この一言が、マネーロンダリング詐欺の餌食になることを防ぐ最強の武器。
現役警察官のころ、管轄する市内で特殊詐欺が多発している期間がありました。
1人で生活している高齢者や詐欺の電話が多い地域を1件1件訪問し、詐欺の注意喚起をお知らせをしていました。
上記の「あんた本当に警察官かい?」はその時、あるおじいさんから言われた一言です。
私は少し驚き、警察手帳を見せながら丁寧に身分をご説明しました。
しかし、制服警察官を疑ってかかるぐらい慎重なことは、良いことだと思いました。
実際にマネーロンダリング詐欺の手法の一つに、警察官から電話がかかってくる場面があります。
この一言があるとないとでは犯人の餌食になってしまうことはグッと減らすことができるでしょう。
この記事では、
- マネーロンダリングとはそもそもなに?
- マネーロンダリングによって騙す手口はどんなもの?
- マネーロンダリングによる詐欺の電話、その対策とは?
これらの疑問を元警察官、現役介護士である私が解説します。
マネーロンダリングとは?
マネーロンダリングとは、犯罪や違法に入手したお金をきれいなお金に見せるために行われる作業の事を言います。日本においては「資金洗浄」とも呼ばれています。
と思われる方もいるかもしれませんが、もともとは犯罪や、違法な行為をして得た汚いお金です。
決して、キレイにしたところで出所が汚いお金には変わりないのです。
マネーロンダリングは身近にひそんでいる!?
マネーロンダリングについてまだわからない部分もたくさんあることでしょう。わからないから自分事として想像しづらいと思います。
実際、マネーロンダリングされたお金の証拠を掴むことは非常に時間がかかるのです。
理由は、マネーロンダリングによって、大きな金額の汚いお金を移動させたり、正常な利益の計上したように偽って
- どこから発生したお金なのか?
- 持ち主は誰なのか?
- いつ取引されたのか?
などの一次情報をややこしく、うまく隠すから、警察も追跡に時間がかかってしまいます。
と思われたそこのあなた!ちょっと待ってください!
マネーロンダリングされたそのお金は詐欺によって得られたお金だったらどうでしょう?
詐欺は誰もが被害にあう可能性があります。それはあなたかもしれないし、あなたのご家族かもしれない。
これからも高齢化は進む一方で、高齢者の層を狙った詐欺や犯罪は増えていくことが予想されます。
マネーロンダリング関連の詐欺は大まかには知能犯と呼ばれ、知能犯の犯罪件数は増加傾向にあります。
マネーロンダリングで騙す手口を実例をもとに解説
具体的にマネーロンダリングはどのように行っているのでしょう?
マネーロンダリング3つの手法
資金洗浄する際には3つの段階を踏む必要があります。
プレイスメント
プレイスメントとは、「置く」ことを言います。例えば、資金を銀行預金口座に置く作業のことです。
要は、犯罪によって得た利益、収益を金融のシステムの中に組み込んでしまう1段階目がこのプレイスメントです。
この段階が犯罪者にとっては、最もリスクのある行動と言えるでしょう。
想像してみてください。どこのだれかもわからない人が、銀行窓口に何千万〜何億の現金を持って来られたら、ハッキリ言って怪しいでしょう。
この怪しさが、捜査の端緒(きっかけ)になる恐れがあるのです。
リスクを回避する意味でも、この1段階目のプレイスメントは慎重に行動しなければならない必要があります。
レイヤーリング
断層すること。つまり汚いお金の出所をわかりづらくしたりする作業の事を言います。
犯罪などに使われた汚いお金を合法的に経営している会社などに貸し付けて、その会社の給料の支払いなどに充ててもらうのです。
また、何度にもわたって口座Aから口座Bまたは口座Cへと送金を繰り返すことにより、捜査をより困難なものにさせる行為も、このレイヤーリングに当てはまります。
インテグレーション
合法的に法人を営んでいる会社に貸しつけ、経費や給料の支払いに充てたお金はもともとは汚いお金です。
しかし、真っ当な会社の経費にあてたお金は、クリーンなお金に変わっています。
はたから見れば、クリーンなお金なので誰も疑う余地がないというのです。
お金の出所を探すには、過去にさかのぼって追跡調査をしなければ証拠が掴めないというわけです。
事例①マネーロンダリングで暗号資産に変換!?
埼玉県で実際に起こった事件です。
警察は、約9千万の犯罪収益を暗号資産にマネーロンダリングし、不正に利益を得ていたとして20代〜40代の男女5人を逮捕しました。
手口としては「メルカリ」や「ヤフオク」などを利用し、闇バイトを募りました。
そして、架空のアカウントを使用し、出品者に支払う代金を運用費用としてマネーロンダリングしていたとのことです。
この手口は、もちろん高齢者も被害者になりうる事例です。ただ、メルカリやヤフオクといったインターネット上での取引は、比較的若い年齢層が多いと言えます。
マネーロンダリングは、高齢者が対象というわけではないのです。
年齢にかかわらず誰でも気づかずに、マネーロンダリングに引っかかる可能性があります。
事例➁警察官から電話!?「マネーロンダリングに加担」60歳の男性が1億円以上の被害
長野県で実際に起こった事件です。警察官電話を名乗る人物から電話がありました。
また、スマートフォンのメッセージ機能を利用し、
などと言われ実際に複数回にわたり振り込んだところ、連絡が取れなくなったと言います。
警察官からの電話は詐欺だと疑ったほうが良い!?
事例②は、実際にはマネーロンダリングされたというよりもマネーロンダリングという言葉を利用した詐欺です。
高齢者が騙されやすいのは事例2が多いでしょう。しかし、元警察官の立場からこれだけは断言できます。
警察官から個別にショートメールを利用してやり取りすることはありません。また警察官がお金を要求することも絶対にあり得ないことです。
電話も絶対にないとは言えませんが、ほとんどないと思ってください。
例えば、現場で免許書を見せてもらったときに、必ずメモをとります。
しかし、読み方が正しいのかわからず、確認のため電話をせざるを得ない場合があります。
マネーロンダリングによる詐欺の電話。その対策は?
事例②の警察官からの電話によって
と不安に駆られてお金を振り込んでしまうのと同様、中には架空の逮捕状の写真をスマートフォンに送りつける事例もあります。
ビックリしますよね?警察官からもっともらしいものを見せられ、電話がかかってきたら。
しかし、一度不安になりパニックになってしまっては、犯人の思うつぼです。
いったん冷静になりましょう。そして冒頭にも申し上げた通り
このフレーズを思い出してください。
対策する最強の方法は、一度冷静になり、周りを巻き込むことです。
自分では冷静な判断ができないと感じたら、一度電話を切り、家族や友人に相談してみてください。
犯人はあの手この手で電話で交渉しようとしますが、会話の途中でも関係ありません。
警察官からの電話は一度電話を切り、110番通報して本当に警察官から自分宛てに電話をしたのか確認を取るくらい用心すると良いです
まとめ
高齢者にとっては事例②のようにマネーロンダリングの言葉を使った詐欺が多い印象です。警察官を名乗る人物は、巧みに言葉を操りあなたを不安にしようとしてくるでしょう。
あなたの大切なお金です。犯人は、一度騙せたら何度でも連絡してこようとしてくるかもしれません。
しかし警察官を名乗る人物からもし仮に電話がかかってきたとしても、このフレーズだけは思い出してほしいです。
「あんた本当に警察官かい?」この一言が運命の分かれ道です。
最後までお読みいただきありがとうございます。