皆さんは『老人ホーム』と聞いて、一体どんな方が入居されていて、入居のためにどれくらいのお金が必要かご存じでしょうか?
入居されている高齢者の多くは既に定年を迎え、主な収入源は年金のみという方も多いでしょう。
では、どれくらいのお金が必要で、どんな生活を送っているのか、解説していきたいと思います。
年金だけで老人ホームに入居できるのか?
結論から言うと、年金のみでの老人ホームへの入居は可能です。
しかし入居可能と言っても、どこでも入居できるわけではありません。
一口に老人ホームと言っても、高齢者の入居施設には、公的なものと民間のものがあり、その中でも様々な種類の施設があります。
ではそれぞれに、一体どういった施設があるのでしょうか?
公的な施設
公的なものは特別養護老人ホームと呼ばれるもので、前提として入居のために要介護3以上の要介護認定を受けている事が条件です。
ただ、特別養護老人ホームは地方自治体や社会福祉法人が運営しており、民間の施設よりも費用が安いという特徴があります。
そのため人気が高く、入居までの順番待ちをすることがあり、実際の入居まで時間がかかる場合があります。
民間の施設
民間の施設とは、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などで、提供されるサービスも一般的な介護サービスに加え、施設独自のサービスを行っているところもあり、その分公的な施設よりも高額になる場合があります。
入居するためには一体いくら必要なのか?
老人ホームへの入居については、その施設ごとに必要な金額に差があり、0円で入居可能な施設もあれば、入居に数千万円といった高額な一時金が必要な施設もあります。
では一体どういった施設なら0円で入居できるのか?
それは特別養護老人ホームです。
公的な施設には入居のための一時金は必要なく、初期費用0円で入居可能です。
しかし民間の施設であっても、入居一時金が必要ない施設もあり、そういった施設なら公的な施設と同様、初期費用なしでの入居も可能です。
そのため、順番待ちが少なく、入居に必要な要介護度の要件の軽い民間の施設の方が、入居に対するハードルは低いと言えます。
入居後の費用
入居後の毎月の費用についても、公的な施設と民間の施設では大きく金額に差が出ます。
月々の費用については入居者の要介護度による介護サービスなどの差によって、多少の金額の違いはありますが、特別養護老人ホームであれば、概ね月々10万円前後の金額になります。
民間の施設の場合、月々20万円程度の費用がかかり、このままでは年金のみでの生活は困難と言えるでしょう。
しかし、通常費用が高額になりがちな民間の施設であっても、年金のみで生活することは不可能ではありません。
どうすれば月々の費用をおさえられるのか!?
家族や自分でできる事は自分で行う
月額利用料の内訳は、
家賃 + 食費 + 光熱費 + 共益費 + 介護サービス利用料 + その他費用
というところが多いかと思います。
家賃や光熱費などを抑えることはできませんが、介護サービスとして行っている、居室の清掃や洗濯などを家族や自分で行う事で、介護サービス費を抑えることが出来ます。
入居時一時金を支払う
入居時一時金の必要の有無は施設によりますが、施設によっては入居時一時金を支払うことで、一時金を償却するかたちで、月額の家賃を抑えることのできるプランがある施設もあり、結果的に月々の費用を抑える事が出来ます。
様々な助成制度を利用する
入居者の費用負担を軽減する制度として、高額介護サービス費制度というものがあります。
これは介護サービスにかかった費用が自己負担の限度額を超えた場合、超過分の費用の払い戻しを受けられるので、結果的に費用を軽減できます。
高額介護サービス費の負担限度額が見直されます – 厚生労働省
もう一つは特定入所者介護サービス費という制度です。
これは、食費と居住費の負担を軽減するためのサービスです。この制度では利用者の所得に応じた限度額が設定されていて、その限度額を超えた分は負担しなくてよい、という制度です。
サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説
これらの制度を利用する事で自己負担を軽減し、月々の費用を抑える事が出来る可能性があります。
施設に入れない!どうすればいい?
いくら施設入所が年金のみでも可能とは言え、順番待ちなど様々な理由で入居できない場合、在宅での介護サービスを利用しましょう。
在宅介護とは、自宅にいながら利用する介護サービスの事ですが、これにも様々なサービスがあります。
通所介護サービス
一般的にデイサービスと呼ばれています。
朝から夕方までを施設で過ごし、夜間は自宅で過ごす一日型や、午前・午後どちらかだけの半日型などがあり、施設では入浴や食事のサービスを受けたり、リハビリを行う施設などがあります。
訪問介護
訪問介護とはヘルパーが自宅に訪問し、決められた時間だけ介護サービスを行うものです。
自宅でヘルパーに入浴を手伝ってもらったり、おむつ交換などを行う身体介護、洗濯や掃除、買い物の代行、調理などの生活援助があります。
小規模多機能型施設
これは訪問介護と通所介護、ショートステイを合わせたサービスで、通常はデイサービスとして利用したり、自宅にヘルパーに来てもらい、介護サービスを受ける事が出来ます。また、必要な場合はデイサービスでの宿泊サービスも利用できる施設の事です。
これらの特徴は必要な分だけ、必要なサービスを使う事が出来る、というところです。
介護サービスをどれだけ利用するかで、月々の負担は大きく変わりますが、私が管理者を務める半日型のデイサービスの場合、週2回の利用で、入浴・食事の提供はありませんが、1カ月で利用料は5,000円以下で利用可能です。
こうして施設入所よりも大きく費用を抑える事が可能です。
在宅での介護サービスを利用するには?
地域包括支援センターや居宅介護支援事業所にいるケアマネージャーに相談しましょう。ケアマネージャーと相談し、必要な分だけの介護サービスを受けることで、施設入所よりも、かなり費用を抑えられるでしょう。
これらの事業所は、地域の役所の介護保険課などでも紹介してもらうことが出来ます。
結論!年金のみでも介護サービスは利用できる!
筆者はこれまで介護業界に携わる中で、多くの方と出会い、様々なケースに対応して来ました。
冒頭でもお話した通り、年金のみでの施設入所、介護サービス利用は可能です。
しかし、もし施設入所後に資金が無くなったら、と不安な方もおられるでしょう。
そんな場合でも、以下の方法で不安を解消できる可能性があります。
年金が足りない!そんな時は?
転居する
支払いが滞ったからと言って、即退去を迫るわけではありません。
施設によってその期間は違いますが、2~3カ月の猶予期間があり、その間にケアマネージャーに相談し、支払いが可能な施設に転居する事も出来ます。
この猶予期間の定めは契約書に記載されているので、入居の際にはしっかりと確認しておきましょう。
私が知るケースでは、支払いが出来なくなり転居した後、支払えなかった分の利用料については、施設側と相談しながら分割で残金を支払うことで、施設での生活を継続していました。
生活保護を受給する
最後に紹介するのは生活保護申請を行うというものです。
ただこれには条件があり、施設が生活保護対象者を受け入れている事が前提となります。
施設によっては受け入れを行っていない施設もあるため、確認が必要です。
生活保護を受給する事で、家賃・食費・介護サービス・医療の負担をなくすことが出来ます。
こうした制度を使うことで、老後の不安を軽減できることでしょう。
筆者はデイサービスの管理者をしていますが、よく地域の方に介護の不安や悩みを相談されることがあります。
その多くは介護の制度や仕組み、様々なサービスを知らないことが原因であることが大半です。
まずは専門の機関などに、小さな不安でも相談してみることをおすすめします。
下記外部リンクから各都道府県の地域包括支援センターを検索する事が可能です。
地域包括ケアシステム|厚生労働省