老人ホームは終の棲家だから、最後まで看てくれると思っていませんか?
老人ホームでは、施設側から退去を告げられることがあります。
まずは、入居した時の契約の内容を確認しましょう!
退去勧告はご利用者やそのご家族、成年後見人などとの関係に問題が生じたり、契約違反があったり、ご利用者の心身状態の悪化があった場合などに行われます。
なぜ、退去勧告されるの?
問題行動
老人ホームにおける退去勧告の一般的な原因の1つは、ご利用者の行動に関する問題です。
ご利用者が他のご利用者やスタッフに対して暴力的な行動やセクハラ行為、暴言を行ったり、誹謗中傷するなどの場合、退去勧告が行われることがあります。
また、ご利用者だけでなく、ご家族の皆さん、成年後見人や任意後見人、代理人の皆さんも同じ様な行動があった場合は、退去勧告の理由となり得ます。
最近では、SNS(ソーシャルネットワークサービス)による施設やスタッフなどについての誹謗中傷的な書き込みが発覚した場合も対象になる場合があります。
支払い滞納
退去勧告のもう1つの一般的な原因は、ご利用者が施設の料金(施設使用料)を支払わないか、滞納する場合です。ご利用者が様々な理由で料金を払えなくなってしまうこともあるかも知れません。
そういった場合でも、施設側は一方的な態度を取らず、しっかりと事情を聞いてくれます。そして、一定期間の猶予を設けてくれています。
この猶予期間は契約書にも明記されていますので、確認されることをお勧めします。
施設によって期間など内容や表現は様々ですが、大概は2ケ月間以上の滞納(遅延)、かつ施設側から催告され2週間以内に支払われない場合などの様に記載されています。
心身状態の変化
ご利用者の心身状態の変化も、退去勧告が行われる理由の1つです。
例えば、体調を崩し医療処置を受けなければならない状態になってしまった場合、住まわれている施設では十分な対応ができない場合があります。そういった時は、必要な医療が受けられる病院や専門施設への移転をお勧めすることがあります。
また、長期間の入院が見込まれる場合も、施設を離れていただく場合があります。目安としては、およそ3ヶ月以上の入院が想定される場合などが挙げられます。
特別養護老人ホームでは、入居要件が要介護3~5のため、介護度が更新され、軽度(要介護1または2)になった場合、そのままの生活が認められた方以外は、別の住まいを検討いただくように告げられることがあります。
老人ホームからの退去勧告の実情と深層を探る
ある有料老人ホームの事例:問題行動と滞納のジレンマ
有料老人ホームで、ご利用者が施設の環境や他のご利用者、スタッフと馴染めず、孤独感を強く感じていました。
施設の生活に慣れてもらうために、スタッフが他のご利用者と一緒にレクリエーションへ誘ったり、外へ散歩に出掛けたり、細目に話し掛けたりと孤独感を和らげようと努力していましたが、施設内での暴力的な行動がどうしても減りませんでした。
それに加えて、使用料も支払われていないことがわかりました。
暴力的な行動だけであれば、何とか解決策を模索することができましたが、滞納の問題が解決されなかったため、退去となりました。
退去勧告の具体的な理由
- ご利用者の問題行動の多発
- 施設使用料の滞納が続き、解決されなかった
ある特別養護老人ホームの事例:医療ニーズと施設適応の限界
特別養護老人ホームでは、胃ろう・腸ろう、たんの吸引、カテーテル、褥瘡など医療処置が必要なご利用者は入居者全体の約16%を占めているそうです([出典]「特別養護老人ホームにおける看取り等のあり方に関する調査研究事業(令和2年度老人保健健康増進等事業)」)。
この特養も同じ割合の方が入居されていましたが、その中のお一人の健康状態が急変し、医療機関へ緊急搬送され、長期入院されました。
施設側として、ご利用者が戻られるために居室を開けておきたい心情はありますが、その間、施設としての収入(施設使用料など)がないため、退去となりました。
もし、退院されたとしても、気管切開を行い人工呼吸など、高度な医療行為が必要になってしまった場合も施設適応の限界があり、退去を告げなければなりませんでした。
退去勧告の具体的な理由
- ご利用者の病状が急変し、医療機関へ緊急搬送後、長期入院されたため
- 人工呼吸など高度な医療ニーズへの施設適応の限界
退去勧告を受けた際の対処とやるべきこと
退去勧告を受けた際の対処
退去勧告を受けた際は、まず内容をよく確認しましょう。退去勧告の理由や根拠、退去までの期限などを確認し、自身の立場や権利を把握します。
退去するまでの相談先として、まずは施設の管理者やスタッフに相談しましょう。施設側は退去勧告に関する詳しい説明やアドバイスを行い、退去のために必要な援助をしてくれます。
ほかに、地域包括支援センターや自治体の福祉課などの相談機関へも助言を求めましょう。
もし、退去勧告に異議を唱えたい場合は、適切な法的手続きを踏む必要があります。その際は、弁護士や地域の法律相談窓口など専門家の助言を得ることもひとつの方法です。
退去勧告を受けた際にやるべきこと5選
冷静に状況を受け止める
退去勧告を受けた際は感情に流されず、冷静に状況を受け止めることが重要です。
感情的になり過ぎず冷静に判断して、落ち着いて状況を見つめ直すことが大切です。
通知書や契約書の内容を確認する
退去勧告の通知書や契約書の内容を細かく確認し、退去の理由や期限、その他の条件を確認しましょう。
通知書や契約書に記載されている情報をしっかり把握することで、後の対応がスムーズになります。
相談機関や専門家へ連絡し、助言を求める
地域の地域包括支援センターや居宅介護支援事業所、自治体の福祉課などの相談機関に連絡し、退去勧告に関する相談を行いましょう。
専門家の意見やアドバイスを受けることで、適切な対応や解決策を見つける手助けが得られます。
場合によっては、法的なアドバイスを受けることで、自らの権利を守りながら、的確な行動を取ることができます。
ご利用者の心身状態を確認し、支援を行う
ご利用者の心身状態について確認し、退去勧告に伴うご利用者の心理的な状態を把握しましょう。
ご利用者の状態を正確に把握することで、当人にとって本当に必要なサポートを見つけることができます。
そして、ご利用者が退去勧告によって混乱や不安を抱いている場合には、理解と共感を示し、精神的な支援を行いましょう。
ご利用者の感情や心理状態に配慮しながら、穏やかな雰囲気を作り出すことも重要です。
家族間で協力し、移動先の選択肢を検討する
退去勧告に対して、まずは家族みんなで力を合わせて、乗り越えていきましょう。
本人のために、家族での話し合いの時間を多く設け、協力して問題解決に取り組みましょう。
他の施設への移動や支援機関の利用など、現状のご利用者の状態に合った移動先を検討することが重要です。
ご利用者の健康や生活状況を考慮し、適切な移動先を選択しましょう。
退去勧告を受けない方法
施設は、ご入居者の方々が安心して生活できる空間です。お一人おひとりが、気持ちよく過ごせるよう、施設にはルールがあります。入居時に説明を受けたり、契約書を確認したりして、きちんと理解を深めておくことが大切です。
しかし、生活する中で何かトラブルが起きてしまうこともあるかも知れません。
そんな時こそ、施設の皆さんに素直に相談し、一緒になって解決策を見つけていきましょう。
些細なことから大きな誤解が生まれてしまうこともあります。本人のために、お互いが耳を傾け合い、本音で話し合えば、きっと納得のいく答えが出てくるはずです。