

認知症の初期症状の中には、買ったことを忘れて同じものを何度も買う、食べきれずに腐らせてしまうというケースがよく見られます。
賞味期限が切れていても勿体ないからとつい食べてしまうと、思わぬ危険に晒されることも。今回は、どのような食材が危険なのかと認知症の方への説得方法をあわせて解説いたします。
食材の管理と認知症がどう影響するのか
認知症の初期症状として現れるもののひとつが「短期記憶障害」です。これは脳の短期記憶をつかさどる「海馬」が萎縮するために起こる障害です。
これによって、
- 物忘れが以前よりひどくなる
- 数分前に聞いた話を思い出せない
- 買った食材を再度買ってきてしまう
- 繰り返し同じ話をする
など様々な症状が現れます。
認知症になると昔の記憶「長期記憶」より、最近の物ごと「短期記憶」の方が先に障害されてしまう傾向にあります。
そのため短期記憶である「食材を買った」ということを忘れ、「いつも買っている食材がない!」と思い込み、「すぐに買ってこなくちゃ!」とつい買い込んでしまうのです。
また近年の研究で認知症の前段階である「軽度認知障害」、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の初期症状では、嗅覚の低下がみられることが分かってきました。
腐っていることが分からず冷蔵庫にそのまま放置しているという可能性もあるのです。
次に食材を処分する目安となる「賞味期限」と「消費期限」について説明します。
「消費期限」が切れた食材は危険!「賞味期限」との違い
食材には「賞味期限」と「消費期限」のどちらかが記載されています。どちらも袋や容器と開けないままで適切な保存していた場合の期限です。
賞味期限はスナック菓子、ジュース、カップめんなど、書かれた年月日までは品質が変わらず美味しく食べられるという期限になります。
一方で消費期限はお弁当、生鮮食品、ケーキなど、書かれた期限までだったら食べれる食品となります。
もし「消費期限」の方が過ぎている場合は必ず破棄しましょう。
ただし、「賞味期限」内であってもカビが生えている、腐敗臭や酸っぱい味がする場合は破棄をして下さい。
適切な保存方法でなくても密封されてたら食べれるの?
密封された食品でも適切な保存方法でない場合、雑菌が繁殖する可能性があり非常に危険です。
酸素を必要としない「嫌気性菌」が繁殖するリスクがあるからです。

密封されていたとしても、変な臭いや粘り気などがあった場合は決して口にしないようにしましょう。
見落としがちな危険な食材とは
冷蔵庫の中を確認するにあたって特に危険な食材・見落としがちな食材を紹介します。
豆腐
豆腐には昔ながらの水が入ったタイプと、豆乳と凝固剤を一緒に入れた上で加熱する充填豆腐の2つがあります。
充填豆腐は長期保存が可能ですが、水が入ったタイプの豆腐は「消費期限」が設定されており長期保存は危険です。
パック内に入っている水にはごく微量の菌が残っている場合があり、雑菌が増殖する可能性があります。
さらに原材料の大豆には土壌由来の耐熱性芽胞菌が付着している場合があります。もし増殖していた場合どんなに加熱しても死滅しない恐ろしい細菌なのです。
消費期限が1日でも過ぎていた場合は破棄しましょう。
卵
卵の賞味期限は「25度で保管された場合に生で食べられる期間」が設定されています。
もし卵にヒビが入っている場合例え賞味期限内でもしっかり加熱しましょう。
適切な温度で管理されていなかったり、冷蔵庫の開け閉めでヒビが入ってしまったりした場合には、サルモネラ菌のリスクを増大させます。
なるべく卵の衝撃の少ない位置に保管し、卵が水に浮く場合は破棄しましょう。
米
ご飯を常温で一晩放置すると、セレウス菌が増殖している可能性があります。見た目では問題なくても時間が経っているようであれば破棄しましょう。
また炊飯する前のお米でも、保管方法次第ではカビが映えるリスクがあります。特に、流し台の下に保管すると湿度が高くなりカビが生えやすくなるのです。
お米に付着したカビは、種類によってはアフラトキシンという発がん性物質を持つものもあります。
お米が灰色や黒っぽい、粉っぽい場合、カビ臭がする場合などは破棄するようにしましょう。
菓子類
常温で置いてあるお菓子は特に、見た目には問題なくても内部で細菌が増殖しているリスクがあります。
特に夏場などは湿気でカビが生えるリスクが高くなります。冷蔵庫内に保管する、小分けのお菓子を勧めるなど注意しましょう。
冷凍食品
見落としがちなのが冷凍食品。
冷凍庫内でしっかり保管されていれば問題ありませんが、冷凍庫に入れずしばらく放置してしまった場合などには雑菌が繁殖するリスクがあります。
冷凍焼けや、氷が大量に付着している場合、また変な臭いがする場合には注意しましょう。
認知症の疑いのある家族とどう冷蔵庫の整理をすればいいの?




まず最初に、なぜ何度も同じ食品を買い込んでしましょうのでしょうか。
本人がその食材を『無い』と思い込んでいる、食材を買うもののその食材を使った調理方法が分からなくなってしまう…などその人によって様々な理由があります。
さらに高齢者にとって、食料を捨てるなんてありえないと考えている方も多いことでしょう。
『無い』と思って買ったのを否定されて激昂してしまう、症状によってはそれから「娘に盗まれた」などの妄想に繋ってしまうこともあります。
このように関係がこじれると更に整理整頓が難しくなることも。
接し方を工夫してみよう




いちばん大事なのは『否定から入らないこと』です。
一緒に整理整頓できるのであれば、本人も安心するでしょう。賞味期限が切れたものの代わりになるものがある場合、それを見せることでさらに安心に繋がります。
どうしても身近な存在である人物だと、つい怒ったりしがちです。「こんなに散らかして!」と思っても、一旦深呼吸してどう話せば良いか考えてみましょう。
ゆっくり話を聞いてみると本人がなぜ捨てたがらないのか、どう食材の管理していけばいいのか解決の糸口が見えるかもしれません。

しかし、人よってはそれも難しい場合もあると思います。
他の人と一緒に外出している間や、見ていないときに奥のものなどを少しずつ減らしていくのも手です。

冷蔵庫の中を整理し、食中毒から大事な家族の健康を守りましょう!