

夜間の失禁に備えたり、トイレに行く回数を減らしたいという理由で、オムツや尿取りパッドを使う方もいらっしゃるでしょう。
そんな時に、お尻に痛痒さを感じたり、いつの間にかお尻やその周囲が赤くなっているという経験をされる方も少なくありません。
そこで今回は、高齢者の皮膚のかぶれ(接触皮膚炎)について、お伝えします。
現役介護福祉士が生活上での蒸れない工夫や、スキンケアの方法も伝授いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
高齢者の皮膚のかぶれ(接触皮膚炎)とはどんな症状?
高齢者の皮膚のかぶれ(接触皮膚炎)とは、主に尿や便といった排泄物や汗が皮膚と接触することで起こります。

そして、特に高齢者の中でも普段からオムツや尿取りパッドを使用している人は、「オムツかぶれ」と呼ばれる状態を引き起こしやすいのです。
また、オムツかぶれは排泄物の他にオムツの擦れによる刺激でも起こり、時に痒みも伴います。
高齢者の皮膚の特徴
一般的に高齢者は、加齢により皮膚の弾力性が低くなり、皮膚が薄くなってくるという特徴があります。
さらに、脂質の分泌が低下し、皮膚のバリア機能の低下も見られるようになるため、乾燥肌になりやすくなる傾向に。
そして、バリア機能の低下により、排泄物や汗が皮膚に浸透しやすくなり、かぶれを引き起こす原因となってしまうのです。
高齢者のかぶれの初期症状とは?
初期症状は、排泄物や汗が付着した部分に、皮膚の発赤(赤み)や痒み、ひび割れや湿疹といった症状が出ます。
その後進行すると、ただれやびらん(皮膚の剥がれ)だけでなく、感染症に繋がることも。


どうして痒くなる?痒みのメカニズムとは
「かぶれ」に良く伴う症状として代表的なのが、痒み。
痒みは、「掻きたい!」という欲求が生じてきて、とても不快な感覚が続きます。

なぜ、このようなかゆみが生じてしまうのでしょうか。
高齢者の皮膚は、代謝機能の低下や乾燥によって、痒みが発生しやすくなっています。
通常、皮膚の下に痒みの神経があるのですが、高齢者の場合この神経が表皮を超えて皮膚の表面近くまで来ています。
そのため、痒みに対する感覚が敏感になり、痒みを生じやすくなっているのです。

痒くて我慢できない時の対処法

どうしても痒くて仕方がない時ってありますよね。
だからと言って、掻いてしまうと出血したり、余計症状が悪化してしまうことに。
それでは、痒くて我慢できない時、掻く以外の方法をお伝えします。
まず、痒い部分を保冷剤などを使って冷やしてみましょう。
痒みの程度にもよりますが、冷やすことで痒みが少しずつ治まってくる場合もあります。
また、痒い部分を軽く叩くといった方法も効果的です。
さらに、編み物や読書など他のことに集中し、気を紛らわす方法、音楽などを聴きながらリラックスすることで痒みが和らぐ場合もあります。

爪も綺麗に整えた後で、手から良い香りもするので、「せっかく綺麗になった手を汚したくないな」という心理が働くのが狙いです。

皮膚がかぶれる原因と蒸れ対策
高齢者の皮膚がかぶれる原因として以下のような事柄が挙げられます。
- ゆるい便(下痢便)が続いている
- オムツや尿取りパッドを交換する間隔が長い
- 尿取りパッドを重ね当てしている
- 寝具にバスタオルを敷いている

かぶれの原因はさまざまで、それぞれに共通するポイントは、「蒸れ」です。原因の1つ1つを解説し、蒸れを防ぐ方法をお伝えします。
かぶれの原因①ゆるい便(下痢便)が続いている
かぶれの原因の1つ目は、ゆるい便(下痢便)が続いている場合です。
正常な便の形状は、バナナ状の形のあるものとされています。

かぶれの原因②オムツや尿取りパッドを交換する間隔が長い
かぶれの原因の2つ目は、オムツや尿取りパッドを交換せず長時間同じものを使用している場合です。
特に暑い時期は、汗をかき、そのままにしておくとオムツ内が蒸れて皮膚がふやける原因に。
また、尿や便で汚染したまま長時間交換しない状態は、不快感も伴います。
そこでオムツを交換する頻度ですが、排尿のパターンを把握し、排尿の回数や量によってタイミングを調節することが大切です。
排尿パターンや尿量は、その方によって違いますので、交換回数を増やすか、オムツの種類を検討するなどの方法が考えられるでしょう。



また、便は匂いによって気づくことが多いと思いますので、すぐに交換することで不快感も解消できます。
かぶれの原因③尿取りパッドを重ね当てしている
かぶれの原因3つ目は、尿取りパッドを重ね当てしている場合です。
オムツやリハビリパンツの中に、尿取りパッドを使うこともあるでしょう。
オムツやパンツを毎回取り換える必要がなく、一見便利に感じますが、実はオムツ内に熱や水蒸気がこもり、蒸れやすい状態に。

特に長時間車いすやいすに座りっぱなしの方は蒸れやすいので、20~30分に1回は立ち上がって、お尻や背もたれの蒸れを解消させましょう。
かぶれの原因④寝具にバスタオルを敷いている
かぶれの原因4つ目は、寝具にバスタオルを敷いている場合です。
バスタオルは、吸水性、吸湿性はあるものの、速乾性はないため熱がこもりやすく蒸れやすい状態に。
そのため、バスタオルを常に身体の下に敷いておくことは蒸れの原因になってしまうのです。

かぶれを防ぐスキンケアのポイント
かぶれを防ぐためのスキンケアで大切なのは洗浄・保湿・保護の3つです。
それぞれの工程で気をつけるべき点を解説します。
かぶれを防ぐ洗浄方法とは?
かぶれを防ぐには、オムツ交換の際、陰部やお尻を拭いて終わりではなく、洗浄することも大切です。
特にオムツ内で排便があった場合は、拭いただけでは落とせない汚れの除去や爽快感も得られます。
まず、オムツ交換時の洗浄や普段の入浴で使う洗浄剤(石鹸)ですが、素肌と同じpH4.5~6の、弱酸性のものを使いましょう。
ただし、汚れの程度によっては、弱酸性の洗浄剤では落としきれないこともあり、汚れが残ってしまうことも。

ここで注意すべきなのは、ベビー石鹸など赤ちゃん用のボディーソープや石鹸です。
敏感でデリケートな赤ちゃん用の石鹸なら肌に優しいのではと思いがちですが、実は、ベビー石鹸は新生児の汗や皮脂を落とす目的で作られているため洗浄力が強め。
そのため、元々皮脂が少ない高齢者の肌の場合、必要な皮脂も洗い流してしまう恐れがあるので、避けた方が良いでしょう。
また、初めから泡の状態で出てくるボディソープを使用すれば泡立てる手間が省けます。

洗浄する時は、あらかじめ尿や便を拭き取ってから行います。
拭くときは力を入れてゴシゴシ擦らず、皮膚に負担がかからないよう優しく拭きましょう。
そして洗浄用のボトルに入れたぬるま湯(38~40℃)を陰部やお尻を濡らし、泡でおさえるようにして洗います。

かぶれを防ぐ保湿方法とは?
洗浄後の肌はデリケートな状態で乾燥もしやすいため、すぐに保湿することも大切です。
肌が乾燥していると、皮膚のバリア機能が低下、炎症が起こる恐れもあります。
保湿は入浴後や洗浄後、皮膚がしっとりした状態で行うと皮膚に浸透しやすく効果的です。
さらに、軟膏やクリームは、皮膜を覆うため、保湿効果が高くなります。
再度尿や便で皮膚が汚染されることを想定し、撥水させる目的でクリームや油脂を使って皮膚を保護します。
オイルスプレーの使用もおすすめです。

かぶれを防ぐ保護方法とは?
かぶれを防ぐには、保湿剤で保護することも必要です。
前述した保湿とも重複しますが、ワセリンやクリームなどの保湿剤を使うことでかぶれを起こしにくくする効果が期待できます。
効果的な保湿剤の塗り方のポイントは以下の通りです。
- 清潔な手に保湿剤を取り、皮膚の上に数か所、点在してつける
- 手のひらを使って丁寧に優しく広範囲に広げながら塗る
- 皮溝(皮膚の表面の網目状になっている細かい溝)に沿うように塗る
- 皮膚がしっとりする程度が適量
特にオムツかぶれを防ぐために軟膏を塗る場合は、皮膚が隠れる程度に厚く塗ります。
また、かぶれの部分のみではなく、オムツに触れる部分を広範囲に塗っていくことが大切です。

まとめ
今回は、高齢者のお肌の悩み、かぶれについてお伝えしてきました。
身体の痒みが続くと、本当に辛いですよね。
痒い部分を冷やしたり、音楽でリラックスするなどして、ご本人に合った方法で対処してみてください。

何か、夢中に取り組めるものを考えてみることをおすすめします。
段々気温も上がり、汗ばむ日も増えてきた今日この頃。
少しでも快適に、蒸れなく過ごせるよう、蒸れ対策とスキンケアも参考になれば幸いです。