「ピー!ピー!ピー!」
片方の耳に設置した無線がイヤホン越しにけたたましく鳴り響きました。

詐欺による電話の警察への通報が、立て続けて起こっている緊急指令でした。
近年の日本では、高齢者の人口増加にともない、高齢者をねらった詐欺が増えています。
また認知症等により、判断能力が欠如した人をねらった不動産の売買取引をする悪質な業者がいます。
当記事では
- 高齢者の売買のトラブルや詐欺の実態はどんなもの?認知症を狙った不動産詐欺が増えているって本当?
- 高齢者のお金の不安を狙った詐欺やトラブルは回避できるの?対策はある?
- 詐欺から高齢者を守るために家族ができることとは?
このような疑問を元警察官、現役介護福祉士が解説します。
高齢者の不動産の売買トラブル、詐欺の実態とは?
近年では、高齢者を狙った詐欺が横行し、手口も様々です。
特に不動産に関しては、取引に関する書類も多く、なにより複雑です。
よくわからないまま契約を結んでしまい、後に詐欺だと判明して途方に暮れてしまう事例があります。
この章では2つの事例を一緒に見ていきましょう。
高齢者1人をターゲットにて、複数の業者が関わりだまし取る!?
一般的に不動産と言えば、「家」や「マンション」を想像されると思います。
「山林」や「原野」も不動産に当たります。
下記の事例は山林、原野の売買詐欺に関する事例です。
この事例では、原野商法という売買手口を使い、1人の高齢者をターゲットにしています。

と言ってお金をだまし取ります。次に

と持ちかけられ、複数回にわたりお金をだまし取られるという、何とも悲しい事例です。
悲報。認知症を狙った不動産詐欺が多発
上記の事例同様、認知症により個人では判断能力がないとわかっていて
不動産を売りつける詐欺の被害も多発しています。
例えば下記の記事をご覧ください。
被害者は、認知症女性83歳。
その女性の通帳から300万円が消えていました。不思議に思った家族が、調べたところ「インターネット不動産販売」に支払われていたとのこと。
契約書類を見るとマンションの1室を買ったようだが、そこには55分の6の文字がありました。
あろうことか、マンションの1部屋ではなく55分の6の面積を買わされたようです。
認知症高齢者である被害者本人は何の事か覚えていないらしく、家族は憤りを感じています。
高齢者に不動産が売られる理由3選
複雑な契約書類と専門用語
不動産の売買で使われる契約書類は複雑で、専門用語も多いです。
認知症でなければ、人に聞く、あるいは調べることが可能ですが、認知症の方はそのような行為は難しいと言えます。
詐欺師は認知症をたくみに利用して、判断能力が十分にないことをわかっていながら、認知症高齢者に不利な契約を結ばせるのです。
上記の認知症の事例では、マンションの1室と思わせておいて、蓋を開けてみればその55分の6の面積だったわけです。
一度に大きなお金が動く
認知症の高齢者に限らず、お年寄りの信頼は詐欺師にとって勝ち取りやすいです。
特に、1人暮らしのお年寄りは、日々孤独を感じてる人は多いでしょう。
そんな時に、何度も訪ねてくれる人がいれば、信頼を寄せたいと感情が高揚するのも理解できます。
詐欺師は善意を装い、高齢者が抱える事情も分かって近づいてくるのです。
不動産は、大きなお金が動く可能性が高いのはおわかりいただけるでしょう。
つまり、1度に大きなまとまったお金が詐欺師の手元に入ってくるのです。
詐欺師にとっては、1度に大きなお金を得るチャンスなのでなかなか手放してはくれないでしょう。
闇の名簿の存在

と疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?闇の名簿というのが実際に存在するのです。
私は元警察官ですが、刑事の経験がないのでこの闇名簿を見たことはありません。
私の知人はこの闇名簿に、実際に記載されていたらしく、警察から電話がかかってきたようです。
車の売買に関する名簿で、不動産ではなかったです。知人の話によると、高齢者を狙った車の売買詐欺もあるので気を付けてください。
高齢者のお金の不安を狙った詐欺やトラブルは回避できる!!
法定後見制度で身を守る
法定後見制度とは、認知症などにより判断能力が不十分な人に、家庭裁判所から選ばれた人が支援、サポートする制度です。
この制度により、詐欺や不要と思われる契約をした場合、契約を取り消す権限が得られます。
よって、不正な不動産の売買を成立できないようにできるのです。
介護職員として施設に勤めていると、特に独り身の方で、この制度を利用している方はいらっしゃいます。
法定後見制度を利用する場合でも、後に説明する任意後見人でも費用が発生します。
費用に関しては、本人の資産状況にもよるので控えますが、後見人を監督する立場の人(監督人)にも費用が発生するので、本人が生存している限りは資産が目減りしていくと言っても良いでしょう。
しかし、ご家族がいる場合は、ご家族が身上をサポートされる方が多いです。
つまり、子どもやご家族がいる場合で、お世話をしてくれる場合は利用するメリットがない制度だと個人的には思います。
任意後見制度で身を守る
法定後見制度とは違い、認知症などの症状で判断能力を失う前に、本人が自分の意志で任意後見人を決めておくことができる制度です。
本人の意思なので、自分の子供を任意後見人に選ぶこともできます。
上記にも述べた通り、任意後見人にも費用が発生します。
自分の子供にすると、子どもの報酬になりますが、いずれにせよ、監督人の費用も発生しますので、必ず費用はかかると言って良いでしょう。
家族信託制度で財産を守る
高齢者本人の財産がどれくらいあるのか把握したいと思っても認知症になってしまったら、銀行から預金を引き出すことはできません(口座凍結と言われています)。
口座凍結は、銀行が財産の保護を目的として行われるものです。
口座凍結されてしまうと、株式の売買はおろか定期の支払いや振り込み、解約もできません。
つまり、家族が一切の負担を担うこととなってしまうのです。
このような事態になる前に、財産を信託する契約を結んでおく制度が家族信託制度です。
詐欺から高齢者を守るために家族ができること1選!!
不動産に限らず、詐欺や不当な取引に高齢者が関わってしまう前に、家族が今からでもできる簡単な対策があります。それは
こまめに連絡を取る
これだけです。
高齢者で特に一人暮らしの方は、日ごろから孤独を感じているケースが多いです。
少しの時間でも、こまめに電話をしたり、顔を出すことで高齢者もうれしい気持ちになることでしょう。こまめに連絡を取ることのメリットはまだあります。
ちょっとした変化を見逃すリスクが減ることです。
例えば、物覚えもしっかりしていた方が、やたら同じ話を繰り返していたら認知症を疑うでしょう。
また軽度の認知症であったにもかかわらず、こちらの名前もすぐに出てこなかったら、かなり認知が進んでいることになります。
こまめに連絡を取る効果は、絶大と言えるでしょう。
まとめ
当記事では、高齢者の不動産トラブルについて、事例とその対策をご紹介させていただきました。
しかし、やはり一番大事と言えるのは、日々の関わりなのです。
関わる時間が多ければ、それだけ詐欺やトラブルのリスクを、回避できる確率は高まります。
逆に、少なければ詐欺やトラブルにより、苦労し財産を失うことになるのは、高齢者本人とその家族です。
ぜひ、この機会に積極的に関わりを持ち、お互いに幸せな時間を持てると良いですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。