こんなニュースをよく耳にしますが、実際はどれくらい不足しているのでしょうか?
介護施設の職員が不足していたら、具体的にどんな問題が起きるのでしょうか?
この記事では介護現場の人手不足の現状について、最新のデータを元に解説していきます。
また介護職員が不足する理由や、実際に働く職員の声、人手不足対策などについてもご紹介します。
心配している人に参考にしてもらえたら嬉しいです。
介護現場に人手が足りない理由
少子高齢化
介護現場に人手が足りない最大の理由は少子高齢化です。
日本の高齢化率は右肩上がりに増えており、団塊ジュニア世代が65才以上になる2040年にピークを迎えます。
高齢者が増え介護の需要が高まる一方で、少子化により生産年齢人口は少なくなっていきます。
介護が必要な人は増えるのに、介護職員として働ける人は少なくなるため、介護現場で人手不足が起きるのは必然と言えます。
介護の重労働と低賃金
介護は肉体的にも精神的にも負担の大きい仕事です。
しかし介護職員の給料は他の業界と比べて、決して良いとは言えません。
介護職員の処遇の問題。これも介護現場で人手不足が起きている理由の1つです。
専門的知識・技術を教育する体制が不十分
介護は専門職であり、知識・技術が必要な仕事です。
しかし介護の現場では、無資格の介護職員が働いていることも多く、専門的な教育や訓練を受ける機会が少ない現状にあります。
専門職としての介護職員を確保することが難しい状況になっています。
人手不足の現状と今後
最新のデータを確認してみましょう。
2019年の介護職員数は約211万人でしたが、2040年には約280万人が必要と予測されています。
この20年間で70万人近く介護職員を増やさなければいけません。
しかし介護職員になろうとする人は減っています。
介護福祉士を養成する学校の入学者数は2022年に最少となっています。
定員割れのため募集を停止する学校も出てきました。
人手不足が起こす深刻な問題点
介護現場では人手不足になると、どのような問題が起きるのでしょうか。
介護サービスの質が悪化する
人手不足になると、優先順位の低い仕事はどうしても後回しにされます。
場合によっては対応してもらえないサービスが増えるかもしれません。
また、職員と話す時間を取りにくくなり、ちょっとした相談もしにくい状況になります。
人手不足の状況では職員とのかかわりが希薄となり、介護サービスの質が悪化してしまいます。
介護職員の負担が増え、労働環境が悪くなる
人手不足の状況では、一人の介護職員にかかる負担が増えることになります。
残業が増えたり休憩がとれなくなるなど、過剰な負担は職員の健康にも悪影響です。
最悪の場合、負担がかかり過ぎた職員が体調を崩し、働けなくなってしまうこともあり、人手不足の悪循環に陥ります。
「介護職員の悩み・不安・不満等」について調査した結果では、「人手が足りない」と回答した人がもっとも多く52.1%でした。
これは「仕事内容のわりに賃金が低い」の41.4%よりも高く、介護現場で働く人がいかに人手不足を心配しているかが分かります。
人手不足で悩む介護職員の実際の声
ここで人手不足で悩む介護職員の実際の声をいくつかご紹介します。
- 産休や育休で休むのは仕方ないと思うけど、代わりの人員が補充されるわけじゃないから、現場で働き続ける人にしわ寄せがきている。
- 休憩はほとんど取っていない。10分だけご飯を食べたらすぐに現場に戻る。本当は休みたいけど、現場が心配で休んでいられない。
- 親戚のお葬式に出たかったけど、職員が足りないからという理由で休むことができなかった。
やはり介護現場の人手不足は深刻であり、職員も悩みを抱えていることが分かります。
地域格差が拡大する
東京や大阪などの大都市と比べ、地方では少子高齢化が早いペースで進んでいます。
そのため地方の介護施設は、人手不足がいっそう深刻です。
たとえば職員が不足しているため通常運営ができず、待機者が入居できないといったケースが見られます。
また、サービスの需要はあるのに、人手不足で施設が閉鎖に追い込まれたという事例も出てきました。
人手不足の問題は、今後も地域格差を拡大していくことになるでしょう。
人手不足を解消する方法
重要なことは労働環境を改善し、離職率を低下させ、新たな職員を増やすことです。
人手不足を解消するために、施設はさまざまな取り組みを行っています。
介護職員の賃金を上げる
介護職員の給料を上げて、職員のモチベーションを高めることが必要です。
国は介護職員の賃上げのために「処遇改善加算」という加算を導入しました。
施設はこのような加算を算定し、職員に還元することが求められています。
休憩や休暇を十分確保する
多くの介護現場では、休憩を十分とることなく業務が行われています。
しかし介護職員への負担を考えると、休憩時間の確保は不可欠でしょう。
また施設入居者の介護の場合、土日祝日や夜間もシフトが入るため休暇をとりにくい状況にあります。
心と体を休めるためにも、リフレッシュ休暇を導入するなど、休みを十分とれる体制を作る必要があります。
勤務時間を適切にする
介護業務は利用者とかかわるだけではありません。
介護記録や介護計画の作成など書類業務も多くあります。
また委員会の運営や行事の準備など、通常と異なる業務も多くあります。
そのため多くの施設でよく見られるのが、残業の常態化です。
サービス残業として働いてる場合も多く、そうなると労働環境は劣悪と言えます。
残業を減らし、勤務時間を適切にする体制が求められます。
専門教育の機会を作る
専門的な知識・技術をもつ介護職員を確保するためには教育の機会を作る必要があります。
たとえば施設内で勉強会を開催したり、外部の研修会に参加させるなどの方法があります。
また新入職員に対する的確な指導も必須です。
介護業務のマニュアルや、新人指導育成プログラムなどを確立させることで、新入職員でも標準的な介護サービスを提供できるようになります。
必要物品や環境を整える
介護職員の負担減のため、業務効率化の視点から、必要物品をそろえることも重要です。
特に福祉用具などの介護物品をそろえることで介助動作が楽になる場合もあり、福祉用具の積極的な活用が望まれます。
また、手すりや照明・エアコンの設置など、施設環境を整えることも有効です。
パソコン環境の整備など、デスク環境も見落とせないポイントになります。
働き方を多様化させる
介護職員確保のためには、短時間勤務の職員を導入させるなど、働き方を多様化させることも重要です。
入浴や食事の時間など、忙しい時間帯に職員を手厚く配置させるなど工夫することができます。
ボランティアの活用
ボランティアを積極的に活用することも人手不足解消には有効です。
具体的には以下のような活動があります。
- お茶くみ
- 食事の配膳・下膳
- 利用者の見守り
- 利用者とのお話相手
- 施設の消毒や清掃
- カラオケ機器などのセッティング
- 施設行事の進行の補助
- 書道や手芸、俳句など趣味活動の指導
- 楽器演奏など演芸の披露
ボランティアの導入により、介護職員が少なくてもサービスの質を高めることができます。
外国人労働者の登用
施設によっては外国人労働者を介護職員として受け入れいているところもあります。
しかし技能実習生として受け入れている施設は全体の4.4%であり、あまり活用されている状況ではありません。
まとめ
この記事では介護現場の人手不足について、理由や現状、対策などを解説しました。
少子高齢化が進む日本では介護職員の人手不足が避けられない状況にあります。
サービスの質が悪化したり、労働者に過剰な負担がかかるなど、人手不足の影響は深刻なものばかりです。
労働環境を改善したり、ボランティアを活用するなど、対策は急務となっており、現状では各施設がさまざまな工夫をこらしています。