コロナの影響が少しずつなくなり、介護施設に面会ができる時間も増えてきたのではないでしょうか。
送り迎えや面会の際に施設のスタッフの中に外国人の介護士さんがいることに、気づかれることはありませんか。
外国人がいるだけでも珍しいのに、介護の現場に介護士としているとは思わず、驚く人もいると思います。
- どうして介護施設に外国人がいるの?
- ちゃんと介護はできるのか?
- 日本語を話したり、書いたりはできるの?
不安に思われることが多いと思いますが、その実態を現場で20年のベテラン介護福祉士が解説解説します。
外国人の介護士を受け入れる理由とは?
日本の介護業界の状況は、常に人手不足の状態です。
採用がかなり困難で、介護事業所で働く従業員自身も不足を感じている状態のため、早急に解決する必要があります。
ですが募集を出しても人が集まらない、長期的な雇用につながらないなどの悩みもあります。
業務の負担や責任も多いので、少ない人員での運営は厳しいものがあるでしょう。
そのため、外国人の雇用に挑戦していく事業所や施設が増えました。
外国人の介護士はどこの国から来ているのか?
外国人の介護士といっても、様々な国から来ています。特に多いのは発展途上国からの受け入れです。
なぜなら、介護技術や日本の文化などを知識として持ち帰り、母国で活かしたいと考えている人が多いからです。
- インドネシア
- フィリピン
- ベトナム
上記の国は日本と協定を結んでおり、外国人介護福祉士候補者の受け入れをしています。
日本では介護は人手不足の職業ですが、ミャンマーでは介護職が人気です。
仏教の思想から、高齢者の介護は徳を積める仕事だと認識され人気があるので、ミャンマーからの外国人介護士には大きな期待ができるかもしれません。
外国人の介護士を雇用するメリットとデメリット
外国人の介護士を雇用することでメリットもありますが、デメリットも存在します。
人手不足の解消という大きなメリットだけでなく、外国人を雇用する上でのデメリットもありますので、どういうことがあるのか、考えてみてください。
メリット | デメリット |
---|---|
人手不足が解消できる | 数年後に帰国しなければならない |
若い人材を確保できる | 日本語の意思疎通が難しい |
人の少ない地方でも採用ができる | 離職する可能性もある |
国際貢献ができる | 手続きに時間がかかる |
外国人による犯罪などの心配はないのか。
まったく心配がない、とは言えませんが、受け入れをしている事業所や施設側がとるべき対策もあります。
- 身分確認の徹底
- 在留カード、資格が本物かチェックする
- 信頼できる人材紹介会社を頼る
当たり前のことのように思われますが、しっかりとしたチェック体制や信頼できる人材紹介会社を頼ることで、多くのリスクを減らすことができます。
事業所や施設側はできるだけリスクを減らし、外国人の雇用をしていきましょう。
また日本人と同じで、職場環境や人間関係なども整えていく必要性があります。
日本語が不自由でコミュニケーション不足になる可能性もあるからです。
そのような時に職場がいやにならないように、職場環境、人間関係を整えましょう。
外国人介護士を導入した施設での事例
ここでは実際に外国人介護士を導入した事例です。
特定の時間帯に起こったこと、日本語の意味を理解できないケース、人間関係の難しさなど、外国人の介護士に対する様々なことがあります。
どんなクレームが来て、どんな様子だったのか、ご紹介します。
事例:「この時間にはこの人たちしかいないの!?」~送迎時間帯のクレームについて~
外国人介護士は一般的な介護業務をすることはできますが、送迎業務をすることはできません。
その場合は、日本人の介護士が交代して行うことになります。
しかし送迎の人数が多い、送迎の時間帯がかぶってしまった、などの理由から施設の中に外国人の介護士だけしかいない時間帯ができてしまいました。
などと家族からクレームがくることがあったのです。
確かに家族を預けている側からすれば、今までは日本人が対応してくれていたのに、急に外国人が対応することになって、不安なことばかりでしょう。
解決策として、送迎時間帯の人員配置の見直し、家族に対して外国人の介護士がどのようなケアなら心配なくできるのか、などを伝えています。
事例:「これはなんですか?ぼくにはわかりません」~高齢者の話を聞くことはできても、意味が理解できない~
外国人の介護士は若い人が日本に来ているパターンが多くあります。
学びたい、働きたい、との意欲が強いので、必然的にそうなる傾向が高いのです。
その結果、業務自体は割と早く覚えられ、入浴介助やレクリエーションなど多岐に渡って活躍してくれます。
ですが、日本語が難しいことは、なかなか解消することができません。
外国人の介護士が日本人の実習生に「おしりからいれるくすりっていわれたけれど、ぼくにはそれがなにかわからない」と言ってきたのです。
日本人ならある程度の人は知っているはずの座薬が、外国人の介護士には分からなかったのでしょう。
また外国人の介護士からすれば実習生でも日本人だから聞いてもいいと思うようでした。
実習生の方が驚いて、現場の職員へ相談にきたというのが今回の流れです。
このように、日本語は難しいため、書き方や読み方が分からない、それが何を意味するのか理解することに時間がかかる、などの課題が多くあります。
事例:日本に来たのだから、日本のやり方を学ぶべき!~現場の人間関係の難しさ~
介護現場だけでなく、会社に所属するとそれなりのストレスがあり、悩ましいことが多くあるのではないでしょうか。
それは外国人の介護士でも同じことです。
こういったことは日常の会話でよくあることなのですが、外国人の介護士にしてみればどうするのが一番いいのか迷ってしまうことが多いでしょう。
現場でミーティングなどをし、共通理解をしようとしますが、なかなか実践で進まないことも多くあります。
外国人の介護士は複数人で雇用されることが多く、分からないことや不満などを外国人だけで集まって母国語で言い合うケースもあります。
少しならばストレス発散につながりますが、基本的に職場では日本語で話をするようにしてもらいましょう。
こんな施設は利用を検討するべき具体例8選
外国人の介護士がいるからといって、すべての施設が不安であることはないと思います。
ですが、外からはなかなか見えないものです。
ここではこんな状況があったら、少し利用を考えた方がいいのでは?ということを説明します。
- 日本人の介護士も、外国人の介護士も挨拶をしない
- 外国人の介護士を雇う説明がなかった
- 外国人の介護士に、日本人の介護士が指示を出していない
- 施設内に活気がなく、レクリエーションなどを楽しんでいる様子がない
- 外国人の介護士が困っている時に、日本人の介護士がフォローしない
- 人員が増えたのに、介護士が休みや休憩をとっていない
- 施設の掃除、片付けなどができていない
- リーダー、管理者、施設長などに報告ができていない
挨拶はとても大事なものです。それができていない、となると大きな問題でしょう。
また外国人の介護士に対して、フォローをしていない日本人の介護士がいるようであれば、その職場は成長するのが難しくなります。
外国人の介護士は若い人材が多いので、レクリエーションをしたり、行事を開催すると盛り上がります。
しかしその盛り上がりがなく、活気がない場合は本当に外国人の介護士が活躍できているかわかりません。
人員に関しても、人手不足が解消されたはずなのに、介護士がバタバタしている、そんな時はまだ外国人の介護士が慣れていない可能性がある状態です。
それは掃除や片付けなど、小さなところにも現れます。玄関や入口付近が汚れていたり、片付いていないことはありませんか。
そして、上司への報告ができているかどうかは、とても大事なところです。
外国人というコミュニケーションがまだ難しい人たちがいるなか、何かしらのトラブルが発生するのは仕方がないことでしょう。しかしそれがちゃんと報告されているでしょうか。
そのようなちょっとしたところを見て、自分の家族を預けても大丈夫だろうか?この施設なら安心できる?などを判断してみてください。
施設への不信感を抱いたら専門家相談
一度発生した人間関係のトラブルや抱いた不信感はなかなか解消することは難しいことです。施設を変えるべきかどうかお悩みの方は次は失敗するリスクを下げるためにまずは施設探しのプロに相談しましょう。福祉・介護の国家資格取得者が全ての案件を監修している地域介護相談センター 近所のよしみまでまずは0120-110-512まで無料相談してみてください。
多くの問題を解決するには、やはり人のチカラしかない
外国人の介護士が介護現場にいることで、メリットも多くあります。
人員が増えることで、介護現場にいる日本人のスタッフが無理なく働けたり、しっかり休息を取ることもできるからです。
しかし、デメリットもあるので、それをどう解決していくのか、どうやって新しい方法を見つけていくのかは、
やはり一緒に働いているすべての人にかかっています。
誰かが日本語を教えてくれるだろう、誰かが説明してくれるだろう、上司や管理者がするんだろう、ではありません。
同じ介護の仕事をする仲間が、同じ方向性を向くことです。
その施設を利用する多くの人が笑顔で働けるような職場づくりをしていくには、一緒に働くチームの力が大きく関わっています。
外国人の介護士とこれからの日本の介護の将来性は
介護業界の人手不足を解消するために、外国人の介護士を雇用することは続いていくでしょう。
事業所や施設としても、外国人の雇用を積極的に行い、人手不足を解消したいと考えているところは多いと思います。
コミュニケーションや文化の違い、習慣や宗教の壁はあるかもしれませんが、誰もが長く働き続ける職場づくりの一環として、外国人の介護士雇用はあると思います。
異文化に触れながら介護を受ける、という経験は今までの高齢者施設では少なかったことだと思います。
しかし時代が変わり、人手不足などを理由に外国人の介護士が増えてきたことは事実です。
異文化に触れることがケアの質や認知症にどう影響するのか、まだはっきりとは分かりません。
ですが、メリットデメリットがありながら、高齢者の介護は変わっていくのではないでしょうか。
家族を預ける立場からすると不安なこともあるかもしれませんが、
これから先の将来、介護業界がどう変化していくのかはとても重要なことです。
不安なことは施設側へ必ず相談し、伝えていくようにしましょう。
少しずつ課題を乗り越えながら、外国人の介護士の受け入れが進むことで、多くのことが変化すると思います。
そうすることで日本の介護の将来性は、見えてくるのではないでしょうか。