介護を調べているとき、地域包括支援センターという言葉を目にしたことがある方は多くいるのではないでしょうか。しかし、具体的にどんなことをする施設なのか、わからないですよね。
この記事では、地域包括支援センターについてご紹介します。地域包括支援センターを利用することで、高齢者の生活を守るだけでなく、介護をする家族の心身もサポートします。
・地域包括支援センターって何?
・どんな人が利用できる?
・どうやって利用するの?
このような疑問をお持ちの方は、ぜひこの記事で悩みをスッキリ解決して、地域包括支援センターを上手に活用しましょう。
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターとは、地域に暮らす高齢者の健康を守り、安心できる暮らしができるように必要な援助および相談を受け付ける施設です。相談できることは、介護予防や介護をはじめとした「福祉・保健」ですが、日常的な困りごとの相談も可能です。
設置主体は市町村。ただ直営のものは少なく、多くは市町村から委託を受けた社会福祉法人や医療法人などの法人が管理・運営をしています。
地域包括ケアシステム
国は2025年をめどに地域包括ケアシステムを拡充させる整備を進めており、地域包括支援センターはその要となります。
地域包括ケアシステムとは、高齢者ができる限り住み慣れた地域で生活・最期を迎えられるように、地域で包括的な支援を行うことです。実現するためには、地域での医療・介護・生活支援などの体制が十分に整っている必要があります。
地域包括ケアシステムの整備を整えるために、地域包括支援センターが基盤となるのです。
地域包括支援センターの設置状況
令和4年4月末時点での地域包括支援センターの設置状況(厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課調べ)は次の通りです。
地域包括支援センター 5,404件
ブランチ 1,647件
サブセンター 358件
合計 7,409件
引用:地域包括支援センターについて
ブランチは地域包括支援センターと連携する身近な相談窓口であり、介護や福祉といった相談ができます。一方でサブセンターも介護や介護予防、認知症などを相談できる窓口ですが、包括的支援の実績がある在宅介護支援センターなどを指します。
居宅介護支援事業との違い
地域包括支援センターと似た施設に、居宅介護支援事業があります。
居宅介護支援事業はケアマネージャーが要介護者のケアプランを作成する事業所です。ケアマネージャーが要介護者やその家族などからヒアリングを行い、内容をもとにケアプランを作成します。また、介護サービス事業所の紹介も行われています。
一方で地域包括支援センターは、介護をはじめとした相談を受け付ける窓口です。近所の高齢者に関するトラブルの相談もできます。
地域包括支援センターは地域に住む高齢者が利用できる施設ですが、居宅介護支援事業は要介護認定を受けた方が利用できる事業所になります。
地域包括支援センターを利用できる人は?
地域包括支援センターを利用できる方は次の通りです。
・対象地域に住む65歳以上の高齢者
・高齢者の家族や高齢者を支える方
地域包括支援センターがある地域に住む65歳以上の高齢者であれば、どなたでも利用できます。「足腰が悪くなり生活に不安を感じている」「介護保険を申請したい」など、さまざまな悩みの受け付けが可能です。
また、高齢者本人の認知症などによる判断力・認知力の低下が見られた際、家族や高齢者を支える方が相談することもできます。
ただし、高齢者と家族が異なる地域に住んでいる場合、高齢者の地域に住む地域包括支援センターを利用するため、家族は高齢者の住む地域で相談する必要があります。
地域包括支援センターの利用方法
地域包括支援センターは介護や日常生活での困りごとを相談できる総合窓口です。気になることがあれば、気軽に相談しましょう。
とはいえ、はじめての場合、どのように利用するのかわからないですよね。ここでは、地域包括支援センターの利用方法を解説します。
地域包括支援センターに問い合わせる
まず地域包括支援センターは、お住まいの市町村のホームページから確認できることがほとんどです。お住まいの地域にある地域包括支援センターを見つけたら、センターに問い合わせましょう。西東京市の地域包括支援センターはこちらをご参照ください。
センターによっては、事前予約を必要とするところもありますので、相談に行く前に確認をしておくと安心です。
また、誰に相談すればいいかわからない場合、問い合わせのときに相談先を案内します。
本人または家族との面談
面談はセンターもしくは職員が自宅に訪問して実施されます。本人が受け応えできる場合は本人にヒアリングを行いますが、判断力の低下で受け応えが難しいときは家族からヒアリングします。
必要に応じたサービスの紹介
面談をもとに、必要なサービスを紹介します。介護保険の申請の場合は、職員が申請手続きを進めるので、スムーズな手続きができるでしょう。
介護予防である要支援1・2の方には、本人の身体の状況や支援が必要なところに応じた介護予防サービスを案内します。
そのほか、居宅介護支援事業の紹介・専門機関への案内などの対応も行われます。
地域包括支援センターの役割
地域包括支援センターの主な役割は4つです。
・地域高齢者の相談窓口
・介護予防ケアマネジメント
・高齢者が安心して生活するための支援
・ケアマネージャーのサポート
それぞれ順に詳しく見ていきましょう。
地域の高齢者の相談窓口
「最近、物忘れがひどくて認知症かもしれない」「介護サービスの受け方がわからない」など、高齢者に関するさまざまな悩みごとを相談できます。
専門知識のある職員が丁寧に話を聞き、適切な専門機関やサービスなどを紹介します。
また高齢者だけでなく、高齢者の家族・高齢者を支える方が利用することも可能です。たとえば「親の認知症を疑っているが、病院受診を拒否する。どうしたらいいか教えてほしい」といった相談ができます。
介護予防ケアマネジメント
要介護になる可能性が高い方や要支援1・2の方を対象に、身体機能の低下を予防するためのサービスの利用案内、地域の健康教室・体を動かすサークルなどの開催を行います。
また要支援1・2の方には、介護予防ケアプランを作成し、要介護になることを防ぎます。
高齢者が安心して暮らすための支援
「近所の高齢者が虐待されている気がする」「成年後見制度について知りたい」など、高齢者の安心を守る支援も地域包括支援センターで実施されています。
昨今で多い事例は、高齢者の金銭詐欺。子どもと名乗る詐欺グループに騙されてお金を振り込んでしまうケースが多く見られます。また、悪徳商法による被害相談も多いのが現状です。
こうしたトラブルから高齢者を守るために、地域包括支援センターを活用できます。必要に応じて専門機関を紹介し、迅速なトラブルの解決へと導きます。
ケアマネージャーのサポート
地域包括支援センターは高齢者の支援だけでなく、ケアマネージャーのサポートも業務の一つです。
ケアマネージャー向けの勉強会を開催したり、指導・支援をしたりするなど、地域のケアマネージャーの支援をしています。
ケアマネージャーの質を高めることは、高齢者が安心して生活できる地域につながるので、地域包括支援センターではケアマネージャーのサポート・育成にも携わります。
さらに、ケアマネージャーだけでは対応できない事例が起きた場合のサポートをすることも地域包括支援センターの役割です。
地域包括支援センターに配置される3種類の専門家
地域包括支援センターでは、社会福祉士・保健師(看護師)・主任ケアマネージャーが配置されています。それぞれが専門知識を出し合い、連携をとりながら的確な問題解決・支援が行われます。
社会福祉士
主な担当は、総合相談・高齢者の権利擁護事業です。業務内容は介護や生活支援の相談、高齢者の虐待、成年後見人の利用支援など。
高齢者の相談内容・生活状況に応じ、保健師・主任ケアマネージャーと連携を図りながら、行政や施設、病院などを紹介します。
保健師(看護師)
主な担当は、介護予防マネジメントです。医療的な相談を聞き、病院や保健所と連携をとりながら、必要なサービスや施設などを紹介します。
さらに介護予防ケアプランの作成、身体機能の維持・要介護状態を予防するための支援も実施しています。
主任ケアマネージャー
主な担当は、「包括的・継続的マネジメント」です。介護にまつわるすべての相談が可能で、相談内容に応じて地域のサービスやケアマネージャーと連携を図りながら、適切な支援を行います。
また、地域のケアマネージャーへの指導・サポート、地域ケア会議の開催なども担います。
地域包括支援センターのメリット・デメリット
地域包括支援センターを利用するメリットはどのようなものが挙げられるのでしょうか。ここでは、主なメリットとデメリットについて解説します。
メリット①無料で相談できる
対象地域に住む65歳以上の高齢者およびその家族、高齢者に関係する方であれば、誰でも無料で相談できます。
介護全般・権利擁護など、些細なことでも無料で相談できるので、悩みがあれば気軽に相談しましょう。
メリット②高齢者のトラブルを早く見つけられる
介護疲れなどから高齢者に虐待をするケースは後を絶ちません。高齢者の虐待を取り扱うことは非常に難しく、デリケートなため、専門的な知識が求められます。
地域包括支援センターには適切な専門職員が在籍しているので、虐待の早期発見・解決につながる可能性が高い状態にあります。
また、介護をする家族からの相談も受け付けているので、虐待に発展する前に相談すると、高齢者への虐待を防ぐことも期待できます。地域住民も地域包括支援センターを利用可能です。「近所で高齢者の虐待を目にした」「隣の家が高齢者を虐待しているかも」などの相談をすることにより、高齢者のトラブルを未然に防げるかもしれません。
デメリットは直接的な支援は受けられない
無料でどなたでも利用できる地域包括支援センターですが、あくまでも相談窓口なので身体介護などの直接的な支援は受けられません。
相談内容に応じて、必要な介護施設や介護サービス、病院、専門機関などを紹介したり調整したりすることが役割です。
とはいえ、地域包括支援センターを適宜活用することで、地域で生活する高齢者の暮らしに安心感が増す場合があります。また、介護をする家族の負担も軽減できるでしょう。
まとめ
地域包括支援センターは、地域で暮らす高齢者を支援したり問題解決へと導くためのアドバイスをしたりする施設です。地域に暮らす65歳以上の高齢者・その家族や地域住民の方が利用できるので、地域全体で高齢者の暮らしを守ることが可能です。
とくに在宅介護をしている家族は、介護度が上がるたびに負担も大きくなります。介護疲れから虐待に走ったり、家族が介護うつになったりしないために、地域包括支援センターで相談することをおすすめします。
要介護者の身体的状態から適切な介護施設やサービスなどの案内・調整を行うので、家族の介護疲れを軽減できるでしょう。
『地域介護相談センター 近所のよしみ』は、社会福祉士をはじめ、ケアマネージャーなどの福祉・介護の国家資格取得者が常駐しております。地域包括支援センターとも連携をとりながら進めて参りますので、安心してご相談ください。