
老後の後悔として多く挙げられるのが歯を大切にしなかったことという、ちょっと耳の痛い事実、ご存じでしたか?
年齢を重ねると、健康診断の結果に一喜一憂しますよね。 高血圧、糖尿病、肥満…。 意外と見過ごされがちなのが「歯」の健康。
この記事では、「痛くなったら歯医者に行けば良い!」という考えが危険なこと。 そして人生の質を守るために何をすべきか、介護口腔ケア推進士の視点からお伝えします。

約61%が歯を失って後悔している現実
髪の毛が薄くなったり体型が変わったりと、見た目の変化もショックが大きいですよね。
しかし、データを見ると、見た目の変化以上に多くの人が後悔しているのが歯。 以下は、非常に興味深い調査結果です。
ご自身の体について「変化して欲しくなかったこと」「失って後悔していること」を聞いたところ、“歯”と回答した人が61.3%と、「髪の毛」や「体型」をおさえて最も多い結果となりました。
(引用元:~ 4月18日は、よい歯の日 ~「若いうちから歯のケアをしておけば良かった」との声が多数 失ってから後悔したもの、第1位は “歯” | インビザライン・ジャパン合同会社のプレスリリース)
周りのシニア世代の方も


という切実な声を本当にたくさん聞きます。 失った歯は二度と生えてきません。
歯のトラブルが原因で起こる2つの問題
歯のトラブルというと、「好きなものを食べられない」「思いっきり笑えない」といった、生活の質(QOL)が下がるイメージが強いかもしれません。
しかし、あなたの生活に重くのしかかる深刻な問題が2つあります。
①経済的負担
初期の虫歯なら、治療費は約2000円程度で済むことがほとんどですよね。
しかし、重度の虫歯や歯周病になってしまうと話は別。 自費診療のセラミックやインプラントとなれば、治療費は数十万円、場合によってはそれ以上に。

なんて声も聞こえてきそうですが、大きな落とし穴。 基本的に、一度治療した歯が半永久的に保つことは、残念ながらありません。
もちろん、日々のケアを徹底すれば長持ちはしますが、
保険診療で治した銀歯は5~8年、高価なセラミックでさえ約10年が寿命と言われています。
気づいたときには歯の治療に、生涯で数百万円もつぎ込んでいた… なんて、笑えない話が現実に起こっているのです。
②体中の悪影響
歯のトラブルは、体全体に悪影響を及ぼすことが分かっています。 代表的な疾患は次の通り。
- 糖尿病
- 心臓や脳の病気
- 肺炎
- 認知症
例えば、歯周病菌が歯茎の血管から体内に侵入し、血管を詰まりやすく硬くして糖尿病や心臓病などのリスクがあがります。
唾液と共に肺に入って肺炎を起こしたり…。さらには、歯周病菌が直接脳にまで到達し、認知機能の低下に関わっているんです。

歯を守るための方法3つ
後悔しないために具体的行動は以下の習慣を生活に取り入れること。
①歯の定期検診
治療が終わって安心。「検診で来てくださいね」なんて言われたものの、予約を先延ばしに。気づけば1年、2年…。そんな経験、ありませんか? 歯の定期検診は、プロの力と専門の道具を借りて自分の口の健康を守っていくもの。
毎日どんなに綺麗に歯磨きしていても、汚れを100%落とすことは困難です。落としきれなかった汚れは、歯の表面に強力な膜(バイオフィルム)を形成。
このバイオフィルムは非常に厄介で、歯ブラシではなかなか破壊できません。
定期検診なら専用の機械でバイオフィルムを除去でき、ごく初期の虫歯ならフッ素塗布やクリーニングで削らずに治せる可能性だってあります。
また、定期検診は個人に合わせた具体的なアドバイスをもらえる絶好の機会です。

口の虫歯菌や歯周病菌は、クリーニング後、約3ヶ月で元のレベルまで増殖すると分かっています。細菌たちが力を取り戻す前の3ヶ月周期でプロのケアを受けることが、口の健康を保つ効率的な方法です。
②歯磨き用品の見直し
口の健康を守る鍵は「なんとなく」で選びがちな歯ブラシと歯磨き粉を見直すこと。
歯の噛み合わせの面や表面は、ある程度自然と汚れが落ちますが、問題は歯と歯の隙間や歯の根元。適切な道具を選んで意識的に磨かなければ、きれいになりません。
歯ブラシは、日本人の口に合いやすいコンパクトヘッドで、毛先が「ドーム型」や「山型」のものがおすすめ。汚れが溜まりやすい歯と歯茎の境目まで、しっかり毛先が届きます。
歯磨き粉も、虫歯が気になるならフッ素高配合タイプ(1450ppmが目安)。歯周病を予防したいなら「殺菌・抗炎症成分配合タイプと、目的に合わせて使い分けることでケアの効果が格段にアップします。

③唾液量を増やす
歯の健康を守る上で、唾液の量を増やすのは大切。唾液は、口の中を守る洗口液。
- 自浄作用: 食べ物のカスや細菌を洗い流し、口内を清潔に保つ
- 緩衝作用: 食後の酸性に傾いた口内を中和し、歯が溶け始める「脱灰」を防ぐ
- 再石灰化作用: 唾液に含まれるミネラルが歯の表面を修復し、ごく初期の虫歯であれば治してくれる
唾液が少ないと、虫歯や歯周病のリスクは一気に高まってしまいます。唾液量を増やす方法は、意外と簡単。
- よく噛んで食べる: 一口30回が目安。噛むことは、唾液の分泌を促す
- 唾液腺マッサージ: 耳の下、顎の骨の内側、顎の真下の3点を、指で優しくマッサージ
- キシリトールガムを噛む: ガムを噛むこと自体が唾液を促す。特にキシリトールは虫歯菌の活動を弱める効果も期待できる
- 鼻呼吸を意識する: 意識して鼻で呼吸するだけで口内の潤いは大きく変化
唾液を増やすことを意識するだけで、口の健康をより確実に守ることができます。
後悔を「予防」に変えるために、今日からできること
年齢を重ねると多くの人が後悔する「歯」の問題。歯を失うことが、単なる食事の楽しみを奪うだけでなく、高額な医療費や、糖尿病・認知症といった深刻な問題に直結します。
- 歯の定期検診
- 歯磨き用品の見直し
- 唾液量を増やす習慣
3つを意識することで自身の歯と健康を守ることができます。
まずはお近くの歯科医院を探し、「定期検診」を予約することから始めてみてはいかがでしょうか。

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