CKD(慢性腎臓病)とは?初期症状、改善方法や対策をベテラン看護師が解説

CKD(慢性腎臓病)とは?初期症状、改善方法や対策をベテラン看護師が解説

デイサービス営業係、よしださんとの会話です。

看護師さん
看護師さん
いつも営業おつかれ様です。この間の会社の健康診断、気になるところはなかったですか?
そういえば尿検査で蛋白が出ていたかな。受診するように書いてあったけど体調は悪くないんだよね。
営業のよしださん
営業のよしださん

看護師さん
看護師さん
そうなんですね。尿蛋白は慢性腎臓病の初期の症状として出ることがあります。体調は良くても、私からも受診をお勧めします。
慢性腎臓病?何か深刻な病気になりかけているのかな?
営業のよしださん
営業のよしださん
看護師さん
看護師さん
腎臓の働きが少しずつ悪くなっていく病気です。早期発見と早期治療で進行を遅らせることができます。詳しくお話ししますね。

CKD(慢性腎臓病)と腎臓

『慢性腎臓病』とは腎臓が慢性的な経過をたどって徐々に障害されていく病気の総称

CKD(慢性腎臓病)は心筋梗塞や脳梗塞とも深く関係しています。日本の推計患者数は約1480万人、成人の7〜8人に1人がCKD(慢性腎臓病)といわれています。

慢性とは急激な症状の変化が少なく、知らず知らずのうちに症状が進行・増悪した状況をいいます。

腎臓の働きと不具合

腎臓は私たちが生きるためにとても大切な役割を果たしています。

働き

  • 血液中の老廃物の除去:血液をきれいにする。体中に酸素と栄養を供給する
  • 水分調節:体内の水分が適量に保たれる
  • 電解質の調節:筋肉の収縮や弛緩、さまざまな組織の働きを円滑にする
  • 血中の酸・アルカリの調節:血液を弱アルカリ性に保つ
  • 各ホルモンを作る:赤血球を作るホルモン、血圧をコントロールするホルモン、骨を強くするホルモン様物質

不具合が起きると

  • 血液中に老廃物が溜まる:尿毒症
  • 体内に水分が溜まる:むくみ
  • 電解質のバランスが崩れる:筋肉や組織の働きの悪化
  • 酸・アルカリバランスの崩れ:ひどくなると生命の危機
  • ホルモンが十分に作られない:貧血、血圧コントロール不良、骨がもろくなり骨折する

CKD(慢性腎臓病)になりやすいタイプ

これらの人は定期的に血液検査や尿検査を受け、腎臓の状態を診てもらいましょう。心血管疾患や脳卒中の原因と重なるものもあります。

  • 糖尿病の人
  • 高血圧の人
  • 肥満の人
  • 脂質異常症の人
  • 動脈硬化が進んでいる人
  • メタボリックシンドロームの人
  • タバコを吸っている人
  • 高齢の人
  • 家族に慢性腎臓病患者がいる人:遺伝する病気もある
  • 消炎鎮痛剤(痛み止め)をよく使っている人:薬による腎臓機能低下の可能性
看護師さん
看護師さん
私が関わった80歳代男性患者さんの話です。現役時代、健康診断で高血圧と蛋白尿を指摘されました。仕事が忙しいと放置してしまい数年後に体調が悪化、受診して治療を始めましたが、2年後に人工透析導入になりました。

CKD(慢性腎臓病)の症状

初期症状

初期には自覚症状がほとんどありません、”沈黙の臓器”と腎臓は時にこう呼ばれます。

自覚症状が現れるのは、腎臓の機能が残り3割程度になってからです。血液検査(腎機能)や尿検査で異常があれば自覚症状がなくても受診をしましょう。

健康診断の尿検査は腎臓病の早期発見のチャンス。尿タンパク、尿潜血の異常を放置しない。

症状が進むと

  • 夜間の頻尿
  • 疲れやすくなる
  • むくみ:手や足、顔、内臓
  • 息切れ
  • 貧血による立ちくらみやめまい
  • 食欲不振
  • 骨がもろくなる

適切な治療を行わないと徐々に進行し、やがて慢性腎不全になります。

慢性腎不全

慢性腎不全とは、さまざまなCKD(慢性腎臓病)が重症化した状態です。

慢性腎不全では一般的に人工透析や腎臓移植が必要になる可能性が高い

人工透析って、1日おきに病院に行くんだよね?昔の同僚が午前中は人工透析を受けて、午後から仕事に来てたな。やめたら死んでしまうって言ってたのを覚えてるよ。
営業のよしださん
営業のよしださん
看護師さん
看護師さん
その通りです。人工透析をしなくていいように早期発見と早期治療がとても大切になるんです。

CKD(慢性腎臓病)を進行させないための治療や生活

CKD(慢性腎臓病)の治療は食事療法、薬物療法、生活習慣の改善です。患者さん本人の努力と医療者の介入、どちらも重要になります。

食事療法

食生活の改善で腎臓の機能低下は抑えられる

これら3つが腎臓病の進行を抑えるための食事の基本です。

  • 塩分制限
  • タンパク質摂取のコントロール
  • 適正なエネルギー摂取

職員さん
職員さん
タンパク質制限やカロリー制限は、腎臓病の状態で個人差があります。今回は普段からできる「減塩」についてしっかりお話しします。

塩分制限

腎臓病ではほとんどの場合で血圧が上昇します。高血圧は腎臓へのダメージを促進したり、心筋梗塞や脳卒中を引き起こします。減塩をして血圧を良好に保ちましょう。

1日の食塩の目標:6g未満

まれに例外もあります。必ず医師の指示に従いましょう。
減塩の方法
  • 外食・調理済み食品をひかえる:塩分が多いものは残す
  • 食材・調味料を正確に計る:計量スプーン、計量カップ、デジタルはかりを使う
  • うす塩・減塩調味料を活用する:しょうゆ、みそ、ソース、ポン酢、ケチャップなど
  • 目に見えない塩分にも注意:野菜やパスタの下茹での塩、肉・魚の調理前の下塩、ドリンク類など
  • 口に入る塩分を減らす:汁物は具を増やし汁を減らす、醤油は「かける」から「つける」に
  • 塩味に変わる味を楽しむ:うまみ、辛み、酸味、油脂のコク、香りや香ばしさなど
看護師さん
看護師さん
現代人は1日に9〜11gの塩分を摂っているとも言われます。腎臓のために少しずつ減塩に慣れましょう。

薬物療法

薬の効果を上げるには、正しく服用することがとても重要です。

  • 決められた用量・用法を守る:飲み忘れた場合の対処方法を確認しておく
  • 白湯か水でのむ:お茶やジュースなどでは効果が薄れたり副作用がでる薬もある
  • 風邪や下痢など体調不良の時の対処方法を確認:服薬を中断すると腎臓病を悪化させることもある
  • 市販薬を使いたい場合は医師・薬剤師に相談する:市販薬にも腎臓病で使わない方がいい薬がある

生活習慣の改善

腎臓に負担のかからない日常生活を心がけましょう。

  • 過労を避ける:過労は腎機能の低下に拍車をかける
  • 睡眠を十分にとる
  • 風邪をひかないようにする:感染症にかかりやすい腎臓病がある
  • 適度な運動をする:メタボリックシンドロームを改善
  • 体を冷やさない:腎臓の血流に影響する
  • タバコはやめる
  • 飲酒は適量を守る
看護師さん
看護師さん
私が関わった70歳代女性の患者さん。子供3人を育て、義理の両親の介護もされていました。昔から高血圧で薬は飲んでいましたが、育児や介護が忙しく自分のことは後回し。育児と介護が落ち着いた頃には腎臓の治療が必要な状態になっていました。今は食事や薬で治療中です。

運動する時のポイント

  • 20分体を動かしたら休む
  • いきなり強い運動をしない
  • 体調に合わせて定期的に運動をする
看護師さん
看護師さん
「体を動かして気持ちいいが、なんだか物足りない」と感じるくらいの運動がちょうど良いです。

まとめ

CKD(慢性腎臓病)は早期発見、早期治療が大切です。健康診断での異常は放置せず、医師に診てもらいましょう。

CKDは初期症状が現れにくく、進行すると透析が必要になることもある深刻な病気です。特に注意すべき症状は、むくみ、疲れやすさ、夜間頻尿などです。予防と管理のポイントは「減塩」「適度な運動」「禁煙」「定期検査」。これらを継続的に実践することで、進行を遅らせることができます。

また生活習慣の改善は腎臓病だけではなく、他の病気の予防や改善にもつながります。運動や睡眠、減塩などできることから実践しましょう。

気になる症状がある方は、早めにかかりつけ医に相談することをお勧めします。一人ひとりの状態に合わせた適切な対策で、腎臓の健康を守っていきましょう。

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