ここ数年、老人ホームの倒産を耳にすることが多くなりました。
東京商工リサーチが公表した2022年の「老人福祉・介護事業」の倒産は143件(前年比76.5パーセント増)となっています。
老人ホームが倒産する原因には、「介護施設増加による競争激化」「新型コロナウイルスの影響」「コストの増大」「人材不足」などがあります。
あなたの家族が入居する老人ホームが倒産したら「入居者はどうなるのか?」「入居一時金は戻ってくるのか?」「転居先はどのように探したらいいのか?」など疑問を持ちますよね。
ここでは、老人ホームが倒産したら入居者はどうなるのか、家族にはどのような影響があるのか対策として何をしたらいいのかについて解説します。
利用している老人ホームの倒産に直面している方、老人ホームの倒産に不安を持っておられる方、参考になさってください。
老人ホームが倒産すると入居者はどうなる?
厚生労働省は、事業所が倒産することになったとき、ケアプランを作成した今までの事業者に引継ぎ先を確保する責任があると指導しています。
倒産しても、多くの場合は別の事業者に経営が引き継がれますが、別の事業者が見つからない場合、引き継ぎがされない場合もあります。
それぞれの場合を見ていきましょう。
別の事業者に経営が引き継がれる場合
老人ホームが倒産したとき、多くの場合は別の事業者に経営が引き継がれ「事業譲渡」されます。
事業譲渡が行われ運営会社が変更になるだけなので、入居者はそのまま生活を続けることができます。
また、施設職員もそのまま新しい事業者で継続雇用されることが多いようです。
入居者の既往歴や普段の生活を知っている馴染みのある職員に対応してもらえることや、住み慣れた施設建物に入居を継続できることは入居者や家族にとって安心ですね。
ただし、施設の老朽化で今までの建物が使用できないなど、入居者が別の建物に移らなければならない場合もあります。
また、新しい事業者のサービス内容や運営方針に入居者、家族が納得できない場合は退去することになり別の老人ホームを探すことになります。
施設を変えるべきかどうかお悩みの方は、まずは施設探しのプロに相談しましょう。福祉・介護の国家資格取得者が全ての案件を監修している地域介護相談センター 近所のよしみまでまずは0120-110-512まで無料相談してみてください。
引継ぎする事業者がなかった場合
引継ぎする事業所がなかった場合はその施設は閉鎖となり、入居者は退去することになります。
新しい入居先を探すことは、家族にとって心身的負担、経済的負担が大きいです。
倒産した事業所が新しい老人ホームを紹介してくれることもありますが、サービス内容や所在地、入居費用、月額利用料などの条件が入居者や家族の要望と合わないこともあり不安要素が多いです。
※一言で「老人ホーム」といっても「特別養護老人ホーム」「有料老人ホーム」「サービス付き有料老人ホーム」など、公的施設から民間施設までさまざまな施設形態があります。
それぞれ入居基準、サービス内容、入居一時金の有無、月額利用料など異なりますので、入居者や家族の希望に近いものをできるだけ検討してください。
老人ホームが倒産するときの入居者と家族への影響
入居中の老人ホームが倒産することになったとき入居者や家族ヘは心身的影響と経済的影響があると考えられます。
入居者と家族への心身的影響
老人ホームが倒産するときの入居者と家族への心身的影響には主に次の3点が挙げられます。
新しい入居先を探さなければならない不安
廃業事業者から入居者や家族に倒産の連絡が入るのは遅くとも廃業日1ヶ月前までです。
倒産が知らされた日から、実際の閉鎖日まで日程に余裕がありません。
決められた期日までに次の老人ホームを見つけて入居を決めなければならないのは入居者、家族にとって心身的負担が大きいです。
規約やサービス内容の変更
引継ぎされた場合でも新しい老人ホームへ転居した場合も、新しい事業者の規約やサービスが適用されることになります。
ケアやサービス、食事、レクリエーションなどほとんどの内容が変更になります。
例えば、今まで24時間介護職員が常駐していたのに、24時間対応してもらえなくなったりするケースがありますし、今まで無料でできていたケアが有料になることもあります。
環境の変化に敏感な方は落ち着きがなくなったり、不眠になったりすることもあり、慎重かつ丁寧な対応が求められます。
新しい施設と相性が合うかどうかの不安
退去日が迫っている中、新しい老人ホームが決まったとしても、入居者がそこで落ち着き、安心して過ごせるかどうかわかりません。
入居者の中には新しい環境になかなか馴染めず、認知症が進んだりQOL(生活の質)が低下したりすることもあります。
新しい老人ホームに入居後数週間~数カ月間、入居者が新しい環境に慣れるまでは施設側も家族も全力でサポートする必要があります。
入居者と家族への金銭的影響
今までの施設に住み続けれる場合でも、月額利用料が増えるかもしれませんし、転居が必要な場合は引っ越し費用などがかかります。
入居者と家族への金銭的影響としては主に次の3点が挙げられます。
入居にかかる月額利用料の負担増
老人ホームの月額利用料は、入居者本人の貯金や年金などで足りない場合、家族が負担している場合も多く、新しい老人ホームに移らなければいけない場合、家族の金銭的負担が増えることもあります。
入居一時金の取り扱い
「有料老人ホーム」や「グループホーム」に入居する際、数百万円以上の入居一時金を支払っている場合があります。
入居一時金は毎月少しずつ償却されますが、老人ホームが倒産しても未償却分の一時金を保証する制度が「入居一時金保全措置」です。
入居一時金保全措置は施設が倒産した場合に、500万円を上限として支払った入居一時金の一部が戻ってくる制度で、2021年4月1日以降すべての有料老人ホームに義務付けられました。
入居した年や施設ごとに規約が異なっており、途中退去することになった際の入居一時金の返還金がない、または思っていたよりも少ないというトラブルが多く起こっています。
また、引っ越し先の老人ホームの入居一時金が必要になることもあり金銭的負担は大きくなります。
入居一時金保全措置についての相談は「国民生活センター」または「消費生活センター」でできます。
引っ越し費用の負担
新しい老人ホームへ引っ越しする際の引っ越し費用や移動の際の費用は入居者側が負担する必要があります。
老人ホームが倒産するときの対策
老人ホームが倒産することを知ったとき、衝撃や怒り、不安…さまざまな感情が錯綜します。
迅速な解決策を探さねばならない中、何から手をつけたらいいかわからない状態になりますよね。
まず、身近なケアマネージャーや地域包括支援センターなど公的機関に相談してみましょう。
ケアマネージャー・生活相談員に相談
入居者の既往症や現在の体の状態、経済状態などよく知っているのがケアマネージャー、生活相談員です。
ケアプランの作成でさまざまな事業者間の調整を行っているため、老人ホームの施設情報も持ちあわせています。
転居先について、転居にともなう手続きについて相談してみましょう。
地域包括支援センターなどの公的機関に相談
地域包括支援センターは高齢者の健康面・生活面全般の相談を受け付けている公的機関で、高齢者や家族など高齢者を支えている人は誰でも利用できます。
もし、地域包括支援センターが近くにない場合は、自治体の高齢福祉課や介護保険課での相談も可能です。
いずれにしても地域に密着しているので、地域の介護施設の情報を教えてもらえます。
高齢者の施設入居や金銭面での相談にものってもらえる公的機関なので安心して相談してみてください。
施設探しのプロに相談
どのような施設にすべきか費用をどのように工面すれば良いのかお悩みの方は、また大変な思いをするリスクを下げるためにまずは施設探しのプロに相談しましょう。福祉・介護の国家資格取得者が全ての案件を監修している地域介護相談センター 近所のよしみまでまずは0120-110-512まで無料相談してみてください。
まとめ
家族が入居する老人ホームが倒産した場合の入居者や家族への影響と対策についてお伝えしてきました。
老人ホームが倒産した場合は、別の事業者に経営が引き継ぎされる場合と引継ぎされない場合があります。
倒産によって、入居者にも家族にも心身的、経済的影響があるのは必須です。
新しい老人ホームのサービス内容やケアが満足できるものなのか、入居者の心身状態に変化はないか心配が尽きません。
心配、不安は担当のケアマネージャーや生活相談員、地域の包括支援センターに相談ください。
入居者や家族が安心して生活していけることを願っています。