

近年特に問題視されている「野焼き」。
日本における山火事の原因の実に半数が、焚き火や火入れなどによって引き起こされています。
他にも、ゴミを焼くことによる有害物質や臭いなど、問題は様々です。今回はゴミ焼却の問題を認知症の視点も含めて、精神科看護師が解説します。
「焚き火」とは?
「焚き火」とは、落ち葉を集めて燃やしたり、キャンプファイアーで薪を燃やしたりすることを指します。
このような軽微なものであったり、農業や林業などで出た稲わらなど、やむを得ない廃棄物の焼却は地域によっては認められる場合があります。
稲わらや農地の一部を適切に焼却した場合、灰が栄養分となったり、萌芽を促すメリットもあります。
とはいえ、周りに延焼する可能性がある状態での焚き火は非常に危険です。
焚き火が認められている場合でも、周囲の迷惑となる場合は処分方法を検討しなおしましょう。
「野焼き」とは?
「野焼き」とは、家庭から出たゴミを庭などで焼却処分することを指します。
本来家庭から出たゴミは、焼却施設で高温で燃やすことにより有害物質を最小限に抑えることができます。
しかし、一般家庭で燃やすと200~300度程度の温度しか出ないため、ダイオキシンやPM2.5などの有害物質が多量に発生するリスクがあるのです。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」において、野焼きは罰則付きで禁止されています。
なぜ「野焼き」をするのか


などの考えから、焼却してしまう人が多いようです。
そして昔の習慣から、認知症になっても野焼きを続ける人が多いのです。
また高齢化によって筋力が低下し、ゴミ捨て場までゴミを持っていけないといった事情もあるようです。
他にもゴミ捨てを行うのに費用がかかるなど、理由は様々です。
認知症でなくとも、延焼対策を行わず焚き火や野焼きをするのはとても危険な行為です。
焼却処分の危険性
見守り不足によって一気に燃え広がってしまう
長年火を取り扱ってきた「慣れ」から、あまり見守りをせずに焼却してしまう、万一延焼してしまった場合の対策をしていないなどのケースが見られます。
特に乾燥が強く、風も強い冬場などは一気に燃え広がってしまうことも。

火の始末を忘れてしまう、ちゃんと始末していない
火がまだくすぶっているにも関わらず立ち去ってしまうケースも見受けられます。
これらも大きな火事の原因となるケースのひとつです。
また認知力の低下によって、火を付けていたことを忘れてしまうということもあるようです。
火が衣類にうつってしまうことによる全身火傷や、最悪死亡のケースも
農業従事者が稲わら焼却中などに火傷を負い死亡するケースも多く、農業機械・施設以外での死亡者数の約15~20%を占めています。

農業による死亡事故全体でみても、約85%が65歳以上の高齢者であることが報告されています。
理由として、高齢による瞬発力の低下などにより、すぐに火や危険物を避けれないといったケースが多いようです。
認知症と焼却処分の関連

注意散漫になりやすい
火起こししている場所に集中できず、様々な場所に気が散ってしまいやすくなります。
それによって、気付かないうちに火が拡大してしまう危険性があるのです。
視野が狭窄しがちになる
高齢になると背が湾曲するなどの身体的な問題も含まって、視野が狭く下を向きやすい傾向になります。
それに注意散漫傾向も相まって、火が拡大していることに気付きにくくなるのです。
パニックになりやすい
トラブルが起きるとパニックになりやすく、判断能力が著しく低下することが多くなります。
出火に気付いても、効果的な初期消火が行えないリスクがあります。
「焚き火」の火を延焼させない対策は?
火のそばから離れない
火を扱うにあたって最も大事な事項です。
風が強いと一瞬にして火が強くなり、火の粉が飛んで森林火災に繋がる恐れがあります。
ドラム缶型などの焼却炉を用いる
ドラム缶型の焼却炉であれば、万一火が強くなりすぎてもすぐにフタを締めて消火することが可能です。
物によっては煙の少ない焼却炉もあります。
万一の場合に備え、近くに水など消火できるものを用意しておく
貯めた水やホースを繋いだ蛇口など、万一火が燃え広がってしまった場合の対策をしておきましょう。
燃やしたくない範囲にあらかじめ水をかけておくのも有効です。
一回に燃やす量を減らす
少しずつ燃やせば煙も少なくすみ、また燃え広がるリスクも軽減します。
焼却処分をやめない高齢家族にいかに介入するか

公共機関に伝えても、なかなか解決しないことが多いのが現状です。
また、長年焼却処分を行ってきた高齢者に介入するのは、なかなか難しいことが多いようです。
まずはなにをどのようなタイミングで、なぜ燃やしているのかを探ってみましょう。

理由がわかれば、同居できずともある程度の対策が取れるかもしれません。
高齢者の「野焼き」の対策
「野焼き」は前述の通り違法であるため、早急に辞めさせたい事項です。
家族がある程度家に行くのであれば、燃やしてしまう前に事前にゴミを集めて処分するのが有効です。

特に認知症の患者では、はたからゴミに見えるものでも、本人にとって大切なものである場合もあるため確認した上で捨てるようにしましょう。
家族が家に介入することが難しい場合、ホームヘルパーを活用するのも手です。

他の援助と一緒にゴミ出しをお願いすることもできますので、お願いしてみるのも良いでしょう。
ただしゴミ出しのみであれば、援助を受けられない場合があります。まずは市町村の窓口などで相談してみましょう。
高齢者の「焚き火」の対策
ホームヘルパーは庭の手入れを行えないため、基本的には家族の介入をおすすめします。
ただし場合によっては、「共同実践」の形式であればホームヘルパーの援助を受けられる可能性もあります。

既にまとめている枯れ草や落ち葉を、一緒にゴミ袋にまとめるなどの作業をできる場合もあります。
やむを得ず燃やす必要性がある場合は、ドラム缶型などの焼却炉など、消火がしやすいものを勧めてみるのも手でしょう。
ゴミと草木の管理を分ける
筆者の祖父も、以前は枯れ葉などを焼却するついでに、ゴミも一緒に焼却しており臭いに悩まされていました。認知症ではないのですが、頑固者でゴミを燃やさないでと言ってもなかなか聞き入れてもらません。
ただ実家は田舎で、処分する草木も多くやむを得ない焼却も必要な場所です。
ですので、ゴミは燃やされる前に市町村のゴミ袋に入れてしまい、草木はドラム缶式の焼却炉を使ってもらうようにしました。
煙の臭いの問題など全ては解決できていませんが、ビニールを燃やしたとき特有の臭いは無くなり、万一燃えすぎたときでも蓋を閉めればすぐ消火できるようになったので比較的安全になりました。

まとめ
「野焼き」は環境や健康に悪影響を及ぼし、法律でも禁止されています。しかし、高齢者の中には昔からの習慣や体力的な問題から、やめられない人も多いのが現状です。
特に認知症の場合、火の取り扱いは大事故に繋がる危険性もあります。
家族の介入や、難しい場合はホームヘルパーの介入検討など、地域の支援も活用してみましょう。
枯れ草などやむを得ない焼却の場合、直火よりかは比較的安全な、ドラム缶式の焼却炉などを用いるのも手です。