介護施設でのある日の会話です。






心も身体もみることが大切
『高齢の親』と聞くと認知症は大丈夫かな?とついつい考えがちです。認知症だけではなく身体の状態もみて下さい。
生活動作の中から発見できることはたくさんあります。
家の掃除、片付けなど日常生活
- 部屋の掃除、片付けができているか
- ゴミ出しはできているか
- 冷蔵庫の中があふれそうだったり、賞味期限切れのものはないか
- 請求書の支払いはされているか
- 通信販売や訪問販売で不要なものを買っていないか
体力や気力・判断力の低下、物忘れの状態が確認できます。同じものをたくさん買い込んでいることもあります。
訪問看護での体験


足腰の状態
- 15〜20分続けて歩くことができるか
- 歩き方は不安定ではないか
- 立ち上がりや階段昇降で痛みが出ていないか
散歩やショッピングモール散策などに誘ってみましょう。15〜20分で疲れるようであれば筋力の低下や心肺機能の低下、意欲の低下などが考えられます。
立ち上がりなどで痛みを訴える時は、膝や腰などの病気も考えられます。
外出の頻度、運動
- 週に何回くらい外出しているか
- 定期的に外出する用事があるか
- 定期的な運動の習慣はあるか
- 1日の歩数はどれくらいか:1日6000歩以上を推奨(厚生労働省)
意欲の低下、転倒や失禁への不安、疲れやすさ、外出の目的がない、家族が心配するから外出できないなどで家に閉じこもりがちな高齢者。
外出が減ると他者との関わりが減ると脳の老化やうつ状態になる可能性も高まります。
筋力の低下
- 床から立ち上がる時に必ず手をつく
- 横断歩道を青信号の間に渡りきれない
- つまづきやすい
- 階段使用時に手すりを必ず使う
- ペットボトルの蓋が開けられない
- 洗濯バサミをうまく開けない
加齢による筋肉量の減少が原因で、筋力や身体機能が低下することを『サルコペニア』と言います。
そのままにしておくと介護が必要な状態になる可能性が高く、早い段階で対策が必要です。
食欲、体重の減少
- 食事の量や回数、バランス
- 動物性タンパク質は十分に摂れているか
- 食事や水分でむせることはないか
- 体重が減っていないか:半年で元の体重から2〜3Kgの体重減少
- 歯や口の中の状況
味覚の変化、歯が弱くなることなどによる噛む力の低下、唾液の減少による飲み込む力の衰え、栄養バランスの偏りなどで体重の減少が起きやすいです。

睡眠や意欲
- 睡眠時間が極端に短くないか
- 夜中のトイレ回数が多くないか:男性の場合、前立腺肥大症など病気がある可能性
- 日中もだるさや眠気が残っていないか
- 「面倒だ」「やりたくない」ばかり言っていないか
- 入浴や着替えができているか
睡眠時間と認知症や死亡率との関係は研究もされています。5〜6.9時間の睡眠時間が認知症発症率、死亡率ともに最も低いということです。
意欲の低下はうつ病や認知症の可能性もあります。
受診や薬の管理
- 通院先があれば定期的に行っているか
- 処方されている薬をきちんとのめているか
処方された薬を正しくのめていないと体調不良や持病の悪化、それによる意欲の低下などにつながります。
ご近所さんや周囲からの情報
- ご近所トラブルがないか
- 外出する姿を見るか
- 会話の中で気になったことはないか
- 宅急便など配送業者が頻回に来ていないか:通信販売での不用品購入など
ご近所さんからの情報も有益です。本人がいないところで話を聞くと情報をもらいやすくなります。
訪問看護での体験


フレイル、聞いたことありますか?
『加齢により心身が老い衰えた状態』。健康な状態と日常生活でサポートが必要な状態の中間を意味します。
「中間」に位置するため、適切な介入やサポートで元の健常な状態に戻る可能性があります。
- 体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
- 疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
- 歩行速度の低下
- 握力の低下
- 身体活動量の低下
3つ以上当てはまると『フレイル』と判断されます。


介護が必要かもと感じたら地域包括支援センターへ
市区町村の役所に連絡し、担当の地域包括支援センターを教えてもらいます。
『地域包括支援センター』は高齢者が住み慣れたまちで安心して暮らしていくために、必要な援助や支援を行う総合相談窓口です。
その数は多く、中学校の学区ごとに1ヶ所はあると考えてください。担当の地域包括センターは市区町村の役所に確認します。
地域包括支援センターの仕事
- 介護に関する相談:適切なサービスの紹介、解決のための支援
- 介護予防のための支援
- 権利擁護・虐待防止:成年後見制度、高齢者への虐待、詐欺・悪徳商法に対応
- 地域のネットワークづくり:介護サービス事業者や医療機関とのネットワーク作り
ケアマネージャー、保健師、介護福祉士が担当の業務を行います。
要介護認定の申請が必要
介護保険で利用できる介護サービスを利用するには『要介護認定の申請』が必要です。認定調査員が家に来て本人の状況を確認します。家族の立ち会いが必要ですが、聞き取り調査もあるため親のことを十分に把握できている家族が立ち会います。
また、主治医からの意見書も必要です。詳細は担当の地域包括支援センターで教えてもらえます。
介護や支援が必要であることを認定されると介護保険を利用したサービスを使えます。
まとめ
介護は1人で抱え込まない
自分の親が衰えていくのは子供として受け入れ難いことですよね。
介護が必要になってきた親を責めたり怒ったりするのは逆効果になります。
子供に心配させないようにと親は気丈に振る舞ったり体調不良を隠してしまい、親の状態の『見逃し』『見落とし』につながります。
また、忙しい子供世代は親の介護に思うように携われない方も多いです。そういう時のための地域包括支援センターです。介護のこと、気軽に相談してみましょう。