認知症にはどのような種類があるのでしょうか?症状や原因、予防法まで解説します

認知症にはどのような種類があるのでしょうか?症状や原因、予防法まで解説します

85歳以上になると、4人に1人が発症すると言われる認知症。65歳以上から認知症の発症率は高くなるため、前もって認知症の正しい知識を身につけておくことが大切です。

正しい認知症の知識を知ることで、認知症を疑ったときの行動・どんな予防をすればいいのかなど、落ち着いて対応できるでしょう。

この記事では、認知症の症状・原因を解説します。認知症の予防法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

認知症とは

認知症とは、さまざまな要因から脳の神経細胞の働きが悪くなる脳の病気です。記憶や判断力などの認知機能が低下し、最終的には日常生活に支障をきたします。

一般的なもの忘れは「記憶を思い出す」ことが難しくなりますが、認知症は記憶そのものができません。

65歳以上で発症率は高くなり、85歳以上では4人に1人が発症すると言われています。また、65歳未満で発症する方を「若年性認知症」と呼びます。

認知症の種類は、主に次の4種類です。

・アルツハイマー型認知症
・脳血管性認知症
・レビー小体型認知症
・前頭側頭型認知症

それぞれの特徴を順に見ていきましょう。

アルツハイマー型認知症

認知症患者のうち7割近くアルツハイマー型認知症だと言われるほど、多くの方が発症する認知症です。

アミロイドβというタンパク質が脳に蓄積することで発症します。アミロイドβは20〜30年の時間をかけて増えていき、脳の細胞の働きを衰弱させていきます。

進行は比較的緩やかで、記憶障害から始まることがほとんどです。ただし、症状は個人によってさまざまで、もの忘れや妄想、徘徊などがあります。

脳血管性認知症

脳出血や脳梗塞などの脳の病気から発症する認知症です。症状の悪化と一時的な改善を繰り返しながら、段階的に進行する特徴があります。

認知症の症状だけでなく、手足のしびれ・嚥下障害・失禁などの症状も見られます。しかし、病気によってダメージを受けた脳の部位ごとで認知症の症状は異なるため、脳血管性認知症の方が必ずしも同じ症状が発症するとは限りません。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、脳にレビー小体という物質が蓄積して神経細胞にダメージを与えることで発症する認知症です。

もの忘れなどの認知機能の症状以外に、実際にはいないものが見える「幻視」や体の動きが鈍くなる「パーキンソン症状」、睡眠中の異常行動なども見られます。

症状が落ち着いたり悪化したりを交互にしながら、ゆっくり進むときもあれば一気に進行することもあります。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、前頭葉・側頭葉の萎縮により発症する認知症で、唯一、難病指定を受けている認知症です。

毎日同じものを食べる・出かけるなどの行動パターンを繰り返したり、暴力的になったりするなどの症状が見られます。

また、信号無視や順番を抜かすなどの反社会的行動、言葉の意味が理解できなくなる言語障害も前頭側頭型認知症の症状です。

認知症を発症する原因

認知症を発症する原因は個人によってさまざまです。老化から発症する方もいれば、病気や怪我から発症する方も見られます。また、長年のストレスから発症することもあります。

こちらでは、認知症の主な原因を解説します。

加齢による認知症の発症

加齢によって異常なタンパク質が増えてたまることで、脳の神経細胞に悪影響を与え認知症を発症します。アルツハイマー型認知症は、この異常なタンパク質の蓄積が原因です。

病気による認知症の発症

脳梗塞・くも膜下出血・悪性腫瘍などの脳の病気から、認知症を発症することがあります。

また頭を強くぶつけたり、怪我などの長期入院によって自分で考えて動く機会が減少したりすることも原因の一つです。脳の刺激が低下するため、認知症を発症しやすくなります。

生活習慣病による認知症の発症

高血圧・糖尿病などの生活習慣病は、脳梗塞や脳出血などを引き起こす要因です。その結果、脳血管性認知症の発症率が高くなります。

さらに、タバコ・アルコールにも注意が必要です。タバコに含まれるニコチンには血管を収縮する働きがあり、認知症を引き起こす場合があります。また、アルコールの大量摂取によって認知症の発症リスクが高くなります。

ストレスによる認知症の発症

長くストレスを蓄積すると血流が悪くなり、記憶を司る海馬にダメージを与えて認知症の発症リスクの危険性があります。

また、ストレスから引きこもったり人との関わりが減ったりすることでも認知症の可能性は高くなります。脳の刺激が低下するので、人と会話する時間を増やして、適度な運動でストレス発散し、脳を活性化させることが大切です。

認知症の症状とは

認知症の症状は主に中核症状と周辺症状(BPSD)があります。中核症状は脳の障害から引き起こされ、周辺症状は人間関係や環境変化などで引き起こされます。

それぞれの詳しい症状を順に確認していきましょう。

中核症状は認知機能の障害

中核症状は脳の神経細胞にダメージが加わることで発症する症状で、当てはまる主な症状は次の通りです。

・直近の記憶を維持できない、忘れるなどの記憶障害
・現在の日時や場所などがわからなくなる見当識障害
・計画を立てて効率よく行動できなくなる実行機能障害
・判断力の低下
・言語障害
・失行・失認

実行機能障害の症状は、今までスムーズにできるように段取りを考えていた料理の手順が決められなくなる、問題なく使用していた電化製品が使えなくなるなどです。

そして、失行は日常生活で行なっていた動作(服を着る・お箸を使ってご飯を食べるなど)ができなくなること。失認は、五感を使って物事を判断することが難しくなります。

周辺症状は人間関係や本人の性格で症状が異なる

周辺症状とは中核症状に伴い二次的に発症する症状で、周囲の関わり方や生活環境の変化などで起きるため、発症する症状や度合いには個人差があります。

周辺症状の主な症状は次の通りです。

・妄想
・幻覚
・徘徊
・暴言・暴力
・抑うつ・不安
・不眠

そのほかに介護拒否も見られます。認知症の方が介護を理解できない、無理やり服を着せられたなどの嫌な思い出が強く残ることで、介護を拒否・受け入れないという場面に遭遇することがあります。

ただし周辺症状については、薬物療法または非薬物療法を活用することで症状が緩和する場合もあるため、気になる方は医師への相談をおすすめします。

早期発見が大切!認知症の初期症状をチェク

認知症は早期発見・治療することで、進行速度を緩やかにできる場合があります。以下では、認知症の初期症状のチェック項目を紹介します。当てはまる項目が多いほど、認知症の可能性も考えられるため、早めに受診しましょう。

・同じことを何度も言う
・直前の会話の内容を忘れる
・片付けた場所を忘れる回数が増えた
・料理や運転などのミスが増えた
・簡単な計算が難しくなる
・待ち合わせした日時を忘れる
・好きなことへの興味が薄れる
・ちょっとしたことで怒りっぽくなる
・現在の日付がわからない
・無気力になる

これらの初期症状は一部ですが、認知症の初期症状としてはよく見られます。とくに、もの忘れがきっかけで認知症の診断につながることが多いので、もの忘れの頻度が多くなったときは認知症を疑ってもよいでしょう。

とはいえ、本人は年齢によるただのもの忘れだと思うケースがほとんどです。「症状がまだ軽いから」と、受診を拒否する場合もあります。無理やり連れて行こうとすれば、拒絶反応が強く出る恐れがあるため、時間をかけて説得することが大切です。

また、直接「認知症だよ」「ボケがひどい」などの発言は控えましょう。直接的な発言は本人を傷つける場合があるので、「将来のために一度受診しない?」など、オブラートに伝えると前向きに検討してくれるかもしれません。

「認知症かも」と思ったときの医療受診先は?

まずは「かかりつけ医」に相談しましょう。もしかかりつけ医がないときは、以下の医療機関を受診します。

・精神科
・脳神経内科
・脳神経外科
・もの忘れ外来
・認知症外来

さらに、各都道府県には「認知症相談センター」を設置しています。気になる症状を話して相談することで、本人に適した受診先を案内してくれます。

そのほか、地域包括支援センターに相談することもおすすめです。地域包括支援センターは、地域に住む65歳以上の高齢者またはその家族が利用できます。認知症を調べてくれる医療機関を案内したり、認知症に関する相談をしたりするなど、さまざまなことを気軽に相談できる窓口です。地域包括支援センターについて、詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。

認知症を予防する方法

完治の難しい認知症ですが、発症を防いだり発症率を下げたりすることはできます。そのためには、日頃から認知症の予防策を取り入れることが大切です。

それでは、認知症を予防する方法とはどんなものがあるのでしょうか。ここでは、認知症の予防に効果的な方法を解説します。

適度な運動

適度な運動は脳が活性化されるため、認知機能がアップします。さらに、動脈硬化や筋力低下を予防する効果もあります。

習慣化することが大切なので、まずはウォーキングから始めていきましょう。慣れてきたら、手を上下に動かすなどの2つ以上の動作を加えたデュアルタスクを取り入れてみてください。

バランスの摂れた食生活

糖質や塩分を抑えつつ、栄養バランスの摂れた食事を心がけましょう。

老化を予防する緑黄色野菜、脳梗塞の発症率を下げるサンマやイワシなどの魚、根菜類、鶏肉などの摂取がおすすめです。

食事をする際は、よく噛むことを意識しましょう。しっかり噛むことにより、脳が活性化されてアルツハイマー型認知症の原因でもあるアミロイドβが減少すると、研究で明らかになっています。

また食事は食べるだけでなく、自分で料理することもおすすめです。効率的な手順を考えたり野菜を切ったりすると、脳に刺激を与えられて認知症を予防できます。

テレビゲーム

意外かもしれませんが、テレビゲームは指を動かしたり目で画面を追ったりするため、脳が活性化されやすいのです。

どのゲームも認知症予防に効果的ですが、とくに反射的な操作を必要とするアクションゲームは、より認知症を予防できると言われています。

脳トレ

脳トレは、認知症の方のみを受け入れた「グループホーム」でも積極的に取り入れられています。簡単な計算問題・折紙・クロスワード・塗り絵など、さまざまな種類があるため、自分の好きなことや興味のあるものからだとチャレンジしやすいでしょう。

判断力や考える力が必要とされるので、脳を活性化しやすく認知症の予防につながります。

一つの脳トレを繰り返して行うのではなく、さまざまなジャンルの脳トレをする方が、より脳の刺激は向上します。

認知症の症状を疑ったときは速やかに専門医へ

認知症は誰でも発症する可能性のある脳の病気です。

現代の医学では認知症を根本的に治す治療法が見つかっていないため、発症すると症状は進行を続けてしまいます。少しでも症状を緩和する・進行を遅らせるためには、早期発見と治療が欠かせません。気になる症状が見られたら、早めに医療機関を受診しましょう。

また、今回紹介した認知症の予防法は、どれも日常生活で取り入れやすいものばかりです。日頃から脳を活性化させて認知症を予防することで、発症リスクを大幅に軽減できる場合もあります。

ぜひ、紹介した認知症の予防方法を取り入れて、認知症にならないための生活習慣を作りましょう。

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