このように、空き家状態の実家の相続や維持・管理の費用について悩む方は多いのではないでしょうか。
空き家状態の実家を相続すると、結果的に生活環境を得ることや収入につながります。
しかし、実家を維持するために必要な税金や管理に関するコストが発生し、そのまま空き家を放置した場合、税金が最大6倍に跳ね上がるリスクが生じます。
空き家状態の実家の維持が難しい場合、相続放棄や売却などさまざまな方法を検討する必要があるでしょう。
今回は、空き家状態の実家の相続や維持費について、以下のポイントについて解説します。
- 空き家状態の実家を相続するメリット・デメリット
- 空き家状態の実家にかかる維持費
- 空き家状態の実家を相続放棄する方法と注意点
- 相続放棄以外で空き家状態の実家の維持費を軽減・解消する方法
- 「特定空き家」「管理不全空き家」に指定された際の税金の金額
空き家状態の実家の相続や維持費について悩みがある方は、ぜひご覧ください。
空き家状態の実家を相続するメリット・デメリット
このようにお考えの方は、空き家状態の実家を相続した場合のメリット・デメリットを知ることで、相続すべきか考える際の一つの指標となります。
空き家状態の実家を相続すると、どのようなメリット・デメリットがあるのか解説します。
空き家状態の実家を相続するメリット
空き家となった実家を相続すると、以下のようなメリットがあります。
- 自分の持ち家や別荘になる
- 税金が安くなる
- 収入源に変わる
空き家となった実家を相続すると、持ち家や別荘として使うことや固定資産税が安くなります。
また、賃貸に出す・更地にして駐車場やアパートに作り替えることで、収入源に変えることにもつながります。
こうしたメリットが魅力的だと思う方は、前向きに相続することを考えた方が良いかもしれません。
空き家を相続するデメリット
空き家状態の実家を相続するデメリットは、下記の4つです。
- 税金や管理費用が発生する
- 場合によっては修繕費や解体費用が発生する
- 思った以上に資産価値が低い可能性がある
- 実家を放置していると税金が上がる場合がある
空き家となった実家を相続すると、固定資産税などの税金や管理費用が発生し、売却や何らかの土地活用を行う場合は修繕費・解体費などの費用も必要となります。
また、査定の結果、思ったよりも資産価値が低いため、売却しても二束三文にしかならないケースもあります。
さらに、管理をせず放置した場合、税金が上がるリスクもあり、上記のデメリットが不安要素となる場合、相続しないことを視野に考えた方がいいかもしれません。
空き家状態の実家にかかる維持費
空き家状態の実家を相続すると、さまざまな税金や管理費用などの経済的負担がかかるデメリットが発生します。
こちらでは、空き家状態の実家にかかる維持費について解説します。
固定資産税
固定資産税は土地や家にかかる税金で、空き家となった実家を相続すると、必ず支払う義務があります。
固定資産税は各自治体が決めた課税標準額を用いた以下の計算式で金額を計算します。
固定資産税=標準額×1.4%
固定資産税は住宅用地に対する軽減措置が自動的に適用されるため、課税標準額がよ最大6割も安くなる場合があります。
しかし、空き家状態の実家をしっかり管理できていない場合、特定空き家・管理不全空き家に指定されるため、住宅用地特例の適用から外され、税金が高くなることにつながります。
都市計画税
都市計画税は固定資産税と同じように、土地や家を所有する人に支払う義務があります。
都市計画税は自治体の都市計画事業や土地区画整備事業の財源で、自治体が定める区域内における家・土地が対象です。
こちらも課税標準額を用いた以下の計算式で計算します。
都市計画税=課税標準額×0.3%
しかし、各自治体の判断で0.3%よりも低い税率に設定されている場合や住宅用地に対する軽減措置により、課税標準額が最大3分の2安くなります。
光熱水費
空き家状態の実家を相続した場合でも、契約が続くかぎり光熱水費が発生します。
電気・ガス・水道等のライフラインは基本料金や最低料金が設定されているため、仮に一度も利用していないとしても、光熱水費は発生します。
空き家状態の実家を使わなかった場合にかかる光熱水費の目安は、以下のとおりです。
- 電気代:月々数百円~2,000円
- 水道代:月々1,000円~1,500円
- ガス代:月々1,000円~2,000円
このように、月単位の金額をみると払えない金額でないかもしれませんが、長期的にみると大きな負担となります。
しかし、光熱水費が惜しくなり契約を破棄した場合、水道・電気等が利用できなるため、実家の管理が行き届かなくなります。
その場合、特定空き家や管理不全空き家に指定されることで固定資産税が高くなり、かえって費用面の負担が増える結果となります。
光熱水費を節約したい場合は、管理面に不都合が生じないか考慮しましょう。
修繕費・メンテナンス費
空き家となった実家を相続すると修繕費・メンテナンス費は必要経費です。
費用をかけて実家の修繕とメンテナンスを行うことで、家としての価値を下げることや管理不足による事故を防ぐことができます。
主な修繕費・メンテナンス費の目安は、以下のとおりです。
- 外壁の塗装:50万円以上(10年に1回程度)
- 屋根の修理:数十万円(必要に応じて)
- 草刈り:1〜3万円(年2回〜4回)
- 窓ガラスの交換:数万円(破損時)
修繕費・メンテナンス費は一度の負担が大きいですが、放置しておくと家としての価値を下げることや最悪の場合、税金が増える等の罰則を受ける場合があります。
保険料
空き家となった実家を相続する場合、保険に入ると、さまざまな災害や火災による被害を抑えることにつながります。
空き家の実家に必要な保険と年間の保険料は、以下のとおりです。
- 火災保険:約12万円
- 地震保険:約4万円
- 家財保険:約1.5万円〜2万円前後
さらに、下記の3点を参考に、保険選びを行うことがおすすめです。
- 補償内容と保険料のバランスがとれているか
- 保険料の割引を受けられるか
- 空き家管理サービスを受けられるか
近年、大規模な災害が頻発しており、今後も発生すると考えられるため、事前の備えとして、保険への加入は必須といえます。
空き家状態の実家を相続放棄する方法と注意点
空き家状態の実家を相続すると、住居や土地の維持に必要なメンテナンス等の管理を行う必要性があります。
しかし、さまざまな事情によって、相続しても維持できないため、やむなく相続放棄を選ぶ方も多いのではないでしょうか。
本章では空き家状態の実家を相続放棄する方法と注意点について解説します。
相続放棄をする方法
空き家となった実家を相続放棄するために、家庭裁判所へ手続きを行います。
- 相続する財産(空き家状態の実家)の調査と評価
- 相続放棄の意思決定
- 相続放棄の申述書など必要な書類の準備
- 家庭裁判所へ相続放棄の申述を行う
- 相続放棄の証明書を受け取る
相続放棄の手続きは、相続放棄の申述書・被相続人の住民票または戸籍謄本または除籍謄本などの準備も欠かせません。
3ヶ月以内に家庭裁判所へ手続きが必要
空き家の実家を相続放棄する場合、相続開始を知った日から3ヶ月以内に手続きを行わなければなりません。
民法915条に基づき、相続人が相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所にて行わなければなりません。
3ヶ月を超えてしまうと、相続放棄が認められなくなりますので、短い期間ですが、早めに対応することが求められます。
相続放棄をしても財産管理を続ける必要がある
空き家となった実家を相続放棄できたとしても、財産管理をし続けなければならない場合があります。
民法第940条により、相続放棄をした人が占有している財産は、次の相続人や相続財産精算人に引き渡すまでは、財産の管理義務が発生しているからです。
例えば、相続放棄後に空き家となったの実家の管理不足により、通りかかった通行人にケガをさせた場合、相続放棄をした人の責任になる可能性があります。
手続き上では相続放棄ができていたとしても、次の相続人等へ相続するまでは管理義務が発生しているため、こちらも注意すべきポイントです。
相続放棄以外で空き家状態の実家の維持費を軽減・解消する方法
相続放棄によって、空き家となった実家を相続せず、維持費を解消できますが、相続放棄以外にも維持費を軽減・解消する方法があります。
ここからは、相続放棄以外で空き家状態の実家の維持費を軽減・解消する4つの方法について解説します。
売却する
空き家となった実家を売却すると、維持費の軽減・解消だけではなく、収入を得ることにもつながります。
実際に空き家となった実家を売却した方から、以下の話を聞く事ができました。
しかし、売却方法や築年数によって、売却までの時間や手間がかかり、相場よりも低い金額で査定されるリスクもあり、優先すべきポイントを決めてから売却方法を決めることがおすすめです。
賃貸に出す
空き家となったの実家を賃貸に出すことは、継続的な家賃収入を得るため、維持費の軽減・解消につながります。
賃貸に出す際は、以下のポイントを踏まえることが必要です。
- 実家の査定と適切な家賃設定
- 借家契約の形態
- 税務上の手続き
- 物件管理の方法
実際に賃貸に出した方から、以下のような話を聞く事ができました。
しかし、修繕費・リフォーム費用は自身で負担しなければならない点や借り手が見つからないリスクがあることを踏まえて検討しましょう。
更地にする
空き家となった実家を更地にすると、維持・管理の費用が無くなることやさまざまな土地活用によって収入につながります。
実際に実家を更地にした方から、以下の話を聞く事ができました。
しかし、解体費用がかかることや減税されていた固定資産税・都市計画税が高くなるというデメリットがあるので注意しましょう。
空き家バンク制度を利用する
空き家バンク制度を利用すると、家賃収入が手に入り、維持費の軽減につながります。
空き家バンク制度は、空き家の所有者と希望者をマッチングし、条件が合えば希望者に貸し出す自治体が運営するサービスです。
空き家バンク制度を利用している方から、以下のような話を聞くことができました。
しかし、金額面を含めたさまざまな条件で折り合いがつかないこともあります。
その際は契約業務を請け負う仲介業者に相談し、協力を得ることが必要です。
特定空き家・管理不全空き家に指定されると税金が跳ね上がる
空き家状態の実家の管理を怠ると、自治体から特定空き家・管理不全空き家に指定される可能性があります。
指定されると、場合によっては税金の金額が跳ね上がるため、空き家状態の管理は欠かせません。
本章では特定空き家・管理不全空き家の意味や税金の金額が跳ね上がる理由について解説します。
特定空き家と管理不全空き家とは
特定空き家と管理不全空き家とは空き家対策特別措置法における空き家の分類です。
特定空き家の特徴は、以下のとおりです。
- 1年以上誰も住んでいない
- 管理がほとんどされていない
- 倒壊の危険性が高い
- 衛生上の問題がある
- 景観を著しく損なっている
また、管理不全空き家の特徴は、以下のとおりです。
- 1年以上誰も住んでいない
- 十分な管理がされていない
特定空き家・管理不全空き家に指定されると、自治体から指導・勧告・命令・行政代執行と段階を追いながら罰則を受けます。
指定されると固定資産税が6倍に跳ね上がる
特定空き家・管理不全空き家に指定された場合にのみ、罰則として固定資産税が最大6倍まで跳ね上がります。
本来、土地や家を持つと、固定資産税等の住宅用地特例によって、固定資産税が最大6割安くなります。
しかし、特定空き家・管理不全空き家に指定されると特例から外されてしまい、結果として固定資産税が6倍に跳ね上がります。
そのため、空き家となった実家の管理が難しい場合、売却や土地活用など別の方法を考えた方が賢明かもしれません。
まとめ
今回は空き家となった実家の相続や維持費について解説しました。
空き家となった実家を相続すると、収入や生活環境を得るなどのメリットがありますが、固定資産税やメンテナンス費などの維持費を負担しなければなりません。
維持費の負担や管理ができない場合、家庭裁判所へ手続きを行い相続放棄することや売却や賃貸に出すなどの方法もあります。
そして、実家の管理ができないと、自治体から特定空き家・管理不全空き家に指定されます。
指定されると段階的な罰則を受けますが、最悪の場合は固定資産税が最大6倍に跳ね上がるリスクがあるため注意が必要です。
このように、空き家となった実家を相続するとメリット・デメリットがあるため、ご自身の状況に合わせて相続放棄や相続放棄以外の方法を選びましょう。