「骨卒中」という言葉を耳にしたことがある方はいませんか?


という方はぜひ読んでみてくださいね。
今回は介護施設や整形外科、整骨院などで勤務歴があり、現在は柔道整復師の養成校で教員を務める筆者が、「骨卒中」について説明し、予防法などを説明していきます。
骨卒中とは?
そもそも卒中とは何か
「脳卒中」は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
「卒中」の語源は、「突然(卒然)邪気や邪風に中(あた)る」と言われています。「脳卒中」とは、脳の血管が障害され突然起こる意識障害や麻痺など中枢神経の機能障害を意味します。
それでは「骨卒中」とはなんでしょうか。
「骨卒中」とは、骨折をきっかけに突然起こる重篤な障害を意味する造語です。
多くは高齢者に生じる大腿骨頸部骨折(太ももの骨の付け根の部分で起こる骨折)や脊椎椎体圧迫骨折(背骨の骨折)を指すことが多いです。
主に骨粗しょう症が原因となり、重いものを持ったり、しりもちをついたりする程度の軽い外力でおこってしまう骨折です。
なぜ骨卒中と呼ばれるか
通常の骨折と区別して「骨卒中」と呼ばれる理由ですが、そこの部位の骨折をおこしてしまうと日常生活レベルが大きく低下することがあげられます。
骨折をきっかけに、杖が必要になったり、車いすが必要になったりするようになり、場合によっては寝たきりになってしまい、日常生活動作に大きな影響をあたえます。
また、日常生活動作に制限が出ることが原因で、運動不足となり体力低下や認知症のきっかけになることも少なくありません。
その後も転倒しやすくなり、骨折のリスクが上がり、さらに日常生活に制限が出てしまうことも大きな問題です。
さらに問題なのは、骨折をした後で死亡のリスクが高まるというデータもあるということです。

骨折しやすい部位
大腿骨頸部骨折(太ももの骨の付け根の部分の骨折)
転倒し、お尻の横の部分をぶつけて発生することが多い骨折です。
歩けなくなってしまうことや、寝たきりになってしまうこともあり、状態によっては手術で人工関節を入れる場合もあります。
脊椎椎体圧迫骨折(背骨の骨折)
尻もちをついた際に、腰や背中のあたりの背骨が潰れてしまう骨折です。背骨が潰れ、腰や背中が丸まってしまうことがあります。
コルセットなどで固定し、安静にして治療することが多いです。
骨卒中の予防法
骨粗しょう症の予防
骨粗しょう症とは
骨密度の低下によって骨がもろくなり骨折しやすくなる病態です。
閉経後の女性に多く、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています。
骨は破壊と再生を繰り返して強度を保っているのですが、女性ホルモンの減少によりそのバランスが崩れ、骨がもろくなってしまいます。
骨折しやすくなってしまう病態のため、この病気を予防することも重要となります。
実は栄養不足になっているかも
カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど骨の形成に役立つ栄養素を積極的に摂るように心がけましょう。
- カルシウムを多く含む食品:乳製品、小魚、干しエビ、小松菜、大豆製品など
- ビタミンDを多く含む食品:サケ、ウナギ、カレイ、シイタケ、キクラゲ、卵など
- ビタミンKを多く含む食品:納豆、ほうれん草、小松菜、ニラ、ブロッコリーなど
- 控えめにしたい食品、嗜好品など:スナック菓子、インスタント食品、アルコールの多飲、カフェインの多飲、たばこなど

明るい時間帯に活動する
カルシウムの吸収を助ける役割があるビタミンDは、紫外線を浴びることで体内でも作られます。
直射日光を長時間浴びることは、皮膚へのダメージに繋がってしまいますが、適度な日光浴は骨の健康に役立ちます。
特に寒い季節は屋内にいる時間が長くなりがちですが、意識をして積極的に外出し、直射日光を浴びる機会を作るように心がけましょう。
適度な運動
骨は負荷がかかるほど強くなる性質があるため、意識的に散歩や、階段を使用し、日常生活の中でできるだけ運動量を増やすようにしましょう。
もちろんウォーキング、ジョギングなどは効果的です。
骨密度を測定
骨の状態を確認するため、無症状だとしても女性は40歳を過ぎたら定期的に骨密度検診を受けることがお勧めです。
お住いの保健センターなどに問い合わせてみてください。
転倒予防
大きくは環境整備・運動・食事の3点を意識できると良いです。
転倒予防にはまうは環境整備から
滑りやすい場所(フローリングや浴槽など)は滑り止めマットを敷くのが効果的です。
階段や段差のある場所なども転倒しやすいので、手すりがあると安心です。
足元がよく見えるように照明を明るくすることも重要です。
整理整頓し床に物を置かないようにすることも、もちろん意識してください。コードやケーブルにも注意してくださいね。
筋肉が衰えてしまう前に運動
下半身の筋力トレーニングとして、スクワットやかかと上げ、つま先上げなどの運動を継続してできると良いです。
バランス感覚を養うために、体操や片足立ち、足踏み運動などを習慣化できると効果が高いです。
もちろんウォーキングはとても有効なので、天気の良い日はぜひお散歩をお勧めします。日光を浴びることによりビタミンDが作られることもあり、一石二鳥です。
運動の注意点としては、無理をしないことが重要です。

筋肉が衰えてしまう前に食事を見直しましょう
- 骨密度を高めるための栄養を摂取すること(カルシウムやビタミンDなど)
- 筋肉量を維持するためのたんぱく質を摂取すること
などを意識しながらバランスの良い食事を心がけていきたいですね。
骨卒中の治療法
骨卒中の治療ですが、大きく分けて骨粗しょう症の治療と骨折後の治療に分けられます。
骨粗しょう症の治療
骨粗しょう症は骨の破壊(代謝)と再生のバランスが崩れてしまい、骨がスカスカにもろくなってしまう状態です。
内服薬や注射がありますが、骨の破壊(代謝)を抑える薬や、骨の再生を促す薬、ビタミンD製剤などを使用することが多いです。
骨折後の治療
骨折した部位や状態によって変わりますが、外固定・内固定・人工関節の3種類があります。
- 外固定(身体の外側からの固定):ギプス固定や包帯固定
- 内固定(身体の内側から固定):手術を行い、骨を直接プレートやボルトで固定
- 人工関節(股関節や膝関節など):変形が強い場合などに実施
場合にもよりますが、入院する可能性も高いため、運動量が落ち、筋力・体力が落ち、生活レベルが下がってしまう患者さんが多いです。
私が出会った骨折した患者さんも、自分の足で歩くために手術したにも関わらず、入院によって筋力が落ちてしまい、しばらく車いすで生活していた方もいました…

最後に
この記事では、「骨卒中」について説明させていただきました。
たかが骨折といえども、寝たきりになる可能性があり、その後の生活に大きく影響を及ぼす可能性があることがわかっていただけたでしょうか。
なによりも骨折しないように運動や食事を意識することが重要です。
特に女性の方は、定期的に専門機関などで骨密度の測定をしてみてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。