2024年介護報酬改定が行われ、多くのサービスがプラス改定だった中、訪問介護はマイナス改定となりました。
全国ホームヘルパー協議会と日本ホームヘルパー協会が厚生労働省に抗議文を提出しました。
「全ての国民が住み慣れた地域で安心して日常生活を続けられる、という目指す姿と全く正反対の改定」と問題を提起しました。
2025年問題に向け、国は地域包括ケアシステムの構築を行ってきました。
地域包括ケアシステムとは簡単にいうと、「住み慣れた地域で自宅で過ごそう」が目的です。
介護保険を利用している人は、一般的には困りごとが複合しています。
そのため、家族を含め様々な人やサービス事業者が「住み慣れた地域で自宅で過ごそう」を達成するために奮起しています。
その「住み慣れた地域で自宅で過ごそう」を一番に支えているのが、間違いなく訪問介護サービスです。
しかし、訪問介護サービスには様々な決まり事があり、利用者や家族にとって、痒い所に手が届くサービスとまではなっていません。
そんな中、東京都にある、ベンチャー企業株式会社イチロウが介護に特化したマッチングサービスを2019年に開始しました。
利用者とヘルパーの間を取り持ち、マッチングした人にヘルパーを派遣します。
介護保険外事業のため、介護保険法に縛られることなく、ニーズにマッチしたサービスが提供できます。
現在、介護保険の訪問介護事業を利用されていて、「これしてくれたらな~」と思う人は新たな発見があります。
介護保険の訪問介護サービスで、できることできないこと
訪問介護サービスとは、訪問介護員(ホームヘルパー)などが利用者の自宅を直接訪問して、入浴、排泄、食事等の介助などの「身体介護」や、掃除、洗濯、調理等の家事といった「生活援助」を行うサービスです。
人が生活をする上で欠かせない行為ですが、病気や障害等でそれらが難しい場合にヘルパーから支援を受け、自宅での生活を続けられるようにします。
パッと見、色々してもらえて助かるな~と思いますが、実際にはかなりの制限があり、驚く方も多いです。
これは、厚生労働省が「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱い等について」で細かく規定しています。
それと、訪問介護を利用できるのは、
- 一人暮らし
- 家族等が障害、疾病等
- その他
となっています。
2.に該当する高齢者夫婦二人世帯を例に詳しくみていきましょう。
掃除
掃除は、掃除機掛け、拭き掃除が主です。
まず大前提として、本人の生活しているスペース以外の所は、掃除はダメとなっています。
例えば、2階建ての住宅に住んでいる方で足が悪くなり2階部分を使ってない場合は、2階の掃除はできません。
ベッドサイドでポータブルトイレを使用していた場合は、ポータブルトイレの掃除はできますが、家のトイレは掃除ができないことになります。
それとなぜか窓掃除はできなことのひとつに入っており、利用者の方から「それぐらいしてよ~、不親切な人ね」と言われたりしますがヘルパーが悪い訳ではないです。
どこをどれだけ誰がどのように掃除するのか決めるのは、ケアマネジャーです。
利用者が希望を出してもケアプランにサービス内容として組み込まれないと、ヘルパーは掃除できないことになっています。
洗濯
洗濯は時間との勝負になってきます。
生活援助だけで考えると、生活援助2と生活援助3と呼ばれるサービス区分を使っている人がほとんどだと思います。
生活援助2は20分以上45分未満。生活援助3は45分以上という考え方です。
ここに厚生労働省のいやらしい考え方が見えます。
生活援助3は45分以上となっており、極端な話、2時間でも3時間でも45分以上なので、事業所に入るお金は一緒です。
なので、ほとんどの事業所は示し合わせたように、生活援助3は1時間以内としています。
洗濯機のスタートを押して、洗濯が終わり干す、を考えるとあっという間に1時間が経過します(もちろん洗濯物が回っている間に掃除機かけ等します)。
調理
調理は一般的な調理となっています。
何をもって一般的かというと、例えば流動食のような特別な配慮がいる食事は一般的ではありません。
妻の訪問介護で調理した場合、妻の分しか調理できません。
それはそうだろと思う方もいると思いますが、夫から「俺の分もついでに作って。」と頼まれることも少なくないです。
ヘルパーは困ってしまいますが、ヘルパーが悪い訳ではないです
買い物
昨今のニュースで、高齢者が車のアクセルとブレーキを踏み間違う事故をよく見ます。ネットでは「免許返納しろ」との意見をよく見ます。
しかし、地域性もあり返納すれば別の問題も出てくるのも事実です。田舎に行けば行くほど、車が必需品になります。
買い物も公共交通機関を使って行くことはできる方もいますが、重い物を持って帰るのはなかなか難しいです。
ヘルパーは買い物代行もできます。しかし、買えない物があります。
日用品(生活するために必要な物)は買えます。
食材、消耗品(トイレットペーパー、ティッシュペーパー、電池、洗剤など)、衣服がそれにあたります。
買えない物は、本人以外のもの、嗜好品(たばこ、お酒、本)があります。
夫がまた出てきて「ついでに俺の下着も買ってきて」と言われても買えません。
これらの内容を基本1時間以内で済むように、サービスを組みます。
例えば、洗濯機を回している間に買い物に行き、帰ってきて、洗濯物を干すまでなどです。
お気づきの方もいるかもしれませんが、これだと干して乾いた洗濯物は誰が取り込んで、畳んで、しかるべき場所にしまうのかとの問題もあります。
利用者の方がある程度元気であれば、自身で取り込んでもらいますが、できない場合は、次回ヘルパーが来た時に取り込むとなります。
このように、制度内だけではすぐに限界に達するため、どこの部分を優先的にするかを決め、優先事項に入らない部分は置き去りにされているのが現状です。
それと、生活援助では月に必要以上の回数を使用したい場合は保険者に対して、ケアプランを提出する必要があり、実質的に週2回しか入れないようになっています。
訪問介護事業所とケアマネジャーが手を組み、不必要な支援を入れて(特に自己負担のない生活保護者に対して)、荒稼ぎしていた時代があり、厚生労働省がメスを入れ、不正できなくした背景があります。その為、保険者もヘルパーの回数にかなり目を光らせています。
マッチングサービスの登場
冒頭で触れましたが、利用者とヘルパーの間を取り持ち、マッチングした人にヘルパーを派遣するマッチングサービスが登場。
その内容をみていきましょう。
介護保険サービスとは何が違うの?特徴は?
先程見た(1)のように介護保険サービスは様々な制限がありますが、マッチングサービスは介護保険事業外のため、制約が基本的にはありません。
つまり(1)を例に当てはめると、
- 掃除では、使ってない部屋の掃除が可能。窓拭きもできます。
- 洗濯では、時間を気にせずゆっくりすることが可能です。
- 調理では、利用者以外の人の分も作れます。
- 買い物は、お酒やたばこのような嗜好品や家族の分も買えます。
POINT1
厳しい基準をクリアした介護士だからご提供できる、高品質でホスピタリティの高い介護サービス
スキル・今までの経験・性格などをしっかりと審査しております。採用後も、研修や都度フィードバックを通じ、サービス品質向上に向けた取り組みを続けています。
POINT2
あらゆる介護ニーズに一流の介護士がお応えします
- 外出の付き添い
- 通院の付き添い
- 自宅の家事・生活支援
- 自宅の介護
- 認知症ケア
- 日中・夜間の見守り介護
- 入院中の介護
(引用:株式会社イチロウホームページhttps://ichirou.co.jp/)
2. 誰でも使えるの?
介護保険サービスは、要介護認定を受けなければ使うことができません。
地域支援事業である総合事業(要支援者等が受ける訪問介護相当のサービス)は事業対象者しか使うことができません。
マッチングサービスは介護保険事業外のため、誰でも利用することができます。
3. 使いたい場合はどうしたらいいの?
お問い合わせ/ご相談
Webサイトのお問い合わせフォーム、またはお電話にてお問い合わせください。お急ぎの場合はお電話にてご相談ください。
利用登録
ご利用いただくために会員登録が必要です。メールアドレスなどの情報のみで簡単にご登録いただけます。
ご予約の確定
お伺いするヘルパーが確定しましたら、メール・お電話にてご予約の確定のご連絡をいたします。
サービス利用
当日は安心して介護サービスをご利用ください。万が一サポート中に問題が発生した場合やヘルパーとの間でトラブルが発生した場合には、専属の担当者へご相談ください。
ヘルパーからのレポートチェック
サービス終了後にヘルパーからのレポートをご確認ください。サポート内容の確認やご質問については、専属の担当者へご相談ください。
(引用:株式会社イチロウホームページhttps://ichirou.co.jp/)
4. 料金は?
- 初期費用なし
- 明朗会計
時間単価×利用時間+交通費。必要な料金はこれだけ!
東京都の例
- 9時~18時までの間。1時間3,190円2時間から利用できる。
- 18時~9時までの間。1時間3,828円2時間から利用できる。
- 交通費がその都度600円
1回3時間月に4回利用の場合
- 3,190円×3時間×4回=38,280円+交通費2,800円=合計41,080円
- 指名料金1時間で330円。レギュラー利用(定期的)の場合はかからない。
キャンセル料金
- 予約日の3日前の15時以降 予約料金の50%
- 予約日の前々日の15時以降 予約料金の75%
- 予約日の前日の15時以降 予約料金の100%
(引用:株式会社イチロウホームページhttps://ichirou.co.jp/)
介護保険での訪問介護の料金は、地域差、加算、負担割合によって変わります。
例:1単位10円で計算、加算はなしで算定
生活援助2の20分以上45分未満の場合は1790円
1割負担で179円/2割負担で358円/3割負担で537円
生活援助3の45分以上の場合は2200円
1割負担で220円/2割負担で440円/3割負担で660円
マッチングサービスと同じ1時間で比べると、介護保険の方が費用的に抑えれることが分かると思います。
マッチングサービスは便利なのか?
マッチングサービスを利用するニーズ
マッチングサービスを利用するニーズとしては、病院の付き添いが多いことが想定されます。
ケアマネジャーは、訪問介護での病院付き添いを嫌がります。
理由としては、それ相応の理由が必要なこと、保険者が認める必要があること、監査の時につつかれたくないためです。
誰が担うのかとなれば、家族が仕事を休むか、民間サービスを使うかになるからです。
そのため、ケアマネジャーはマッチングサービスを社会資源のひとつとして捉え、積極的に利用・紹介をします。
しかし、病院の付き添い以外で、マッチングサービスのヘルパーを最優先して利用するかと聞かれれば、答えはNOです。
重度の利用者への対応は難しい
マッチングサービスでは、重度の利用者は難しいと想定されます。
困りごとは複合していることがほとんどであるため、第一に介護保険を利用します。
様々な社会保険制度がありますが、介護保険法は他の法律より優先されることが、法律で取り決められているためです。
介護保険を利用するということは、基本はケアマネジャーがいます。
ケアマネジャーはニーズを聞き取り、担当者会議を実施し、ケアプランを作成し、各事業所に配布し、モニタリングを行い、本当に今のサービスで十分かを検討し続けます。
各事業所はデイであれば通所介護計画書、ヘルパーであれば訪問介護計画書、福祉用具であれば福祉用具計画書を作成し、ケアマネジャーに提出する義務があります。
つまり、法律で定められていることで、連携することを義務付けられています。
マッチングサービスは民間サービスなので、そのような義務がないため、連携が取りづらい面があります。
連携が取りづらくなると、ケアマネジャーは重要な仕事は任せなくなります。
担当者会議に出席をお願いすれば料金発生がするかもしれないので、利用に対しますます消極的になります。
3. 軽度者のニーズはあるのか?
軽度者(要支援者)は、介護保険の訪問介護は使用できません。
地域支援事業の総合事業を利用します。これは保険者ごとにサービス内容が違い、要介護者より制限が厳しいので、(1)のような事例が発生し易いです。
そのため、マッチングサービスのような介護保険外事業は社会資源のひとつとして受け入れられる可能性は十分にあります。
介護保険内で最大限にサービスを受ける方法
介護保険内で、できることは決まっていますが、ケアマネジャーの力量や交渉術にかなり左右されます。
例えば、福祉用具購入や住宅改修は市に提出する理由書をケアマネジャーが作成します。
市の担当者によって知識に差があり対応も異なるので、いかに担当者を納得させられるかにかかっています。
指定権者である市を敵に回したくない気持ちから、初めから諦めるケアマネジャーも居れば、四角四面で「できません」と言い利用者が諦めるケースもあります。
力量の高いケアマネジャーは法律を熟知し、法改正にも勉強熱心です。
利用者の生活のために、市と交渉を行い実現させる力を持っています。
介護保険内で最大限にサービスを受ける方法のひとつは、良いケアマネを見つけることです。
どうやったら良いケアマネを見つけられるのか?
一番良い方法は、地域包括支援センターに相談することです。
県が行っている情報公表制度や市の介護保険課の窓口は全くあてになりません。
地域包括支援センターは、地域の居宅介護支援事業所と月に1回勉強会を開いており、どこの居宅介護支援事業所にどんなケアマネが働いているかを知っています。
良いケアマネを紹介してほしいと伝えることです。
オーダーメイド介護のメリット・デメリット
利用者のメリット
制限がない
費用を払う限りは、時間、内容など基本的には何でもOKです。
柔軟な対応をしてくれる
急遽、明日の何時から来てほしいなどでもOKです。
利用者のデメリット
費用が高い
介護保険に比べて費用が高いです。
法的に守られてない
個人と民間会社の契約なので、トラブルがあれば基本的には当人同士での解決になります。
介護保険では、個人情報保護法や虐待防止法など、国が規定しており、利用者が保護されています。
自ら申し込む必要がある
自ら申し込み、交渉をする必要があります。
電話でも可となっているが、スマートフォンやパソコンを使う場合ログインできる必要があります。
働き手のメリット
自分のペースで働ける
副業として働けます。縛りがないので、自分の好きな時間やペースで働けます。
報酬が高い
通常の訪問介護サービスより、報酬は高く設定されています。
苦手な利用者を断れる
介護保険での訪問介護サービスは、提供拒否の禁止の規定があり、「何か苦手だから」「家が汚いから行きたくない」等で、提供拒否は認められていません。
マッチングサービスでは、働き手が拒否をすることもできます。
働き手のデメリット
報酬など希望に合わないことがある
自分のペースで働ける反面、仕事を保証されていないので、収入が安定しません。
無理難題を言われる場合がある
介護保険サービスであれば、規定を盾に断ることができますが、制限がない分、無理難題を言われることがあります。
介護福祉士や、介護支援専門員の実務経験にならない
介護職で働かれている人で資格取得を考えている人は注意が必要です。介護福祉士であれば3年、介護支援専門員であれば5年の実務経験が必要ですが、民間サービスのため、実務経験になりません。
(6)まとめ
マッチングサービスの利用が想定される人は?
・お金をたくさん払ってでも、便利の良いサービスを利用したい人。
・介護保険の様々な制約に縛られたくない人。
・介護保険で、できないことをしてほしい人。
需要があるかと問われれば、100%あると断言できます。
実は介護保険外サービスをしている所は多く、介護保険で対応できないことを有償サービスとして実施しています。しかし、これを使う利用者や内容は限定的です。
筆者がケアマネジャーをしていた時にも、地域には様々な介護保険外サービスがありました。
一番規模が大きかったのは社会福祉協議会が行っている、地域支え合い事業です。地域の住民から困り事の相談を社会福祉協議会が受け、社会福祉協議会に登録されている有償ボランティアに仕事を依頼するというものでした。
最も安価で、なおかつ社会福祉協議会が運営主体となっていることで、信頼性も抜群です。社会福祉協議会の職員が間に入っていることにより、細やかな気遣いや連絡・調整をしてくれ大変ありがたいサービスです。
当初は、60歳以上の地域住民であれば誰でも利用可能でした。しかし、だんだんと利用条件が厳しくなりました。なぜかと社会福祉協議会の職員に話を聞くと、本来の目的から逸れてしまったからとの返答でした。介護保険では対応が難しい細やかなことを、地域住民同士で支え合うことを目的に始めたサービスですが、依頼の90%以上が草取りだったとのことです。安価な草取り業者になってしまったと言われていました。現在は、生活に関係のない所の草取りはしないとし、草取りも継続はしています。
ニーズにマッチするとは、きめ細やかな聞き取りが必要になります。介護保険はその役割にケアマネジャーがいます。
民間のマッチングサービスを利用する際はその点が課題だと思います。
一方で、視点を変えると、働き手にとっては一定のニーズがあります。働き方のあり方もずいぶんと変わり、フリーランスで働く人が増えています。副業として、すきま時間に働く人も増えています。利用者のニーズと働き手のニーズをマッチングさせるので、まさにWIN-WINの関係です。人手不足は介護業界の頭の痛い悩みで、マッチングサービスでの働き方は、人手不足を少しでも解消することに繋がっています。
その様に考えると、マッチングサービスは利用者が便利というより、働き手にとって便利なサービスだと言えます。