高齢者の圧迫骨折とは?いつの間にか骨折・隠れ骨折とも呼ばれる骨折。予防と治療法を現役ナースが解説

高齢者の圧迫骨折とは?いつの間にか骨折・隠れ骨折とも呼ばれる骨折。予防と治療法を現役ナースが解説

「急に背中が痛い」「身長が縮んだ」…そんな症状は圧迫骨折のサインかもしれません。高齢者に多いこの骨折は、日常生活の何気ない動作で起こることも。

本記事では、25年以上の経験を持つ現役ナースが、圧迫骨折の原因から症状、治療法、そして効果的な予防法まで、わかりやすく解説します。

  • 圧迫骨折の原因や症状
  • 圧迫骨折を放置するリスク
  • 圧迫骨折の予防方法
  • 圧迫骨折になったら日常生活で気をつけること
  • 圧迫骨折に関するよくある質問

圧迫骨折とは、背骨に力が加わり骨折する病気です。転んでぶつけるなど原因がはっきりしている場合もあれば、気づかない間に骨折していたなんてことも…。

ご両親や祖父母が圧迫骨折になって、お家でどのように過ごせば良いのか困っている方もいらっしゃるでしょう。

今回は、圧迫骨折の原因や症状、日常生活上での注意点などを現役看護師が解説してきます。圧迫骨折について良くある質問にもお答えしているので、ぜひ参考にしてください。

圧迫骨折とは

圧迫骨折とは、背骨の一部分がなんらかの圧力により潰れて折れた状態です。

老化やホルモンバランスの影響により骨がもろくなりやすいことから、女性や高齢者に多い病気となっています。高齢者は体が弱いため、ちょっとした衝撃で骨折することも。

とくに、骨粗鬆症の方は圧迫骨折の非常にリスクが高まります。骨の密度が低くスカスカした状態なので、骨の強度が低下しており、簡単に折れてしまうのです。

圧迫骨折の原因

高齢者が圧迫骨折を起こす原因は、主に以下の2パターンです。

  • 転んで尻もちをついた
  • 重いものを持ち上げた

私が整形外科で働いていたとき、圧迫骨折で身動きがとれなくなって救急車で搬送されてきた高齢者をたくさんみてきました。

おじいさん
おじいさん
トイレに行ったときに転んでしまった
朝起きたときにベッドから落ちちゃったのよ
おばあさん
おばあさん

この2つが圧倒的に多かったです。

このような転倒・転落は、圧迫骨折に限らず高齢者が骨折する原因No.1といえます。

職員さん
職員さん
トイレの便座に座った衝撃で骨折する高齢者の方もたまにみかけます。高齢者の骨はそれくらい脆いのです。

寝たきりにもつながってしまうため、細心の注意を払いましょう。

圧迫骨折の症状

圧迫骨折の症状はこちらです。

  • 背中や腰の痛み
  • 手や足の痺れ
  • 下半身の感覚が鈍くなる

多くの方にみられるのが背中や腰の痛みです。ひどい場合は立ち上がるのも困難でしょう。

背骨は中央に神経組織が詰まっているため、骨折して飛び出た部分が神経を圧迫することがあります。すると、手足の痺れや感覚の鈍さといった症状が出る場合もあります。

圧迫骨折の治療方法

圧迫骨折の治療は以下の2パターンです。

  • 保存療法
  • 手術による外科的治療

保存療法は、腰にコルセットを装着して背骨をまっすぐに固定し、骨がくっつくまで待つ治療です。コルセットをつけるだけなので、シンプルで安全に治療できます。

高齢者が手術をすると体に大きな負担がかかるため、ほとんどの場合は保存療法が選択されるでしょう。

もし手術をする場合は、背骨の折れた部分にセメントや金属を入れて固定します。受傷直後で寝返りもできないほど痛む場合は、手術が適応になるかもしれません。

いつの間にか折れている「隠れ骨折」とは

これまで圧迫骨折は転倒・転落が原因で発症すると説明してきました。しかし、気づかないうちに圧迫骨折が起きている「隠れ骨折」というものが存在します。

隠れ骨折は、時間経過とともに少しずつ背骨がつぶれるようなかたちで骨折している状態です。歳をとって骨や筋力が衰えると、自分の体重で背骨に負担がかかることで骨折する場合があります。

職員さん
職員さん
少しずつ骨折が進行するため強い痛みはなく、骨折していても気づかないのです。

病院の検査でレントゲンを撮ったときに、たまたま隠れ骨折が発見されることも…。

もし隠れ骨折に気づかず過ごしていたら、以下で解説している様々なリスクを引き起こす可能性があるでしょう。

圧迫骨折はどれくらいで治る

骨折の程度によって個人差はありますが、早い方で1ヶ月、遅くても2〜3ヶ月で治るケースが多いです。

骨折した部分は3〜4週間で整復されますが、痛みが引かないこともあるでしょう。

その場合は、骨がくっついたとしてもコルセットの装着を継続し、痛み止めのお薬を飲みながら様子をみていきます。

職員さん
職員さん
コルセット作成後はリハビリしながら様子をみていくしかないので、入院しても特にやることはありません。すぐ退院になることも多いです。日常生活の何気ない動作がリハビリになるので、退院して元の生活に戻る方が回復は早いと言えるでしょう。

圧迫骨折を放置する4つのリスク

もし圧迫骨折に気づかず放置してしまった場合は、以下のことが起こる可能性があります。

  • 背中が丸くなる
  • 手足の痺れや感覚の鈍さが出る
  • 吐き気や息苦しさを感じる
  • 下半身麻痺で寝たきりになる

ひとつずつ順番にみていきましょう。

背中が丸くなる

圧迫骨折をそのままにしておくと、背中が丸くなり背筋をの伸ばせない状態になるリスクがあります。

背骨の折れた部分が、長い時間をかけて体重による圧迫を受け、少しずつ潰れていくからです。猫背のようなイメージですね。

また、折れた部分と接する上下の骨にも負担がかかり、連鎖するように折れる恐れがあります。

圧迫骨折かも?と思ったら、悪化する前に早めに病院でみてもらうことが重要です。

手足の痺れや感覚の鈍さが出る

圧迫骨折に気づかず過ごしていると、手足の痺れや感覚の鈍さが出る場合があります。

折れた部分の骨が飛び出て、背骨の中央をとおる神経を刺激することがあるからです。

  • 足の痺れがある
  • 足を触ったときの感覚が鈍い
  • 足の指をグーパーする動きがやりにくい
  • 足首を前後にたおす運動(底屈・背屈)がやりにくい

細かい手足の動きが調整できず、歩きづらくなったり、怪我をしても気づかなかったりするかもしれません。

吐き気や息苦しさを感じる

圧迫骨折の放置によって吐き気・息苦しさを感じるようになる方もいらっしゃいます。背骨がつぶれて背中が丸くなると、胃や肺などの臓器が圧迫されるからです。

例えば、胃を圧迫されると慢性的な胃部不快を感じ、逆流性食道炎につながることもあります。

また体が丸まっていると息を吸いにくく、無意識のうちに浅い呼吸になりがちです。

このように、体を支える柱である背骨が折れると、他の臓器にも広範囲に影響を与えるリスクがあります。

下半身麻痺で寝たきりになる

圧迫骨折で手足の痺れや感覚の鈍さが出る可能性があると先ほどお伝えしました。

このような神経症状が重症化すると、下半身麻痺になることがあります。下半身麻痺の症状はこちらです。

  • 立ち歩けない
  • 下半身の感覚を失う
  • 排尿・排便のコントロールが難しい

よって、寝たきりでつねに介護を要する状態となります。

寝返りすら困難なため、2〜3時間ごとに体の向きを変えてあげたり、着替え、排泄、食事の準備、身の回りのこと全てに手伝いが必要です。

圧迫骨折に効果的な3つの予防

圧迫骨折を予防するには、以下の方法が効果的です。

  • 有酸素運動を行う
  • ビタミンDやカルシウムを積極的に摂取する
  • 家の中にある段差を減らす

どれも日常生活の中で取り入れやすい方法なので、ぜひ試してみてください。順番に紹介していきます。

有酸素運動を行う

有酸素運動で体力をつけると身体が強化され、圧迫骨折の予防になります。骨は筋肉などの組織で覆われているため、筋トレも効果的です。

また、日常的に運動で体を動かしていると関節が柔らかくなり、怪我をしにくい体を作れます。ちょっとキツイなと思う程度の運動がおすすめで、ウォーキングをするのも効果的です。

ビタミンDやカルシウムを積極的に摂取する

圧迫骨折予防をするには、食事の際にビタミンDやカルシウムをとるように心がけるのがおすすめです。

ビタミンDやカルシウムは骨を強化する効果が期待できるため、積極的にとりましょう。具体的に摂取すべき食材はこちらです。

ビタミンD

  • 魚:サンマ、鮭、カレイ、ブリ、しらす
  • きのこ」しいたけ、キクラゲ、舞茸
  • 乳製品:たまご、チーズ

カルシウム

  • 甲殻類:えび、かに
  • 大豆製品:納豆、豆腐、厚揚げ
  • 野菜:小松菜、チンゲンサイ、ひじき、いりごま

これらの食品を組み合わせてメニューを考えると、効率よく骨を強化することができます。

家の中にある段差を減らす

足腰の筋肉が衰えている高齢者はわずかな段差でもつまずきます。

転ぶと圧迫骨折の直接的な原因となってしまうため、家の中にある段差を減らして転ばないように対策するのがおすすめです。

  • 絨毯の端っこ
  • 部屋と部屋の境目
  • 床にある配線コード

このような段差はつまずく原因になるので、ホームセンターで売っているものなどを活用して対策すると良いでしょう。

他にも、長すぎるズボンの裾、滑りやすい靴下・スリッパにも注意が必要です。

圧迫骨折になったら日常生活で気をつけたいこと

圧迫骨折になったら、多くの方はコルセットを装着しながら生活することになります。

その際、日常生活のなかで気をつけたいことは以下の3つです。

  • 重いものを持ち上げない
  • 体を捻る動きは避ける
  • 寝る時は横向きになる

理由を合わせてそれぞれ解説していきます。

重い物を持ち上げない

無理に重いものをものを持ち上げると、背骨に負荷がかかり再び骨折する恐れがあります。少しずつ運んだり、家族に運んでもらったりしましょう。

もし床にあるものを持ち上げるときは、腰を曲げて手を伸ばすではなく、膝を曲げて上半身の位置を下げるイメージでかがむと、圧迫骨折を避けられます。

体を捻る動きは避ける

体を捻ると骨折部分に大きな負担がかかります。治療が進まないのはもちろん、痛みが強くなったり再骨折したりするリスクが高いです。

とくに、以下のような動作をするときは注意が必要です。

  • 後ろを振り向く
  • ベッドから起き上がる
  • 寝返りをする

これらの動作は下半身ごと一緒に動くのがコツです。

「後ろを振り向く」に関しては、人に呼ばれて反射的に振り返ってしまこともあるので気をつけましょう。

寝るときは横向きになる

夜寝るときは横向きで寝ましょう。仰向けで寝ると背骨が開き、折れた部分に負担がかかって骨がつぶれます。

ちなみに、夜寝るときだけはコルセットを外しても大丈夫です。

圧迫骨折に関するよくある質問

ここからは、圧迫骨折に関するよくある質問に回答していきます。

  • 痛みが落ち着くのはいつ頃?
  • 痛みが強くて我慢できないときは?
  • コルセットはいつまで着けるの?

それぞれ順番にみていきましょう。

痛みが落ち着くのはいつ頃?

通常1〜2ヶ月で落ち着きますが、人によっては半年ほどかかる場合もあります。

3〜4週間で折れた部分が戻っていくため、同じくらいのタイミングで痛みも落ち着きます。

ただ、痛みの感じ方は個人差が大きいため、必ず1ヶ月で痛みがなくなるともいえません。

職員さん
職員さん
私が病院でみてきた患者さんでは、受傷して1〜2週間後にはコルセットをつけながらリハビリできるほどの痛みである方がほとんどです。

痛みが強くて我慢できないときは?

積極的に痛み止めを使いましょう。

それでも痛いときは薬の種類や飲む量を調整してもらえます。痛み止めを使いすぎると効かなくなるということはないので、早めに使うのがおすすめです。

頓服で処方される場合もありますが、痛みが強い方は毎食後に内服する飲み方もあります。

コルセットはいつまで着けるの?

一般的には2ヶ月ほど装着します。

レントゲンで骨折の状態を確認し、不要になったら主治医からコルセットを外す許可が出ます。

コルセットは痛みが楽になる効果もあるため、骨折が良くなっていても続けて装着する場合もあります。

職員さん
職員さん
コルセットをつけていると自持ち的に安心するところもあり、実際は2ヶ月以上つけている方が多い気がします。

圧迫骨折を予防して元気に老後を楽しもう

高齢者の圧迫骨折は寝たきりにつながる病気です。圧迫骨折を放置したまま過ごすと・・・

  • 背中が丸くなる
  • 手足の痺れや感覚の鈍さが出る
  • 吐き気や息苦しさを感じる
  • 下半身麻痺で寝たきりになる

といったリスクがあります。

怪しいと思ったら早めに病院でみてもらいましょう。

高齢者は筋力低下や骨粗鬆症により「隠れ骨折」をしていることもあるので注意が必要です。

  • 有酸素運動を行う
  • ビタミンDやカルシウムを積極的に摂取する
  • 家の中にある段差を減らす

上記の方法を取り入れることで効果的に圧迫骨折を予防し、健康で充実した老後の生活を楽しみましょう。

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