介護職の悲鳴!スタッフの離職や退職がなぜ増えるのか

介護職の悲鳴!スタッフの離職や退職がなぜ増えるのか

日本は高齢化率29.1%の超高齢化社会で、世界に類をみない超高齢者大国です。

健康な高齢者の方も多くいますが、介護が必要な高齢者が増える一方で、多くの介護施設・訪問介護事業所は人材不足の状況です。人材不足の状況下で、介護職から離職する方が介護職として就業し始める方を上回る「離職超過」の状態が生じていたことが厚生労働省の調査で判明しました。

「離職超過」の状態が続くと人手不足はさらに深刻化し、高齢者人口がピークとなる2040年度までに介護職を69万人増やす必要があるとされていますが、あと6年で改善することは厳しいようです。

高齢者人口が増加していくなかで、介護サービスへの急速な需要の高まりが予想されますが、試算通りに人材補完できるか見通せません。

介護業界の現状

内閣府が公表した「2023年(令和5)年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者の人口は3,624万人に上昇し、総人口の29.1%に達しています。

2010年から総人口が減少していますが、同時に生産年齢人口(15歳~64歳)も減少しています。2040年に高齢者人口がピークに達するため、総人口の3分の1になると推定され、介護サービスの需要は高まると予想されます。

同時に生産年齢人口(15歳~64歳)も減少するため、他業種と同様に介護業界も人手不足に苦慮し続けるでしょう。

人材不足である介護事業所の割合が66.3%と高い数値で、人手不足の深刻さがうかがえます。

居室やベッドが空いていても、介護職が定員割れをしているため、高齢者の受け入れができない状況が続きます。

介護職員の離職理由とは

介護職は、高齢者の暮らしの一部を支援してQOL(生活の質)を上げることができる、有意義な職種です。

なかには、就業前後で乖離を感じて離職する方が多いようです。

おおきな人間関係のストレスがある

複数人のチームで、役割分担する介護職は人間関係で思い悩むことがあります。

介護職はご利用者様・職員数が多い職場です。接することが多いご利用者様とは、身勝手な要望に対応するストレスや、暴言・暴力を受けてしまうことはあり得ます。

また、ご利用者様の家族と接することが多い訪問介護は、介護内容や手順に関してクレームを受けることもあり得ます。

実際の介護業務とは関係ないストレスで、勤労意欲が損なわれてしまう可能性があります。

人手不足のため業務負担が大

介護業界は、慢性的な人手不足という問題を抱えています。

介護職の人数が変わらなくても、被介護者の数や介護項目が増えれば、結果的に陥るのはやはり人手不足です。

高齢化の進行により、介護サービス利用者はさらに増えると予想され、業務負担が大きくなると推測されます。

業務負荷状態が慢性化していくため、離職を決める介護職が増加していくようです。

勤務が不規則である

介護の職場は勤務時間・業務内容が不規則といわれています。

ご利用者様が入居する施設の勤務態勢は、日勤・早番・遅番・夜勤などのシフト勤務が多いようです。

感染症などで、シフトに入って職員が病欠したとき、出勤可能な職員が対応することになります。そのため勤務が不規則になるのです。

身体介護の負担が大

介護職は体の不自由なご利用者様の身体介助をすることが多くあり、介護スキルと十分な体力を求められます。

ご利用者様ごとにADL(日常生活動作)が異なるため、ケアプラン通りにいきません。

決められた介護時間のなかでは、無理な体勢で介助してしまうこともあり得ます。気が付くと腰痛を患い、離職していく介護職が多いようです。

給与が低いこと

残念ながら介護職は、給与が低い職種として有名です。一部の有料老人ホームを除くと、介護職の給与は介護保険の介護報酬によるものです。

生産年齢人口(15歳~64歳)が減少しているなか、介護保険は現役世代(満40歳以上)の保険料負担と、ご利用者様やそのご家族の負担額のバランス調整が厳しい状況にあります。

介護保険料の大幅な増加または、ご利用者様の自己負担額を上げない以上、介護施設が得る介護報酬および介護職給与の賃上げは厳しい状況です。

しかし、2024年の介護保険の利用料金負担率が上がるといわれていますので、全産業の平均年収443万円に近づくかもしれません。

人材派遣会社に依頼しても希望人数、スキル者が集まらない

特別養護老人ホームを運営している社会福祉法人は、慢性的な人材不足のため人材派遣会社から介護職を就業させています。

人材派遣会社への登録料や人材派遣料金で、年間3,000万円~5,000万円の費用がかかるので、経営を圧迫している状況が継続しています。

人材派遣会社から派遣された介護職は有資格者ですが、実務経験が少ない・身体介護が苦手・ご利用者様とのコミュニケーション能力が不足している人材が派遣されるようです。派遣された介護職は契約期間が満了すると退所する始末といわれています。

介護職員の離職率が高い職場の特徴を紹介

介護施設は介護職として就業を始めた方々は、離職せずに長く続けられる職場を選びたいことと思います。

これから離職率が高い介護施設の特徴を紹介していきます。

募集人数が多いとき

「新規事業所を立ち上げる」「事業を拡大する」等の理由で多人数採用することは良く見聞きします。

しかし、大量の離職者を補完するための募集があるようです。ハローワークなどの公共機関を利用して事前確認しましょう。

いつも求人が出ていること

ハローワークの求人情報・民間の求人Webサイトで、いつも「介護職員」を募集している施設名・法人があります。

介護業界は慢性的な人材不足なので、人材募集していることは不思議ではありません。

しかし、該当の介護施設は、介護職員が定着しないことが多くあるようです。ハローワークなどの公共機関を利用して事前確認しましょう。

給料が相場より高いケース

介護職の平均年収は約350万円です。応募内容に給与が平均以上・相場より高いケースは、給与の月平均残業代が含まれていることがあり得ます。

また、人材を募集するために、高額な給与設定をしているケースが散見されるようです。

待遇が明記されていないケース

応募要項に基本給・平均残業時間・年間の休暇日数・職員一人あたりの夜勤回数・各種手当の金額・福利厚生・社会保険を明記していない介護施設は、ハローワークの応募要項審査を通過しません。

募集人数を確保するために厳しい項目を隠して募集していることがあり得ます。

たとえば、特別養護老人ホームで「残業なし」「夜勤なし」のワードはまやかしです。

他業種への転職するケース

世間一般のように賃上げが実現しないなかで、将来に不安を感じて転職相談会に足を運んだ介護職がいるそうです。

その介護職は転職相談会で相談員に「介護職が合っているかわからない」と相談すると、IT企業を勧められたそうです。

未経験でも技術が学べ、勉強するほど賃金が上がり、研修も充実していると説明されたようです。

近年はノーコード・ローコードのシステム開発が盛んになっているようです。IT企業に転職すれば、約400万円の年収を得ることができます。

その元介護職は、IT企業に転職し、残業が多いようですが、シフト勤務・夜勤から解放されました。

最後に

介護職員にむけた「(政府が掲げる)月額6,000円の賃上げは喜ばしいことですが、異業種では月額20,000円~30,000円の賃上げがされています。

2024年の新卒者の初任給が220,000円を超えた採用した企業があるようです。

賞与を2ヶ月と仮定すると年収が約364万円になり、新卒者が介護業界の平均年収を超える歪みが生じるようになりました。

介護職は、全産業の平均年収よりも約90万円も低額であるにもかかわらず、高いスキルを求められる業界です。

2024年の介護報酬改定で、0.98%の加算が決まったようですが、全産業の平均年収に近づくことができるでしょうか?他の産業は2024年春に3%~5%の賃上げが予定されています。

このまま格差があるままでいると、新人の介護職入職0人の介護施設がでてくるかもしれません。

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