と悩んでいる介護者は多いのではないでしょうか?
仕事と介護の両立は、介護者にとって身体的・精神的に非常に負担がかかります。
そして、家族の介護について職場から理解を得られないなど環境面の問題もあり、介護離職を選ぶ人が多くいます。
しかし、介護離職を選んだとしても、根本的な解決につながりません。
今回は、介護離職と仕事と介護の両立について、以下の4つを解説します。
- 介護離職を選ぶ理由5選
- 介護離職の3つの特徴
- 介護離職による4つの問題
- 仕事と介護を両立するための5つの方法
仕事と介護の両立に悩んでいる人は、ぜひご覧ください。
介護離職を選んだ理由5選
介護離職を選んだ理由5選は、以下のとおりです。
- 仕事と「手助・介護」の両立が難しい職場だった
- 「手助け・介護」をする家族が自分しかいなかったため
- 自分の心身の健康状態が悪化したため
- 自身の希望として「手助・介護」に専念したかったため
- 施設へ入所できず「手助・介護」の負担が増えたため
大半は職場環境・介護力不足を理由に介護離職を選び、特に、仕事と「手助・介護」の両立が難しい職場だったという理由で離職した人が多いです。
実際に、仕事と介護を両立したいけど、職場から理解を得られなかった・職場に迷惑をかけたくない思いなどから、介護離職を選んだ人もいます。
介護離職の3つの特徴
介護離職には以下の3つの特徴があります。
- 実は介護者の6割は仕事と介護を両立している
- 介護離職を選ぶ人は増えている
- 結局、介護離職を選んでも心身の負担はかかる
1つずつ解説します。
実は介護者の6割は仕事と介護を両立している
実は介護者の6割は仕事と介護を両立しているといます。
総務省「令和4年度就業構造調査」によると、仕事をしながら介護をしている人は364万人で、全体の6割を占めています。
特に、年齢別の有業率は、50〜54歳の介護者の場合、男女ともに70%〜80%以上の高い有業率になっています。
しかし、実際に仕事と介護を両立している人の中には、以下のように考えている人もいます。
- 「仕事と親の介護で大変だけど、生活のためには仕事もしないといけないから続けてる。」
- 「ちょうど60歳なので、仕事もしながら介護もするのがしんどくなってきた。」
そのため、仕事と介護を両立していても、状況次第では介護離職につながる可能性があります。
介護離職を選ぶ人は増えている
さまざまな理由によって、介護離職を選ぶ人は増えています。
総務省「令和4年度就業構造調査」によると、無職で介護をしている人は264万人もおり、全体の4割を占めています。
さらに、過去1年間に「介護・看護のために」離職した人の数は約10.5万人と、2017年の同じ調査よりも男女ともに増えています。
介護離職を選ぶ理由はさまざまありますが、結果的に仕事と介護の両立が難しくなったため、介護離職を選ばざるを得なかった人がいます。
また、現代社会において、少子高齢化はこれからも進むため、介護が必要な高齢者も増えるとされています。
そのため、介護離職を選ぶ介護者は今後もどんどん増えるでしょう。
結局、介護離職を選んでも心身の負担はかかる
と、多くの介護者は、同じように思うでしょう。
残念ですが、介護離職を選んだとしても、心身の負担はかかります。
「令和3年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」によると、介護離職により「精神面」「肉体面」ともに「非常に負担が増した」「負担が増した」と回答した割合が全体の7割近くを占めています。
介護離職で収入が無くなり、介護に費やす時間が増えるため、休息をとることやストレス解消をする機会への参加が少なくなります。
実際に介護離職をした人から、以下のような話をされました。
「仕事をやめて母の介護を始めたけど、昼夜目が離せないし、家で一緒にいる時間も長いので、体も心も休まらないですね。」
そのため、介護離職を選んでも、心身の負担がかかることに変わりはないという特徴があります。
介護離職を選ぶと発生する4つの問題
介護離職による4つの問題は以下のとおりです。
- 介護を続けられない状態になる
- 収入源が無くなり、経済的な負担が増える
- キャリアが途絶えて再就職が難しくなる
- 人と関わる機会や相談する機会が少なくなる
1つずつ解説します。
介護を続けられない状態になる
介護離職を選ぶと、介護者の調子が悪化し、家族の介護を続けられない状態になるリスクが高いです。
介護者自身が身体的・精神的なダメージを受けながら介護をし続けるからです。
介護離職を選ぶと介護に専念できますが、介護に費やす時間や労力・介護が必要な家族と向き合う時間が今まで以上に増えます。
さらに、介護は毎日行われるため、満足に休息が取れないまま家族の介護をし続ける人も多くいます。
このような状況が続くと、介護者自身が身体的・精神的なダメージを受け、病気や過労などで介護を続けられなくなるリスクがあります。
実際に介護離職を選んで介護をしている人から、以下のような話を聞きました。
「自分でちゃんと介護しないといけないと思って、家で毎日みるように頑張ってみたけど、結局ストレスや疲労で調子を崩したので、このままではいけないと思いました。」
そのため、介護離職を選ぶと、介護が続けられなくなるという問題があります。
収入源がなくなり、経済的な負担が増える
介護離職を選ぶと、収入源がなくなり、経済的な負担が増える問題があります。
「令和3年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」によると、介護離職により、「経済面」について「非常に負担が増した」「負担が増した」と回答する人が全体の6割以上を占めています。
離職したことで、安定した収入が無くなると同時に、現役世代の場合は退職金や将来もらえる年金額も少なくなります。
また、生活費に加えて、介護用品の購入や介護サービスの利用料などの負担が増えます。
結果的に、貯蓄や年金に頼らざるを得なくなり、次第に費用の捻出も難しくなります。
介護離職を選んだ人から、経済面について以下のような話を聞きました。
「仕事を離れたので、収入が私と親の年金とほんのちょっとの貯蓄だけなので、生活するだけで精一杯ですね。」
そのため、介護離職は経済的な理由によって、生活が苦しくなるリスクがあると言えます。
キャリアが途絶えて再就職が難しくなる
介護離職によって、キャリアが途絶えて再就職が難しくなる問題があります。
「令和3年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」によると、以下の理由で再就職をしていない人が多くいます。
- 仕事と「手助・介護」の両立が可能な職場が見つからない
- 希望する仕事内容の職場がない、見つからない
上記の理由などで介護離職を選ぶと、長年かけて築いたキャリアが途絶えてしまいます。
また、介護離職の期間が長いと、それに並行して、仕事をしていない期間も長くなります。
さらに、年齢が高い・仕事と介護の両立に理解がある就職先が少ない問題もあります。
そのため、就職活動の際に不利になり、再就職が難しくなる場合があります。
人と関わる機会や相談する機会が少なくなる
介護離職が原因で、人と関わる機会や相談する機会が少なくなります。
介護離職によって、介護者自身が使える自由な時間やお金が少なくなります。
そのため、離れて住む家族や親しい友人など、関わりがある人との交流の機会が少なくなります。
また、介護の悩みを相談したくても、デリケートな内容も話さないといけなくなるので、諦める人も中にはいます。
このような状況が続くと、介護者自身が介護のストレスや悩みを抱えたままとなり、最悪の場合、うつ症状などストレスによる病気を発症するリスクがあります。
実際に介護離職を選んだ人から、以下のような話を聞きました。
「認知症の母と一緒にいるけど、話が噛み合わないし、急に突拍子もないことをし始めて目がが離せないから、誰にでも相談できないし、毎日ストレスを感じるのでしんどいです。」
そのため、介護離職を選ぶと、人と関わる機会や相談する機会が少なくなり、精神的なダメージを受ける可能性があります。
仕事と介護を両立するための5つの方法
仕事と介護を両立するための5つの方法は、以下のとおりです。
- 介護休業制度を利用する
- 介護休暇を利用する
- 介護休業給付金を受け取る
- 働き方を変える
- 介護保険のサービスを利用する
1つずつ解説します。
介護休業制度を利用する
介護休業制度は、家族の介護で仕事を一時的に休業したい時に利用できる制度です。
休業の対象となる家族1人につき、合計3回・93日まで利用できますが、対象となる家族があらかじめ決まっています。
休業期間は、介護者の希望に合わせて、連続利用や期間を分割しての利用が可能です。
介護休業制度を利用した人から、以下のような話を聞きました。
「入院していた父が家に戻ることになり、家で生活できるか心配だったので、介護休業をとってしばらく自分がみることができたので、安心しました。」
そのため、介護休業制度は一定期間、仕事を離れて家族の介護に専念したい時には効果的な制度と言えます。
介護休業制度の対象となる家族は、以下のとおりです。
配偶者・両親・子供・配偶者の両親・祖父母・兄弟姉妹・孫
介護休暇を利用する
介護休暇は、1日単位や時間単位で家族の介護を行う際に利用できる休暇制度です。
休暇の対象となる家族1人につき、1年間で合計5日間までの休暇をとることができます。
こちらも、介護者の希望に合わせて、連続利用や期間・時間ごとに分割しての利用が可能です。
実際に介護休暇を利用した人から、以下のような話を聞きました。
「どうしても行かなきゃいけない父の病院受診が入ったため、介護休暇を事前にとったので、病院受診に付き添えたので良かったです。」
そのため、介護休暇は、さまざまなピンポイントな用事の時に使いやすい制度と言えます。
介護休暇が有休扱いになるかは職場の規定ごとで違うため、事前の確認が必要です。
介護休業給付金を受け取る
介護休業給付金は、介護休業制度を利用している介護者が休業期間中に受け取れる給付金です。
以下の条件を満たすと、合計3回・最長93日間まで支給されます。
- 雇用保険の被保険者であること
- 介護を要する家族が常時2週間以上の介護が必要であること
- 職場復帰を前提とした介護休業を取得していること
給付金の金額は、給与の6割〜7割に近い金額が給付されます。
金額自体は少なくなりますが、収入が途絶えず済むため、安心して介護休業期間を過ごせます。
すでに介護休業制度を取得した対象となる家族が、状態の悪化により要介護状態が変化すると、再び介護休業給付金を受け取れる可能性があります。
働き方を変える
仕事と介護を両立するためには、介護者の働き方を変えることがおすすめです。
多くの企業は仕事と介護を両立しながら安心して仕事ができるように、以下の取り組みを行っています。
- 残業時間の制限
介護休業を申請した人は1ヶ月あたり24時間、1年で150時間を超える時間外労働をさせてはいけないと介護休業法で定められている。 - フレックスタイム
3ヶ月以内の任意の期間の所定労働時間をあらかじめ設定し、従業員が自由に働く時間を設定できる制度 - 短時間勤務
所定労働時間を短縮できる制度。1日単位・週単位・月単位の勤務時間と勤務日数を短縮できる制度 - 時差出勤出勤
退勤時間を従業員が調整できる制度。 - リモートワーク
職場以外の場所で、ICT技術を活用しながら遠隔で仕事をする方法。主に在宅勤務で活用されることが多い。
上記の取り組みを利用した人から、以下のような話を聞きました。
「母がデイサービスに通っているけど、フルの仕事では家から送り出し・帰ってくる時間に間に合わないので短時間勤務に変えました。変えてからは解決したので安心しました。」
そのため、現在の介護状況を考慮し、職場での取り組みを利用することによって、家庭での介護の悩みや仕事と介護の両立を解決できる可能性があります。
介護保険のサービスを利用する
仕事と介護の両立のためには、介護保険のサービスを利用することもおすすめです。
介護保険サービスは、以下の種類から、希望に合わせて組み合わせながら利用できます。
そして、介護保険サービスを利用すると、介護者の負担軽減や仕事と介護の両立につながります。
- 訪問介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 短期入所生活介護
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具購入
- 住宅改修
介護保険のサービスを利用する介護者から、以下のような話を聞きました。
「一時は母の介護を優先して離職を考えていましたが、デイサービスやショートステイを利用し始めてからは、時間を作ることができたので、今の仕事を続けることができています。」
そのため、介護保険のサービス利用は、介護者が使える時間を作ることができるため、仕事と介護の両立においては効果的と言えます。
介護離職を選ぶ前によく考えましょう
今回は、介護離職と仕事と介護を両立するための方法について解説しました。
さまざまな理由によって、仕事と介護の両立に苦労し、悩んでいる介護者が多くいます。
介護離職を選んでも、根本的な解決にはつながるどころか、介護者にとってむしろマイナスになりかねません。
介護離職を防ぎ、仕事と介護を両立するためには、以下の方法を実践することをおすすめします。
- 介護休業制度を利用する
- 介護休暇を利用する
- 介護休業給付金を受け取る
- 働き方を変える
- 介護保険のサービスを利用する
そのため、安易に介護離職を選ぶ前に、「本当に仕事と介護を両立できないのか」よく考えましょう。
そして、利用できるものは最大限利用して、仕事と介護の両立を目指しましょう。
今回は最後まで読んでいただき、ありがとうございました。