高齢者の爪はもろく、身体的問題や認知症などで手入れが難しくなってしまいます。
介護施設でも、利用者さんの爪を切って欲しいと家族から頼まれますが、介護職員では処置しきれない爪があると、何もできないため爪はひどくなっていきます。
どうにかしてあげたいが、爪は切り方によっては悪化させてしまったり、炎症を起こし痛みが伴ってしまう場合もあります。
特に高齢者の爪で多くみられる肥厚爪と言って、主に親指の爪が分厚く爪切りでは切れず、ニッパーや爪切り用のハサミでないと切れないものがあります。
では、こういった爪トラブルとなってしまう原因や特徴、予防法について解説します。
なぜ高齢者の爪はトラブルが多いのか?
高齢者の爪トラブルが増える理由として、身体的問題に起因することが多いです。
高齢になると、視力・握力の低下や足腰の痛みによって、腰を前に倒して足の爪先まで手を伸ばすという姿勢ができなくなってしまいます。
また、感覚障害や血行不良などで長時間靴下を履いていると、指先は温度や湿度が常に高い状態のため、雑菌が増殖しやすくなってしまいます。
高齢者にもっとも多い爪のトラブルは?
高齢者にもっとも多い爪のトラブルは主に3つありますので、ご紹介いたします。
肥厚爪(ひこうそう・ひこうつめ)
肥厚爪とは、爪が重なって厚くなる症状です。
原因は、長期間にわたって、爪に圧力が加わってしまうと起こるもので、手の爪より足の爪に多くみられます。
肥厚爪の特徴は
あさりやはまぐりの貝殻のように層になって肥厚爪するものや、爪全体が一枚のように厚く、硬くなってしまったり、爪の色が混濁し、茶褐色や灰色に変色してしまいます。
長く放置してしまうと、巻き貝のように爪が曲がり、割れやすくなり、厚くなった爪の中は空洞になっているので、剥がれやすいです。
また、靴下をはく時に引っかかり、着脱しにくいこともあったり、靴を履くたびに痛みが伴うことで、歩くことに消去的になってしまい、筋力・運動能力の低下にもつながり、ほとんど外出しなくなってしまいます。
爪が厚くなることで、転倒リスクも高くなってしまい、全身の機能低下で寝たきりや認知症の引き金になります。
他にも、見た目も健康な爪とはだいぶ違うため、他の人に見られることを気にしてしまい、内向的になるといった心の影響も受けます。
肥厚爪の原因
爪が厚くなる原因は、4つあるので解説します。
靴が合わない
肥厚爪の原因の一つは、自分の足の形に合っていない靴やサイズの合っていない靴を履き続けるといった、靴が合わないことで肥厚爪が起こりやすくなります。
特に、女性はハイヒールのような爪先が窮屈な靴を履き、男性の場合は工事現場で履いていた作業靴の影響によって圧迫され、爪が伸びにくくなり、歩く度に爪が伸びる方向とは逆方向に圧迫されることで、厚くなり固くなりやすくなってしまいます。
作業靴は、落下物が当たらないよう、つま先に鉄板が入っているため、一般的な靴と比べると柔らかくありません。
歩く度に爪が鉄板に当たるため、爪が厚くなってしまい、外からの刺激を受けると自分を守るため、爪自体に厚みをつくる性質があります。
足の皮膚でいうと、タコや魚の目が出来るのと同じことです。
行き場を失った爪の成長方向が上向きに押し上げられてしまうので、妊娠によって体重増加で、爪先へ物理的な負担を掛け続けることも原因の一つと言えます。
衝撃
爪には、爪母基という爪の工場と言われている部分があり、ここから新しい爪を作っています。
そこにモノを落としたり、踏まれたりと強い衝撃がかかってしまうと、爪の生え方が急変したり、厚みや曲がったり変色など、さまざまなトラブルを起こしてしまう恐れがあります。
加齢
二つ目の原因は、加齢によるものと言われています。
爪は乾燥すると割れやすくなったり、弾力性を失ってしまうことで、縮んでしまい厚く固くなってしまいます。
また、足の角質と同じように、爪も固くなりやすく老化によっても厚さが出てくるので、70〜80代の高齢者に多くみられます。
深爪
深爪や骨の変形などがありますが、長年の摩擦によって起こることもあります。
爪を切る際、白い部分が少しでも伸びていると気になって切ったり、深爪の習慣があると、先端の皮膚や軟部組織が、硬く盛り上がり爪の成長を邪魔して、爪の下に新たな爪が生まれ、爪の層が厚くなることもあります。
爪のケア不足
爪のケアは肥厚爪出なくても、とても大切なことです。
爪と皮膚との間に角質が溜まりやすく、水虫の原因にもなりますので、入浴時にキレイに洗わないと、角質が詰まって厚くなってしまう恐れがあります。
また、爪切りの回数が少ないことも原因の一つですので、手の指で爪を当てた時、指先が当たらない場合は切りましょう。
肥厚爪の種類
肥厚爪の種類には、「爪自体が厚くなる場合」と「爪の下に角質が溜まって厚くなる場合」の2つあり、そこから分かれて4つの種類があります。
まずは、「爪自体が厚くなる場合」について解説します。
厚硬爪甲(こうこうそうこう)
厚硬爪甲とは、爪が前に伸びることができず、爪が根元から伸び続け盛り上がるように厚く硬くなってしまう状態のことです。
爪甲鉤彎症(そうこうこうわんしょう)
爪甲鉤彎症とは、猫の鉤爪のように彎曲していて、爪そのものが厚いうえに硬く、色も濁り、表面がデコボコと盛り上がり、横筋が出来て次第に爪と爪が段々と層状を形成した状態の症状です。
爪が分厚くなり爪が濁るといった症状は、、爪白癬と間違ってしまいますが、爪白癬はボロボロと脆くなる状態とは違い、爪が切りづらくなるほど硬くなってしまうのが特徴です。
爪甲鉤彎症になる原因として、先が細く生地の硬い靴やヒールなど、爪に大きな負担がかかる靴を履いたり、爪に強い衝撃が加わると、爪が剥がれてしまったり、爪が真っ直ぐに伸びる事ができず、上方向や斜め上方向に伸びてしまいます。
ひどくなると爪床から爪甲が剥がれ、爪の下に空洞ができます。
また、爪に大きな負担がかかる靴を履いているとなりやすいので、足元への負担が大きなスポーツ選手やバレエダンサーに見られます。
長期間の爪への負担が重なって起こるため、50代以降の発症が多いです。
爪甲下角質増殖症
爪甲下角質増殖症とは、爪の下に角質が溜まり不全角化という爪の成長異常により爪が押し上げられて爪が厚くなってしまう状態です。
原因は、爪白癬や乾癬・指先湿疹の二次変化とも言われています。
爪白癬とは
爪水虫のことで白癬というカビが爪に感染した状態で、中高年の男性に多く、爪が白っぽく濁り、分厚くなってしまいます。
爪水虫になると爪がもろく、少しの刺激で爪が割れたり細菌感染しやすいです。
乾癬とは
皮膚が赤く盛り上がり、皮膚の表面がポロポロと剥がれ落ちるなど、皮膚の見た目に特徴的な症状がみられる病気です。
原因は分かりませんが、免疫機能の異常が関係しており、乾癬になりやすい体質にさまざまな要因が加わることによって発症すると言われています。
要因には、感染症や薬剤、不規則な生活習慣、ケガなどがあります。
肥厚爪を予防するには?
肥厚爪は、普段から爪の手入れをすることで、予防することができます。
では、どのような予防方法があるのかご紹介します。
爪をしっかり洗う
爪の間を洗う時は、歯ブラシなどブラシを使うと爪と皮膚の間の角質がキレイに取れます。
爪を洗っていても、シャンプーや石けんを流した時に、爪の間に溜まってしまう事があります。
順番は、一番最後に洗うといいです。
爪切りの時はヤスリを使う
爪切りの先が湾曲していると深爪しやすく、肥厚している爪に使うのはとても難しいので、爪ヤスリを使うことをおすすめします。
自分で爪ヤスリをするやり方はこちら!
- 入浴時に皮膚と爪の隙間に蓄積した汚れや角質をキレイにする
- ヤスリを使用して一つずつ丁寧に爪を削っていく
- 爪と皮膚の間に詰まっている角質を除去する
- 残った爪の形を爪切りなどで整えてます
重症の場合、電動ヤスリで削り取る方法もありますが、専門的技術が必要なためご自身で行うことはとても難しいです。
外傷・圧迫の予防
外傷は、物を落としてしまい、爪や爪の根元に直接的なダメージを受けてしまうと、爪をつくる爪母が損傷してしまうことです。
圧迫とは、靴が自分の足に合っていないことで、爪が圧迫されてしまい、血流が悪くなったりすることです。
足に合った靴とは、足の長さや幅、甲の高さ、足の形などに合う靴を履くだけで、圧迫が軽減されます。
靴が合っていないと足先にタコができていることがありますので、要注意です。
では、どういった靴を選べばいいのか、以下のことを意識してみるといいですよ。
- つま先に余裕がある
- 足指の上部分に余裕がある
- 足の甲・足首がしっかり固定出来る
また、靴の選び方だけでなく、履き方も意識することも大切です。
靴を履く時はかかと部分をとんとんと叩いて、靴と足首の方をフィットさせた状態で靴紐で固定することで、足が靴の中で前後に動いて、爪に負担がかからずに歩けます。
栄養バランス
健康的な爪を保つためには、栄養バランスに気をつけることも大切です。
爪の主成分である、ケラチンというタンパク質を積極的に取り入れるといいですよ。
植物性のタンパク質は、爪に弾力を与え艶やかにしてくれ、動物性タンパク質は爪を丈夫で割れにくくしてくれます。
他にもビタミン、ミネラル、亜鉛や鉄分も健康的な爪の維持には不可欠です。
まとめ
爪が分厚く硬くなってしまうと、自身では切ることが出来ず、悪化してしまい、歩く時に痛みが生じ、足腰の筋力低下によって、転倒リスクが高くなり、認知症や寝たきりになる恐れもあります。
また、足に合っていない靴を履いていたり、ご自身で爪切りをする際、誤った爪の切り方や深爪にも気を付けなければなりません。
普段からの爪のケアを心がけ、健康的な爪を維持しましょう。