- 低体温症についてもっと詳しく知りたい
- 高齢者は低体温症になりやすいの?
- 高齢者が低体温症にならないための方法が知りたい
このようなお悩みについてお答えします。
寒くなってくると感染症や脳卒中などの病気が注目されますが、実は低体温症にも注意が必要なんです。
高齢者は筋肉量や体温調節機能が低下しているので低体温症になりやすく、放置すると命に関わってきます。
高齢のご家族が『寒くない』と言っても、体が冷えているなんてことも少なくありません。
この記事では、低体温症の症状や高齢者が低体温になりやすい原因を深堀りし、今日からできる低体温症の予防方法について詳しく解説しています。
正しい知識と適切な対策があれば低体温症は防げるので、最後まで読んでみてください。
低体温症とは
低体温症は、長時間にわたり気温の低い環境にいることで、体の深部体温(脳や内臓)が35℃以下になる状態を指します。
低体温になると、体の機能が正常に働かなくなり、心臓や呼吸器に負担がかかります。体温の低下が進むと命に関わってきます。
低体温の症状
低体温症は34℃以下の中度症状で入院となります。以下に症状や状態を一覧表にまとめました。
程度 | 体温 | 症状 |
---|---|---|
軽症 | 32℃〜35℃ |
|
中等症 | 28℃〜32℃ |
|
重症 | 28℃未満 |
|
低体温症の初期症状は、体が冷たく感じたり、眠気や感覚が鈍くなります。
進行すると、血液が脳に十分に供給されなくなり、意識障害、心機能の低下、脳卒中を引き起こすリスクが高まります。
高齢者の低体温症は室内で発症している
低体温症は屋外ではなく、室内で多く発症しています。
厚生労働省の人口動態調査によると、2013年から2022年の10年間で低体温症による死亡者数は熱中症で亡くなった方よりも多いという結果になっています。
また、福島県の氷山地方広域消防組合によると過去10年間で377人が低体温症で救急搬送されており、搬送された8割以上が中等症以上で入院となっています。
さらに、発症した場所の78%が屋内であることから、高齢者の低体温症は室内で発症していると言えます。
高齢者が低体温症になりやすい原因
ではなぜ高齢者が低体温症になりやすいのか?それは高齢になると体の機能が低下してくるからです。
高齢になると以下のような変化がでてきます。
- 体温調節機能が低下
- 発汗量や血流の減少
- 水分補給量の減少
- 皮膚の温度センサーが鈍る
- 食事量の減少
- 筋肉量の低下
- 皮下脂肪の減少
高齢になると活動量が減るので、食事や水分の摂取量も減ります。これによって発汗量や血流の減少、筋肉量の低下につながります。
筋肉量が少なくなると代謝が落ちるので、体温が上がりにくい状態となっていきます。
持病があると低体温症になりやすい
それに持病を持っていることも低体温症になりやすい原因とされています。特に気をつけたいのは糖尿病、心疾患、内分泌・代謝異常の病気がある人です。
これらの病気は血液の流れが悪くなったり、自律神経の働きが悪くなったりするので体温が下がりやすいんです。
持病 | 影響 |
---|---|
糖尿病 |
|
心疾患 |
|
内分泌・代謝異常 |
|
低体温症の初期症状は、体が冷たく感じたり、眠気や感覚が鈍くなります 。また、持病の薬が体温を下げてしまっていることもあります。
持病があって何か定期的に薬を飲んでいるのであれば低体温症には注意が必要でしょう 。
認知症があると低体温症になりやすい
認知症になると自律神経系の働きが影響を受け、体温をうまく調節できなくなります。
特にレビー小体型認知症の場合、体温が不安定になりやすいです。
それに認知症の方は周囲の温度変化を感じにくいので、寒い環境でも適切な衣類を選択できないことも低体温症になりやすい原因と言えるでしょう。
このように認知症の方には周囲の人がこまめに見守り、環境を整えて低体温症を予防していくことが重要となってきます。
自宅でできる低体温症になった時の対処法
低体温症になった時の対処方法については以下のとおりです。
- 暖かい環境への移動
- 濡れた衣服を着替えて体を温める
- カロリーと水分の補給
意識があって会話ができるのであれば、暖かい場所へ移動し毛布で体を包んであげましょう。
反応が薄く、いつもと違うなと感じたらすぐに救急車を呼び、温かい場所で待ちます。
衣服が濡れている場合は、着替えをしてから体を温め、暖かい飲み物で体を内側から温めてあげましょう。
温め方としては電気毛布で包んだり、湯たんぽ(43℃前後)を太ももや首の周り、脇の下に当てたりして温めます。くれぐれも低温やけどに注意。
低体温症の処置でやってはいけない3つの注意点
低体温症でやってはいけない注意点は以下の3つです。
- 急激な加温やマッサージ
- アルコールやコーヒーを飲ませる
- 体を激しくこする
寒いからといって手足の加温やマッサージ、入浴は危険なのでやめましょう。
冷え切った手足の血液が一気に心臓に戻ってくると、体の芯から冷えてしまってショック状態になってしまいます。冷えた時の急激な温め方は逆効果なんです。
それに、温まろうとしてお酒を飲んだり、コーヒーで体を温めようとする人も多いと思います。これもよくありません。
血管が縮んだり広がったりを繰り返して、かえって体温調節が難しくなってしまいます。
寒さで固まった体を強くこすったり、乱暴にマッサージしたりするのも危険。心臓に負担がかかって、不整脈を起こすことも。
寒い時は、ゆっくりと徐々に体を温めていくことを覚えておきましょう。
救急車を呼ぶタイミング
救急車を呼ぶタイミングとしては意識障害、震えが止まった、体が異常に冷たい、呼吸が弱い、脈が遅いなどの症状があればすぐに救急要請をしてください。
体温が低下しないように、乾いた温かい毛布にくるんで、暖かい場所で救急車を待ちましょう。
低体温症を防ぐための7つの対策
低体温症にならないための具体的な予防策を7つにまとめました。
- 室内環境を整える
- 水分補給をこまめにする
- 温かい飲み物や食べ物を意識的に摂取
- 体を動かす
- 生活習慣を見直す
- 湯船に浸かる
- 外出時の服装に気をつける
では、順番に解説します。
室内環境を整える
2018年にWHOが発表した住宅と健康に関するガイドラインでは室温を18℃以上に保つことを推奨しています。
しかし、家の中でも場所によって温度差があるので、全体的に20℃くらいあると安心です。
家の室温を管理するうえで必要なものは以下の3つ。
- 温度計を置く
- 暖房器具を窓近くに置く
- 厚手の断熱カーテンにする
温度計を置いて室温が18度以下にならないようにチェックをしましょう。
エアコンを使っていても表示温度と実際の室温は違っていることが多く、思ったより冷えているなんてことも。
温度計を使うと室温がわかって目安となるので、寒くなりやすい窓際や部屋の隅に置くと便利です。
筆者宅では厚手の断熱カーテンに変更したり、温風ヒーターを窓近くに置いたりして部屋が寒くなりにくい工夫をしています。
冷気は窓から入ってくるので、冷気対策をしたら結構効果がありましたよ。
水分補給をこまめにする
水分不足は血液循環を悪くします。少量でも良いのでこまめな水分補給をして体の中の血液循環を良くしていきましょう。
温かい飲み物や食べ物を意識的に摂取
温かいお茶・鍋料理・汁物などは、体を内側から温めてくれます。
ショウガやニンニクを使えば風邪予防にもなるし、体もポカポカになります。
体を動かす
適度な運動で筋肉を動かすと熱が作られて、免疫力も上がります。
それに運動は筋肉量の維持につながって体温調節機能も強化されるので、体を動かしていきましょう。
朝のストレッチや30分くらいのお散歩でも十分。毎日続けられる程度の運動で大丈夫です。
生活習慣を見直す
生活リズムを整えるのも大切。不規則な生活習慣は、自律神経のバランスの乱れにつながります。
それに体温調節機能を低下させる原因となります。
湯船に浸かる
お風呂に入る際はゆっくり湯船につかるのが良いです。湯船に浸かることで血行が促進され、体温が上昇します。
しかし、長湯は禁物。入浴時間は10分程度、ぬるま湯であれば20分程度を目安にしましょう。
服装と外出時の注意(外出時の防寒対策)
外出時は、首やお腹、手首、足首を出さない工夫をして防寒対策をしましょう 。
上着や手袋、マフラーの他にも腹巻きはおすすめ。体の芯から暖かくなって寒くなりにくいです。
一人暮らしでも大丈夫!暖房をつけない両親を説得させる6つの方法
暖房器具を使うように伝えても『私は大丈夫』といって聞き入れてくれない…よくある話ですよね。
そんなご両親でも上手に説得させる6つの方法をご紹介します。
- 心配なことを具体的に伝える
- お金の不安をなくす
- 健康のために必要なことを説明する
- 信頼している人に協力を得る
- 小さな行動を促す
- 電話をしてコミュニケーションをとる
心配なことを具体的に伝える
まずは、家族として一番何が心配なのか具体的に伝えましょう。
ここでは『低体温症になると入院が必要になったり、命に関わる危険があることが一番心配』と、伝えると良いでしょう。
低体温症のリスクや怖さを理解してもらって危機感を持ってもらいます。
お金の不安をなくす
金銭的な余裕がなく節約のために暖房器具を使わないといった高齢者は多いです。
特に近年では電気代も上がって、電気代がかかる暖房器具は使わずに重ね着をして暖をとる方もいらっしゃいます。
エアコンを省エネのものに変えたり、こたつや電気毛布を使ったりするだけで電気代は抑えられます。
筆者の両親みたいにならないように早めに対応してあげてください。
健康のために必要なことを説明する
『健康のために暖房を使うことは必要なこと』と伝えましょう。
高齢者は寒さが健康の大敵です。冬になると低体温症だけでなく脳卒中や心筋梗塞のリスクもあがります。高齢だと要注意です。
『贅沢じゃなくて、必要なことなんだよ』って伝えると、意外と分かってくれたりします。
信頼している人に協力を得る
孫や近所の仲の良いお友達に協力してもらうのも良いですよ。
親って子供の言うことより、信頼している人の言葉のほうが響くことってありますから。
小さな行動を促す
いきなり「1日中つけて」は無理でも、昼間の2時間だけとか温度計が18度を下回ったらとか、小さな目標から始めるのがコツ。
だんだん習慣になってきます。習慣になってきたら、自ら動いてくれるようになりますよ。
電話をしてコミュニケーションをとる
家に行って環境調整をしてあげたいけど毎日行けない、遠方で家に行くことが無理という方は電話をしてみましょう。
『暖房つけてる?寒くない?』などの声かけが、親は気にかけてくれてるって分かって、行動を変えるきっかけになったりするんです。
それにコミュニケーションがとれるので、親子関係も良好になりますよ。
まとめ:暖房器具をうまく使って低体温症を予防しよう
ここまで低体温症の症状や高齢者が低体温になりやすい原因や予防方法について詳しく解説してきました。
最後にこの記事のまとめです。
- 高齢者は低体温症になりやすく、室内でも注意が必要
- 適切な予防策で低体温症を防ぐことが可能
- 信頼関係を築きながら両親に低体温症のリスクを伝えよう
高齢者は筋肉量や体温調節機能の低下に加え持病を持っていることから、低体温症になりやすいです。
低体温症にならないためにも寒い時期には暖房をつけて室内環境に気を配っていきましょう。
この記事を参考にして、ぜひご家族の健康を守ってください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。