- 老人性乾皮症ってなに?
- 高齢の母の体のかゆみが気になる
- 冬の乾燥で肌がかゆい時の対処法を教えて
こんな悩みにお答えします。
私は介護士として10年間、特別養護老人ホームやデイサービスなどの介護施設で100人以上の利用者様のケアを経験してきました。
介護施設でケアをする中で年齢性別問わず、ダントツで多いのが皮膚トラブル。
入浴介助や排せつ介助など、衣類の着脱をする際に皮膚状態を確認をするのですが、多くの方が慢性的に皮膚トラブルを抱えています。
特に秋〜冬にかけて、空気が乾燥する時期に症状がさらにひどくなります。
高齢者の9割がかかっていると、言われている老人性乾皮症。
たかが、かゆみと甘くみず老人性乾皮症についてしっかり理解して予防、対策していきましょう。
老人性乾皮症(ろうじんせい・かんぴしょう)とは
老人性乾皮症は65歳以上の高齢者の方に多く見られる症状です。
老人性乾皮症とは、加齢に伴い皮脂や汗の分泌が減少し、皮膚の角層の水分保持機能が低下することにより、皮膚が乾燥した状態のことです。
皮膚に浅い亀裂や白いふけのような鱗屑が生じ、掻痒(そうよう:かゆみ)を伴います。
引用:健康長寿ネット(https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/hifushikkan/rojinseikampisho.html)
高齢者は、年々肌の水分をためる力が弱くなり、水分がなくなった肌はカサカサに乾燥した状態です。
また乾燥して皮膚を保護するバリア機能が下がることで、肌が敏感になってしまい外からの刺激を受けやすくなります。
特徴で言うと、以下のような症状が代表的です。
- 肌の表面がザラザラになる
- 皮膚が浅くひび割れてしまい、ポロポロ白い粉のように剥がれ落ちる
- 背中や腰、太もも、すねに特に症状がでやすい
考えられる原因としては、以下の3つです。
- 加齢
- ストレス
- 栄養不足
この他にも紫外線や糖尿病などの病気が関係したもの、抗がん剤やステロイド剤治療などが考えられます。
加齢に関しては、人間誰しも年を取るものなので仕方ないにしても、ストレスや栄養不足に関しては、周りの方が気にかけてあげることで改善できます。
特に高齢の方がひとりで住んでいる場合は、さまざまな理由で栄養のバランスがかたよりがちです。
家族が近くに住んでいても忙しいと、なかなか料理を作りに行くことができないかもしれません。
そんな時は、高齢者専用のお弁当サービスを使うのも手です。
バランスの取れた食事が手軽にとれるのでおすすめです。
私が勤めているデイサービスでも、ひとり暮らしの方は100%高齢者専用のお弁当サービスを使っています。
理由はおもに、以下の3です。
- 自分で料理を作ることができない(家族も作りに行けない)
- 自分で買い物に行けない
- お菓子ばかり食べてしまう
「ウインナーだけしか食べない」と聞くと結構パンチが強いですが、高齢の方は大なり小なり同じようなことをされてる方が多いです。
家族が近くに住んでいる場合でも、家族にはご自身の生活もありますし、毎日料理を作りに行くのは相当大変です。
そんな時はひとりで抱え込まず高齢者専用のお弁当サービスを使いましょう。
ストレス面では、なかなか夜に寝付けず不眠になってしまっていたり、不眠になることでイライラする。
ストレスでかゆみが発生というパターンも…
症状が進行するとたな皮膚トラブルも
老人性乾皮症が進行すると、皮脂欠乏症湿疹や皮膚裂傷を誘発します。
皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)
老人性乾皮症によるかゆみで、皮膚をかきむしり続けると炎症がおきて湿疹になります。
この炎症をともなう状態が皮脂欠乏性湿疹です。
- 乾皮症のかゆみでかく
- 皮膚のバリア機能が破壊されて皮膚の状態が悪化する
- さらにかゆみが強くなり、またかいてしまう
この①、②、③の繰り返しによって皮膚の状態がどんどん悪化して皮脂欠乏性湿疹になります。
下肢、すね部分に多く見られます。
皮膚裂傷(ひふれっしょう)
日常生活の中で摩擦、スレなどによって皮膚が裂けてしまう状態です。
特徴は、75歳以上の高齢者の足や腕によく見られます。
よくある状況としては、
- 車いすの移乗をするときにフットレストで足をぶつけてしまった
- 車いす乗車中に腕がひじ掛けより外にでていて、モノや壁に擦ってしまった
- ベッドや車いすから移乗するときに、ふくらはぎを擦ってしまった。
こんなことで皮膚が傷つくの!?と思うかもしれませんが、高齢者のからだを動かすときには細心の注意を払わないといけません。
清潔保持、保湿、保護で対策する
老人性乾皮症の対策には、清潔保持、保湿・保護があります。1つずつ見ていきましょう。
清潔保持
洗身:からだを洗うのは1日1回。湯船の温度は熱くしすぎないように注意
ボディーソープを使ってからだを洗うのは1日1回にして、1日に何度もからだを洗うのはやめましょう。
皮脂が少なくなって、バリア機能が低下してしまいます。
※毎日入浴できない場合、わき、首、陰部、足など汚れやすい部分を中心に洗いましょう。
入浴温度の目安は38℃〜40℃で、熱すぎるお湯も皮脂をとりすぎてしまい、乾燥肌になりやすいので注意。
入浴は清潔を保つ一方で、洗い方や入浴の仕方によっては皮膚にダメージを与えて乾燥を促進する要因にもなる注意が必要です。
洗い方:きめ細かい泡でやさしく洗う
ボディーソープを泡立てて、きめ細かい泡でやわらかいタオルや手を使ってやさしく洗うのがポイントです。
きめ細かい泡で洗うことで、肌に負担をかけずに洗えます。
- 洗浄成分をムラなく広げることができる
- すすぎが早い
- 皮脂膜のとりすぎを防ぎ、角質層を守る
- クッション効果で皮膚との摩擦を和らげる
ナイロンタオルでゴシゴシ洗うのはNGです。
ゴシゴシ洗うと洗った気にはなりますが、皮膚を刺激することで湿疹になってしまう危険性も!
洗浄剤:自分にあった洗浄剤を選ぶ
洗浄剤を選ぶときには、弱酸性やマイルド、しっとりと表記のある洗浄剤などが、肌に刺激が少ないものでおすすめです。
特徴は、毎日入浴してからだを洗われる方に適しています。
- 刺激が少ない
- すすぎが早い
毎日お風呂に入れず、汚れが強い場合には、アルカリ性の洗浄剤を使うのも効果的です。
- 刺激がある
- 泡立ちが良い
- 洗浄力が強い
場面によって使い分けましょう。
保湿と保護
保湿剤:入浴後5分以内に塗るのがベスト
保湿剤には、水分が逃げないよう皮膚表面に膜をはり、肌の表面をしっとりさせる効果があります。
入浴後、皮膚に水分が吸収されている状態で保湿成分を含んだローションを塗るのが効果的です。
またローションを塗って、皮膚に浸透させたあとに、軟こうやクリームで皮膚を油膜で覆うと保護効果が高くなります。
1日数回にわけて塗りましょう。できたら朝、昼、晩ぐらいのペースで塗りたいですね。
お部屋の湿度の調節:湿度を50%以上にキープ
冬になると、空気が乾燥します。お部屋の空気が乾燥しすぎないよう、室内の湿度を50%〜60%に調節しましょう。
また高齢者の方は電気毛布やこたつを好んで使われる方が多く、長時間使用される傾向にあります。
長時間使用すると皮膚の乾燥につながり、肌状態を悪化させてしまうので注意が必要です。
日常生活での注意点
爪を短くしておく
介護される側も、する側も爪を短くしておくことが大切です。
爪が長いとからだをかいたときに、傷になってしまったり、不用意に介護者が介助者の皮膚を傷つけてしまったりします。
手の爪が長いと、爪の間に汚れが入り込み不潔です。爪の病気(白癬)の元になったりもしますので、気をつけて下さい。切り過ぎも深爪になってしまうので注意です。
服の選び方
素材:シルクやコットンを選ぶ
服の素材を選ぶときには、保湿性が高く肌触りの良い、シルクやコットンを選びましょう。
逆にポリエステルやナイロンは吸湿性が低いので摩擦が起こりやすく、肌への刺激になりやすいので避けたほうが良さそうです。
まとめ
老人性乾皮症の初期段階で、適正にケアすることによって、皮脂欠乏性湿疹や皮膚裂傷などの進行症状を未然に防ぐことができます。
ただ老人性乾皮症になってしまった場合、かくなといっても、かゆいものはかゆいのです。
声掛けだけで抑えるのは難しいことだからこそ、9割の高齢者の方々が抱えている身近で厄介なトラブルです。
なので今回紹介した、
- バランスの取れた食事
- ストレス削減
- 清潔
- 保湿、保護
- 日常生活の注意点
の中から1つずつ習慣化していただいき、皮膚の乾燥状態を予防して症状改善に努めましょう。