在宅介護で一番大変に感じるのがオムツ替えと言っても過言ではないでしょうか。
オムツ替えは体力的な負担はもちろん、デリケートな介護であるため、家族だからこそ精神的にも負担を感じてしまいます。
今回の記事ではオムツ替えの手順や負担を軽減するコツを解説します。
この記事を参考に在宅介護のオムツ替えの負担を少しでも軽減しましょう。
親の介護でオムツ替えの負担を軽減するコツ
まずはオムツ替えの負担を軽減するためのコツを押さえておきましょう。
身体状況に合ったオムツ・パッドを選択する
オムツは体に合ったサイズを選択するようにしましょう。体に合っていなければ、漏れの原因になってしまいます。
オムツを使用する際はオムツとパッドを併用するのが基本的な使い方です。尿量が少なく漏れていなければパッドの交換だけで済むので楽にオムツ交換ができます。
パッドの選び方も重要です。パッドには尿量に合わせてさまざまな種類があります。特に夜間はぐっすり眠れるように吸収量の多いパッドを使用するなどの工夫をしましょう。夜間のパッド交換の回数が減り、漏れも解消できれば介護者の負担も軽減します。
できる限りトイレに誘導する
排泄に失敗するようになったらオムツで排泄しなければならないと考えてしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし、排泄に失敗してしまう理由はさまざまです。尿意があり立ち上がりができる方であれば案内すればトイレでの排泄が可能です。
トイレで排泄することで、介護者がオムツを交換する手間が省けます。
また、トイレに座って腹圧をかけることで便秘が解消される効果や、歩行や立位の動作は身体能力維持の効果も期待できます。
心配であればリハビリパンツやパッドを併用しながら、定期的に声をかけてトイレに誘導してみましょう。
日中はパンツ、夜間はオムツなどの併用も良いでしょう。
漏れにくいオムツの当て方を習得する
オムツを装着するにはコツがあります。正しい位置に当てるためのコツをいくつかご紹介します。
- オムツをあてる前にサイドの立体ギャザーをしっかり立てる
- ギャザーの内側にパッドを入れてずれないようにする
- 体を横向きにした時にオムツの中心を背骨の真ん中に合わせる
- 男性は前、女性は後ろ寄りにパッドをあてる
- オムツのテープはクロスして止める
正しい位置にオムツ・パッドが当たっていなければ尿漏れの原因になってしまうので注意が必要です。オムツメーカーのホームページなどで紹介されているので確認してみましょう。
福祉用具を活用する
オムツ交換を楽にするには、福祉用具を最大限に活用するのがおすすめです。
まず、介護ベッドを使用していない方は介護ベッドをレンタルしてください。介護ベッドをオムツ交換がしやすい高さに調節して介助するだけでも体にかかる負担は軽減されます。
福祉用具でレンタルできるベッドは、高さを自由に変えられます。調節するのが面倒に感じ、少しの介助ならそのままの高さで介助してしまうケースがあるかもしれません。しかし、無理な体勢で介護しないことが腰痛予防になります。オムツ交換以外の介助でも、ベッドをこまめに介助しやすい高さに変更して介護することが大切です。
また、ベッドには防水シーツを使用するのがおすすめです。どれだけ注意してオムツやパッドをあてていても、尿や便が漏れてしまうことはあります。防水シーツを敷いておくことで漏れてしまった場合にも防水シーツを取り替えるだけで済みます。
尿もれをした時にシーツまで全部交換するのは大変なことです。防水シーツには、腰からお尻まわりをカバーするサイズのものや使い捨てできるものなどさまざまなタイプがあります。マットレスまで汚染してしまっては大変なので、防水シーツを活用しシーツ交換の手間を軽減しましょう。
介護サービスを利用する
排泄介助は体力を使う介助であり1日に何度も行わなければならないため、家族の介護負担が非常に大きいものです。少しでも負担を軽減するために、訪問介護などの介護保険サービスを利用してみましょう。
訪問介護サービスでは、決められた時間にヘルパーさんに訪問してもらい排泄・食事・入浴などの身体介護や掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助が受けられます。ヘルパーさんに排泄介助を手伝ってもらえば介護負担が軽減します。介護についてのアドバイスがもらえることもあるでしょう。
訪問介護サービスを受けたい場合はケアマネジャーに相談し、ケアプランを作成してもらわなければなりません。心身の状況に合わせてプランを立て、訪問介護サービスにきてもらう時間や回数が決定します。訪問介護サービスの他にもデイサービスやショートステイなどの利用も相談できます。介護者に用事がある時や休息を取りたい時など、介護負担を軽減するための利用も可能なので、一度介護のプロに相談してみるのをおすすめします。
オムツ替えの手順
ここからは具体的にオムツ替えの手順を確認します。
1.必要な物品を準備する
オムツ替えに必要な物品は以下の通りです。
- オムツ・パッド
- 使い捨て手袋(エプロン)
- おしり拭き・乾いたウエス
- 陰部洗浄用のボトル(38℃〜39℃のお湯)
- 石鹸
- 新聞紙
- ゴミ袋
汚れた衣類やオムツを置けるように床に新聞紙とビニール袋を広げておきます。オムツはギャザーを立て、パッドをギャザーの内側に装着して準備しておきましょう。
2.ベッドの高さを調整する
声掛けをしながらベッドを介助のしやすい高さに調節し、介護者側のベッド柵をはずします。ベッド柵を外すことで体を近づけることができ、より介助がしやすくなります。
3.手袋を装着する
介助をする時は必ず使い捨て手袋を装着しましょう。排便の介助時などはエプロンを装着するとより安心です。
4.オムツを外す
ズボンを下ろし、オムツを外します。ご自身で横を向ける方やお尻が上げられる方は声掛けしてできる動作は行ってもらうことが大切です。
オムツやパッドの汚染が少ない場合はオムツを敷きながら陰部洗浄を行うので、お尻に敷いたままにしておきます。
5.陰部洗浄・清拭をする
オムツを敷いたまま陰部の洗浄を行います。陰部洗浄時のお湯の温度は38℃〜39℃の人肌より少し熱い温度がベストです。
一度流したあとに、石鹸を泡立ててやさしく洗います。尿路感染症や女性であれば膣炎などを起こさないように、陰部の皮膚が重なっているところは広げながら丁寧に洗うことが大切です。一通り洗浄できたら最後に乾いたウエスで水分を拭き取ります。
陰部洗浄の時には皮膚の観察も大切です。オムツかぶれなどの皮膚トラブルや褥瘡ができていないかなど確認しましょう。
6.新しいオムツを装着する
汚れが落とせ、水分が拭き取れたら新しいオムツを装着します。ベッド柵を持って横向きになっていただいたらオムツを身体の中心に合わせて装着します。オムツの中心を背骨にあてるのがポイントです。体を向けている側にオムツを差し込んだら仰向けになっていただき、奥のオムツを引き出します。
両足の間から鼠蹊部にそわせるようにオムツを引き出したらテープ留めをクロスにして貼るとオムツが装着できます。
7.衣服、ベッドを元に戻す
オムツが装着できたら再度横を向いてもらい、ズボンを引き上げます。この時、シーツにシワができていればしっかり伸ばしましょう。シーツのしわは褥瘡の原因になります。その後、ベッドの高さが高いままでは事故の原因になってしまうため、元の位置に戻しておきます。
最後にゴミ捨て・換気・手洗い・手の消毒を行って終了です。
親の介護におけるオムツ替えのポイント
オムツ替えはデリケートな介助であり、介護する側もされる側もストレスを感じてしまいます。プライバシーに配慮しながらお互いの負担を軽減することが大切です。
オムツ替えのポイントを確認しましょう。
丁寧に声をかけながら行う
排泄介助をする際に、突然体を触られてしまうと誰でもびっくりしてしまいます。何をされるのか分からない状況では不安になってしまいますので、丁寧に声をかけながら介助しましょう。
声をかけて、介護される側が心の準備ができているだけでも介助のしやすさは異なります。
急に介助されるとびっくりして、恐怖心で体がこわばってしまい拒否反応を示してしまうことも。体が固くなってしまえば介護がしにくくなってしまいます。
心の準備ができていれば、あまり体が動かせない方であっても、わずかでも協力的な動きができるようになります。
精神的な負担を和らげるためにもこまめに声かけしながら行いましょう。
羞恥心に配慮する
いくら家族であってもオムツ替えは羞恥心を感じるものです。プライバシーに注意し、自尊心を傷つけない介助が大切です。
オムツ替えをする時は、家族以外誰もいない自宅であっても扉を閉めたりカーテンをしたり外から見えない空間にします。さらに、タオルをかけるなどの配慮でできるだけ肌の露出部を少なくできるようにしましょう。排泄物を周囲にわかりにくいように処分する心遣いも大切です。
介助される方は、家族に排泄介助をさせることを申し訳なく思っています。排泄に関して尊厳を傷つけるような発言にも注意が必要です。特に、排泄に失敗してしまった時などは自尊心が傷ついてしまいます。決して失敗を指摘するようなことはあってはなりません。相手に寄り添った対応を心がけましょう。
自立支援を促す
排泄に関する動作において自分でできることは自分で行ってもらい、自立支援を促すことはとても大切です。
前述した通り、立位が取れるならトイレに誘導し排泄を促します。ズボンの上げ下ろし、排泄後に拭き取りができるようであれば行ってもらうだけでも羞恥心から解放されます。
さりげなく見守り、出来ない部分をサポートするようにしましょう。
できることを自身で行ってもらうことは生活機能の維持向上につながります。トイレでの排泄が難しい方でも、ベッド上でのオムツ交換時に手すりを持って横向きになってもらう、お尻を上げてもらうだけで自立支援につながります。
自立支援を促し、できる範囲で体を動かしてもらうことは介護する側の負担も軽減するので積極的に行いましょう。
介護する側もされる側も負担の少ないオムツ替えを
この記事では、親のオムツ替えの介助について解説しました。
オムツ替えはプライバシーに関わる問題であり在宅介護の中でも難しい介助の一つです。身体的にも精神的にも負担になるため、無理なく継続できる工夫が必要です。
オムツ替えのコツをつかみ、介護保険サービスの力を借りながらオムツ替えの負担を上手に乗り切りましょう。