

近年、高齢者の自宅を狙った強引な押し買いによって、強引に相場よりも安く買い叩かれる・しつこく勧誘される被害が増えており、社会問題となっています。
しかし、押し買いの手口や対処法が分からず、「自分の親が押し買いに遭わないか心配…」と不安を感じるご家族も多いです。
今回は、高齢者の自宅を狙った押し買いの手口や対処法、被害に遭ってしまった場合の相談窓口について高齢の親を持つご家族に向けて分かりやすく解説します。
こちらの記事を読むことで、押し買いの被害から大切なご家族を守るためのヒントになるでしょう。
高齢の親を持つご家族は、ぜひご覧ください。
押し買いとは?高齢者の自宅を狙う悪質商法の実態を解説


押し買いとは悪質商法の一つで、近年では高齢者の自宅を狙った押し買いの被害が増えています。
こちらでは、高齢者の自宅を狙った押し買いの実態について解説します。
押し買いとは、自宅に訪問し強引に安く買い叩く悪質商法のこと
押し買いとは、自宅に訪問した業者が貴金属や骨董品を強引に安値で買い取る悪質な商法のことです。
特に一人暮らしの女性や高齢者が狙われやすく、断っても長時間居座ったり、威圧的な言動で強引に契約を迫る被害が増えています。
押し買いの対象は、貴金属や骨董品などの高額な品物が中心です。
なかでも、近年は高齢者の自宅を狙った押し買いが増えており、社会問題となっています。
そのため、警察や消費生活センターなどの公的機関から注意喚起が行われています。
年間600件以上!高齢者の自宅を狙った押し買いの実態
国民生活センターの資料によると、2016年から2020年の間に、60歳以上の自宅売却トラブルに関する相談件数が年間600件以上も寄せられています。
相談を寄せた高齢者の年齢層を見ると、60歳代の相談件数は減少傾向にある一方、70歳以上の高齢者からの相談件数は増加しており、1年間の相談件数の5割以上を占めています。
高齢者が自宅を狙った押し買いに遭いやすい3つの理由
60歳以上の高齢者が押し買いに狙われやすい理由は、以下のとおりです。
- 不動産売買の知識が乏しく、正当な取引か見抜けない
- 理解力・判断力が低下し、契約内容を正しく理解できない
- 孤独感・人間関係の希薄さによって、警戒心が弱まる
高齢者の場合、不動産売買の専門的な知識が乏しいため、正当な取引なのか判断できないことがあります。
また、加齢による理解力・判断力の低下によって、契約内容を十分理解できず、業者の言葉を鵜呑みにし、不当な契約を結んでしまうケースも少なくありません。
さらに、孤独な状態が続くと訪問者に対する警戒心が弱まり、話し相手として気軽に受け入れてしまうこともあり、高齢者は押し買いのターゲットになりやすいと言えるでしょう。
実際に起きた高齢者の自宅を狙った押し買いの手口と被害とは?


高齢者の自宅を狙った押し買いが社会問題となっていますが、どのような手口で行われ、どれくらいの被害を受けるものか、イメージがつかない方もいると思われます。
こちらでは、実際に発生した高齢者の自宅を狙った押し買いの手口と被害をご紹介します。
長時間の勧誘・説明もなく書面も渡されないまま売却契約したケース
一人暮らしの自宅に突然、不動産業者が2人で訪ねて来た。
介護サービス業者だと思ってドアを開けると、住んでいるマンションを売らないかと言われた。
そんなつもりはなかったが、とにかく売れ売れと勧められ、朝 10 時から夜9時半まで居座られた。
翌日も2人で訪ねてきて朝 10 時から夜7時頃まで居座られた。「マンションを売ったら入所できる施設を探してあげる」と言われた。
自分も高齢だし、新型コロナウイルスの感染状況等で気が弱くなっていたところもあって、「売値を2〜300 万円上乗せしてくれるなら」と答えたところ、2300 万円で売ることになってしまった。
何か書面に署名・押印したが、何の書類か覚えていない。
「ちょっといやだ。待って」と言ったが取り合ってもらえなかった。
業者から書面等を一切受け取っておらず、もらったのは会社案内のパンフレットのみで、マンションの買い手が待っていると言われているが、契約をなかったことにしてほしい。
国民生活センター:「高齢者の自宅の売却トラブルに注意-自宅の売却契約はクーリング・オフできません!内容をよくわからないまま、安易に契約しないでください-」より引用
押し買いによってリースバック契約をしたが、解約を申し出ると高額な違約金を求められたケース
「お住まいのマンションを当社に売却して、当社が賃貸することで住み続けられるリースバックの契約をしないか」と勧誘の電話があった。
断ったが、その後も数回電話での勧誘があり、「玄関先での話でいいので訪問したい」と言われ了承した。
営業担当者は何度か来訪し、しつこく勧誘され、根負けして約 2,000万円で契約することになった。
契約書を交わす日に「やっぱり契約はキャンセルしたい」と電話で伝えたが、「もう書類を作っているので訪問する」と言われ来訪。
自分が不安そうにすると「必要になったら、老人ホームに入れるよう手配もするので安心してほしい」と言われ、自分で老人ホームは探せないと思っていたので契約した。
しかし不安は拭えず、後日業者に解約を申し出ると、「違約金が約400万円必要だ」と言われた。
国土交通省:「住宅のリースバックに関するガイドブック」より引用
リースバック契約とは?
リースバック契約とは、自宅を売却した後も毎月家賃を支払いながら同じ場所で住み続けられる制度で、主に住宅資金の調達や住み替えの選択肢として利用されることがあります。
しかし、近年リースバック契約を悪用した押し買いが増えており、家賃が支払えず退去を求められるケースも発生しています。
そのため、リースバック契約に関する制度の見直しが求められています。

高齢者の自宅の押し買いにはクーリングオフは適用される?
高齢者の自宅を狙った押し買いには、残念ながらクーリングオフは適用されません。
宅地建物取引業法に基づくクーリングオフは、不動産業者が売主である場合にのみ適用されるため、高齢者が売主になる場合は対象外です。
また、特定商取引法におけるクーリングオフも、不動産の訪問売買は対象外となっています。
そのため、一度契約を結ぶと、かんたんに契約を解除することができないため注意が必要です。

押し買いに遭うか不安…未然に防ぐための3つの対策

高齢者の自宅を狙った押し買いを未然に防ぐための3つの対策は、以下のとおりです。
- 防犯グッズを活用する
- 両親の財産管理を家族が代わりに行う
- 押し買いを行う業者来た時に備えてルールを決める
一つずつ解説します。
防犯グッズを活用する
防犯グッズを活用することで、押し買いの被害を未然に防ぐ効果が期待できます。
特に、以下の防犯グッズは、押し買いを行う業者への対策として効果的です。
- カメラ付きインターホン:通話のみで対応ができ、業者を録画できる
- 防犯カメラ:訪問した業者を事前に確認することや行動を記録できる
- ドアチェーン:ドアを完全に開けずに対応できる
このように、あらかじめ防犯グッズを導入することで、業者を自宅の中に入れず、対応できるため、被害を防ぐことにつながります。
また、被害に遭ってしまった場合でも、録画した映像が犯人特定やトラブルの早期解決に役立つ場合もあるため、押し買いに不安がある方は防犯グッズの導入を検討しましょう。
防犯グッズについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考になります。

親の財産管理を家族が代わりに行う
高齢の親を押し買いの被害から守るために、家族が代わりに親の財産管理を行うことも効果的です。
家族が親の財産を管理している場合、業者が訪問しても、親だけで売買契約を結ぶことができず、被害を未然に防ぐ可能性が高まります。
親の財産管理を家族が代わりに行うには、以下の制度を利用する必要があります。
- 成年後見制度
- 任意後見制度
- 財産管理等委任契約
- 家族信託
こうした制度にはそれぞれ特徴があり、利用するための手続きが難しいため、必要に応じて弁護士などの法律の専門家に相談することがおすすめです。
親の財産管理について気になる方は、以下の記事もおすすめです。
押し買いを行う業者が来た時に備えてルールを決める
押し買いを行う業者はいきなり訪問することが多く、対応に困ることも少なくありません。
そのため、万が一に備えて、業者が来たときの対応に関するルールをあらかじめ決めておくことも重要です。
たとえば、以下のようなルールをあらかじめ決めて、家族全員で共有しましょう。
- 知らない人や業者を自宅に入れない
- 玄関先ではっきり断る
- 一人で対応しない
さらに、「業者が来たら警察へ通報する」「消費生活センターに相談する」こともルールに含めると、高齢の親も安心して対応できるようになります。

押し買いを行う業者が来た!撃退するための5つの対処法

押し買いを行う業者が来た場合の対処法は、以下のとおりです。
- 玄関先ではっきり断る
- 押し買いを行う業者とのやりとりを録音・録画する
- 押し買いを行う業者の身分を確認する
- その場で契約しない
- 他の不動産業者に見積もり金額が適正か確認する
くわしく解説します。
玄関先ではっきり断る
押し買いを行う業者が自宅に来た場合は、玄関先ではっきり断りましょう。
自宅の中に招き入れてしまうと、長時間居座られることや強引に契約を迫ってくるリスクが高まります。
そのため、「結構です」「必要ありません」など、短く・明確に断ることで業者も引き下がる可能性があります。
必ず自宅の中には入れないようにしましょう。
押し買いを行う業者とのやりとりを録音・録画する
押し買いを行う業者とのやりとりを録音・録画することも効果的な対処法です。
録音・録画によって、後から警察や消費生活センターへ相談する際の証拠として活用できます。
また、あらかじめ「録音・録画をしています」と伝えることで、強引な態度がとりづらくなり、トラブルを未然に防ぐ効果もあります。
そのため、スマートフォンやICレコーダーを活用しましょう。
押し買いを行う業者の身分を確認する
押し買いを行う業者が訪問した際には、必ず会社名や氏名、名刺の提示を求め、身分を確認しましょう。
正規の業者であれば、名刺や所属企業をしっかり提示するはずですが、押し買いを行う業者に身分確認を求めると、その場から離れるケースが多いです。
会社名や名刺の提示を拒否する場合や曖昧な説明をする場合、押し買いを行う業者の可能性が高いため、すぐに対応を打ち切りましょう。

その場で契約しない
業者を自宅に招き入れてしまっても、その場で契約しないことも重要です。
業者は、早く自宅を買い取りたいがために、不安をあおり、即決を迫ってきます。
このような強引な勧誘に対して、「家族に相談してから決める」「家族がいないと判断できない」と伝えて冷静に断りましょう。
家族や第三者の存在を示すことで、「かんたんには契約が取れない」と思わせ、強引な勧誘を抑える効果があるため、必ずその場で契約しないようにしましょう。
他の不動産業者に見積もり金額が適正か確認する
押し買いを行う業者から見積もりを提示されても、すぐに契約せず、必ず他の不動産業者にも見積もりを確認しましょう。
押し買いを行う業者は、物件を安く買い取り、高値で転売することを目的としているため、提示される金額が相場より大幅に安いことがあります。
提示された見積もりが適正か確認するため、他の不動産業者に相見積もりを依頼し、相場価格を把握することで、的確な判断ができるでしょう。
また、適正価格や相場価格を確認したことを業者に伝えると、強引な勧誘を抑えることにもつながります。
押し買いに遭ってしまった時は?相談すべき3つの窓口


高齢の親が押し買いに遭ってしまった場合、以下の3つの窓口へ相談しましょう。
- 最寄りの消費生活センター
- 弁護士
- 地域包括支援センター
一つずつ解説します。
消費者生活センター
消費生活センターに相談すると、常駐する職員から押し買いに関するアドバイスや情報提供を受けることができます。
消費生活センターは、さまざまな消費者トラブルに対応する相談窓口で、必要に応じて業者との交渉なども行う公的機関です。
高齢の親が業者による押し買いの被害を受けた場合、できるだけ早めに相談することをおすすめします。
最寄りの消費者センターには、188番でつながる消費者ホットラインや国民生活センターの公式HPからつながることができます。
弁護士
押し買いの被害が複雑な場合や業者との交渉が難航する場合は、弁護士への相談もおすすめです。
弁護士に相談すると、法律の観点から適切なアドバイスを受けることや必要に応じて業者との交渉や訴訟などの法的手続きをサポートしてくれます。
ただし、弁護士に相談すると、相談料がかかることが多いです。
無料で弁護士に相談したい場合は、各都道府県の法テラスや弁護士会が行う無料相談会を利用しましょう。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、地域に住む高齢者の生活を支える公的な相談窓口です。
介護・医療に関する悩みだけではなく、高齢者の消費者トラブルについても相談が可能です。
地域包括支援センターに相談すると、消費生活センターなどの専門機関と連携し、押し買いによる被害の拡大防止や解決に向けたサポートを受けることができます。
最寄りの地域包括支援センターを探す際、厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索」から調べることができるため、活用してください。
押し買いから両親を守るためには?老人ホームという選択肢
押し買いの被害から親を守るためには、未然に対策を講じ、撃退方法を知ることが重要です。
しかし、強引な勧誘を断りきれない・理解力や判断力の低下につけ込まれて売買契約を結んでしまうリスクがあります。
押し買いの被害を受けると、家という財産を失うだけではなく、精神的なショックや心身の不調を引き起こすことにつながります。
ご家族も気をつけていたとしても、日中は仕事で目が届かない・突然の訪問に対応しきれないこともあり、親への心配が尽きないのではないでしょうか。
こうしたリスクを減らす方法として、セキュリティや見守りが整った老人ホームへの入居も選択肢の一つです。
老人ホームでは、職員が外部からの訪問者を管理しており、日々の生活に必要なサポートも受けることができるため、両親も安心して生活できます。
もし、親の老人ホームを考えているなら、本サイトを運営する「近所のよしみ」へご相談ください。
介護現場での勤務経験がある職員が、親の状態や希望に沿った老人ホームを提案し、見学の手配や入居手続きまでサポートします。
押し買いの被害から両親を守りたい方は、以下のリンクから相談予約を行いましょう。
まとめ
今回は高齢者の自宅を狙った押し買いの実態と対処法について解説しました。
近年、巧妙かつ強引な手口で自宅を不当に買い叩かれる被害を受けた高齢者が増えており、「うちの親は大丈夫だろうか…」と高齢の親を持つ家族にとって大きな不安となっています。
このような被害から高齢の親を守るためには、事前の予防策と押し買いに遭ってしまった場合の対処法を知っておくことが重要です。
また、高齢の親や家族だけで解決することが難しい場合、消費生活センターや地域包括支援センター、弁護士などの専門機関に迷わず相談することも大切です。
押し買いの被害を防ぎ、ご家族が安心して自宅で過ごせるよう、早めにできる対策を始めましょう。