近年、最後の時は住み慣れた自宅で迎えたいと思う人が増加傾向です。
厚生労働省の2017年時点の調査では、20歳以上の男女(2万3500人)の約7割「人生の最後を迎えたい場所は自宅」と答えています。
新型コロナウイルスの影響で、病院などの施設は面会制限などもあり自宅での看取りを望む人が増える要因になっているのではないでしょうか。
新型コロナウイルスが猛威を振るっていたころは、誰もが沢山の制限を強いられて苦痛な思いをしました。
病院や施設も感染拡大を阻止すべく、面会制限を施行。
- 病院では完全に面会できず、入院患者の荷物すら直接届けることができない状態
- 施設では端末機器を利用し週に1度オンライン面会を実施
医療従事者の方々も頭が下がるほど必死に守ってくれました。
しかしほとんど会えないという状況は、本人にしても家族にしても寂しいと思います。辛く悲しい思いをしてきたことでしょう。
この先、どのような病気が流行するか誰にも予測付きません。
時と場合、環境にもよりますが一人っきりで最期を迎えるのは寂しくないでしょうか。
新型コロナウイルスがあったからこそ、「最後は自宅で迎えたい」と思う方も増えたのではないかと思います。
そこで今回は、在宅看護と自宅の看取りのメリットデメリットもふまえ解説します。
最後は自宅で迎えたいと思う方、自宅で迎えさせてあげたい思う方、参考になれば幸いです。
在宅看護と自宅看取りとは?
「在宅看護」や「自宅看取り」という言葉は聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
「在宅」「自宅」「看護」「看取り」と単語を見ると何となく意味がわかるかと思いますが、「在宅看護」「自宅看取り」と2つの単語を組み合わせると言葉のニュアンスが変わってきますよね。
聞いたことあるけど上手く説明できない、良く分からないという疑問に対して解説していきます。
在宅看護とは?
在宅看護とは、病気や障害を持つ方が住み慣れた自宅で療養を続けられるように看護を行うことです。
看護師や理学療法士などの医療従事者が定期的に自宅へ訪問し、必要な処置やケアを行う
自宅看取りとは?
自宅看取りとは、人生の最後における看病を自宅で行うことをさします。看取り段階に入るのは千差万別、十人十色。
身体の病状回復が見込めず近い将来亡くなることが避けれない方を、無理な延命治療を行わず、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和しながら自然に亡くなられるまでの過程を見届けること
在宅と自宅の違い
一般的には「在宅=自宅にいる」なので、「在宅看護」も「自宅看護」も同じ意味です。
しかし、医療や介護用語では「在宅=居宅≠自宅」となります。
厚生労働省では以下のように定義してます。
在宅での療養を行っている患者とは、保険医療機関、介護保険施設で療養を行っている患者以外の患者
私個人の意見としては、医療・介護現場では意味が違ってくるのかもしれないけど、家で介護をしている人のほどんどが医療関係者ではないと思うので、個々の使いやすい言葉を使えば良いのではと思いますね。
自宅で看取りを選ばれる理由
自宅で看取りを選ばれるのは、本人の強い希望が一番大きいのではないでしょうか。
住み慣れた、思い出がたくさん詰まった自宅で穏やかに余生を過ごしたいと誰もが思うことでしょう。
病院や施設でお気に入りの物や写真を飾っても、いつもそばにご家族がいるわけではないので、寂しさをぬぐうことはできません。
また、「自宅で最期の時を迎えさせてあげたい」「最後まで自分が介護をする」というご家族の思いから自宅での看取りを選ばれる方もいます。
お父様、お母様、息子様で同居されていたご家族の例:
お母様が先に病院でお亡くなりになった際、息子様は病院で旅立たせたことをひどく後悔しており、お父様の時は何が何でも自分が面倒をみて、自宅で看取りをすると…。
息子様とお話をする機会があり詳しく話を聞いたところ、
と仰られていました。
汗をかきながら排泄介助していたこと、ご自身の体調が良くないときでもお父様の事を第一に考えていたのが印象に残っています。
様々な理由で自宅で看取りを選ばれますが、メリットとデメリットも考えてみましょう。
自宅で看取りのメリット
最大のメリットは本人の自由度
飲酒や喫煙は病院ではできませんが、自宅では可能です。
「健康に良くないのでは?」と思われますが、人によっては生きる楽しみの一つでもあります。
最後まで自分らしく自由に行動できる=毎日を楽しく過ごせることで、満足のいく人生につながる可能性もあるのです。
家族や知人とのコミュニケーション
病院や施設だと面会時間が限られていることが多いですが、自宅だといつでも顔をみながら会話ができますよね。
家族が側にいてくれて心が落ち着く、近くの知人が会いに来てくれる、大好きなペットと一緒に暮らせることで、精神的安定が得られます。
慣れ親しんだ場所で安心して生活することが喜びにもつながるでしょう。
また、入院と比べ費用を安く抑えられるというメリットがあります。
自宅看取りのデメリット
介護者の身体的負担と精神的負担が大きいことがデメリットです。
- オムツ交換や体位交換など24時間365日介護となるので、ご家族の身体的負担が大きい
- オムツ交換時に無理な体勢をし、腰を痛めてしまうこともある
- 末期症状で痛がる様子を目の当たりにし、「痛がっているのに何もしてあげられない」「自宅での看取りを選んだことは間違いだったのか」など精神的負担が大きい
介護する側が、24時間365日介護に専念できる状態とは限りません。
介護する傍ら、働きに出たり買い物に出たりと自身の生活もあります。
介護者が「外出中に何かあったらどうしよう」「身体も辛くなってきた」ということから、「介護鬱」になる可能性も避けられません。
自宅で看取りをする時に、ご自身の体や精神を守るためにも事前に準備しておくと良いことを見てみましょう。
自宅で看取りをする際に準備として必要な事
ご家族だけで自宅で看取りをするのはとても難しいことです。
24時間365日介護を行い「お別れの時」がいつ来るのかもわかりません。
ご家族だけで自宅で看取りをしようとせず、ご家族の負担も減らしお互いに穏やかに最後の時を迎えれるよう準備のひとつとして、社会資源の有効活用をお勧めします。
- 介護認定を受ける
- 訪問看護を利用する
- 在宅でのかかりつけ医を紹介してもらう
- ケアマネージャーと連携を密にとる
- 終末期の対応について意思表示
それでは、自宅で看取りをする際に準備として必要な事を簡単に見てきましょう。
介護認定を受ける
社会資源を受ける前に必要になるのが、要介護認定です。
- 要介護度によって毎月支給される保険の限度額が異なる
- 認定を受けた当初と現在で介護度が異なると感じた場合、再度要介護認定を受けることを検討する
訪問看護を利用する
自宅で看取りをする際に、訪問看護の力を借りることが必要不可欠です。
- 自宅で療養している間の医療的介入
- 日常生活の処置
- ご家族に対しても精神的なフォローや情報提供をしてくれる
- 医師やかかりつけ医との連携
先程の息子様ご家族例の続きになりますが、息子様は本当に最後の最後まで渾身的に介護をしてきましたが、しかし、やはり死の直前になるとどうしてよいのかわからず、パニックに陥り救急車を要請した結果、お父様は病院でお亡くなりに…。
息子様は病院に送ってしまったことをすごく後悔され、涙ながらに胸の内を話してくださいました。
担当していた看護師と息子様との会話ですが、
と話していました。
担当看護師と息子様が互いに寄り添い、励まし合い、協力してきた関係性です。
医療関係では当たり前の事ですが、2人が涙を流しながら話していたことは、10年たった今でも鮮明に覚えています。
在宅でのかかりつけ医を紹介してもらう
訪問看護同様に必要なのがかかりつけ医です。
- 定期的な診察
- 状態が悪化した時の対応
- 訪問看護師に医療指示をする
- 死亡後の書類作成
ケアマネージャーと連携を密にとる
介護と医療を繋いでくれるのがケアマネージャーです。
- 訪問看護師とヘルパーなど、関係事務所と情報共有
- ケアプラン作成
終末期の対応について意思表示
終末期の対応は、ご本人、介護するご家族、周囲の方々、親族で意見が分かれやすく、治療法を巡りもめるケースも少なくはありません。
- 全員が納得した自宅での看取りができるようエンディングノートを作成
在宅看護と自宅で看取りのまとめ
誰もが避けることができない、大切な人とのお別れですが、近年自宅で看取りを希望されている方が増えています。
- 慣れ親しんだ場所で生活をし、大切な家族と残された時間を過ごしたいという気持ちから自宅で看取りを希望する方が多い
- 自宅で看取りの際は、ご家族だけでしようとせずに社会資源を有効活用する
- 在宅看護は介護するご家族の身体的負担と精神的負担が大きい
- 自宅で看取りのメリットとデメリット
在宅看護をしつつ、いかにその人がその人らしく、少しでも幸せを感じながら最後を迎えれるかが一番大切です。
どのような終末期を迎えたいのか、話し合いを設ける時間も必要になってくるのではないでしょうか。
- 最後の最後まで本人らしい生き様
自分で人生の終え方を決めれるのはとても幸せな事なのかもしれません。
何においても後悔は付きまといますが、少しでも後悔のない人生を送ってほしいです。
頼れるところは頼って、協力してもらえるところは協力してもらい、ご本人とご家族の最後の一時を穏やかに過ごせるよう願っています。