「恥ずかしくて、誰にも相談できない」「家族の変化に、なんて声をかけたらいいんだろう…」 そんなふうに、一人でため息をついて、悩みを抱え込んでいませんか?
尿もれは、ご本人にとっても、見守るご家族にとっても、本当にデリケートな問題ですよね。 でも、年齢を重ねたり、日々の暮らしの中で体の機能が少しずつ変わっていくのは、誰にでも起こりうること。 決して特別なことでも、恥ずかしいことでもないんです。
ある調査では「男性の約5人に1人」「40代以上の女性なら約2人に1人」が尿もれの経験がある、という結果も出ています。(ユニ・チャーム株式会社「尿もれケア専用品市場の実態調査」、花王株式会社「FemCareLAB」調べ)
この記事では、尿もれのタイプやご自身でできるケアについて、できるだけ分かりやすくお話しします。 正しい知識は、きっとあなたを助けてくれるはず。
アクティブな毎日を取り戻すための一歩を、ここから踏み出してみませんか。
「尿もれ」と「おねしょ」はどう違う?
「尿もれ」と「おねしょ」。 どちらも「自分の意思とは関係なく…」という点では同じですが、この二つ、似ているようで少し違います。
おねしょは子供の成長過程
眠っている間に起こるのが「おねしょ」です。 これは、体が排尿をコントロールする術を、一生懸命学んでいる途中のサイン。
ほとんどの場合、成長とともに自然となくなっていきます。
もし大人になっても続く場合は「夜尿症」とよばれ、何らかの病気やストレスが関係している可能性も。
この場合は一度、専門家への相談を考えてみてもいいかもしれません。
尿もれは変化のサイン
一方、大人の「尿もれ」は、体からの「ちょっとした変化のサイン」です。
子供のおねしょと違うのは、自然に治ることが少ないという点。
だからこそ、自分の体の声に耳を傾けて、きちんと向き合ってあげることが大切になります。
すごくシンプルに言うと眠っている間が「おねしょ」、起きている時が「尿もれ」。 そんな風にイメージしておくと、分かりやすいかもしれません。
私たちの体はスゴい! 尿をコントロールする見事な連携プレー
私たちの体の中では、24時間365日、尿をコントロールするための見事なチームが働いてくれています。
その主役は、膀胱・尿道・神経の3つのメンバーです。
膀胱:(しなやかなダム)
尿を溜めておく袋。 すごいことに、コップ2杯分(約300~500ml)もの量を溜め込めるしなやかさを持っています。
※私たちが「あ、トイレ行きたいかも」と感じるのは、コップ1杯分(約150~250ml)くらい溜まった頃です。
尿道括約筋:(2重ロックの水門)
尿の出口をキュッと締めてくれる、頼もしい筋肉。 しかも、二重のロックでがっちりガードしています。
- 内尿道括約筋:無意識のうちに、自動で締まってくれているロック
- 外尿道括約筋:自分の意思で「締める・緩める」をコントロールできるロック(骨盤底筋という筋肉の一部です)
神経:(司令塔と通信網)
この全ての動きをコントロールする司令塔。 自律神経が絶妙な采配を振るっています。
- 溜めるとき:交感神経が働き、ダム(膀胱)をリラックスさせて広げ、水門(尿道)はキュッと固く閉じます
- 出すとき:副交感神経にバトンタッチ。 ダム(膀胱)を優しく縮ませ、水門(尿道)はスッと緩めます

尿もれかも?と感じる初期サイン
尿もれの初期症状は、人それぞれ感じ方が違いますが一般的には以下の体験が多いです。
「あれ?今、ちょっと出た?」というお腹に力が入った瞬間に少量だけ尿が漏れる感じ。これが最も一般的な初期症状。
他にも おしっこしたばかりなのになんだか残った感じがして、すぐにまたトイレに行きたくなることがあります。
「トイレまで間に合わないかも…」と尿意を感じてからトイレにたどり着くまでの時間が、前よりも短く感じたりするのも初期のサインです。
あなたはどのタイプ?簡易チェックと尿もれの5つのタイプ
ひとくちに尿もれと言っても、実は色々なタイプを持っています。ご自身の「もしかして…」が、どれに近いかチェックリストで見てみましょう。
チェックリスト
- 咳、くしゃみ、大笑いした時にもれる
- 重いものを持ち上げた時にもれる
- トイレが目に入ると、急に我慢できなくなる
- 水の音を聞くと、ソワソワしてトイレに行きたくなる
- じっとしているのに、いつの間にか漏れていることがある
- トイレを済ませたはずなのに、後から下着が濡れてしまう
- 用を足した後、まだポタポタと垂れてくる感じがする
このチェックは、ご自身の傾向を知るためのものです。正式な医学的診断ではありません。
タイプ1:腹圧性尿失禁(尿道のパッキンが緩んで「あっ」ともれる)
お腹にグッと力が入った瞬間に「あっ」ともれてしまうのがこのタイプ。出産や加齢で、尿道を支える骨盤底筋という筋肉が少し緩むことで起こります。
女性に最も多く見られる、代表的な尿もれです。
タイプ2:切迫性尿失禁:(膀胱が過敏で間に合わない)
膀胱がちょっと過敏になってしまい、まだ余裕があるのに「もう満タン!」と脳に勘違いのサインを送ってしまう状態です。
そのため、突然、我慢できないほどの尿意に襲われます。
「トイレ!」と思ったときにはもう間に合わない…なんてことも。
タイプ3:溢流(いつりゅう)性尿失禁(尿道が詰まって尿があふれ出る)
このタイプの根本的な問題は「もれる」ことより、むしろ「出し切れない」ことにあります。
前立腺肥大症などで尿道が狭くなると、尿を出し切れず、常に膀胱に尿が残った状態に。
そこに新しい尿が溜まることで、コップから水が溢れるように、ちょろちょろともれ続けてしまいます。男性に多いのが特徴です。
タイプ4:機能性尿失禁(トイレに上手くたどり着けない)
足腰が悪くてトイレまで時間がかかったり、認知症でトイレの場所が分からなかったり…。
膀胱や尿道の機能は問題ないのに、身体的な理由や認知機能が原因で間に合わずにもれてしまうのが、このタイプです。
タイプ5:排尿後滴下(尿道の途中に水が残ってしまう)
「しっかり出したはずなのに…」と思っても、後からポタポタと下着を濡らしてしまうのがこのタイプ。
尿道の中に残った尿が、後から出てきてしまうんですね。
男性によく見られます。
今日から始められる!自分でできる尿もれ対策5つ
専門医への相談と並行して、お家でできるセルフケアもたくさんあります。毎日の生活に、少しだけ取り入れてみませんか?
- 骨盤底筋体操
- 膀胱訓練
- 温める
- ミルキング
- 服装の工夫
骨盤底筋体操
尿もれ対策の基本中の基本であり、王様とも言える体操です。
特に「あっ」とれるもれる腹圧性の方には効果てきめん。緩んでしまった骨盤底筋を、もう一度「思い出す」ように鍛え直してあげましょう。
(※やり方は色々ありますが、NHK「あしたが変わるトリセツショー」のサイトなどが写真付きで分かりやすいので、参考にしてみてください。)
膀胱訓練
「行きたいかも」と思っても、すぐにトイレに駆け込まず、「あと5分だけ」と少しだけ我慢してみるトレーニングです。
焦りは禁物。過敏になっている膀胱を「大丈夫、まだ入るよ」となだめてあげるようなイメージで、少しずつ間隔を広げていきましょう。
そのために排尿日誌をつけて、自分のパターンを知ることから始めるのがおすすめです。
温める
冷えは、膀胱を刺激して尿意を強くする大敵です。ゆっくり湯船に浸かる、腹巻きやカイロを使うなどお腹や腰回りを意識して温めましょう。
夏場でも、クーラーの効いた部屋では一枚羽織ったり、冷たい飲み物を控えたりする工夫が、おしっこの悩みを和らげてくれます。
ミルキング
男性の「排尿後滴下」に悩む方に、ぜひ試してほしい方法です。
排尿後、陰嚢の付け根あたりから尿道の先に向かって、指で優しくさするように、残った尿を最後まで出し切ってあげます。
また、立ってする派の方も一度座って排尿してみると、しっかり出し切れる感覚があるかもしれません。

服装の工夫
意外な盲点ですが、服装も大切です。きついガードルやベルトでお腹を圧迫するのはNG。
重たいコートも、知らず知らずのうちに骨盤周りに負担をかけていることがあります。
時には体を締め付けない、ゆったりした服を選んで、膀胱をリラックスさせてあげる日を作ってみませんか?
【尿もれ対策に】ケア用品の付き合い方と家族のサポート
尿もれの悩みは、ご本人だけでなく、支えるご家族にとっても、どう向き合うべきか、頭を悩ませる問題です。
「おむつは嫌」な方へ。尊厳を守る最新ケア用品の3つの選び方
まず、ご本人にもご家族にも知っていただきたいのは、今のケア用品は、もはや「おむつ」という言葉のイメージとは全く別物だということ。
驚くほど薄く、着け心地も良く、ニオイ対策も万全です。ここで選び方のポイントを紹介します。
活動量で選ぶ
ご自身で歩けるなら、普通の下着と変わらない見た目の「安心パンツ」や、下着に貼るパッドタイプ。ベッドで過ごすことが多いなら、交換が楽なテープ止めタイプ
量で選ぶ
「ちょっと染みる程度」なら薄いライナーで十分
シーンで選ぶ
長時間の外出や夜間など不安な時は吸収量が多いものを選ぶと心の余裕が生まれる
生理用ナプキンで代用する方もいますが、尿は経血と違って粘度が低く、吸収の仕方が異なります。
モレや肌トラブルを防ぐためにも、必ず尿もれ専用品を選びましょう。
大切な人のプライドを傷つけない「切り出し方」と心構え
ご家族からの言葉は、良くも悪くも、ご本人の心に深く刺さります。言葉選びは慎重に。
避けたい言葉
「おむつしたら?」「また失敗したの?」こうした言葉は、相手を責めているように聞こえ、心を固く閉ざす
届けたい言葉
「最近、しんどそうだけど、何か良いものがないか一緒に探してみない?」「便利なものがあるみたいだよ」と、同じ目線に立ち、一緒に考える姿勢を見せることが大切
まとめ:もう一度、軽やかな毎日を過ごすために
ここまで、誰にも言えない尿もれの悩みについて、色々な角度からお話ししてきました。 尿もれのタイプは、大きく分けて5つ。
- 腹圧性尿失禁
- 切迫性尿失禁
- 溢流性尿失禁
- 機能性尿失禁
- 排尿後滴下
尿もれは、性別や年齢に関わらず、多くの人が経験するごく自然な体の変化です。
決して一人で抱え込む必要はありませんし、「もう歳だから」と諦めるのは、まだ早いかもしれません。
今日からできるセルフケアを始め勇気を出して専門家の助けを借りることで生活の質は必ず変わってきます。
主なセフルケアは以下の通り
- 骨盤底筋体操
- 膀胱訓練
- 温める
- ミルキング
- 服装の工夫
自分の体の変化から目をそらさず、きちんと向き合うこと。それが軽やかな毎日を取り戻すための何より大切な一歩です。
ご自身の体と同じように、これからの暮らしについて考えておくことも将来の安心につながります。





