尊厳を守るために。老人ホームでの写真と肖像権、個人情報を介護施設の法定研修講師が解説

尊厳を守るために。老人ホームでの写真と肖像権、個人情報を介護施設の法定研修講師が解説

2024年4月、介護施設のスタッフが入居者の介護を行う様子を動画配信サイトに無許可で投稿するという出来事がありました。

動画の中では、入居者に対しての不満、愚痴を話したり実際の入居者も映り込んでいたということが判明しています。

地域に根差した施設地域に開かれた施設など銘打っている施設は数多くあるとは思われますが、実際のところ施設は閉鎖的で見えない側面も有しています。

そのため上記の記事のように、無許可での動画や写真を配信・投稿や、よく耳にする高齢者虐待はどの施設でも起こりうる可能性を秘めていると考えられます。

このような出来事から大切な家族を守るためにはどうしたらいいのでしょうか?

そこで、今回は冒頭で述べた記事に関連する高齢者(施設入居者)の写真・動画撮影肖像権について、以下の点に着目し解説していきます。

  • 肖像権とは?
  • 個人情報保護法とは?
  • 写真はどのような機会に撮影され、使用されるのか?
  • 認知症高齢者と写真撮影について

肖像権とは

まずはじめに、皆さん肖像権とは、なにかご存じでしょうか?

肖像権とは、許可なく勝手に写真を撮られたり、その撮られた写真を許可なく勝手に公表されない権利とされています。

よく耳にする著作権と同様に、この肖像権も、私たち一人ひとりが持つ大切な権利です。

総務省のホームページにも記載されておりますので、そちらも併せてご覧ください。

これによって、小さな子供から、施設に入居されている高齢者まで、誰しもがどこにいても許可なく写真の使用は認められないとされています。

情報保護法とは

皆さんにとっては、前述の肖像権よりもなじみのあるワードではないでしょうか?

個人情報保護(正式名称:個人情報の保護に関する法律)は平成15年5月に制定され、平成17年4月に全面施行された法律です。

昨今、SNSの普及やICTの活用など、私たちを取り巻く環境は多岐にわたり、一人ひとりが持つ名前、住所、性別など様々な情報が発信されやすくなり、目に留まり情報も得やすい時代となりました。

もちろん、介護施設に入居されている高齢者一人ひとりにも個人情報はあります。その有している個人情報の中に写真・映像も、含まれています。

また、入居されている高齢者は誰かの親であったり誰かの祖父母であるケースが多いです。

そういった、高齢者に関係する家族も大切な個人情報に含まれてきます。

写真という個人情報を活用していく上で、次のような点に注意していく必要があります。

  • 個人情報を取り扱うに当たって、どのような目的で個人情報を利用するのか具体的に特定する必要がある。
  • 個人情報の利用目的は、あらかじめホームページ等により公表するか、本人に知らせなければならない。
  • 取得した個人情報は、利用目的の範囲で利用しなければならない。

このように、施設に入居されている高齢者の方々の写真を使用する際にも、使用する施設側が配慮すべき点はいくつもあります。

個人情報についての詳細は、政府公式オンラインにも記載してあります。

実際に写真撮影・活用される機会

次に、施設入居されている高齢者の方々が、写真撮影・活用される主な機会を挙げていきます。

季節ごとのイベント・外出会など

施設によっては、春は観桜会、夏はその土地の夏祭り、秋は紅葉観覧などの外出会を企画します。

特にコロナウイルスの規制緩和がなされた昨年からは、少しずつ施設内外の行事企画が以前のように増えてきていると感じられます。

多くの高齢者は、普段とは違ったイベントに参加したり、季節を感じれるような四季折々の景色に触れると、いつもとは違った反応や表情を見せてくれることが多いです。

特に認知症高齢者は、表情などの反応が乏しくなる傾向にあるため、普段見せないような笑顔や穏やかな表情を写真におさめ、ご家族に提供しようとする施設は多いのではないでしょうか。

日常生活の様子、風景

施設に入居する高齢者寝たきりだんだんと出来ないことが増えて、衰えていくといったイメージを持たれる方も多いかと思います。

しかし、施設で暮らす方々の日常には、たくさんの変化や驚き、喜びがあります。

例えば、胃ろう(胃に直接管を入れ、栄養剤を流し込む)増設し、口から食べることが出来ないといわれた方が、プリンやヨーグルトのような軽食を食べることが出来るようになったり。長年車いす生活を送っていた方が、ご本人様の懸命なリハビリで、歩行器やシルバーカーを使用して歩くことが出来るようになったりなど様々です。

そういった普段の生活の中にある喜びを撮影しご家族様に提供することもあります

施設の広報誌、ホームページに活用

これは施設によって形式は様々あるかと思います。施設全体で作成したり、フロア(ユニット)ごとに作成する施設もあります。

主に上記のイベントで撮影された写真や日常生活の写真を活用し、それを広報誌に掲載することもあります。

また、最近は施設の情報もホームページやSNSで入手しやすくなりました。そういったインターネット上に掲載されることもあります。

転倒事故や褥瘡(床ずれ)発症時など

施設ごとに、入居されている高齢者の方々の状態、介護度は様々です。

中には認知症の周辺症状で徘徊行為が頻繁にみられ、転倒し皮下出血(あおたん)をつくってしまうかたもいらっしゃいます。

また、昨今の介護施設では褥瘡発生予防、対策についてとても重点を置いてケアを行っています。

それでも、高齢者が有する疾患や、皮膚状態、栄養状態など様々な要因により、褥瘡がやむを得ず出来てしまうケースもあります。

外傷や褥瘡の治療経過を記録として残すために、写真撮影されることもあります

認知症高齢者と写真撮影について

始めに述べた通り、私たち一人ひとり、誰しもが肖像権を有しており、またそれらの個人情報も守られるべきものです。

ここでは認知症高齢者と限定的に記載してはいますが認知症と確定診断を受けていなくても、判断能力が低下している高齢者の方々も皆、この権利を有し、守られるべきものであると考えます。

どうせ話しても、わからないからすぐに忘れてしまうからといった理由で、肖像権や個人情報が守られず、また許可なく使用してもよいものではありません。

では、どのようにして入居している大切な家族(高齢者)の尊厳を保ちつつ、家族や施設どちらも写真をよい思い出として共有できるのでしょうか。

次に記述するいくつかのポイントを押さえておきましょう。

個人情報利用同意書などの書類を確認する

施設に入居する際、契約書重要事項説明書などの書類を交わすことが一般的です。

施設と交わす書類の中に個人情報利用同意書等の書類があるか確認しましょう

この書類に個人情報や写真の活用、掲載について記載されているかどうか、しっかりと目を通すことが重要です。

また、一方的に使用しますという施設と写真の撮影、掲載に同意するかしないかの選択ができる施設もあります。

後者の方がより丁寧で、安心して大切な家族を任せられる印象を受けるのではないでしょうか?

もし、個人情報についての書類の説明がない場合は、家族側から確認してもよいかと思います。

職員に対して個人情報の取り扱いについて管理、指導がなされているか

これは施設側としての取り組みや体制作りがなされているかにもよりますが、例えば「写真を掲載しないでほしい」と依頼し、文書を交わしたにも関わらず掲載されていたとなれば、施設としてどのような周知管理方法だったのか。

情報の伝達共有はなされていたのかと、様々疑問に上がるかと思います。

実際に、筆者が施設に勤めていたころに写真撮影、掲載しないでほしいと希望した家族への対応が、職員の転勤や新人職員などに伝達が不十分で、周知されずに使用されたケースもあります。

また、特にイベント時は数人の集団で写真撮影することが多くみられます。

この際写真撮影を許可した方と、許可していない方が一緒に写り気づかずに使用していたや、集合写真の後方に写真NGの方が写りこんでいて、気づかずに使用されていたなど、思わぬ形で使用されるケースもありました。

もちろん写真撮影、掲載などに限った話ではありませんが、上記のように依頼したことに対してしっかりと対応できているかどうか、適宜お互いに確認し合うことで、入居している本人も含め、家族と施設相互により良い関係を築いていくことに繋がると考えられます。

もし写真を無許可で使用されてしまったら

では、もし写真を無許可で使用されてしまった場合、どのように対応し、どこに相談すればよいのでしょうか?

まずは、入居している施設に相談しましょう。

施設には施設相談員と呼ばれる、相談全般の窓口となる役職の職員が在籍していることが多いです

施設職員個人がSNSなどに写真を掲載しているとしても、その個人を呼び出し掲載を削除するよう依頼することは難しいかと思われます。

また、掲載したのが職員個人だとしても、それは施設の問題として取り扱い、対応していくことが再発防止へと繋がり、二次被害を防いでいくことに繋がっていきます。

もし、施設への相談が困難だったり、相談しても対応してもらえない場合は、各市区町村の「介護保険課(各自治体によって呼称が違うため、「介護保険課 お住まいの市区町村」へ相談しましょう。

介護保険全般についての相談を受け付けているため、今回のようなケースにもしっかりと対応してくれます。

上記の行政への相談でも解決しない場合は、弁護士への相談も検討してもよろしいかと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか?施設に入居するまでの経緯、家族の関係性や背景は様々ですが、施設に入居されている高齢者、そして入所を決断した家族それぞれに写真を撮ってほしい、ほしくない掲載してほしい、ほしくない様々な理由、想いがあります。

また、加齢や疾患により判断能力が低下し、自分の想いをうまく伝えることが出来ない方でも感情は残されています。

写真・映像を情報共有の良いツールとして正しく活用し、家族と施設どちらもよい思い出として残せるようにすることが、高齢者の「尊厳」を保つことに繋がります。

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