孤独との戦い。老人ホームでのコロナ制約と面会制限の現実。

孤独との戦い。老人ホームでのコロナ制約と面会制限の現実。

2019年中国で第1例目の感染者が報告され、あっという間に日本でも広まった新型コロナウイルス感染症。

2023年の現在に至るまで世界中の人々が、約4年間日常を制限される日々が続きました。老人ホームも大きな影響を受けた1つです。2019年以降新型コロナによって老人ホームは面会不能となりました。

家族と離れて生活している高齢者は、面会に来る家族と会うことを楽しみにしている方が多いです。しかし新型コロナによって入居者の楽しみは奪われてしまうことになりました。

老人ホームでのコロナ制約と面会制限の現実についてお伝えします。

面会するための課題

コロナで制限がかかっている面会ですが、私の経験を通して大きな課題をお伝えします。

医療従事者とご家族の危機感の違い

コロナがニュースになり、施設では早めの感染症対策が行われました。

初めの方はまだ面会制限はありませんでしたが、入室時の体温測定と手指消毒を行っていました。施設に入ってこられたときに声をかけ、実施する流れでした。

そこで感じたのは、医療従事者ではないご家族の感染症に対する意識の違いでした

面会に来られるご家族皆様に声掛けを行っていたのですが、状況を理解し協力いただけるご家族とそうではないご家族とに分かれました。

職員さん
職員さん
体温測定と手指消毒をお願いします。

と声をかけると、とても嫌そうな顔をして無視される方や断られる方もいらっしゃいました。

施設側としては断られた時に「なんで断るんだろう」「知らないウイルスが流行っているのを知らないのかな?」「感染症のこわさを知らないのかな?」と疑問ばかりありました。ご家族の割合でいうと8:2ぐらいです。ほとんどのご家族が協力していただけましたが、中には協力いただけない方もいらっしゃるのです。

悪気はなさそうに「(私は)大丈夫だから!」と体温測定や手指消毒を断られる方もいらっしゃいました。施設のなかの入所者様を守るための声かけ、対策でしたが医療従事者ほど危機感の感じ方に差があることを実感した経験でした。

コロナが少しずつ日本で流行り始め、日本中の人々が「危険だ」と思い始めたときやっと体温測定や手指消毒に協力していただけたのです。

「ほっ」としたのもつかの間です。次の課題が出てきました。

危機感のギャップで起きた事件

マスクの着用・ご家族の体調(風邪症状はないか、身の回りにコロナ感染した方はいないか、渡航歴はないか、2〜3日以内に発熱はしていないか)を施設に入られるときに伺っていましたが、ここでまた問題が起きました。

数日前面会されていた入所者様が発熱したのです。

ご家族に連絡をしもう一度お話を伺うと、ご家族内で発熱、風邪症状がある方がいたとのことでした。それは面会時には申告がありませんでしたが、面会されていたときにはご家族内で風邪症状がある方がいらっしゃったとのお話でした。

信じられませんが、本当の話です。

それを聞いた私たち医療従事者はショックであり呆れ、衝撃でした。

風邪症状のあったご家族はコロナと診断され、面会をした入所者様もコロナと診断されました。最初感染した入所者様は4人部屋で同じ部屋の方を隔離し対応していましたが、診断がつくまで2〜3日かかっていた為高齢者で免疫力の低い方入所者様たちはすぐに感染が広がってしまいました。

コロナと診断された方は病院に搬送し、また次の日も感染者が出て隔離、搬送と繰り返しました。「ばれなければいい」と軽い気持ちで申告をされたのでしょう。職員も何人も感染し出勤する職員も減り、疲労から免疫力が落ち感染するという悪循環でした。

施設では何十人という入所者様がいて、その1人の命を落とすことになりかねないことです。自分の家族に面会したい気持ちはとても分かります。しかし他の入所者様も一緒に生活をしているということを忘れないでいただきたいです。

そんな出来事もあり、しばらくして面会が不能となりました。

「なんで面会ができないんだ」と立腹される方の気持ちも分かります。「自分たちは100%感染対策もできて、申告もできている」そういったご家族がほとんどです。しかし中にはこういった出来事もあるんです。こういった出来事の経験から面会を制限し利用者様を守るしか方法がありません。

入所者様全員の命を守るための制限であるということをご理解いただきたいです。

面会制限の現実

面会ができずに寂しい思いをしたり元気をなくす利用者様も多く、ご家族様からも顔をみたいを多くの声があり始まったのがタブレットを使用したズームでの面会でした。タブレットに馴染みのない入所者様は「なんだこれは?」と不思議そうにされていましたが、タブレットにうつる家族を見ると涙ぐまれたり笑顔になりました。

それはご家族も同じでした。タブレットでの面会も制限時間が決められ、15分と短い時間でしたが入所者様とご家族様にとっては充実した時間になっていました。認知症があり言葉を発することが難しい入所者様や、からだを動かすことが難しい入所者様もとても良い刺激になっていました。

それから少しずつアクリル板越しの面会が可能になり、2024年現在ではマスクを着用し面会ができるまでになりました。

しかし冬になるとインフルエンザや嘔吐下痢など感染症の多い季節になり、面会制限がかかってしまいました。私の勤務している施設では、コロナが流行る前から感染症の流行りやすい時期になると面会制限がかかっていたためご理解いただいていることが多いです。

面会ができない施設もある

私の勤務している施設では面会が緩和されていますが、面会ができない施設もあると思います。「面会したいのになぜ?」と思う方も多いと思います。

施設によっては

  • 免疫力の低い利用者が多い
  • 呼吸器疾患がある利用者が多い
  • 体調が急に変化しやすい利用者がいる
  • 認知症の方が多い

など施設によって特徴があります。

上記3つのケースの面会が難しいのは、先ほどの経験談から分かるように利用者様を守るためです。

認知症の方が多い病棟

認知症の方が多い施設では、隔離をすることが難しいため制限が厳しいこともあります。

認知症の方は1人1人症状が違いますが、自分の部屋がわからず違う部屋に行かれる方もいます。またマスクを付けることが理解できず、マスクを外してしまう方もいます。

もしほかの部屋に入ってしまう方が感染症になってしまったら、、、。

自分で歩くことができるため部屋から出てきてしまいます。そのまま他の部屋に入ってしまい、感染してしまいます。

私は嘔吐下痢が流行ってしまったときに、認知症の方が多い施設にいましたがこのような経緯ですぐに広がってしまいました。「入ってはだめです」と説明しても、忘れてしまったり自分の部屋だと思って入られるので静止がききません。また部屋に入って姿が見えないと危険な方もいらっしゃいます。

ベッドに登ったり、歩行が安定しない方は転倒し骨折・怪我につながる恐れもあります。食べ物でないものを食べてしまったり、胃ろうをされている方のチューブをさわってしまったり、、。職員もつきっきりで過ごすことが難しいため、部屋からでて過ごしていただいているかたも少なくありません。

このような事情もあります。

面会不可の場合でも安心したい

面会したい気持ちは分かります。顔を見たい、話したいそういった希望を叶えたい気持ちでいっぱいです。しかし入所者様全員の命を守るため行っている面会制限です。その面会制限も施設によって全く違います。私の経験は1つの例でしかありません。

面会ができないと悩んでいる方、施設の方にタブレットでの面会や様子を見たいからと写真を撮ってみせてもらうのはいかがでしょうか。

施設の職員も入所者様とご家族のためにできることを日々考えていますので、施設の職員に相談をしてみたり疑問がある場合は聞いてみることで疑問や不安を解消してみてください。

まとめ

施設のコロナによる面会制限についておわかりいただけましたか?

医療従事者として施設側の面会制限もご家族の面会をしたいという両方の気持ちが分かります。どちらとも入所者様のためを思っている気持ちが強いことは分かりますよね。

コロナのせいでまだ面会ができず不安や疑問があるご家族は、一度施設の職員にその不安や疑問をお話されてみてください。私の施設のようにタブレットでの面会や、入所者様の様子を写真で撮って見せたりとできる限りの対応をしていただけると思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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