風邪かな?と思っているその症状、もしかしたら結核の可能性も考えられます。
いいえ、結核は最近でも2024年10月福島県郡山市の高齢者施設で結核の集団感染が確認されています。
結核は「古くて新しい感染症」とも言われていて、現在でも日本国内で1万人以上の人が感染しているんです。
最悪、命を落とすケースもあり、日本でも毎年結核に感染した1,500人以上の人が亡くなっているので、油断できません。
特に、高齢者は要注意の感染症です。
結核とはどんな病気?
結核とは、「結核菌」という菌が主に肺に炎症を起こす病気です。
また、結核は慢性感染症とも言われており、結核菌が体内に留まり、ゆっくり発育していきます。
結核は症状が分かりにくく、育っていってしまうのが特徴です。
昭和20年代頃まで結核は、日本人の死亡原因の1位というその高い死亡率と感染率から「不治の病」、「亡国の病」とも呼ばれ、人々に混乱と脅威を与えてきました。文豪として知られる正岡子規や、樋口一葉など著名人も過去に結核が原因で命を落としています。
しかしながら、冒頭でお伝えした通り、2024年10月に福島県郡山市の高齢者施設では、結核の集団感染が明らかになっています。
施設の関係者が発病後、家族や利用者合わせて34人が感染し、そのうちの4人が発症したと報道されました。
結核は昔だけでなく、令和の現代でも感染する可能性は充分ある。
結核はどう感染していく?
結核の感染経路は空気感染(飛沫核感染)と呼ばれ、結核菌に感染している人の咳やくしゃみが空気中に飛び散り、その空気中を漂っている結核菌を吸い込むことで感染してしまいます。
結核菌は数㎛(マイクロメートル)という超微細なので、落下せず一定時間空気中を漂っている状態が続き、それが感染を広げてしまうという特徴を持ちます。
ですので、例えば結核を発病している人が乗っていたバスや電車の座席周辺には、その人が降りた後でも結核菌は残っていて感染する可能性があります。
しかも、マスクをしていても結核菌の場合空気中に漂っているので、防ぎようがないという厄介な感染症です。
しかしながら、結核菌を吸い込んだ人が必ず感染するわけではなく、大抵の場合は体の抵抗力で結核菌を追い出すことができます。
鼻や喉、気管などが、結核菌が入らないよう防いでくれている場合もあります。
それでも体の中に結核菌が入り残ってしまうケースもあり、普段は免疫により抑えられているため発病せず保菌している状態という人もいるんですね。
そう考えると、結核菌は、簡単に体の外に出て行ってくれない、相当しぶとい菌だということが分かります。
「これって結核かも…」その症状とは?
結核にかかるとどんな症状が出るのでしょうか。
結核の主な症状は、発熱と痰のからむ咳、体のだるさが2週間以上続きます。
そうなんです。
結核の特徴として、風邪の症状と似ているためそのまま見過ごしてしまうケースも多いことが分かっています。
実際、タレントのJOYさん(39歳)は、20代の頃に結核を発症していますが、半年以上も咳が続いていたそうです。
重症化した時には「ずっとインフルエンザにかかっているようだった」と明かしており、長期間原因が分からないまま辛い症状を抱えながら生活していたんですね。
他にも注意しておきたい結核の初期症状はこちらです。
- 体重が減ってきた
- 何となく食欲がない
- 近頃寝汗をかいている
出典元:MBS NEWS
症状が進むとどうなるか?
結核の症状が悪化すると、血の混じった痰が出る、血を吐く、呼吸困難に陥るといった重篤な状態になります。
最初は症状が軽いため、結核だと知らず自己判断で放置したり様子を見ることがあるかもしれません。
結核は症状が悪化し、肺のみにとどまらずリンパや血管内に結核菌が入り込み、リンパ節、骨、腎臓、脳など他の臓器にも広がり、最悪死亡してしまうケースもあるのでかなり危険な病気なのです。
おかしいと思ったら早めに受診を
「風邪っぽいけど、何とか動けるし大丈夫!」そう自己判断してしまい、受診もせずに過ごしていたら実は結核だったというケースも考えられます。
コロナウィルスのように急に高熱が出て喉が痛いなど分かりやすい症状だと緊急性を感じますが、前述した咳や微熱、体のだるさといった症状が2週間以上ダラダラ続く場合は危険信号です。
結核は放っておいて重症なってしまうと治療が難しくなり、若い人であっても亡くなることもあります。
おかしいと思ったら、早めに医療機関に受診しましょう。
風邪という診断後も症状が治まらない時は、再度同じ医療機関にかかり、医師に症状を伝えましょう。
結核の検査とは?
結核を発病してしまったと疑われる場合、以下の検査を実施することがあります。
- 胸部X線撮影検査 費用:2,100円程度
- 喀痰検査 費用:1,500~3,000円程度
- PCR検査 費用:17,800円程度
※費用は目安です
自分の症状が結核ではないかと心配な場合は、最寄りの保健所に連絡すると、結核の診療が可能な病院を教えてくれるので、問い合わせてみることをおすすめします。
高齢者は結核に要注意!その理由とは?
高齢者は、結核が日本国内で大流行していた時代に実はほとんどの人が感染を受けていると考えられています。
高齢者の体内に残った結核菌は、感染すると一生体内にい続けます。
そして、若いころは免疫力により抑えられていた結核菌が、加齢とともに免疫力が下がると増殖し発症、症状が出ると言ったケースがあります。
さらに、日本国内では毎年1万人以上の人が結核に感染していますが、その約4割が80歳以上の高齢者というデータからも高齢者が結核に注意する必要性が高いことが分かります。
コロナ渦から緩和の今は感染経路が増える
コロナ渦では、自粛自粛と言われ続け、県外への帰省もできない状態が続きましたよね。
しかしながら、コロナウィルスも5類と移行になり、ライフスタイルも緩和されてきた現在、結核に関しても感染経路は増えた状態と言えます。
利用者様にとっては、数年間ほとんど会うことができなかった家族と過ごす時間が増えたことは大変喜ばしいことですが、国外や県外から面会に訪れる方もいらっしゃり、面会後に利用者様が体調不良になるとヒヤヒヤすることも多くなっています。
高齢者は特に免疫力が落ちているので、風邪やその他感染症にかかりやすい状態です。
施設内で暮らす高齢者も、今では職員からだけでなく家族や友人など外部の人との接触も多くなっているので、結核に感染するリスクは高まっていると言えます。
結核を発症する人としない人の分かれ道とは?
結核は感染していても発症する人は全体の10~20%と言われているため、高齢者が必ずしも結核に感染した後発病するとは限りません。
その通りです。結核は、もし感染しても、発症する人としない人とに分かれ、知らずに感染して、発症せず終わるケースもあります。
その分かれ道のカギとなるのが免疫力です。
そもそも免疫力が高い人は結核菌に感染しづらいという特徴があり、例え感染しても発病しません。
このことから、高齢者であっても免疫力が高ければ、結核の発病を防げる可能性が高まるということが分かります。
結核に注意が必要な人
高齢者の他にも、下記の人達は結核に注意が必要です。
- 糖尿病患者
- ステロイドを使用している人
- 人工透析を受けている人
出典元:MBS NEWS
上記の人達は持病や服用している薬によって免疫力が下がっており、結核に感染した場合発病する可能性が高くなります。
結核の治療法とは?
結核の治療法として、抗結核薬を半年から9か月間飲み続ける方法があります。
ここで、注意すべき点は、長期間薬を飲み続けることが面倒になり、治療途中であるにも関わらず薬を飲むのをやめたり、医師の指示通りに薬を飲まなかった場合は、耐性のついた菌が現れるため薬が効かなくなり、治療が困難になることがあります。
そのため、結核と診断されたら医師の指示を必ず守り、処方された薬をきちんと治療が終了するまで飲み続けることが大切です。
海外ではすでに結核菌の薬が効かない耐性を持つ結核菌が出てきています。
予防接種は乳幼児のみ
結核の予防接種として、乳児の場合はBCG(ハンコ注射)の予防接種を生後1歳までに受けられますが、その予防効果は約15年と言われています。
基本的な考え方として大人になると免疫があるので、予防接種の必要はなくなるんです。
では、「加齢により免疫力が低下している高齢者がBCGの予防接種を受ければ良いのでは?」という考えが浮かぶかもしれませんが、どうなのでしょう。
そもそもBCGは、乳幼児期の子どもが結核菌による発病で重症化し、髄膜炎になることを防ぐという目的で接種されている注射です。
そして、大人がBCGの接種で結核菌を予防する効果は認められていないことから高齢者になってから予防接種を打つという方法もないのです。
海外旅行帰りに注意すべき点
実は、ロシアやアジア圏などでは、結核の薬が効きにくい結核菌の割合が高くなっています。
万が一自分が薬が効きづらい耐性菌の結核に感染および発症してしまった場合、高齢者に感染してしまうと治療が難しくなる可能性が高くなります。
そのため、同居家族に高齢者がいる方は海外旅行帰りに自分の体調が少しでもおかしい場合は、なるべく直接の接触を避けるようにしましょう。
海外旅行後の面会で気をつけることは?
家族が高齢者施設に入所している場合、海外旅行後の面会で気をつけるべきことをお伝えします。
海外旅行帰りにおじいちゃん、おばあちゃんにお土産を渡して早く喜ぶ顔が見たいと思うことでしょう。
そのような時は、面会する前に担当職員に渡航後であることや、日にちなどを伝えておくことが大切です。
事前に施設側に伝えておくことで、もし面会後に体調に変化があった場合、早急な対応ができるからです。
また、面会して帰宅後に自分に発熱や咳などの症状が現れた場合も、施設側に連絡しましょう。
連絡をもらえるとそれだけ施設側も感染を広げないよう早めの対応ができ、集団感染を防ぐことができます。
結核を予防するには?
結核は空気感染なので有効な予防法はないと言われています。
そこで重要となってくるのが、自身の免疫力を高めることでそもそも結核を発病させないことです。
免疫力を高めるには、普段の生活で以下の点を心がけましょう。
免疫力を高める
- 充分な睡眠
- 適度な運動
- バランスの取れた食事
- 禁煙
どれも健康な体作りの基本となることですね。
運動が苦手な方は無理なく、自分のできる続けられそうなことから始めてみましょう。
椅子に座ったままできる体操もあるので、膝の痛い方などは座ってする運動をおすすめします。
椅子に座ったままできる体操
ここでは、フェイスタオルを使った、椅子に座ったままできる体操を紹介します。
タオル体操
- フェイスタオルの両端を持ち、両手の上げ下ろしを行う(10回)
- フェイスタオルの両端を持ち、両手を上げて左右に体を傾ける(各5回ずつ)
- フェイスタオルの両端を持ち、左右に腰をひねる(各5回ずつ)
まとめ
結核は、昔の病気ではなく、令和の現在でも毎年1,500人もの人が命を落としており、特に免疫力の落ちている高齢者は注意すべき病気です。
微熱、痰がらみの咳や体のだるさなどが2週間以上ダラダラ続くような時は、結核の可能性も視野に入れ、早めに医療機関への受診をしましょう。
免疫力を高める方法まとめ
- 充分な睡眠
- 適度な運動
- バランスの取れた食事
- 禁煙