冬場の急激な温度変化によるヒートショックは、年間約19,000人もの命を奪う深刻な問題です。
冬の日にお風呂に入るときに、注意することがあります。
特に高齢者や持病をお持ちの方はリスクが高く、入浴時の注意が欠かせません。
本記事では、20年のキャリアを持つベテラン介護士が、ヒートショックの仕組みから予防法、在宅介護での具体的な対策まで、わかりやすく解説します。
寒い季節を安全に過ごすために、ぜひご家族でお読みください。
ヒートショックとは?
ヒートショックは、暖かい部屋から寒い部屋へ移動した際などに起こる体の変化であり、血圧が大きく上下に変動する現象のことです。
時期としては、11月から4月にかけてヒートショック現象が多く発生します。
重大な事故となる事象とは、「お風呂で溺れてしまう」ケースです。
毎年、ヒートショックが原因とされる溺死による死亡者が発生しており、交通事故による死亡者数より数が多いとされています。
ヒートショックによっておこる体の変化とは?
先ほど、ヒートショックとは、血圧が激しく上下することによって起こると、説明いたしました。
若くて健康な方であれば、多少血圧が上下してもヒートショックによる事故にはつながりにくいといえます。
高齢の方にヒートショックによる事故が多いのは、加齢や基礎疾患による血管の老化によることも一因です。
高血圧や糖尿病による血管壁の変化
高血圧の方は、血圧が適正な人と比較して血管に常に強い圧力がかかっています。
このため、血管壁が固くなり、柔軟性が低下しています。このため急激な血管の膨張などが起こり、大きな血管が破れたりした場合、脳卒中を起こす可能性が高くなります。
糖尿病の方も、血管壁が普段から傷つきやすくなっています。
なぜヒートショックによりお風呂で溺れるの?
冬にヒートショックが起こりやすいのは、部屋から浴室へ移動する際の、部屋の温度差が原因になります。
通常、居間などにいる際は、厚着をして暖房もしているため、血圧は安定した状態にあります。
ここから、入浴のために部屋を移動する際、脱衣所が居間よりも温度が低い場合に、脱衣所で服を脱ぐことによって血圧が上昇します。
次に浴室に入ったときに、浴室の温度はさらに冷え込むため、血圧が上昇します。
その後、浴槽でお湯につかった際には体が温まり血管が拡張するため、逆に血圧が低下することになります。
在宅介護でヒートショック防ぐには?
ご家族が高齢者の介護をしていらっしゃる場合、冬の入浴時にどのようなことに気をつけたらよいでしょうか?
まずは、高齢者の方は、入浴する際はご家族が同居されている場合は、ご家族にこれから「入浴するよ」と一声かけるようにしてください。
同居されているご家族は、高齢者の方が入浴されているときはときおり声をかけるなどの様子見してください。
入浴時間が長いようであれば、ためらわずお風呂場に様子を見に行ってください。
ヒートショックの予防のために、脱衣場、浴室を温めておきましょう!
ヒートショックは、部屋の温度差によって引き起こされますので、入浴する前にあらかじめ脱衣場、浴室を温めておきましょう。
暖房がある場合は、通常過ごしている部屋と温度差が少ないように暖房をかけておきます。
暖房が用意できない場合は、浴室のドアを開けておき浴槽のお湯から出る湯気などを使って少しでも浴室の温度を上げておきます。
また、入浴する際に体にショックが起こらないようにするために、足にかけ湯をして温度差に体を慣らしておいてから入浴すると良いでしょう。
ヒートショック予報を活用
「ヒートショック予報」というのをご存じでしょうか?
ヒートショック予報とは、日本気象協会から10月から3月にかけて提供されるヒートショックの危険度を、「三段階」に表した予報になります。
入浴をする際に、どの程度ヒートショックのリスクがあるのか判断する目安となります。
湯温は、低めに設定しておきましょう
高齢になると、肌の感覚が鈍くなってきて、熱めのお湯でないと満足できないため42度以上のお湯でお風呂を準備している方が多いようです。
しかし、入浴するときのお湯の温度は41度以下にして、ぬるめのお湯につかるようにしましょう。入浴時間は10分を目安として、長湯をしないようにします。
食後や、飲酒後の入浴は控えて
入浴時間も、寝る前の入浴は睡眠を促すので良いのですが、ご家族の都合などに合わせることができるならば、お昼頃、気温の暖かい時間帯に入浴することも検討されてください。
ヒートショックになりやすい人とは?
これまで、ヒートショックにならないためにどうすればよいか説明を行いました。
「ヒートショックを起こしやすい人」とは、どういう方でしょうか?
それは、「熱いお湯に、長く入浴する人」となります。
高齢者の方は、熱いお湯のお風呂に入るのを好む方が多くいらっしゃいます。汗をかくくらいじっくり浴槽でお湯につからないと、満足されないようです。
常時、介護者が一緒にいるならばある程度ご本人の望むように入浴されるのも良いかもしれません。
しかし、一人暮らしであったり、家族も目が行き届かないことがあるようでしたら、多少のことは目をつぶっていただいて、ヒートショック予防のために控えめな入浴を心がけていただくことが、安全につながります。
事故を回避するための事例
一人暮らしの高齢者の方などで、意識消失を経験したことがある方などは、恐くて自宅での入浴はできないようです。
そういった場合、一つの方法として、デイサービスなどの介護サービスを利用される方もいらっしゃいます。
デイサービスの日帰り介護にお風呂のサービスをお願いすることで、職員さんの見守りの下で安全に入浴することができます。
デイサービスなどの介護サービスでは、体温や心拍数、血圧などバイタルサインの確認も行います。このため、自分の体調を管理しながら理想的な状況で入浴ができ、万が一の場合でもすぐに対応してもらえるので安心です。
この時、介護度によっては、デイサービスに通うのは、週に1~2回といった事もあります。
お風呂に入浴することができない日は、清拭を行ったり、足浴だけ行ったりすることで、ある程度入浴の満足感を感じることができるかもしれません。
私の体験談になりますが、お風呂の用心をしてデイサービスに通われていた一人暮らしの高齢者の方が、デイサービスの後に連絡が取れず、家を訪問したところ意識消失されていたといったケースもありました。
冬で室温も低かったため、意識消失したままであれば体温が低くなり危険な状況でした。デイサービスで疲れて帰宅して、部屋に入ったときにすぐに意識消失されたようです。
このように、お風呂場だけでなく、様々な要因が組み合わさってヒートショックが起こる事もあります。
まとめ
冬場の入浴時に起こるヒートショックは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動することで命に関わる事態を引き起こす危険があります。
特に65歳以上の高齢者や、高血圧、糖尿病、心臓病などの持病をお持ちの方は、重点的な対策が必要です。
予防の基本は、脱衣所と浴室を18℃以上に暖めること、湯温は41℃以下に設定する。そして湯船での入浴は10分以内に留めることです。また、食後すぐの入浴は避け、1時間程度の間隔を空けることも重要です。
ヒートショックは適切な予防措置で防ぐことができます。
家族全員でその危険性を理解し、しっかりとした対策を行うことで、安全な入浴習慣を築いていくことが大切です。