更地にしてから売却するメリットは、以下のようになります。
メリット
- 解体し更地にすることで土地活用の幅が広がり、買い手がつきやすい
- 維持・管理にかかるコストが軽減できる
- 家の老朽化による事故などのトラブルがなくなる
- 都市部のような場所にある土地の場合、利用価値が高いため売却しやすい
一方、家を解体して更地にしてから売却するデメリットは、以下の通りです。
デメリット
- 解体するために高い費用がかかる
- 更地にした場合、固定資産税が高くなるリスクがある
- 実家がなくなることで寂しさや後ろめたさを感じる
買取に出すメリット・デメリット
不動産会社などへ買取に出すメリットは、以下のようになります。
メリット
- 買い手を探す手間を省くことができる
- 短い期間で売却できる
- 家や土地の維持・管理にかかるコストを軽減できる
- 瞬間的に利益を得ることができる
一方、不動産会社などへ買取に出すデメリットは、以下の通りです。
デメリット
- 買取金額が通常の売却額より低い
そのまま活用するメリット・デメリット
家と土地をそのまま活用するメリットは、以下のようになります。
メリット
- 家賃など継続的な収入を得ることができる
- 空き家を有効的に活用することができる
- 自身の生活環境を得ることができる
- リフォームやリノベーションにより家の劣化を抑えることができる
反対に、家と土地をそのまま活用するデメリットは、以下の通りです。
デメリット
- 賃貸物件として活用する場合、維持・管理のコストがかかる
- 空室が続き、収入が得られないリスクがある
- 設備投資や集客などの初期コストがかかる
- 家賃の滞納や入居者同士のトラブルのリスクがある
- 収入に対する所得税や固定資産税などの税金がかかる
早めに家族へ実家じまいを相談することがおすすめ
実家じまいを行う場合、あなたの両親や兄弟などの家族に相談し、全員の同意を得ることは欠かせません。
しかし、どんなタイミングで相談すべきか悩みどころだと思われますが、できれば早めに家族へ実家じまいを相談することをおすすめします。
早めに相談しないと、以下の問題がより悪化し、取り返しがつかなくなる場合があるからです。
- 無駄に維持・管理にかかるコストが必要になる
- 両親が認知症によって介護が必要な状態になると、売却できないリスクがある
- 空き家の場合、経年劣化により傷みやすくなる
例えば、実家がマンションの場合、両親がすでに住んでいない状況でも所有している限り、毎月管理費や積立金などを支払わなければなりません。
しかし、支払いが滞ってしまうと、実家が差し押さえられ、余計なコストが発生するリスクがあります。
また、実家の所有者である両親が認知症によって介護が必要な状態になると、正常な判断のもとで同意が得られず、売却できないリスクもあります。
さらに、両親が他界し、空き家となった実家をそのまま放置すると、経年劣化により家が傷みやすくなる問題も発生するでしょう。
このようなリスクを放置すると状況が悪化し、実家じまいがより困難なものになります。
そのため、あなたの両親が元気なうちに、早めに家族全員で実家じまいについて相談をしましょう。
実家じまいの手順
実家じまいを進めるためには、具体的に4つの手順を踏まなければなりません。
ここからは、実家じまいの4つの手順についてくわしく解説します。
①実家じまいの方向性を家族と話し合う
実家じまいを始める前に、実家じまいの方向性を家族と話し合いましょう。
特に、両親が亡くなったことによって実家の遺産相続が発生する場合は必ず行わなければなりません。
一般的には、実家を売却して得た利益を相続人に分ける方法がとられる場合が多いです。
また、遺産相続においては遺言状の有無も関係しており、遺言状があれば記された内容に従う流れとなりますが、遺言状がない場合は遺産分割協議を行う必要があります。
さらに、実家の築年数や立地条件などによって、最適な実家じまいの方法にちがいがあります。
そのため、法律や不動産のプロの協力を得ながら、家族全員が納得できる遺産相続や実家じまいの方向性について話し合いましょう。
②不用品・残地物を片付ける
相続方法や実家じまいの方向性が決定したあとは、実家内にある不用品・残地物を片付けなければなりません。
しかし、相続が発生した場合、不用品を含めた実家内にある物が全て相続財産であるため、いずれあなたや他の家族に相続されます。
こうした事情により、むやみに実家内にある物をなんでも処分すると、家族内で揉める原因となるので注意が必要です。
また、片付けはあなたや家族が協力して行うことも可能ですが、スケジュールの確保が難しい場合、不用品の処分や遺品整理を取り扱う専門の業者に依頼することをおすすめします。
③不動産業者を探す
不用品・残地物の片付けを進めながら、あらかじめ決めた実家じまいの方向性に従って不動産業者を探し、相談しましょう。
不動産業者に相談すると、実家じまいに関する専門的なアドバイスや具体的な売却プラン・査定額を提案してくれます。
しかし、採用している査定方法や基準によって、同じような不動産業者でも業者ごとで査定額に差がつくことがよくあります。
そのため、いくつかの不動産業者に査定をしてもらい、査定額が比較的高い業者や信頼できそうな業者を選びましょう。
④実家を売却する
不動産業者が決まり次第、サポートを得ながら実家の売却を進めます。
実家を売却する際、購入希望者が内覧する場合における立ち会いや実家の管理が難しい場合もあるでしょう。
そこで、不動産業者に相談しておく事により、購入希望者への対応から売却が決まるまでの実家の管理などのサポートを受ける事が可能です。
こうしたサポートを受けると、あなた自身の負担が少なく済むと同時に、スムーズに実家を売却することにつながるでしょう。
実家じまいでは家族間のトラブルに注意
実家じまいを進めていくと、さまざまなトラブルが発生し、特に注意が必要なのは家族間のトラブルです。
家族間のトラブルがきっかけとなり、家族内での関係性悪化や実家じまいが進まないことに発展するでしょう。
ここからは実家じまいにおける家族間のトラブルについて解説します。
家族間でのトラブルの具体例
実家じまいにおける家族間でのトラブルはさまざまな内容があります。
筆者が今まで関わってきた高齢者のご家族で実際に実家じまいを経験した方々から、家族間で起きたトラブルについて以下のような話を聞くことができました。
トラブルを防ぎながら実家じまいを進めるための4つの方法
家族とのトラブルを防ぎながら実家じまいを進めるためには、あなたと家族との意識統一や連携は欠かせません。
そのため、以下の方法を取り入れ、家族の協力を得ながら実家じまいを進めましょう。
- 家族とのコミュニケーションを密にする
- 役割分担・スケジュールを決めて進める
- 精神的な負担へのフォローにも目を向ける
- 専門家によるサポートを受ける
家族と密にコミュニケーションをとる事により、両親や兄弟などの家族から少しずつ実家じまいの理解を得られるでしょう。
密にコミュニケーションをとる事ができると、実家じまいにおけるスケジュールや役割分担を相談しながら組み立てて進めることも可能です。
しかし、スケジュールを縫いながら実家じまいを進めなければならないこと・慣れ親しんだ実家を手放すことへの不安や後ろめたさによって心身に負担がかかる可能性もあります。
家族の負担に気を配りつつ、不動産や法律面などの専門家によるサポートを受けると、実家じまいの負担を軽減し、効率よく進めることにつながります。
まとめ
今回は実家じまいについて解説しました。
さまざまな理由によって実家を維持できないことにより、実家を処分する実家じまいを検討する方が増えています。
実家じまいの方法も売却・解体が一般的ですが、実家を資産として活用し、継続的な収入を得られるようにする方法を選ぶ方もいます。
あなた自身や他の家族の状況・費用面などに合わせて、どの方法にするのか最適解を選びましょう。
しかし、実家じまいには両親・兄弟などの家族からの理解を得ることは欠かせず、これまで実家じまいを進めてきた方の中には家族間でのトラブルにつながったケースも少なくありません。
家族とのコミュニケーションを密にしながらスケジュールや役割分担を具体的にし、家族の負担に配慮しつつ、さまざまな専門家のサポートを受けて実家じまいを進めましょう。